2022年6月2日木曜日

人面・土偶装飾付土器の企画展観覧

 Viewing a special exhibition of pottery with human face and clay figurine


I watched the Yamanashi Prefectural Archaeological Museum exhibition "Jomon people who draw their hearts  -The world of pettery with human face and clay figurines-" (2022.04.16-2022.06.12). It was more fulfilling than I had expected, and I was greatly stimulated by learning and was very satisfied. I made a note of the situation and impressions.


山梨県立考古博物館企画展「心を描く縄文人 -人面・土偶装飾付土器の世界」(2022.04.16~2022.06.12)を観覧しました。自分が想定していた以上に充実していて、大いに学習刺激を受け、大いに満足しました。その様子と感想をメモします。3Dモデル作成用の多量撮影を行いましたので、順次3Dモデルを作成して詳しく検討学習したいと思います。

1 企画展の概要

企画展は次の4つのテーマから構成され、それぞれの中で多様なサブテーマに従って興味深い事例が多数展示されています。


企画展の入口

1-1 顔のある土器の世界

「本格化する人(顔)面装飾」として3つのコーナーで最初期の人面装飾が説明されています。

参考として動物装飾の例も展示されています。


本格化する人(顔)面装飾コーナー

1-2 土器と土偶の融合

土偶装飾土器、土偶付土器、顔面把手付土器など興味深い例が展示されていて、見入ってしまいます。

また、壊される顔面として、顔面破壊の多数事例と説明があります。


土偶装飾付土器コーナー


壊される顔面コーナー

1-3 展開する物語

出産土器、動物文土器、人体文土器、双環装飾土器、顔面付大型把手土器が展示されています。何れも興味深い事例ばかりです。


出産文土器コーナー

1-4 物語の終焉

最後期人面装飾、釣手土器などが展示説明されています。


人面装飾の終焉コーナー

2 感想

企画展観覧の感想を詳しく書き出すと大論文になってしまいそうですから、主な感想の要点だけを書きます。詳しくは3Dモデルを作成する中で検討したいと思います。

2-1 第一印象

地元千葉の加曽利貝塚博物館で主に縄文中期加曽利E式土器を観覧学習している自分にとって、この企画展展示資料は「風変り」「奇妙」「異国的」「異界的」です。そしてそれが予想していた以上に多量であるので、一瞬自分が今海外にいる(海外旅行に来て、海外の博物館いる)という錯覚をおぼえました。これから行う千葉(貝塚)と山梨(山)の比較学習が楽しみになります。

2-2 展示が土偶付土器であった。

土偶そのものと土偶が付く土器の双方の展示かもしれないと根拠なく予想していました。しかし実際は土偶そのものの展示は無く、全て土器に付く土偶、あるいは土偶の付いた土器の展示でした。この企画展は「人面・土偶装飾付土器」というジャンルを体系的に展示解説した企画展でした。観覧途中にそうだと理解すると、このような企画展示は珍しいもので、いつもあるものではないので、貴重な体験をしていることに気が付き、観覧に熱が入りました。

2-3 最初期から最後期まで

人面・土偶装飾付土器の最初期から最後期まで、また主要な興味対象を網羅して多数資料が展示されています。それを全部観察できたのですから、ラッキーです。人面・土偶装飾付土器に対する興味が深まりました。

2-4 土偶の顔について新たな感想が生まれる

土偶の顔について、これまで空想していた感想とは異なる新たな感想が生まれました。多数の顔を何時間にもわたって観察するという機会の中だからこそ生まれた感想です。詳しくは別記事で分析的に検討することにします。

2-4-1 つり目について

・展示人面全体の8割程度はつり目であり、最初期の人面もつり目が多いです。またつり目を特段に強調したものもあります。意図してつり目にしているように感じます。

・同時につり目にしていないもの(平目、垂れ目、丸)もあります。これらも意図してそのようにデザインしているように感じます。

・こうした状況から、つり目は人面に意図して表情をつくるためのデザインであるように感じます。現実の縄文人の顔つきとか出産時、出産直後の子どもの顔とは関係ないと感じます。

・つり目デザインの意図(怖い、きつい、気が強い、怒りなど)は女神神話の内容によるものだと直観します。

・同時につり目ではないデザインには別の神話内容が対応していた可能性があります。

・つり目が全部ではないという事実から、土偶の顔の趣旨を「土偶とは〇〇です」と結論づけることはふさわしくなく、土偶の顔の趣旨は多様なものがあると考えることが大切です。


つり目


垂れ目

2-4-2 上向きの鼻孔

・長野や千葉(後期)でみた鼻孔ひとつは今回展示では1点のみで、山梨ではほとんど鼻孔2つのようです。そしてほとんど上向きになっています。

・鼻孔上向きもつり目と同じように現実の縄文人成人や出産時子どもの鼻孔特徴とは無関係で、意図したデザインであると感じます。

・意図したデザインの意味は女神神話と関わるに違いないと直観します。

2-4-3 丸い口

・人面のほとんどの口は丸く、歌を歌っていると解釈すると首肯しやすいと思います。

2-5 出産文土器に関する疑問

「出産文土器の出産の様子は、頭からではなく顔から出産していて、現代出産技術では異常出産となります。現代では通常頭から出産します。縄文時代にも正常出産は頭からだったとすると、この出産の様子はきわめて抽象性の高い表現(現実にはあり得ない表現)になります。あるいは出産事故(顔から生まれる異常出産…顔などに障害が生まれる)の表現になります。」→このような事情を専門家はこれまでどのように検討してきているのでしょうか。専門家の見解を知りたくなります。

展示で「のっぺらぼう」と分類される人面がありますが、これは正常出産で産道から出る頭のようにも見えます。


出産文土器の様子

3 活動メモ

3-1 時間

千葉市花見川区自宅-山梨県立考古博物館 往路2時間50分、復路2時間20分

観覧時間 5時間20分

3-2 撮影写真

シャッター数 2282回

3Dモデル用撮影コーナー数 10



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