2025年4月9日水曜日

技術メモ 点群から1つのオブジェクトを生成する方法

 Technical Note: How to generate an object from a point cloud


I have confirmed five methods to convert the distribution shape of a point cloud (a group of objects) in Blender3D space into a single object.


Blender3D空間における点群(オブジェクト群)の分布形状を1つのオブジェクトに変換生成する方法を5つ確かめました。

1 元データ


元データ

CUBEが分布する例です。

2 凸包


凸包

CUBE分布の殻を生成します。内部構造は見えなくなります。

3 ポイントクラウドの拡大


ポイントクラウドの拡大

内部構造が見えますが、点群ボリュームが連結するまで拡大するので、分布実体より肥大化します。

4 CUBEの拡大


CUBEの拡大

元データを拡大したもので、内部構造が見えますが、分布実体より肥大化します。

5 バウンディングスフェア


バウンディングスフェア

分布形状を内包する最小球です。

6 バウンディングボックス


バウンディングボックス

分布形状を内包する最小直方体です。

7 メモ

バウンディングスフェア以外はBlenderのgeometry nodesで数個のnodeを連結することで生成しています。

geometry nodesで作業することにより、元データに対して非破壊的です。

バウンディングスフェアは専用nodeがないのでPythonで生成しています。

上記以外にもメタボールを使った方法などがあります。

3D空間で遺物密度の分級を行った際、高密度分布域を強調して表現したい場合などに、この技術を利用します。


2025年4月8日火曜日

イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土

 A boar jawbone and three hunting tools were unearthed in close proximity


I discovered a place where a boar jawbone and three hunting tools (a deer bone piercing tool, a marine animal bone fish hook, and a stone arrowhead) were unearthed in close proximity. A dense area of ​​bones and teeth surrounds the site. I hypothesized that this area was a ritual space consisting of an altar and a place to eat animal meat.


イノシシ顎骨と狩猟道具3点(鹿骨製刺突具、海獣骨製釣針、石鏃)が接近出土する場所を発見しました。その場所を囲んで骨・歯分布密集域が広がります。この付近が祭壇と獣肉を食べる場から構成される祭場空間だと仮説しました。

1 イノシシ顎骨と狩猟道具3点の接近出土

イノシシ顎骨出土例


イノシシ顎骨に接近して出土する遺物

イノシシ顎骨、石鏃、骨角歯牙製品、貝製品(装飾品)、人骨を集成した3D 分布モデルを作成したところ、イノシシ顎骨、刺突具(鹿骨)、釣針(海獣骨)、石鏃が接近出土する場所を発見しました。

2 イノシシ顎骨等4点内包球の作成


イノシシ顎骨等4点内包球の作成

この4 遺物接近出土の場所が骨・歯3D分布との関連で気になるので、4遺物を内包する球を3D空間に設定しました。

3 イノシシ顎骨等4点内包球と骨・歯3D分布との空間関係


イノシシ顎骨等4点内包球と骨・歯3D分布との空間関係

イノシシ顎骨等4点内包球と骨・歯3D分布との関係を観察しました。結果、内包球が骨・歯3D分布における密集域空白部にすっぽりと入ることを確認しました。骨・歯密集域空白部は11 断面のS3層の褐色部に対応します。

4 作業仮説

以上の空間関係から、次の作業仮説を設定しました。

「イノシシ顎骨をトーテムとした狩猟関連祭祀の場(直径1mくらいの祭壇空間)が斜面貝層に継続して存在し、刺突具(鹿骨)、釣針(海獣骨)、石鏃などが埋納された。その場所には貝殻投棄が行われないので、その場所だけ貝層は褐色となった。祭祀の度毎にごちそうの獣肉を含む飲食がおこなわれたので、祭祀の場(祭壇空間)の周りには骨・歯の密集域が形成された。イノシシ顎骨等出土域とそれを囲む骨・歯密集域をセットで祭場空間として捉える。」


2025年4月7日月曜日

斜面貝層細区分と骨・歯3D分布モデル(密集度色表現バージョン)

 Slope shell layer division and bone/tooth 3D distribution model (density color expression version)


I observed and analyzed the state of the slope shell layer subdivision and bone/tooth distribution (density color expression version) in the study space (3D space) of the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound. The bone/tooth dense area is distributed on the middle slope of the white shell layer, and is clearly different from the pottery dense area distribution.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間(3D空間)における斜面貝層細区分と骨・歯分布(密集度色表現バージョン)の様子を観察分析しました。骨・歯の密集域は白色貝層の斜面中腹に分布し、土器密集域分布と明らかに異なります。

1 斜面貝層細区分と骨・歯3D分布モデル(密集度色表現バージョン)

斜面貝層細区分と骨・歯3D分布モデル(密集度色表現バージョン)

場所:有吉北貝塚北斜面貝層検討空間(10断面と11断面に挟まれた空間)

貝層大区分境界及び斜面貝層細区分境界:青平面メッシュ

骨・歯:CUBE(5㎝×5㎝×5㎝)

骨・歯密集度:

赤 当該骨・歯から20㎝範囲内空間に10個以上の骨・歯が出土しているもの

ピンク 当該骨・歯から20㎝範囲内空間に6~9個の骨・歯が出土しているもの

薄ピンク 当該骨・歯から20㎝範囲内空間に3~5個の骨・歯が出土しているもの

白 当該骨・歯から20㎝範囲内空間に0~2個の骨・歯が出土しているもの

10断面(手前)と11断面(奥)の間隔は2m


参考 斜面貝層細区分

3DF Zephyr v8.003でアップロード


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 観察・検討


斜面貝層細区分別骨・歯件数

骨・歯の出土件数は全ての白色貝層が褐色貝層を上回ります。


骨・歯3D分布

骨・歯の3D 分布をみると、密集域が白色貝層でいずれも貝層形成時の斜面中腹の場所に該当します。密集域分布が土器と明らかに異なります。骨・歯は獣肉を食べた残滓が残されたものと捉え、斜面の中腹で野外飲食により投棄された跡であると想定します。


骨・歯3D分布 上からオルソ投影

骨・歯3D 分布モデルを上からオルソ投影すると、斜面中腹部の11 断面側に骨・歯密集域の空白部を観察できます。

2025年4月6日日曜日

斜面貝層細区分と土器3D分布モデル(密集度色表現バージョン)

 Slope shell layer subdivision and pottery 3D distribution model (density color version)


I observed and analyzed the slope shell layer subdivision and pottery distribution (density color version) in the study space (3D space) of the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound using a 3D model. The pottery concentration area is concentrated near the lower tip of the white shell layer. I inferred that the pottery was dumped in that location (near the water's edge at the time).


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間(3D空間)における斜面貝層細区分と土器分布(密集度色表現バージョン)の様子を3Dモデルで観察分析しました。土器密集域は白色貝層の下方先端付近に集中しています。その場所(当時の水辺付近)を選んで土器が投棄されたと推察しました。

1 斜面貝層と土器3D分布モデル(密集度色表現バージョン)

斜面貝層と土器3D分布モデル(密集度色表現バージョン)

場所:有吉北貝塚北斜面貝層検討空間(10断面と11断面に挟まれた空間)

貝層大区分境界及び斜面貝層細区分境界:青平面メッシュ

土器:CUBE(5㎝×5㎝×5㎝)

土器密集度:

赤 当該土器片から20㎝範囲内空間に3個以上の土器片が出土しているもの

ピンク 当該土器片から20㎝範囲内空間に2個以上の土器片が出土しているもの

薄ピンク 当該土器片から20㎝範囲内空間に1個以上の土器片が出土しているもの

白 当該土器片から20㎝範囲内空間に土器片出土がないもの

10断面(手前)と11断面(奥)の間隔は2m


参考 斜面貝層細区分

3DF Zephyr v8.003でアップロード


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 観察・検討


斜面貝層細区分別土器・土製品件数

斜面貝層細区分別土器・土製品件数をみると、同じ白色貝層でもS2層の土器・土製品件数がS1層、S3層より多く、S2層の時期の土器更新が激しかったことを物語っています。S2層の時期はS1層、S3層の時期より貝消費・貝食品生産経済が活性化していたと考えます。この考えは、S2層で骨・歯件数(=獣肉消費量)が一番多いことや骨角歯牙製品件数(=社会の豊かさ指標)が一番多いことと整合的です。


土器3D分布


S2層先端付近の土器

土器の3D分布をみると、密集域が白色貝層の下方先端あるいは先端付近に存在するという際立った特徴が観察できます。その様子は千葉県立中央博物館展示剥ぎ取り断面のS1層下方先端、S2層下方先端で実物観察できます。

土器密集域が白色貝層下方先端付近に形成されている様子は土器投棄原理を考える上でとても示唆的であると考えます。白色貝層の下方先端付近はその形成当時はいずれも水辺的環境であったと考えられます。従って、縄文人が水辺での土器投棄を好んでいた可能性が3Dモデル観察から浮かび上がります。


貝殻遺物の挙動想定

なお斜面貝層では、土器や貝殻は投棄された当初踏圧などの影響で下方に移動していると考えられます。しかし、その移動量は不明です。本ブログでは遺物3D分布の諸状況から、平均的下方移動量はさほど大きなものではないとイメージし、分析では考慮していません。



2025年4月5日土曜日

斜面貝層細区分と遺物3D分布モデル

 Slope shell layer subdivision and artifact 3D distribution model


I observed and analyzed the slope shell layer subdivision and artifact distribution in the study space (3D space) of the north slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound using a 3D model. More artifacts were excavated from the white shell layer than from the brown shell layer. I hypothesized that during the white shell layer period, the yield of clams and other shellfish was high, which stimulated the economy, and that other artifacts also increased in tandem.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間(3D空間)における斜面貝層細区分と遺物分布の様子を3Dモデルで観察分析しました。白色貝層からの遺物出土が褐色貝層より多くなっています。白色貝層の時期にはハマグリ等貝収量が多く経済が活性化し、それに連動して他の遺物も増えたと仮説しました。

1 斜面貝層細区分と遺物3D分布モデル

斜面貝層細区分と遺物3D分布モデル

場所:有吉北貝塚北斜面貝層検討空間(10断面と11断面に挟まれた空間)

貝層大区分境界及び斜面貝層細区分境界:青平面メッシュ

遺物:赤CUBE(5㎝×5㎝×5㎝)

10断面(手前)と11断面(奥)の間隔は2m


参考 斜面貝層細区分

3DF Zephyr v8.003でアップロード


3Dモデル動画


3Dモデル動画 (ワイヤーフレーム版)


3Dモデル画像(ワイヤーフレーム版)

2 検討


表 斜面貝層細区分別遺物件数


グラフ 斜面貝層細区分別遺物件数


グラフ 斜面貝層細区分別体積 ㎥


グラフ 斜面貝層細区分別遺物密度 件/㎥


白色貝層の遺物件数は多く、褐色貝層の遺物件数は少ないことが特徴となっています。遺物密度も全体では白色貝層が大きく、褐色貝層は小さくなっています。

また、白色貝層の方が褐色貝層より単位体積当たり貝殻量は多いから、単位貝殻量あたり遺物密度を想定すると、白色貝層の方が褐色貝層より遺物密度がさらに大きくなります。

このデータから、次の作業仮説を検討しました。。

●作業仮説

白色貝層の時期は豊漁でハマグリ貝収量が多く、集落内貝消費が増大して貝殻投棄が増えます。従って貝層が白色になります。交易用貝食品生産も増え、人口も増加傾向になります。貝調理増加や交易用食品生産増加や人口増加に伴い道具類(土器、貝刃など)の更新による投棄が増えます。また交易が活性化するので獣肉の消費も増え、骨・歯投棄量も増えます。

一方、褐色貝層の時期は白色貝層の時期と逆で、ハ

マグリ貝収量が少なく、相対的にイボキサゴ収量の割合が増えるので貝層は褐色になります。貝消費や交易用貝食品生産が少なくなるので、関連する道具類の更新も進まないため、その投棄量は少なくなります。獣肉消費量も減るため、骨・歯投棄量が減少します。

なお、白色貝層S2 とS3 に挟まれる褐色貝層R3 の時期は二次堆積貝層の堆積現象が急激に進んでいます。その事象から、ガリー谷頭部での急激な浸食作用が考えられます。従って、気候変動(降雨増大)が「貝収量減でかつ遺物投棄量減」現象を招いている可能性も想定できます。


2025年4月4日金曜日

2025年3月ブログ活動のふりかえり

 I looked back on the activities of the blog "Walking the Hanami River Basin" in March 2025.


Following on from January and February, I pushed myself to focus on the investigation of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, despite my old age. In terms of technology, I am now able to analyze the correspondence between the 3D shell layer model and the 3D artifact distribution model in the 3D investigation space, and my knowledge is increasing.


ブログ「花見川流域を歩く」の2025年3月活動をふりかえりました。

1月、2月に引き続き、老骨に鞭打って、有吉北貝塚北斜面貝層検討に集中しました。技術面で、3D検討空間において貝層3Dモデルと遺物分布3Dモデルの対応関係分析が出来るようになり、知見が増えています。

1 ブログ「花見川流域を歩く」

・2025年3月の記事数は25です。

・北斜面貝層における貝層3Dモデルと遺物分布3Dモデルの対応関係分析記事を書きました。

・千葉市埋蔵文化財調査センター特別展「貝と人」で観覧したアリソガイ、アワビ、イルカ下顎製腰飾などの観察記録3Dモデル記事を書きました。

2 ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」

・早朝散歩記事2編を書きました。

3 2025年3月活動の特徴

テストグリッドでの試行を踏まえ、10断面と11断面に挟まれた空間を検討空間に設定しました。

貝層断面図(精細な発掘現場で手書きで書かれた断面図)における貝層分層と大格闘しました。斜面貝層(オリジナル貝層)については、結局、貝層断面図から貝層発達大局観を得ることが出来ませんでした。挫折といっていいと思います。

仕方がないので、Bプランとして用意していた現場写真から斜面貝層発達大局観を得ることにして検討し、成功しました。斜面貝層を褐色貝層3層と白色貝層3層が交互に重なる分層として設定しました。この分層設定はその後の分析に役立つ信頼性のあるものとなりました。

斜面貝層発達大局観を得た後の分析活動はすべて順調に経過し、3D空間における貝層と遺物の関係を明らかにすることができました。

作業に熱中するために、生活も変えました。テレビニュース、ネットニュース、新聞から自分を遮断しました。それに接するとそちらに興味や思考エネルギーを取られてしまうためです。またブログ記事も3月23日をもって更新を止めました。ブログ記事作成時間がバカにならないので、記事更新をやめ、時間を北斜面貝層検討に全て投入しました。ブロガーを自認する自分としては最後の非常手段といってもいいかと思います。

4 2025年4月活動の展望

北斜面貝層検討をさらに深める活動を行うとともに、2年前から継続している北斜面貝層遺物データベース作成作業の残作業(遺物平面図からXY座標を読みとる作業)に取組むことにします。

ブログ記事更新も旧に復したいと思います。


参考

ブログ「花見川流域を歩く」2025年3月記事 〇は閲覧の多いもの

ブログ「花見川流域を歩く 自然・風景編」2025年3月記事


2025年3月 Sketchfabに投稿した3Dモデル


2025年3月 YouTubeに投稿した動画


2025年3月 ブログ「花見川流域を歩く」投稿記事に掲載した画像


2025年3月23日日曜日

3D空間における貝層大区分と遺物分布

 Shell layer divisions and artifact distribution in 3D space


The shell layer divisions and artifact distribution in the study space (3D space) of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound were observed using a 3D model. The artifacts excavated from the slope shell layer are prominent. The artifacts excavated from the collapsed layer indicate the existence of a shell layer containing artifacts from a previous era that was lost due to gully erosion.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間(3D空間)における貝層大区分と遺物分布の様子を3Dモデルで観察しました。斜面貝層からの遺物出土が突出します。崩落層から遺物が出土している様子から、ガリー浸食で失われた前代の遺物含有貝層の存在を知ることができます。

1 貝層大区分と遺物3D分布モデル

貝層大区分と遺物3D分布モデル

場所:有吉北貝塚北斜面貝層検討空間(10断面と11断面に挟まれた空間)

貝層大区分境界:青平面メッシュ

遺物:赤CUBE(5㎝×5㎝×5㎝)

10断面(手前)と11断面(奥)の間隔は2m


参考 貝層大区分

3DF Zephyr v8.003でアップロード


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像

2 検討


検討メモ図

・崩落層から遺物(ほとんど土器)が出土していることから、ガリー浸食でその本体が失われた前代の土器含有貝層が存在していたことを知ることができます。崩落層からはブロックとなって崩落した貝層が数多く観察されています。

・崩落層の中央部からの遺物出土がないことから、ガリー浸食で前代の貝層が浸食流出し、さらに台地構成層(成田層)の浸食が続いたことが想定できます。この事実からガリー浸食発生以前に貝層が存在していたことがわかります。

・発掘調査報告書では崩落が始まった頃から土器投棄が始まった旨記述していますが、土器を含む貝層がガリー浸食以前に存在していたことが遺物3D分布から確認できます。

・崩落層から出土した土器の型式がわかれば、この付近のガリー浸食がいつ頃生起したのか、おおよその見当がつきそうです。

・二次堆積崩落層A(現場ではK層)からの遺物出土がとても少なくなっています。二次堆積崩落層Aの連続層を剥取断面(千葉県立中央博物館展示)で現物観察すると、水成堆積の様子を確認できます。現状では二次堆積崩落層Aは湖成堆積層の可能性が濃厚であると考えています。(ガリー侵食空間における一時的ダムアップ現象の想定。)

・二次堆積貝層(ガリー流路の運搬による堆積層)は遺物分布の粗密から、基底層(崩落層に連続)、遺物出土の少ない堆積層(二次堆積崩落層Aに連続)、遺物出土の多い堆積層(S2とS3の間の時期の堆積層)に3区分出来そうです。

・斜面貝層の遺物は貝層の細区分(S1、S2、S3)3Dモデルを作成して、別途詳しく観察します。


2025年3月22日土曜日

検討空間の全貝層3Dモデル

 3D model of all shell layers in the study space


A 3D model of all shell layers in the study space of the shell layers on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound was created. The volume of the total shell layers between cross sections 10 and 11 is 61.5 m3, with 3721 artifacts excavated and an artifact density of 60.5/m3.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間における全貝層3Dモデルを作成しました。10断面と11断面に挟まれる全貝層の体積は61.5㎥で遺物出土件数3721件、遺物出土密度60.5件/㎥になります。

1 検討空間の全貝層3Dモデル

検討空間の全貝層3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層の10断面と11断面に挟まれた全貝層

断面接触面は非表示

出土全遺物表示

11断面表示

全貝層3Dモデルの体積:61.4632㎥

遺物出土件数:3721件

遺物出土密度:60.54件/㎥

3DF Zephyr v8.003でアップロード


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


3Dモデルの画像(Blender画面)

2 メモ

・3DモデルはBlenderのBsurfaces機能を使って、10断面図と11断面図の断面線から生成しました。

・今後貝層大分類別、斜面貝層のS1、S2。S3別等の貝層3Dモデルを作成して、遺物分布との関係を考察、集計する予定です。


2025年3月20日木曜日

貝層区分

 Shell layer division


I decided to divide the shell layers in the study area of ​​the northern slope shell layer of the Ariyoshi Kita Shell Mound based on the three white shell layers. The same shell layer division can be seen in nearby cross sections, so spatial continuity can be confirmed in this shell layer division. Therefore, this shell layer division can be said to indicate the state of change in the development of the shell layer.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間の斜面貝層における貝層区分を3層の白色貝層を軸に行うことにしました。近隣断面でも同じ貝層区分が出来ることから、この貝層区分に空間的連続性を確認できます。従ってこの貝層区分は貝層発達における変化の状況を指標していると言えます。

1 10断面における貝層区分

10断面における貝層区分(原写真は発掘調査報告書から引用、Photoshopでカラー化)


断面の位置

2 11断面における貝層区分


11断面における貝層区分(原写真は発掘調査報告書から引用、Photoshopでカラー化)

3 剥取断面における貝層区分


剥取断面における貝層区分(原写真は発掘調査報告書から引用、Photoshopでカラー化)

4 12断面における貝層区分


12断面における貝層区分(原写真は発掘調査報告書から引用、Photoshopでカラー化)

5 メモ

検討空間は10断面と11断面の間ですが、剥取断面、12断面でも同じ貝層区分S1、S2、S3を確認できます。ただし、12断面ではS1は隠れていて未確認です。

近隣断面でも同じ貝層区分が出来ることから、この貝層区分に空間的連続性を確認できます。従ってこの貝層区分は貝層発達における変化の状況を指標していると言えます。

S1、S2、S3は古→新の年代の違いと対応しています

S1とS2、S2とS3の間は狭い褐色貝層で区切られます。

S1→S2→S3の順に貝層が厚くなります。S3には貝層の中間に褐色貝層が挟まります。

S2とS3の間にはガリー流路における急激な堆積現象が発生しています。

有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間の貝層区分を3層の白色貝層で行うことにしました。


2025年3月19日水曜日

白色貝層に挟まれた褐色貝層の意義

 The significance of the brown shell layer sandwiched between the white shell layers


When observing the cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, which is examined using on-site photographs, a brown shell layer (a layer with coarse shells) is sandwiched between white shell layers (a layer with dense shells). It is interesting to note that the brown shell layer is synchronized with the rapid development of secondary sedimentation in the gully channel.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間で、現場撮影写真を断面に投影した写真を観察すると、白色貝層(貝殻が密な貝層)の間に褐色貝層(貝殻が粗な貝層)が挟まっています。その褐色貝層とガリー流路二次堆積の急激な発達が同期していて興味が深まります。

1 発掘調査報告書における北斜面貝層11断面の発達史


発掘調査報告書における北斜面貝層11断面の発達史

発掘調査報告書では上図のように11断面発達史を説明しています。第2段階の貝層発達と第4段階の貝層発達の間に第3段階としてガリー流路二次堆積が挟まっています。

このような視点から、次の断面投影写真を観察してみました。

2 11断面投影写真の観察


11断面 白色貝層S2とS3の間の観察

白色貝層S2とS3(※)の間に褐色の細い貝層(A)が観察できます。このAが生成している期間にガリー流路の厚い二次堆積(B)が生成したと考えることができます。

Aに対応する発掘資料における分層を貝層断面図(セクション図集成図)から確認すると「C(2)層=E1層」で、その記述は「混土貝層、混貝率60%、黒褐色、小形ハマグリ主体、キサゴ多、キサゴの破砕率高い」となっています。

※ 白色貝層S1、S2、S3はこのブログ独自の仮称です。

3 隣接断面の観察

3-1 10断面投影写真の観察


10断面(左右反転) 白色貝層S2とS3の間の観察

11断面とほぼ同じ状況を観察することができます。

Aに対応する発掘資料における分層を貝層断面図(セクション図集成図)から確認すると「C2層」で、その記述は「破砕貝混黒色土、イボキサゴ破砕貝混入比較的多、小型ハマグリ、シオフキ若干、しまりなし。」となっています。

3-2 剥取断面(11断面と12断面の中間)白色貝層S2とS3の間の観察


剥取断面の観察

剥取断面(千葉県立中央博物館展示)においても、白色貝層S2とS3の間に褐色の細い貝層(A)が、明瞭さは欠きますが確実に観察できます。11断面、10断面と同じようにAが生成している期間にBが生成したと捉えることができます。

4 考察 1

AとBが同期している状況を、その前後期と比較して、次のように解釈し、当面の作業仮説とします。

4-1 S2の発達

白色貝層S2が発達した。この時期は通常の貝漁獲があった。(豊漁であった。)

4-2 AとBの同時発達

A(貧弱な褐色貝層=貝殻投棄の少ない貝層)の発達は通常の貝漁獲が損なわれたためであると想定。(不漁であった。)

B(ガリー流路二次堆積)の急激な発達は、雨量急増によるガリー流路谷頭部における浸食作用・運搬作用の急激な増大によるものと想定。

AとBから、雨量急増による東京湾汽水域の塩分濃度変化により貝生息環境が悪化し、貝漁獲量が損なわれたと想定。

4-3 S3の発達

白色貝層S3が発達した。この時期は通常の貝漁獲があった。(豊漁であった。)

5 考察 2

考察1における作業仮説が正しいとすると、S1とS2の間の細い褐色貝層も、この時期に貝が不漁であったことを物語る可能性があります。貝層における貝殻粗密が(貝層が白か褐色かの違いが)貝漁の豊漁-不漁指標となる可能性があります。