2015年5月12日火曜日

八千代市白幡前遺跡 墨書土器の文字検討 その2

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八千代市白幡前遺跡出土墨書土器文字の詳細検討を続けます。

3 1Bゾーンに出土中心を持つ文字の検討
●1Bゾーンに出土中心を持つ文字

1Bゾーン出土文字

大変特徴的な出土文字様相です。
このゾーンの出土数第1位文字は「○」(星 則天文字)ですが、遺跡全体では32出ている内の実に31がこのゾーンで出ています。
出土数第2位文字「継」、第3位文字「立」もこの1Bゾーンに集中的に表れています。

以下具体的に検討します。

●○(星 則天文字)の意味
○(星 則天文字)のWikipediaによる説明は次の通りです。

Wikipediaによる則天文字○の説明

さて、1Bゾーンは竪穴住居跡と掘立柱建物跡の比や銙帯出土状況等の遺構・遺物の状況から兵站基地における「司令部機能又は高級将官逗留施設」と考えてきています。2015.04.24記事「八千代市白幡前遺跡 出土銙帯分布からわかること」参照

白幡前遺跡の軍事の中心がこの1Bゾーンです。一般兵士というより高級将官が居住あるいは逗留して軍事面の指揮を執った場所であると考えてきています。

そうした遺跡のゾーニングを考えると、○(星 則天文字)は白星(勝利)であると考えざるを得ません。

本日(2015.05.12)新聞朝刊に大相撲記事があり、過去対戦星取表が掲載されています。

大相撲過去対戦の星取表

この本日の新聞記事の○は則天文字由来の記号で、白星=勝利を表現しています。

8世紀後半から9世紀初頭にかけての高級軍人たちも、則天文字○を白星(勝利)の意味で使い、蝦夷戦争勝利を祈願したのだと思います。

一般兵士が逗留した場所と考えた1Aゾーンでは「生」の出土が多く、一般兵士は戦死しないことを祈願したのですが、高級軍人たちはもう少し高次の意識であったことがわかります。「○」で戦争勝利を祈願したのです。

1Aゾーンで○の中に万の字を書く文字(記号)が出土していますが、「万」(バン)の意味を万事と同じ「すべて」「あらゆる」と捉え、全ての戦いで勝利する(白星をあげる)という祈願として捉えることができます。

●継の意味
継(ツグ、ツギ)とは白幡前遺跡(集落)の機能、つまり軍事兵站・輸送基地機能そのもののがしっかり確保されて、蝦夷戦争が成功的に遂行されることを祈願したのだと思います。

囲碁で、断点を補う手を継(ツギ)といいます。直接切れないように補うことです。

白幡前遺跡(集落)の高級将官たちは、この基地が都と陸奥国を継ぐ重要な軍事兵站・輸送基地であることをしっかりと自覚していて、この基地機能が十分発揮されることを祈願したものと考えます。

祈願のレベルが個人の枠を大きく超えていて、国家戦略レベルです。
継と祈願した高級将官は中央官僚レベルと同じ意識です。

白幡前遺跡は下総国にありますが、検見川から花見川を通り高津、萱田地区(白幡前遺跡周辺)に抜けるルートは中央直轄領的な様相を呈していたと思います。

この周辺に勅旨田開発があることもそのことを裏付けています。2015.05.06記事「千葉市花見川区幕張の小字地名「奈良熊」「実籾田」は勅旨田開発か」参照

●立の意味
立(タツ)は出発する、出立するという意味で、これから蝦夷戦争の戦地である陸奥国へ向かうという決意を表現していて、その勝利・無事を祈願したものだと思います。「いざ戦わん」という意味だと思います。

○(戦争勝利)、継(基地機能確保)、立(いざ戦わん)という3つの祈願語が1Bゾーンに多数出土することから、この場所に高度に組織されて、恐らく士気も高かったであろう軍事指揮集団が存在していたことがわかります。

●牧万の意味
牧は高津馬牧を指していると考えて間違いありません。
白幡前遺跡1Bゾーンには基地司令部があり、高津馬牧はその傘下にあったと想像しています。
1Bゾーンに詰める高津馬牧関係者、あるいは高津馬牧担当将官が高津馬牧の全て(万事)が成功的に進捗して、基地機能向上に貢献することを祈願したものと考えます。

●益の意味
益(マス)は兵員、牛馬、軍事物資などの数量が多くなることを祈願したものと考えます。

●嶋の意味
人名?

●大井の意味
井(イ)は流水から用水を汲み取る場所ですから、大井はその場所を拡げ用水の不便を少なくしたいという祈願に使ったのかもしれせん。

●山の意味
樹木を得る場所の確保や産物が沢山採れることを祈願したのかもしれません。

白幡前遺跡には鍛冶遺構(*)が出土していますから、多量の炭をつくるために膨大な樹木伐採の必要があったものと考えます。

*「千葉市八千代市白幡前遺跡c地点-共同住宅建設に伴う埋蔵文化財発掘調査報告書-」(2009、君塚克己・八千代市教育委員会)

●堤家の意味
家屋、住居としての建造物が火災・暴風雨・雪害等から安全であることを祈願したものと考えます。
墨書土器に盛ったお供え物を家に見立てて、災害神に提出し、その代わりに本物の家屋の安全を確保したのだと思います。

●大寺の意味
次のような解釈ができます。
ア 2Aゾーンにある寺院が大きくなるように祈願する。
イ 2Aゾーンにある名称「大寺」(の地区)に住む私が○○を祈願する。

アの可能性が大きいと考えますが、その場合、仏教寺院が大きくなることを神に祈願していたことになります。
あるいは、仏教寺院が大きくなることを神ではなく、佛に祈ったのでしょうか。
神仏の関係は今後の検討課題とします。

●臣の意味
臣(オミ)は、私は神の忠実な家来、臣下になりますから、私の祈願を成就してくださいという祈願語だと思います。

●庄の意味
庄は荘園・庄園を指しますから、1Bゾーンにある基地司令部が監督する近くの荘園の充実発展を祈願したものと考えます。

●財の意味
富や所有物の増大を祈願した言葉であると考えます。個人的な財産という意味ではなく、公共的な基地の財産が増えることを祈願したと考えます。

●大生人の意味
大いに生きる(殺されない)人でありたいという祈願と考えると、他の祈願語とこれだけ大いに異なり、個人主義の色彩が濃くなります。他の解釈があるか、今後検討を深めます。

●成の意味
次のような解釈ができます。
ア 大願成就という意味で成(ジョウ)1語を使う。○○を成就したいという祈願。
イ 成(ナス)と読み、○○を生む、産出する、つくる、行うという能動的祈願。
ウ 成(ナル)と読み、○○というこれまでなかったものが、新たに形をとって現れ出ることの期待、受動的祈願。

●寺の意味
寺の発展や厄払いの祈願。
あるいは寺に籍を置く者(関係者)が、○○を祈願する。

●子猨嶋の意味
人名(コザルジマ)?

●主の意味
主(ヌシ)はお供え物の所有者という意味で、神と同義だと考えます。お供え物を供える相手を主(=神)と呼んだのだと思います。


墨書土器の文字実例

八千代市白幡前遺跡1Bゾーンに出土中心をもつ墨書土器文字の実例

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【メモ】

○が則天文字で星を意味し、それが白星=勝利(蝦夷戦争勝利)として使われました。星と武力が固く結びついています。

この背景に妙見信仰が存在しているのではないだろうかと、疑います。

墨書土器の○は北極星を表現しているのかもしれないと疑います。

奈良時代にあっては、白幡前遺跡を含む萱田付近を丈部一族が主導していますが、丈部一族と妙見信仰の関わりがあるのではないかと疑います。

今後注意深く検討していきたいと思います。

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