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2022年9月27日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294土器破片20個の出土貝層層位

 The shell stratigraphy of 20 pottery fragments No. 294 unearthed from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound


The stratigraphy of 20 pieces of No. 294 pottery fragments unearthed from the northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound was confirmed by correlating the 3D distribution data of the pottery fragments with the cross section of the shell layer. This is a basic work to know the stratigraphic continuity of shell strata using the same pottery fragment as a simultaneity index.

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有吉北貝塚北斜面貝層から出土した294土器破片20個の出土貝層層位を土器破片3D分布データと貝層断面図を対応させて確認しました。同一土器破片を同時性指標として活用して、貝層層位連続性を知るための基礎作業です。

1 294土器破片番号

294土器破片20個に次のように番号を与え識別できるようにします。


294土器破片番号

2 294土器の破片別出土場所推測

2-1 294土器 破片1の出土場所推測


294土器 破片1の出土場所推測

ガリー侵食地形を埋める混貝土層から出土していると推測できます。

2-2 294土器 破片2~10の出土場所推測


294土器 破片2~10の出土場所推測 横断面図2

破片2~10の出土場所は純貝層最下部または混貝土層・混土貝層最上部のどちらかであると推測できます。

2-3 294土器 破片11・12の出土場所推測


294土器 破片11・12の出土場所推測 横断面図4

破片11・12の出土場所は混土貝層であると推測できます。

2-4 294土器 破片13の出土場所推測


294土器 破片13の出土場所推測 横断面図5

破片13の出土場所は混貝土層であると推測できます。

破片13の出土状況は平面図と発掘写真が発掘調査報告書に掲載されています。発掘写真をみると、294土器破片は他の多数土器破片と一緒に出土しています。


294土器 破片13の出土資料

2-5 294土器 破片14の出土場所推測


294土器 破片14の出土場所推測 横断面図11

破片14の出土場所は混貝土層であると推測できます。

2-6 294土器 破片15~17の出土場所推測


294土器 破片15~17の出土場所推測 横断面図12

破片15の出土場所は混土貝層か混貝土層、破片16・17の出土場所は混貝土層であると推測できます。

なお、破片16・17はそれだけを「貝層の趨勢的縦断勾配を考慮した方法」で推測すると純貝層か混貝土層のどちらかになりますが、破片15との同時性がありますから、純貝層という推測は否定されます。


破片16・17の推測根拠

2-7 294土器 破片18・19の出土場所推測 


294土器 破片18・19の出土場所推測 横断面図13

破片18・19の出土場所は土層であると推測できます。出土場所土層は294土器の他の破片が出土する混貝土層と同時異相の関係にあると想定します。

2-8 294土器 破片20の出土場所推測 


294土器 破片20の出土場所推測 横断面図15

破片20の出土場所は土層であると推測できます。出土場所土層は294土器の他の破片が出土する混貝土層と同時異相の関係にあると想定します。

3 メモ

294土器の破片20個全部についてそれが貝層断面図のどの場所から出土しているか詳しく観察することができました。次の記事で、この結果に基づいて横断面図間の貝層連続性を検討します。


2021年9月29日水曜日

294土器破片の分布と出土層準 下流部編

 この記事では2021.09.26記事「294土器破片の分布と出土層準 上流部編」につづき下流部について検討します。

1 294土器破片の全体分布と下流部作業図


294土器破片の分布と断面図との対比


294土器作業図 下流部

2 294土器の下流部破片分布


294土器下流部破片分布図

・破片14~19が貝層あるいは貝層直近で分布し、ある程度まとまっています。しかし、破片20は貝層から離れて孤立的に分布します。

・破片14~20が上流部から流れてきて堆積したと仮定すると破片14→15→16・17→19と堆積高度が上昇することは説明できません。従って破片分布は水流流下以外の要因によることが明白です。平面分布でも破片19はガリー流路から離れていて上流部からの流下という視点で捉えることはできません。

3 294土器の下流部出土層準


第11断面 破片14の投影


第12断面 破片15~17の投影


第13断面 破片18・19の投影


第15断面 破片20の投影

ア 第11断面における294土器の出土層準


第11断面における294土器の出土層準

発掘調査報告書ではこの断面を第1段階から第4段階まで時間順に区分していますが、294土器破片は第1段階と第3段階の境付近から出土しています。

イ 第12断面における294土器の出土層準


第12断面における294土器の出土層準

斜面を下るように分布する純貝層(ピンク)下の混貝土層(黄色)の途中から294土器破片が出土します。この関係は第11断面と同じです。

ウ 第13断面における294土器の出土層準


第13断面における294土器の出土層準

破片19は実際は貝層から出土していますが、50㎝離れた第13断面に投影表示した結果土層から出土したような表現になっています。しかし、破片19の断面上の位置は明らかに図左から右に下る斜面であることを確認できます。この資料から破片19はガリー流路に沿って上流から運ばれてきたものでないことが確実に確認できます。

エ 第15断面における294土器の出土層準


第15断面における294土器の出土層準

破片20はガリー流路の端から出土しています。

4 感想・メモ

ア 貝層の対比

294土器が破壊されてその破片が広域に分布していますが、それが出土した断面図上の位置、つまり出土層準が略推定できました。断面図上にその位置を点線で示してあります。その点線が294土器破片が分布した時点の地形面を表現していると考えることができます。断面図間の対比は発掘調査報告書でも行っていませんが、それができる可能性を294土器破片の検討から確かめることができました。破片が断面図をまたぐ土器を使って統計的に出土層準情報を処理して断面図間の貝層対比作業を行い、北斜面貝層の発達史を浮かび上がらせることにします。

イ 294土器破片の分布要因

294土器破片の分布は下流部ではガリー流路水流による運搬ではないことを知ることができました。人による散布以外に考えることはできません。上流部でも水流による運搬では説明が困難な分布となっています。これらを総合すると294土器は破壊され破片となってからガリー流路沿いに人によって運搬散布されたと仮説できます。今後他の土器の様子も観察しながら、土器破片分布要因特定の最終結論を得たいと思います。


2021年9月26日日曜日

294土器破片の分布と出土層準 上流部編

 294土器の分布と出土層準を上流部と下流部に分けて検討します。この記事では上流部について検討します。


294土器破片の分布と断面図との対応


294土器作業図

破片1~13を上流部、破片14~20を下流部として扱います。

1 294土器の上流部破片分布


294土器上流部破片分布図

・破片1が最上流部に孤立して分布していて不自然に感じます。この場所は異常降水時にガリー侵食地形が発達した場所です。しかし、流域面積は極小ですから異常降水時といえども水量はあまりありません。従って水流が土器破片を運搬する力はあまりありません。破片1の場所で土器が破壊され、その場所に全部置かれた場合、その付近に大きな破片が残り、小さな破片が遠方まで運ばれるという分布になると考えられます。

・最大破片13が上流部域最下流にあり、不自然です。また破片13は被熱していて風化が進んでいます。


最大破片13の出土の様子


破片13被熱・風化の様子

・破片1,破片2~10、破片11・12、破片13の4つのグループに分かれて分布するように観察できます。

・破片1~13はガリー流路の縦断勾配に沿って分布するように観察できます。294土器破片分布がガリー流路存在と深く関わっていることは確実です。

2 294土器の上流部出土層準


第1断面図 破片1の投影


第2断面図 破片1~10の投影


第4断面図 破片11・12の投影


第5断面図 破片13の投影

ア 破片1の出土層準

破片1は第1断面図、第2断面図の双方からおよそ2m離れていて、その出土層準略推定が困難ですが次の情報を得ることができました。

以前下総層群上面高度分布図を作成しましたが、その図に破片1の場所を書き込んでみました。


下総層群上面高度分布図と破片1

この図から破片1の場所の下総層群上面高度(基盤地形高度)は28mと少々の値になります。一方破片1の出土高度も28m少々です。この関係から破片1の出土は混貝土層(黄色の貝層)の最下部付近にあたるのではないかと推定できます。

破片1のある付近はガリー流路谷頭部の平坦面が発達する場所ですが、その上に厚く堆積する混貝土層(黄色の貝層)のほとんどは294土器破片1以後の堆積であると考えてよさそうです。


完掘して現出した谷頭部の平坦面(下総層群上面の地形)

一番奥平坦面が294土器破片1が出土したと考える平坦面です。

イ 第2断面における294土器の出土層準

破片2~10を第2断面に投影しましたが、断面からの距離が離れているものは正確性がかけます。断面に近い破片6を参考にすると、294土器破片が堆積した時点の層準は次の図で示すことができます。


第2断面図 294土器推定出土層準

この付近では既に混貝土層の堆積があり、その上に294土器破片が堆積したと考えます。

ウ 第4断面図における294土器の出土層準

破片11と12を第4断面図に投影しました。この結果から次に示すような294土器推定出土層準図を作成しました。


第4断面図 294土器推定出土層準

図の注記で「第205図における土器出土層準」が線で示されていますが、実際は線で示される貝層の上に土器が乗っている様子が現場写真から確認できます。

第4断面図も第2断面図と同じく、294土器は既に形成された混貝土層の上に堆積しました。

エ 第5断面図における294土器の出土層準

破片13を第5断面図に投影しました。この結果から次に示す294土器推定出土層準図を作成しました。


第5断面図 294土器推定出土層準


294土器破片13出土の様子(中央白い三角が破片13)

図の注記「第205図における土器出土層準」で示される土層(茶色)の上に破片13があり、さらにその上に混貝土層(黄色)があることを確認できます。

この付近では294土器堆積以前に貝層の発達はほとんど無いようです。

3 感想・メモ

・294土器破片の分布はガリー流路と深いかかわりがありますが、水流により上流から下流に運ばれ分布したことがメインにはならないようです。人によって運ばれ要所要所に置かれたという行為が最初にあり、それが水流の影響を受けて修飾されたという印象を受けます。

・294土器の出土層準略推定により294土器堆積前と堆積以後の地層を区分できました。断面2~4では294土器破片堆積前に混貝土層の堆積が既にあり、それより上流と下流ではそれがないことをイメージできました。北斜面貝層の形成史を考える上で画期的な知識になります。

2021年9月25日土曜日

294土器破片の分布・高度・出土層準作業図の作成

 同一土器破片分布図作成のための資料を作成しましたので、試しに294土器について分布図を作成し、出土高度を把握し、断面図にプロットして出土層準を確認する作業を行ってみました。

2021.09.23記事「同一土器破片分布図作成のための資料作成」参照

1 294土器


294土器 加曽利貝塚博物館で展示されたときの様子

294土器は加曽利EⅡ式キャリパー形土器で、有吉北貝塚出土最大級土器です。294土器が含まれる第11群土器の発掘調査報告書における説明を次に掲載します。

「第11群(273~338) 加曽利EⅡ式の最終段階にあたる。連弧文系土器が減少してキャリパー形土器が主体となるが、第10群段階にみられた整った渦巻文が崩れだし、円文化の傾向が現れる。文様の施文方法も粗雑化し、器形的にも緩やかなカーブを描く整ったキャリパー形から次第に直線的なものが多くなる。加曽利EⅢ式の特徴である磨消懸垂文の幅広化や口縁部文様帯との癒着傾向が早くも現出し始める段階でもある。第10群段階では皆無に等しかった、波状口縁を呈するものや突起、把手が付される例も存在している。有吉北貝塚の北斜面貝層への投廃棄は本段階が最も盛んであるといえる。」

2 294土器破片の分布・高度・出土層準作業図


294土器破片分布と断面図投影との関係

294土器破片は20個が分布図に掲載されています。それらの破片を直近の断面図に投影して出土層準を略推定します。


作業図上流部


作業図下流部

作業図を作成することにより、294土器破片の分布・高度・断面図出土層準の略推定ができました。出土層準のコメントは説明的な図面を作成してから行います。この記事では分布と高度について感想をメモします。

3 294土器破片分布・高度に関する感想

ア 分布の全体像が納得できない。

294土器がある場所で破壊されて多くの破片になり、それがガリー水流の営力で下流にながされて堆積したと仮定してみます。その仮定で20個破片の平面分布をみるとあまり納得できません。2から13番までは水流の力で運ばれて分布が広がったと考えて問題は生まれません。しかし、1が一つだけ最上流部に孤立して分布します。不自然です。また14~20が2~13とかけ離れて分布します。これも不自然です。

イ 下流部の高度分布が異状


上流部の高度分布

上流部の高度分布は河床勾配に従っているようにみえます。


下流部の高度分布

下流部14~20破片の高度分布は14→17、18→19で逆勾配となります。破片が水流で下流に運ばれたと考えると矛盾であり、異常です。

ウ 294土器破片がばら撒かれた可能性

アとイから、294土器破片分布は単純な水流による拡散ではなく、人為的にばら撒かれた可能性が浮かび上がります。

今後出土層準情報による分析を含めて詳しく検討することにします。

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4 関連情報 294土器に関する2019.03.08記事での分析

2019.03.08記事「加曽利EⅡ式円文楕円形区画文土器の観察」で破片13が被熱していることを分析しています。

被熱は土器破壊後であることが明白ですから、294土器は破壊された後北斜面貝層で、おそらく破片13出土場所で被熱したことになります。破片13に関連して何らかの祭祀が行われたことが想像できます。


被熱し損傷しているピースの存在

つづく