2024年4月19日金曜日

38年前遺物台帳の手入力電子化作業を楽しむ

 Enjoying the manual input and computerization of a 38-year-old relic ledger


I have become more and more passionate about learning about the shell formations on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, which I have been interested in for several years, and I am enjoying manually inputting and digitizing the original artifact register (63,000 artifacts). I completed 40,000 entries in 4 months. Many useful impressions have been generated with the aim of creating a detailed 3D model of artifact distribution.


数年前から興味を深めている有吉北貝塚北斜面貝層学習の熱中度が高まり、こともあろうに、遺物台帳原本(遺物数63000件)の手入力電子化作業を楽しんでいます。4ヵ月で40000件の入力が済みました。精細な遺物分布3Dモデル作成を目指して、多数の有用な感想が生まれています。

1 電子化作業進捗状況


遺物台帳電子化済区域(2024.04.19)


遺物台帳電子化割合 2024.04.19

63000件のうち40000件の電子化が済みました。

2 電子化作業の様子


遺物台帳作業の様子

作業は毎週3000件入力することとし、月、火、水の3日で各1000件入力しています。当初は1000件入力するのに早朝から夜遅くまでかかりました。その後手入力作業が効率化し、半日作業で済むようになりました。

標高の数値入力が最もつらく根気のいる作業です。これを右手テンキー、左手マウスで行っています。右手のテンキーブラインドタッチ入力が高速化し、日ごとに作業が効率的になっています。

3 遺物分布3Dモデル


遺物分布3Dモデルのイメージ

遺物台帳と遺物分布図を電子化することにより、上図のような遺物分布3Dモデルを作成して、北斜面貝層を見える化するための分析表現を行います。

4 感想

4-1 発掘活動の紙上疑似体験

発掘台帳原票(画像)を見てExcelに入力する活動の中で、発掘現場で発掘活動の体験をしているような疑似感覚が生まれています。不思議な感覚を楽しんでいます。次のような発掘原票の状況や記載を見ている内に、この疑似体験感覚が生まれました。

(1)遺物台帳の汚れ

遺物台帳にほこりや泥がついていたり、血痕(手の傷か)がついていたりして、現場臨場感があります。

(2)頻発する間違い訂正

間違いを訂正した箇所がかなりあります。この訂正の様子から、多数遺物に正確情報を確実に紐づける作業に苦労している様子が垣間見えます。次から次へと生まれる膨大情報の処理に苦労しています。

(3)層相区分との紐づけに苦労

特に層相区分とその情報を遺物現物に紐づける作業に苦労しているようです。遺物台帳をインクで記載した後、層相区分情報だけは鉛筆で追記記載しています。当該遺物がどの層相から出土したかという情報は、発掘現場で一義的に決まるのではなく、ある作業まとまりの後で、全体を俯瞰して決めざるを得ないという事情が垣間見えます。

(4)発掘者の個性

発掘者によって遺物表現の言葉や遺物選択の様子が微妙に異なり、発掘担当者個性の違いが垣間見えます。

(5)間違い、ミスの存在

勘違いや暗算ミスに起因する間違が一定の割合で存在します。その間違いの様子や頻度は自分が同じようなことをしたときに生まれるミスと似ています。つまり、発掘担当者は特段に知的能力が高い人ではなく、普通の知的レベルの人が携わっていることがわかります。へたくそな字や読みにくい字も多く、自分の手書き文字に通じます。

(6)現場で判らないことがある

発掘者が現場でその遺物が何であるか即座に判定できないものが一定の割合であります。?マークとかメモがつきます。(→この情報は発掘調査報告書で後に確認する必要があります。)

4-2 遺物台帳記載から気が付いた事柄

(1)同一種遺物が連続して出土する傾向が顕著

土器、土錘、貝刃、黒曜石・・・などの遺物種別の出土は遺物台帳記載で連続して、かつその連続が間欠的に見られます。これらの遺物の投棄場所とか、投棄時期が集中的かつ間欠的であったことが偲ばれます。同時に、大きさや比重などが類似したモノが貝層移動の中で選択的に集まったという事情も考慮する必要が生まれます。

(2)土器片の明瞭な集中出土域の存在

土器片は特段に集中的に出土する層相が存在するようです。その意義について興味が深まります。

(3)骨だけが出土する域の存在

骨だけが出土し、それ以外の遺物がほとんど出土しない域が存在します。貝殻と骨だけ(つまり食料残滓だけ)を投棄して、それ以外の土器や道具を意識して投棄しなかった域(時期)があるのか、それとも、貝層移動のなかで、ソートされて、そのような見かけの貝層が成立したのか、興味が深まります。

(4)層相区分点群3Dモデル作成の可能性

全遺物に3D座標と層相区分情報が紐づいています。つまり遺物の層相区分情報だけを3D空間にプロットすれば、それがすなわち層相区分点群3Dモデルになるということを理解しました。

(5)土器の分類

土器は土器片、土器片(口縁)、土器片(底部)、朱塗土器という4大区分でほぼ統一されています。土器遺物総数の中に占める朱塗土器の割合を調べれば、意味のある情報になると考えます。

4-3 遺物台帳入力作業中の次ステップに向けた活動イメージ

当初、遺物台帳入力(遺物のz座標取得)が済んだら、次は遺物分布図作業(遺物のx,y座標取得)を考えています。そのため、遺物分布図から効果的に遺物のx,y座標取得する方法の開発が現段階で求められていると考えます。

また、次のような予備作業も同時に行うことが大切であると考えます。

貝層断面図のリストとその分布図作成

地山分布図のリストとその分布図作成、概要図作成


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