2021.09.04記事「有吉北貝塚北斜面貝層 土器片出土層準の略推定」で395土器の土器片3つを対象に、出土層準の略推定が可能である原理を作業レベルで確認しました。
この記事では395土器の全9つの土器片について作業精度を高めたうえで、出土層準の略推定を行いました。
1 395土器(加曽利EⅢ式 有孔鍔付土器)の土器片出土層準
395土器の土器片出土層準 略推定作業図
断面位置図
395土器として接合された土器片9つは断面図にプロットすると第10~第13断面図の4つにわたっています。
その層準は第10断面図ではガリー流路(普段は流水はないと想定)付近で貝層の下部と中部に位置します。第11断面図ではガリー流路付近の貝層中部、箱形地形中央付近の貝層中部から出土し、この土器片は純貝層より下に位置します。さらに標高の高い表層からの出土もあります。第12断面図ではガリー流路付近の貝層中部から出土し、その位置は純貝層の下になります。第13断面図では貝層ではなく土層中部から出土します。
2 メモ
395土器データだけから考えると、第10~第12断面図付近の貝層は加曽利EⅢ式期頃以前には貝層はまだ未発達であり、加曽利EⅢ式期頃以降に急発達したと捉えることができます。有吉北貝塚集落の土器で型式が明白にわかるものは加曽利EⅢ式土器が最後で、EⅣ式の証拠は不明瞭でほとんどありませんから、第10~第12断面付近貝層は集落終焉期に急発達したことになります。
発掘調査報告書には3桁に及ぶ土器についてその土器片分布資料が掲載されていますので、それら全部について395土器と同じ手法で出土層準の略推定をおこない、そのトータル情報の観察をすることにします。
3 395土器(加曽利EⅢ式 有孔鍔付土器)
395土器実測図、写真(発掘調査報告書情報から作成した自前データベース画面)
記載概要「球状を呈する胴部に直立する口縁部が接続し、屈折部に2個1単位の孔を有する鍔が貼付されている。胴部に沈線による渦巻形を基本とする文様を描出し、文様内の一部にLRL複節縄文を充填している。」
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