この記事ではA164竪穴住居、A170竪穴住居、D203土坑について検討します。
1 A164竪穴住居、A170竪穴住居、D203土坑の位置
A164竪穴住居、A170竪穴住居、D203土坑の位置
3つの遺構は30mずつ離れていますが、隣接していると捉えてもよいと思います。
2 A164竪穴住居の特徴
● 硬化面、焼土、不明ピットの存在
床面に硬化面が存在し、焼土及び不明ピットが存在する。
A164(1)
出土する遺物は、全体的に少ない竪穴住居跡であるが、長文を伴う「人面墨書土器」が覆土層から出土している。
刀子も出土します。
A164(2)
● 鉄付鞴羽口片の出土
鉄付鞴羽口先端部が出土する。
● 発掘調査報告所の所見
本住居跡は自然堆積の埋没後、掘り返され、その穿たれた坑で焼却行為が行われた遺構と捉えた。
炭化材が殆ど検出されていないので、他の類例の竪穴住居跡と異なるものであるが、焼却と投入土による消火行為、その後の再度の自然堆積と覆土は複雑な堆積状況を示していた。
上谷2地区とやや異なり、本地区では焼却行為の後に人為堆積によって埋没させる遺構が少ないことを指摘しておきたい。
3 A164竪穴住居の検討(想像を交えた学習)
発掘調査報告書の所見通りこの竪穴住居は鍛冶遺構ではありませんから、鉄付鞴羽口片は外部から持ち込まれたものになります。
鉄付鞴羽口は覆土層の中層から出土しています。
発掘調査報告書のA164竪穴住居の焼土の層位に関する記載を詳しく読んでみました。
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発掘調査報告書の記載
竈前から住居跡中を経て南東壁脇にかけて、黒色土に焼土が混合した範囲が捉えられた。
その範囲は覆土5層中であり、床から10cmほど高い位置であった。炭化材は検出されなかった。
発掘調査報告書の掲載図
(印刷で薄く網がかかっている部分を赤表示…焼土分布を示すと考える。)
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焼土は発掘調査報告書の所見どおり、掘り返して後焼却行為によることが確認できます。
この焼却行為は覆土を一部掘り返してそこで行うという大変意識的活動ですから、特徴的な意味があるに違いありません。
一種の祭祀行為が行われたと考えます。
A164竪穴住居で、廃絶後に焼却行為という一種の祭祀行為があり、人面墨書土器が出土し、さらに鉄付き鞴羽口が出土するということに関連性があるかもしれないと考えます。
こられの出土物等から、A164竪穴住居が廃絶する前の住人が集落の中で果たしていた機能が大きかったことを想像します。
4 A170竪穴住居の検討
A170竪穴住居から鉄滓が出土します。
A170竪穴住居は鍛冶遺構ではありません。
鉄滓はどこからか持ち込まれたものです。
5 D203土坑の検討
D203土坑から鞴羽口片が出土します。
D203土坑も鍛冶遺構ではありません。
6 全体考察
30mずつしか離れていないA164竪穴住居、A170竪穴住居、D203土坑から鞴羽口、鉄滓が出土していますから、この近くに鍛冶遺構が存在する可能性を否定できません。
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