2024年10月18日金曜日

千葉市人形塚古墳の後円部地割線の意味検討

 Examining the meaning of the land division line of the circular rear mound of Ningyozuka Tomb in Chiba City


Based on the theory of Yutaka Numazawa, it was found that the outer circle of the land division line is the setting line for the size of the Tomb (circular rear mound), and the inner circle of the land division line indicates the base line of the second stage of the mound. The land division line is drawn on the old ground surface and indicates a different height shape.


沼澤豊氏の古墳設計原理復元理論に基づいて検討し、地割線外円はヤマト王権から指定された古墳大きさ(後円部円形)を設定する基準線分であり、地割線内円は第2段墳丘の裾線(法尻線)を示していることがわかりました。地割線は旧地表面に描かれ、別の高さの形状を指示しています。

1 千葉市人形塚古墳の地割線


千葉市人形塚古墳から検出された地割線(空中写真) 発掘調査報告書から引用


千葉市人形塚古墳から検出された地割線(等高線図投影図) 発掘調査報告書から引用

2 地割線検討の前提と学習のポイント

沼澤豊著「千葉市人形塚古墳のいわゆる地割線について」(千葉県教育振興財団文化財センター 研究連絡誌、 2008)で記述されている、沼澤豊氏が解明した「24等分値古墳設計原理」とも呼べる設計原理復元理論を大前提とします。そして、それを人形塚古墳に適用して分析した地割線分析結果(上記論文内容)を検討の基本とします。

ただし、上記論文を3Dモデルを使って詳細に検証すると、細部で異なる見方が可能であるので、その部分(沼澤豊氏が見落とした点など)を学習の主なポイントとします。

3 後円部地割線の意味検討

以下の記述の主部は次の記事を集成要約したものです。

2024.10.12記事「沼澤豊「千葉市人形塚古墳のいわゆる地割線について」学習

2024.10.14記事「沼澤豊氏が作成した千葉市人形塚古墳の設計原理復元図に感銘を受ける

2024.10.14記事「千葉市人形塚古墳の高さ基準及び地割線が平面設計図であること

3-1 沼澤豊氏作成人形塚古墳企画図(設計原理復元図)


沼澤豊氏作成人形塚古墳企画図(設計原理復元図)

この図は沼澤豊氏作成人形塚古墳企画図に上記論文における説明を書き込んだものです。

地割線外円の直径を24単位に設定すると、地割線内円は14単位ピタリになることなどが示されています。

この沼澤豊氏作成人形塚古墳企画図(設計原理復元図)に基づいて、以下の検討を進めます。

3-2 地割線内円について

3-2-1 地割線内円が示すものと高さ

地割線内円は後円部墳丘第2段斜面の裾線(法尻線)を示しています。


地割線内円が墳丘第2段斜面の裾線を示す3Dモデル画像


地割線内円が墳丘第2段斜面の裾線を示す平面図

内円の高さは37.2mと読みとることができます。設計上内円は高さ37.2m等値線として理念されていたと考えます。

3-2-2 地割線内円の高さの重大意義

墳丘第2段斜面の裾線は次の模式図に示すとおり、埋没することはあっても、削られる可能性はほとんどない地形です。つまり、墳丘第2段の裾線は築造時形状を保っていると考えられます。


墳丘第2段の裾線が築造時形状を保っている理由

このことから、墳丘第2段斜面の裾線の高さ37.2mは、古墳設計時高さ基準点から数えて整数倍の単位(1単位=24等分値=0.75歩=1.0275m≒約1.03m)が位置していたと考えられます。この情報は人形塚古墳を復元する上で重大な情報です。つまり、37.2mを起点にして上と下にそれぞれ1単位(1.03m)の整数倍に設計上の区切りがある可能を想定できるからです。

3-2-3 地割線外円が示すもの

地割線外円はヤマト王権から指示された古墳の大きさ、つまり後円部直径を決定する古墳築造者にとって最も基本となる重大な基準円周線分です。後円部直径を18歩≒24.7mに設定されていると捉え、それを24単位に区分すると、古墳形状諸元のほとんどの長さや幅を1単位の整数倍あるいは0.5単位の整数倍で把握できます。横穴式石室の玄室は丁度地割線外円内に収まっています。

沼澤理論に従い、地割線外円は内円より1単位下の36.2mに設定された等値線として、設計上は理念されていたと考えられます。実際の等高線図との関係では横穴式石室付近などで地割線外円が36.2mに一致します。

地割線外円は後円部直径を定める基準線であり、地形上は周溝の底から立ち上がる第1段階斜面の途中に位置し、地割線内円のように地形の変換線を意味していません。

しかし、よく観察すると、地割線外円より周溝側斜面は急であり、テラス側斜面は緩となっています。おそらく、地割線外円を意識して斜面勾配を変化させ、後円部直径を風景的にもわかるように築造されたものと推察します。


沼澤豊氏作成人形塚古墳企画図

3-2-4 地割線外円が旧地表面の掘込み開始線という説について

上記論文では地割線外円を「周溝掘り込み線」を示すとしています。これは旧地表面(高さ36.5m)に描かれた地割線外円から周溝を掘り始めたとい意味に解釈できます。しかし、沼澤理論から見ると、旧地表面(高さ36.5m)に描かれた地割線外円は高さ36.2mを意味しています。つまり、旧地表面に描かれた地割線外円を掘り込み開始線にしているわけではありません。


断面からみた、旧地表面に描かれた地割線外円を掘り込み開始線にしていない様子

上図で示す通り、地割線内円も旧地表面(高さ36.5m)に描かれていますが、その線が意味する高さは37.2mです。

つまり、旧地表面に描かれた地割線は、旧地表面の高さとは異なる高さで設定されていて、旧地表面における掘削開始線や盛土開始線を表現したものではありません。旧地表面をカンバスに平面設計図が描かれているのです。

従って、上記論文の説(地割線外円は「周溝掘り込み線」を示すという説)は否定されます。

なお、このように考えると、旧地表面に描かれた地割線位置を掘削や盛土の後に別の高さで復元できる測量技術が存在していたことになります。沼澤理論の帰結として、旧地表面に刻まれた地割線位置を掘削や盛土の後に別の高さで復元できる測量技術の存在を仮説せざるをえなくなります。

3-2-5 古墳設計における高さ基準点の想定

地割線内円(高さ37.2m)から1単位下がると地割線外円の高さ(36.2m)になります。さらに1単位下がると、その高さ35.2mは横穴式石室の羨道部敷石の付近になります。羨道部敷石のどれかがこの古墳設計高さ基準点だったのかもしれません。


横穴式石室の断面と高さ


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