お誘いのあった2021.07.10イボキサゴ採取会に参加してから2ヵ月が経ちました。この間考古学的興味対象としてのイボキサゴについて、その3Dモデル作成スキル向上に明け暮れてきました。次のような目標を立てました。
・完全体3Dモデルを作成する。(360度どこからみても完全な3Dモデル)
・精細な3Dモデルを作成する。
取組当初は一定のパワーを集中投入すれば出来るに違いないとタカをくくっていました。しかし気が付くと、縄文土器など通常の大きさのモノの3Dモデル作成技術と、径17mm程度の小さいモノの3Dモデル作成技術はほとんど別世界のものであることを理解しました。その後悪戦苦闘して当初の目標を完全にクリアするための橋頭保は築けましたので、その状況をメモします。
1 多数の撮影写真が必要
通常オブジェクトの回りを3つの高さで廻りながらそれぞれ24枚撮影すれば、3Dモデルが作成できることは経験的に知られています。展示縄文土器などの3Dモデルではこの程度以上の撮影密度なら3DF Zephyr Liteで結像できないことはあり得ません。
しかし、小さいモノであるイボキサゴでは、今回の自分の経験では3つの高さで各50枚撮影したものはほとんど結像できませんでした。3つの高さで各90枚撮影したところ、劇的に改善し、円満な結像を得ました。回転テーブルを4度回転につき1枚の割合で撮影し、それを上から、中から、下から撮影しました。
152枚撮影から47枚採用で結像した不十分な3Dモデル
290枚撮影から290枚採用で結像した円満な3Dモデル
2 一筆書きの写真順番が必要
何回かに撮影を分割して行い、不用意にそれをそのままフォトグラメトリーに使ったところ、ほどんど結像できませんでした。写真ブロック毎にファイル名に順番を示す番号を追記して写真順番を一筆書きになるように調整したところ、劇的に改善した3Dモデルが結像しました。
画像順番が乱れている場合の不十分な結像
画像順番を整序した場合の円満な結像
3 マスクが必要
イボキサゴ撮影は内面が白の撮影ボックスにターンテーブルを置いて行っています。撮影写真にはイボキサゴ以外には不明瞭な影が一部しか写りませんが、その影はすべてマスクする必要があります。(マスクしなくても結像する場合があります。)300枚近くの写真マスクは3DF Zephyr Liteマスカレード機能で行いました。Photoshopなどで行う場合よりも効率的にできますが、それでも時間がかかります。
4 写真ボヤケの除去
通常カメラ(深度合成機能のないカメラ)で小さいモノを近接撮影するとピントがあった部分と合わない部分が必ず生まれます。F値を大きくすればピントが合う部分を増やせますが、ボヤケが無くなるわけではありません。3Dモデルテクスチャにボヤケが反映してしまう場合もあります。
このような事情から深度合成機能のあるカメラ(OLYMPUS TG-6)を利用するようになりました。ただし深度合成するには多数回シャッターが切られますので、カメラ固定が必須となります。
ブログ「花見川流域を歩く 番外編」2021.09.18記事「OLYMPUSカメラTG-6 顕微鏡モードの効果」参照
5 イボキサゴの固定方法
細い針金で台(輪)を作りその上に乗せたり、細い針金を開口部に刺して固定するなどの方法を試行錯誤しました。台の上にイボキサゴを乗せると、その台をマスクするのに手間取ることと、必ず台の上でイボキサゴを置き換える必要がありことなどからよい結果を得ることが出来ませんでした。開口部に針金を差し込んで固定し、3Dモデル作成後Blenderでその針金部分を除去するのが一番現実的です。
台(輪)によるイボキサゴ固定
針金を開口部に刺して固定
6 カメラの固定方法
撮影ボックスの中にカメラを差し込むように入れて、それを固定することはかなり困難です。フレキシブルなカメラ固定器具は入手しましたが、書斎空間における作業可能空間限定状況の中で、このカメラ固定器具を使いこなすのは課題となっています。
7 感想
径が17㎜程度しかないイボキサゴの完全体で精細な3Dモデル作成技術獲得の橋頭保は築くことができました。今後この技術を出発点にして小さいモノの3Dモデル作成技術を発展させたいと思います。その技術を縄文早期土偶とか、遠隔地にまで運ばれたコハク玉とか、縄文草創期有舌尖頭器などに適用して縄文学習をより楽しむことにします。
イボキサゴ 観察記録3Dモデル(試作4)2021.07.10木更津市盤洲干潟で採取
2021.08.19撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.006 processing 275 images
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