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2024年6月24日月曜日

有吉北貝塚北斜面貝層出土遺物の予備分類

 Preliminary classification of artifacts excavated from the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita shell mound


In order to facilitate classification of 64,000 artifacts in the artifact register, a preliminary classification of artifacts was conducted on 5,123 artifacts randomly selected from 6 grids. An efficient method was developed using Python. In the preliminary classification, the entire collection was divided into 11 categories, with crafts placed at the front and food remains at the back, and further classified into medium and fine categories. 67% were bones, 24% were pottery, etc., and the total was 91%.


遺物台帳64000件遺物の分類を円滑に行うために、無作為抽出した6グリッド5123遺物を対象に遺物予備分類を行いました。Pythonを使った効率的方法ができました。予備分類では全体を11分類し、製作品を前に、食料残滓を後に置き、さらに中分類、細分類しました。骨等が67%、土器等が24%で合わせると91%になります。

1 無作為抽出6グリッド5123遺物の遺物予備分類

1-1 無作為抽出6グリッド

無作為抽出した6グリッドはⅠ-48、Ⅱ-24、Ⅱ-57、Ⅲ-31、Ⅲ-64、Ⅳ-19で、遺物数合計は5123です。

1-2 集計方法

Pythonスクリプトで、5123遺物の重複名称数をカウントし、次のようなリスト(名称、数)を作成しました。このリストは94項目になります。(Pythonスクリプトで5123項目を94項目に絞る(カウントする)時間が一瞬であったので、驚き、感動しました。Excelでは準備するまでに長大の操作を要します。)

・・・

貝刃片,2

貝製品,4

貝製品?,1

貝輪,1

貝鏃?,4

軽石,2

穴あき貝,1

黒曜石,47

黒曜石一括,5

骨,3214

骨 土器,1

骨(歯),2

骨一括,173

骨製飾り,1

骨片,2

砂岩,1

歯,29

手捏土器,1

朱塗,2

・・・

このリストを類似内容をまとめて分類(分類-中分類-細分類)案をつくり、全体を見回して、細部を何回か調整して、今回の原案を作成しました。

1-3 遺物予備分類結果


遺物予備分類結果グラフ


遺物予備分類結果表


遺物予備分類結果%グラフ


遺物予備分類結果%表

・分類項目は前半に人が作成した製品類を後半に食料残滓を配置しました。

・骨等が3429(66.93%)でもっとも多く、土器等が1229(23.99%)であり、その二つで全体の91%となります。

・土器等は土器、土錘、円盤に中分類し、中分類土器は朱塗土器、土器、手捏土器に細分類しました。細分類土器はさらに口縁部、底部、把手、土器片、形式記載土器に細細分類してあります。

・骨等の中にはイノシシ上下顎骨が20~30程度含まれていて、それは儀礼活動に関連していたのではないだろうかと想定しています。遺物分布図にその様子がスケッチされていて、また発掘調査報告書にも識別されているので、今後イノシシ上下顎骨情報を骨等から取り出し、独立させます。

・骨等の中には人骨もふくまれています。遺物台帳記載に人骨の記述はほとんどありません。今後発掘調査報告書情報から人骨情報を骨等から取り出し、独立させます。

2 全遺物(64000件)の分類方法

Pythonスクリプトで重複名称数カウント(名寄せ)が苦労することなくできることが判ったので、全遺物についても、予備分類と同じ方法で分類することにします。

3 感想

Excelの機能を利用して64000遺物の名寄せ(遺物名称、数)を行うことは、シートが200以上あることを考えると、うんざりしてそれをやりきるだけの気力を持つまでにはかなりのエネルギーを要します。しかしChatGPT支援で、Pythonスクリプトがいわば自由に使いこなせる状況がうまれた現在、気軽にその活動に取り組めます。

次のPythonスクリプトはすでにあります。

200以上のシートから遺物名称を全部抽出して1列64000行に並べてテキストに書き出すPythonスクリプト

遺物名称全部のテキストを名寄せ(遺物名称、数)して別のテキストに書き出すPythonスクリプト

2023年6月1日木曜日

1986年発掘調査原簿を閲覧して出土遺物の3D空間座標を復元する

 Reconstructing the 3D spatial coordinates of excavated artifacts by browsing the original records created during the excavation in 1986


The 3D spatial coordinates of excavated artifacts (early stage pottery) were reconstructed by browsing the artifact distribution map and artifact inventory of the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound (1986 excavation survey). This method enables 3D spatial analysis of artifacts.


有吉北貝塚北斜面貝層(1986年発掘調査)の遺物分布図と遺物台帳を閲覧して、出土遺物(前期土器)の3D空間座標を復元しました。この方法により遺物3D空間分析が可能になります。

1 問題意識

有吉北貝塚発掘調査報告書には中期土器の3D空間座標を復元できるグラフが掲載されています。そのグラフから中期土器の3D空間座標を復元して、3D空間において貝層断面との関係など3D空間分析を行いました。その結果、きわめて有用な情報を得ています。

一方中期土器以外の土器や、土器以外の遺物について、発掘調査報告書では3D空間座標がわかる資料は掲載されていません。しかし、発掘調査報告書原簿(遺物分布図、遺物台帳)を閲覧すれば中期土器以外の土器・遺物について3D空間座標が判ることを知りました。中期土器以外の土器・遺物について3D空間座標が判れば、その3D空間分析により北斜面貝層に関する有用情報が飛躍的に増え、貝塚の発達や利用について新しい考え方や仮説が生まれる可能性もあり得ます。

そこで、今回早期土器(全4点)・前期土器(全24点)を事例として、遺物分布図と遺物台帳を閲覧して、3D空間座標を取得する方法、手順、課題などを確認するテスト作業を実施しました。

2 遺物分布図と遺物台帳の閲覧

北斜面貝層出土の早期土器(全4点)、前期土器(全24点)について、関連する遺物分布図と遺物台帳の閲覧を千葉県教育委員会に申請し、許可を得て、2023年5月29日に閲覧しました。


遺物分布図・遺物台帳閲覧対象土器リスト

閲覧では持参したA3スキャナー・パソコンにより関連紙資料をスキャンしました。


持参したフラットベッド式A3スキャナー(サンワサプライ、PSC-12UF)

遺物分布図は600dpiで、遺物台帳は300dpiでスキャンすることにより十分な解像画像を得ることができました。

遺物分布図はB3紙資料で、スキャンが必要な実測図部分はA3画角に入りますが実測図外に注記があるものもあるため、それらを全部スキャンするために2回スキャンしました。またスキャン毎に画像を確認して画像が求める状況になっているかチェックしました。

3 3D空間座標復元の方法


3D空間座標復元の様子(Ⅲ-75メッシュ出土遺物番号33の前期土器の例)

北斜面貝層から出土した中期土器以外の土器及び土器以外の遺物はすべて出土メッシュと遺物番号が紐づけられています。

Ⅲ-75メッシュ出土遺物番号33の前期土器の場合、Ⅲ-75メッシュ遺物分布図(現場で記録された1/10実測図)から記号33を探し、その場所の座標を読み取ります。座標の読み取りはパソコンの中で、自作Pythonスクリプトで遺物分布図画像(pngファイル)を3点クリックして行います。こうして読み取ったメッシュ内位置座標とメッシュ位置座標からBlender3D空間におけるx,y座標を求めることができます。

遺物台帳には掲載遺物の標高が原則として全て掲載されています。この標高数値からBlender3D空間におけるz座標を求めることができます。

結果として遺物分布図及び遺物台帳からBlender3D空間座標(x,y,z)を求めることが出来ます。


Ⅲ-75メッシュ出土遺物番号33の前期土器をBlender3D空間にプロットした様子

4 メモ

4-1 A3スキャナー持参により遺物分布図・遺物台帳から情報を汲み取ることができることの確認

A3スキャナーとパソコンを持参することにより、閲覧申請した遺物分布図・遺物台帳から3D空間座標に関する情報を確実に汲み取ることができることを確かめ、確認できたことはよかったことです。今後の活動の展望が開けました。

4-2 メッシュ内位置座標読み取りPythonスクリプトの活用

遺物分布図における位置座標読み取りPythonスクリプトは、読み取り作業効率を飛躍的に高めるものです。このスクリプトはChatGPTから教えてもらいました。

2023.05.30記事「遺物分布図から平面座標を取得するPythonスクリプト

……………………………………………………………………

import cv2


# クリック座標を保存するリスト

click_points = []


def onMouse(event, x, y, flags, params):

    if event == cv2.EVENT_LBUTTONDOWN:

        click_points.append((x, y))

        if len(click_points) >= 3:

            # 計算式の値を求める

            x1, y1 = click_points[0]

            x2, y2 = click_points[1]

            x3, y3 = click_points[2]

            result1 = 2 * (y3 - y1) / (y2 - y1)

            result2 = 2 * (x3 - x1) / (x2 - x1)

            print("2*(y3-y1)/(y2-y1):", result1)

            print("2*(x3-x1)/(x2-x1):", result2)


img = cv2.imread('b6i.png')

cv2.namedWindow('keisokuh22', cv2.WINDOW_NORMAL)

cv2.imshow('keisokuh22', img)

cv2.setMouseCallback('keisokuh22', onMouse)

cv2.waitKey(0)

……………………………………………………………………

4-3 早期土器・前期土器3D空間分析について

これから閲覧資料を整理して全ての早期土器・前期土器の3D空間座標を求める作業を行います。そして、その結果に基づいて、早期土器・前期土器が貝層断面とどのような空間関係にあるのか、加曽利EⅡ式土器などの中期土器とどのような空間関係にあるのか分析します。その分析により、早期土器・前期土器がどのような経緯で北斜面貝層にもちこまれたのか考える材料ができれば面白いと思ます。

4-4 各種遺物の3D空間分析について

北斜面貝層出土各種遺物(装飾品(貝製品)、装飾品(骨角歯牙背品)イノシシ頭骨、打製石斧、磨製石斧、石鏃、貝刃、散乱人骨、磨貝、土器片錘、…)は全て出土メッシュと遺物番号が紐づいていますから、資料閲覧(スキャン)という手間をかけさえすれば全て3D空間座標を得ることができます。全ての遺物について3D空間分析が可能なのです。3D空間分析により遺物がどのような経緯でこの貝層にもちこまれたのかなどの情報を得ることができそうです。貴重な考古情報(3D位置情報)が「未発掘」で収蔵庫に1986年から埋もれているのです。


参考 装飾品(貝製品)出土数のメッシュ分布


参考 イノシシ頭骨出土数のメッシュ分布


2016年8月29日月曜日

上谷遺跡 土器以外の出土遺物

上谷遺跡の土器以外の出土遺物を2つのグラフに分けて示しました。

上谷遺跡 金属遺物等出土数

金属遺物等では刀子の数が87点と抜きんでて多く、次いで鉄鏃、鉄不明品、鉄釘、紡錘車などが多くなっています。

刀子は万能道具としての意味と、護身用武器としての意味の2側面から検討する必要があると感じています。

鳴神山遺跡の検討では9世紀中葉以降刀子の出土数が格段に増えたことから、単純な生活道具としての意味ではなく、護身用武器としての意味が増大したことを検討しました。

鉄鏃は対人殺傷武器以外の何物でもありませんから、鉄鏃出土数が多いことは、おそらく9世紀頃の治安状況劣悪化を物語っていると考えます。

紡錘車の素材別内訳は次の通りです。

上谷遺跡 紡錘車

紡錘車、鉄鎌は主に養蚕・生糸生産に使われたと考えます。

穂積具や鉄鍬は水田耕作や雑穀栽培に使われたと考えます。

鉄鎌の方が穂積具より多いことから、養蚕・生糸生産が稲作や雑穀栽培より重要な生業であったと想像します。

鉄器馬具出土に注目します。

上谷遺跡が馬生産の牧であったことを物語っていると考えます。

馬具出土は馬に騎乗していたことを物語りますから、馬は騎馬用であったことを証明します。

鉄鎖や鉄輪掛け金具も馬具関連かもしれません。

銙帯は官人の存在を物語っていて、官人が集落の生業活動を指導していたと考えます。

銙帯の内訳は次の通りです。

上谷遺跡 銙帯

鞴羽口と鉄滓が出土していますから、上谷遺跡で鍛冶が行われていたことがわかります。


上谷遺跡 石製遺物等出土数

石製遺物等では軽石42点、砥石28点が多くなっています。

軽石はウキとして使われたと考えると、石錘、土錘の出土と合わせると、この集落に住民が近くに印旛浦で漁業を行っていたことが判ります。

ガラス製小玉出土に興味が深まります。

ガラス製小玉出土の意義がどのようなものであるのか、今後検討します。

また温石出土にも興味が深まります。

温石出土についてもその意義がどのようなもであるのか、今後検討します。