花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.135 墨書土器文字「廿」(ツヅラ)の読解
八千代市白幡前遺跡出土墨書土器の文字の検討を継続しています。この記事から2Fゾーンと3ゾーンの検討に進みます。
8 2Fゾーンに出土中心を持つ文字の検討
●2Fゾーン、3ゾーンに出土中心を持つ文字
2Fゾーン、3ゾーンに出土中心を持つ文字
●廿の意味
「八千代市白幡前遺跡-萱田地区埋蔵文化財調査報告書Ⅴ-本文編」(1991、住宅都市整備公団首都圏都市開発本部・財団法人千葉県文化財センター)では現代国語表記の制限から廿の表記をしていますが、実際の墨書表記は次の通りです。
墨書「廿」の実例
墨書「廿」は下記漢和辞典の会意のとおり「十+十」を合わせて書かれています。
この「廿」の読みは下記漢和辞典の難読事例「廿楽」(ツヅラ)を参考にして、ツヅラであると考えます。
ツヅは十(ジュウ)を、ラは複数を表す語尾です。
参考
廿を漢和辞典で調べると次のような情報を得ることができます。
●(十を二つ横に並べたような字、廾の左縦棒がまっすぐの字)は廿の俗字
●読みジュウ(ジフ)、ニュウ(ニフ)
●字義 にじゅう(にじふ)(二十)。はたち。
●難読 廿山(つつやま・つづやま)・廿日(はつか)・廿日出(はつかで)・廿楽(つづら)
●注意 『康熙字典(コウキジテン)』では、廾部に所属する。
●会意。十+十。十を二つ合わせて、二十の意味を表す。
『新漢語林』 大修館書店
参考
つづ
〖名〗
② とお。じゅう。十。〔日葡辞書(1603‐04)〕
『精選版 日本国語大辞典』 小学館
ら【等】
〖接尾〗
② 名詞に付いて、それと限定されない意を表わす。
イ 事物をおおよそに示す。
※万葉(8C後)一六・三八八四「彌彦神の麓に今日良(ラ)もか鹿の伏すらむかはごろも着て角つきながら」
※平中(965頃)一「この男のともだちどもあつまり来て、言ひなぐさめなどしければ、酒ら飲ませけるに」
ロ 主として人を表わす語また指示代名詞に付いて、複数であること、その他にも同類があることを示す。
※万葉(8C後)一・四〇「あみの浦に船乗りすらむをとめ等(ら)が玉裳の裾に潮満つらむか」
※平家(13C前)一「秦の趙高、漢の王莽、〈略〉是等は皆旧主先皇の政にもしたがはず」
『精選版 日本国語大辞典』 小学館
墨書土器文字「廿」(ツヅラ)の意味は衣服を入れる蔓で編んだかごの意味であると考えます。
参考
つづら【葛】
③(「葛籠」と書く)衣服を入れる、アオツヅラの蔓で編んだかご。後には竹やヒノキの薄板で作り、上に紙を貼った。つづらこ。
『広辞苑 第六版』 岩波書店
次に、文字「廿」(ツヅラ)の出土地点分布を示します。
「廿」(ツヅラ)出土地点分布図
「廿」(ツヅラ」出土地点は2Fゾーンの中心から離れ、3ゾーン(倉庫群地帯)に近い掘立柱建物群そばから集中的に出土しています。
この分布情報から「廿」(ツヅラ)集中出土箇所の掘立柱建物群は、いわば被服廠であった可能性が濃厚です。
基地内で食料・武器等とは別に葛籠(カズラで編んだかご)に軍用・官用等の衣服や関連調度品等をストックする倉庫があったことがこの「廿」の一文字から推定できます。
「廿」(ツヅラ)の分布状況から、1Aゾーンと2Aゾーンの出土土器は2Fゾーン集中箇所から人が持参していった物である可能性が濃厚です。
集中出土箇所以外の2Fゾーン、3ゾーン出土箇所も同様に考えますが、それらの場所と集中出土箇所との間に業務上の繋がりが透けて見えてくるような感じがして、興味をそそられます。
特に3ゾーンとは同じ倉庫管理警備部隊としての業務上の繋がりが感じられます。
つづく
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