2022年7月6日水曜日

顔面把手土器とカエル文

 Pottery with face handle and frog pattern


I observed the face handle pottery of "It doesn't look like a frog pattern, but it's the same combination."There are some similar examples in pottery called birth pattern pottery.Is childbirth pattern true?


「明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせ」の顔面把手土器を観察しました。出産文土器と呼ばれる土器にも類例があります。「出産文」は本当か?

1 今福利恵(2019)「勝坂式土器における動物文様と人体表現」の「顔面把手土器の動物意匠」学習開始

今福利恵(2019)「勝坂式土器における動物文様と人体表現」(「研究紀要」35 山梨県立考古博物館・山梨県埋蔵文化財センター)の項目「顔面把手土器の動物意匠」の学習を始めることにしました。

沢山の実測図とその説明が掲載されていますので、実測図に色を塗ったり、過去に3Dモデルを作成した土器は3Dモデルを活用して、主に図像作業的に著者の考えを理解することにします。また、生まれる疑問をメモして今後の学習の肥しにすることにします。

2 「明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせ」の顔面把手土器

次の1、2、4は藤内式の土器でパネル文とともに円文と手の表現があり、明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせになっているものです。


事例1


事例2


事例4

なお、論文著者は論文内でカエル文の模式図を次のように設定しています。


カエル文模式図 今福利恵(2019)「勝坂式土器における動物文様と人体表現」から引用

3 出産文土器(北杜市海道前C遺跡)


出産文土器(北杜市海道前C遺跡)

出産文土器(北杜市海道前C遺跡)も円文と手表現が事例4「明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせ」に似ています。


出産文土器(北杜市海道前C遺跡)のGigaMesh Software Framework展開


出産文土器(北杜市海道前C遺跡)の円文と手表現の組合わせ

4 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)

出産文土器として扱われるこの土器も円文と手表現が事例4「明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせ」に似ています。


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)のGigaMesh Software Framework展開


顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)の円文と手表現の組合わせ

5 感想

5-1 「明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせ」

「明確にカエル文とはみえないが、同じ組合わせ」という定義は素人の自分からすると隔靴掻痒の感がします。専門家からするとそこに大きな問題点・課題があること(興味が深いこと)を示しているのかもしれません。平べったく解釈すれば、それは筆者にとってカエル文そのものであるが、他の研究者に即座に納得してもらえるだけの状況がまだないということかもしれません。

5-2 出産文土器(北杜市海道前C遺跡)について

この土器の正面胴部円文は山梨県立考古博物館ホームページでは出産の過程でまだ胎児が現れていない産道出口を表現している旨説明されています。(おうちde土器のものがたり10「出産文土器とその意味」


出産文土器の変遷 おうちde土器のものがたり10「出産文土器とその意味」から引用

この縦棒が入った円文が産道出口であるかどうかはさておき、カエル文の胴部と考えると、事例4との類似性から合理的であるように感じます。カエル文の胴部は円に縦棒で表現されます。顔面把手はヘビ文であると想定できますから、この土器はヘビ文とカエル文の対峙関係を表現しています。

この土器の基本文様構成はヘビ文とカエル文の対峙関係だと考えますが、それと字義通りの出産が本当に結びつくのか疑問が生まれます。

そもそも、縄文人が出産過程の産道出口状況各段階に興味を持ち、その各段階を分類して(当然名称も付け)、その各段階の産道出口を別図像として造形するでしょうか。現代人が考えすぎているような気がします。

この土器には文様図柄として「出産」要素は無いと考えます。

一方、この土器が「出産」に関わる祭祀に使われたかどうかは、また別問題であると考えます。

5-3 顔面把手付大深鉢(伊那市月見松遺跡)

この土器の正面円文も山梨県立考古博物館ホームページで胎児が産道から出る最初の状況を点で表現したと理解できる説明になっています。この土器が「出産文土器」であるという過去の積み重ねをいったん無視すると、カエル文の文様が配置されている土器であり、顔面把手はヘビ文と理解できますから、ヘビ文とカエル文対峙土器ということになります。その土器に字義「出産」をどれだけイメージできるのか疑問が生まれます。

結論として、この土器には文様図柄として「出産」要素は無いと考えます。

一方、この土器が「出産」に関わる祭祀に使われたかどうかは、また別問題であると考えます。


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