この記述を基に床面直上における「不用材の焼却」とされる竪穴住居と、覆土層途中における焼却跡のある竪穴住居の2種を抽出し、その分布図を作成しました。
上谷遺跡 竪穴住居 床面における木材焼却跡の分布
この分布図から確実性のある情報を直接引き出すことは困難ですが、次のような感想をもちました。
感想 1
床面木材焼却跡は、「不用材の焼却」などではなく、竪穴住居廃絶時における家屋一部を利用して燃やす祭祀と考えます。
従って、床面木材焼却跡は廃絶家屋住人(故人、家族)が丁寧に扱われたのであり、社会階層が上位にあったと考えます。
床面木材焼却跡のある竪穴住居は、掘立柱建物密集域付近でその分布が粗であり、掘立柱建物密集域から離れた場所で密です。
掘立柱建物は養蚕小屋などであり、その密集域は仕事場ゾーンであったと考えます。
一方、掘立柱建物密集域から離れた場所はいわば住宅ゾーンであったと考えます。
仕事場ゾーンと住宅ゾーンにおける竪穴住居タイプの構成が違うと考えれば、上記床面木材焼却跡の粗密が説明できるかもしれません。
例えば、仕事場ゾーンには最上位クラスの少数の住人が住んでいて、住宅ゾーンには上位クラスの多数が住んでいるなど。
この感想がどの程度的確性があるかわかりませんが、床面木材焼却跡の情報からこれまで知られていない集落生活の様子を知ることができる可能性があります。
「不用材の焼却」で一件落着させるわけにはいきません。
感想 2
台地崖付近の竪穴住居はこれまでの検討で漆小屋など生業に直接かかわる施設であったと考えてきています。
その竪穴住居が完全なる仕事場であったのか、家族も住む住宅兼用であったのかはわかりません。
そのような仕事場機能を持つ竪穴住居には床面木材焼却跡はみられないようです。
床面木材焼却跡のある竪穴住居は、住宅機能が優越し、かつ社会階層上位の家族が住んでいて、そこが廃絶したことを示しているように感じます。
上谷遺跡 竪穴住居 覆土途中における木材焼却の分布
覆土途中に木材焼却の跡がある竪穴住居は、廃絶後覆土層自然堆積があるという時間が存在し、その後焼却があったものです。
自然堆積層を掘って焼却したものもあります。
感想としては、床面における木材焼却と同じ意味(祭祀として物を燃やす)があると考えますが、なぜ廃絶直後に焼却がないのか気にかかります。
今後検討を深めたいと思います。
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