2024年10月20日日曜日

千葉市人形塚古墳が左右非対称に設計築造されたことが判明

 It turns out that Ningyozuka Tomb in Chiba City was designed and constructed asymmetrically.


Aerial photographs of the old topsoil of Ningyozuka Tomb in Chiba City reveal numerous pile marks, and the meaning of the piles becomes clear, confirming the left-right asymmetry of the tomb. The terrace on the right of the front part was made wider to more effectively display the haniwa.


千葉市人形塚古墳の旧表土面空中写真から多数の杭跡が見り、杭の意味が芋づる式に判明し、古墳の左右非対象を確認。前方部右のテラスを広くとり、埴輪演出を効果的にするためです。

1 千葉市人形塚古墳築造時の杭跡(予察図)


千葉市人形塚古墳築造時の杭跡(予察図)

写真は発掘調査報告書から引用

発掘調査報告書口絵にある「1号墳墳丘下の計画線」写真を判読して古墳築造時の杭跡を抽出しました。口絵写真は印刷のために網掛してあり、解像度が落ちますが、ある程度の大きさの杭跡は観察できます。観察できる杭跡を●で示し、特段に大きなものや掘り込み跡は大きな●で示しました。

2 千葉市人形塚古墳築造時の杭跡(予察図)の予備検討


千葉市人形塚古墳築造時の杭跡(予察図)の予備検討

写真は発掘調査報告書から引用

古墳築造のための軸線を設定したと考えられる杭跡が見つかり、軸線を引きました。

地割線内円外円の中心は作図上一致しますが、その場所(図で小白点で示す)には口絵写真では明白な杭跡は見つかりません。しかし、ぼんやりと何かがある様子ですが、解像度不足の為それが円を描いた中心点の跡だと断言できません。この内円外円の中心は軸線とわずかに(20~30cmか)ずれます。このずれは当時の測量誤差と考えられます。[2024.10.23追記 空中写真はオルソ投影したものではない単なるスナップ写真のようです。したがって、描いた軸線と内円外円中心が見かけ上ずれることがありうることに気が付きました。軸線上にぴたりと一致するのか、わずかにずれているのか、今後確かめるべく検討を深めます。](内円外円の中心近くに四角の形状で4つの杭跡があります。現場における地鎮祭の祭壇跡かもしれません。)

外円と前方部が交わる場所に杭跡(掘り込み跡)が観察できます。古墳設計上の重要ポイントであると考えられます。外円と前方部が交わる場所が左右対象になっていないことを軸線との関係で確認できます。

前方部の左右角には3点の小さな杭跡が観察できます。古墳設計上の重要ポイントと考えられます。

未発見の地割線を発見できるのではないかと探索をくりかえしましたが、明白なものは見つかりませんでした。(それらしきものはあるのですが、解像度不足のため断言できません。)しかし、地割線の延伸部に杭跡がある部分があります。また、地割線部分も杭跡が点在しているように見えますが、解像度不足のため断言できません。

画面右下には周溝から排水する施設(水路)があるのですが、その両側に杭跡があり、水路工事用杭跡のようです。

左周溝と右中堤に3つの杭跡が直線状に並びます。恐らく前方部墳丘造形に使った測量道具固定跡と推察します。この3点の測量道具を使って地割線にかかる杭の位置を特定して記録し、その記録を別の高さで復元して造形作業をしていたものと推察します。その測量と復元作業を左右別々に行っていたのです。

それ以外の杭跡もそれぞれ意味があり、その中には高さの基準を定めた杭もあったと推察します。

3 予備検討結果から推察する「現場に実物大設計図(地割線)を描く手順」


実物大設計図を描くために使った主な杭(沼澤豊作成「地割線折返し図」に主な杭跡を記入)

予備検討結果から「現場に実物大設計図(地割線)を描く手順」を次のように推察しました。

ア杭を最初に設置する。この杭が人形塚設計における平面原点となる。

イ杭を40単位離れた場所に設置する。ア杭とイ杭の間を40単位のスケールが結び目等でわかる紐で直線に結ぶ。

ウ杭をア杭から12単位の場所に打つ。(写真では未確認。杭は無かったかもしれない。)ウ杭を原点にして半径7単位と12単位の円を描き、後円部内円地割線と外円地割線を作成する。地割線には等間隔的に杭を打つ。

オ杭をア杭から20単位の場所に進み、そこから右に8単位の場所に設置する。オ杭が前方部右側測線と外円部交点となる。

エ杭をア杭から22単位の場所に進み、そこから左に6単位の場所に設置する。エ杭が前方部左側測線と外円部交点となる。

キ杭をア杭から38単位の場所に進み、そこから右に21単位の場所に設置する。キ杭が前方部前部右端となる。キ杭とオ杭を結ぶ線が前方部右側測線となる。

カ杭をア杭から38単位の場所に進み、そこから左に22単位の場所に設置する。カ杭が前方部前部左端となる。カ杭とェ杭を結ぶ線が前方部左側測線となる。

ア杭~キ杭を設置し、後円部地割線内円、外円を描くことで、古墳の実物大形状が出来上がる。この実物大形状の中に、詳細設計図(紙?)に記入された主要な設計線を、ア杭-イ杭軸により設定された仮想格子パターンを頼りに、前方部地割線A、B、C、Dとして描き、等間隔的に杭を打つ。地割線を描かない設計線も杭列で表現する。

(水準的原点は横穴式石室羨道部に(恐らく)敷石の1つとして設置し、そこから高さ情報を引っ張って、古墳周辺に高さを示す杭網を設置していると考えます。)

(平面位置を示す杭網を観測記録し、盛土掘削後もその情報を復元利用できる測量観測道具設置杭を設置しています。)

4 千葉市人形塚古墳は左右非対称形


千葉市人形塚古墳が左右非対称形であることを示す図

図に示す通り、千葉市人形塚古墳は非対称形です。最も異なる点はエ杭とオ杭の位置が異なることです。意図して非対象形にしています。

その理由は右側で第1段盛土面(テラス)の幅を広くとり、埴輪展示をより効果的にするためです。

より具体的にいえば、第1段盛土面(テラス)を地割線d線を境に左側で少しだけ高くして、埴輪展示施設を上下2つに分け、より効果的埴輪演出を企図しています。

低い方のテラス(d線右側で人々の視点が存在する横穴式石室に近い場所)は武人・巫女埴輪を展示し、高い方のテラス(d線より左側で人々の視点から離れた場所)は職掌不詳人物・馬・馬子埴輪を展示しています。ちなみに家埴輪は前方部頂部に展示しています。

千葉市人形塚古墳は埴輪展示をより効果的に演出するために、細部で左右非対称形を採用しています。


埴輪配列イメージ図

発掘調査報告書から引用

地割線d線の意味、地形の詳細についてはさらに詳しく別記事で検討します。

5 感想

旧表土面の空中写真から古墳築造時の杭跡が見つかり、その分布を沼澤豊氏作成24等分値格子図にプロットすると、杭の意味が芋づる式に判明しました。それにより古墳実物大設計図の作成方法、地割線描画の手順がわかりました。

これにより、古墳が左右非対称であり、地割線d線がテラスを2分するもので、それは埴輪展示演出のためであることがわかりました。千葉市人形塚古墳は設計の段階から埴輪展示演出を意識していることがわかりました。

沼澤豊氏の古墳設計原理復元研究がとても画期的であることにより、千葉市人形塚古墳学習が短期間に大幅に進みました。沼澤豊氏に感謝します。


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