この記事ではデータベースの一翼を構成する千葉県小字土器データベースの活用検討例を示して、その活用可能性の「威力」の大きさを確認しておきます。
活用例として轆轤(ロクロ)地名を紹介します。
1 小字「轆轤(ロクロ)」の分布
千葉県小字データベースから次のような轆轤(ロクロ)地名を抽出できました。
千葉県の「轆轤(ロクロ)」小字分布
2 例 旭市横根の小字「六郎木工」
旭市横根付近の大字分布を示します。 横根に小字「六郎木工」が存在します。
千葉県郷名分布図をGISに取り込んだ様子(大字横根付近)
この付近は砂鉄の産地です。
参考 千葉県の砂鉄産地
植野英夫「明治以降の千葉県における砂鉄採取について」(千葉県立現代産業科学館研究報告第18号、2012.03)から引用
砂鉄産地であること、および古代遺跡情報などから、小字六郎木工に関して次のような想定を行うことができました。
旭市横根の小字六郎木工に関する想定
●小字「六郎木工」は台地上製鉄遺跡に海岸で採取した砂鉄を運び揚げる運搬用装置としての轆轤(ロクロ)に由来する可能性が高いと考えます。
現代の機械でいえばクレーンということになりますが、古代では低地と台地面の間の急斜面において、轆轤を使って人力で砂鉄を引っ張り上げたと想定します。
●木工(モツコ)は砂鉄を入れる運搬用具としてのもっこ(むしろなどで作る)を意味すると考えます。
●大字横根と三川の得意な形状は、砂鉄採取地とタタラ製鉄施設を含む古代の特定開発地域を示すと考えます。
●大字横根が海上郡、大字三川が匝瑳郡という邨岡良弼の説は再検討が必要であると考えます。
2016.06.25記事「千葉県の轆轤(ロクロ)地名が重量物運搬装置に由来する状況」参照
3 例 長南町蔵持の小字「六郎谷」
長南町大字蔵持と長南(宿)に小字「六郎谷」があります。
大字蔵持(クラモチ)は古代部民の車持部(クルマモチベ)の車持から転じた名称であると考えます。(角川千葉県地名大辞典による)
この付近は東京湾と太平洋を繋ぐ古代船越の位置にあたります。
長南町蔵持付近の地形
古代船越付近の地形
この付近の地形を分析して、次のような古代船越の運搬手段を想定しました。
A-Bは低平、B-Cは緩傾斜、C-Dは急傾斜、D-Eは低平という地形になっています。
この地形から船越における運搬手段はA-Bは曳舟、B-Cは車、C-Dは轆轤(ロクロ)、D-Eは曳舟であると想定しました。
旭市横根では砂鉄を海岸から台地に引きずり揚げる際に轆轤(ロクロ)を使いましたが、長南町蔵持でも同じく重量物を太平洋側から東京湾側に引きずり揚げるために使ったのだと思います。
なお、急斜面からすこし離れて長南(宿)にも小字六郎谷がありますから、その地名は轆轤(ロクロ)作業に従事する人夫の宿泊場所を表していると考えます。
2016.06.26記事「車持部と轆轤(ロクロ)地名」参照
2016.06.26記事「車持部と轆轤(ロクロ)地名」参照
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