またその内容と花見川河川争奪を対比してみました。そうしたところ、花見川河川争奪はどの様式にも含まれないので、このブログでは新たな様式を設定して、その仮称を命名しました。
1 鈴木隆介著「建設技術者のための地形図読図入門 第3巻段丘・丘陵・山地」(古今書院、2008)による河川争奪様式
この本では河川争奪様式について次のように説明したうえで、その様式を4分類しています。
「河川争奪は、分水界を共有する2本の河川の一方または両方の頭方侵食または側刻によって分水界が低下し、ついには両河川が接触したために、河床高度が高い方の河川が低い方の河川に流入して、前者の流域変更が起こる現象である。」
河川争奪様式
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様式 
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説明 
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コメント 
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①頭方争奪 
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本流または支流の頭方侵食により、その谷頭が別の河川に接し、その河流を奪取する。 
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並走する河川間の生存競争による併合は①と②による 
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②側方争奪 
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一つの河川流域において、側方侵食によって本流が支流を争奪し、貫通丘陵を形成する。 
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③自動争奪 
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1本の河川の蛇行切断。 
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③と④は大規模な分水界の移動(流域面積の増減)を伴わないので、普通は河川争奪とよばれない。 
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④地下争奪 
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カルスト地域で水流の地下への吸い込みによる流量の消失。 
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(表まとめは引用者)
説明図
2 花見川河川争奪の様式
花見川河川争奪は一見頭方争奪とみてしまいがちですが、そうではありません。争奪された河川(古柏井川)の水が争奪した河川(花見川)に流れ込むということは、(古柏井川の支谷津を除くと)ありません。
また、争奪の肘と呼ばれるポイント(上記説明図でEの箇所)が、花見川河川争奪ではポイントではなく、争奪した個所全体となってしまっています。
花見川河川争奪は、争奪される河川の最上流部河道から出発して、その河道を下流に向かって逆行して差別的に谷頭浸食している現象です。
花見川河川争奪は、一般的な河川争奪様式にあてはまらない、大変特異な現象であることが、確認できます。
3 花見川河川争奪現象の様式仮称命名
花見川河川争奪現象の様式は、これまで見つかっていない特異なものとして、このブログでは、新たに次のように仮称を命名します。
「河道逆行争奪」
この仮称命名は、現象を説明すれば「河道逆行型差別浸食による争奪」ということになりますので、これを完結に表現したものです。
上記表(鈴木隆介(2008)をまとめたもの)に追記すれば次のようになります。
河川争奪様式
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様式 
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説明 
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コメント 
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①頭方争奪 
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本流または支流の頭方侵食により、その谷頭が別の河川に接し、その河流を奪取する。 
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並走する河川間の生存競争による併合は①と②による 
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②側方争奪 
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一つの河川流域において、側方侵食によって本流が支流を争奪し、貫通丘陵を形成する。 
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③自動争奪 
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1本の河川の蛇行切断。 
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③と④は大規模な分水界の移動(流域面積の増減)を伴わないので、普通は河川争奪とよばれない。 
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④地下争奪 
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カルスト地域で水流の地下への吸い込みによる流量の消失。 
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⑤河道逆行争奪 
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頭方侵食により、その谷頭が別の河川の最上流部に接し、その河川の谷底を下流に向かって差別浸食していくことにより、その河川の谷空間を奪取する。 
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事例:花見川河川争奪 
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(青字が追記部分)

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