2024年6月5日水曜日

儀礼祭祀文化事象の生起から消滅まで

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 2


From the emergence to the disappearance of ritual cultural phenomena


Study 2 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


I learned that ritual archaeology is a field of study that specifically captures the transition process of ritual cultural phenomena from their emergence to their disappearance. The discussion of "the death and rebirth of rituals" by cultural anthropologists is useful for this field of study.


儀礼考古学とは、儀礼祭祀文化事象の生起から消滅までの変遷過程を具体的に捉える学問であると知りました。その学問には、文化人類学者の「儀礼の死と再生」という議論が参考になります。

序章 儀礼考古学の現代的意義

1 儀礼への問題関心

(1) 儀礼と社会

[学習のつづきです]

「文化人類学者の青木保が摘出した「儀礼の死と再生」という問題も示唆に富むものである(青木1984)。儀礼は聖化されたリミナリティー(境界性)の経験を通して人々を象徴の世界に巻き込み枠づけするはたらきをもっており、社会の統合や価値観の持続、知識の貯蔵庫として有効に機能している。儀礼がその本質的意味を生き生きと伝えている間は、参加者に社会の根本秩序を再確認させる「反省作用」によって社会に刺激と活性を与えることができる。しかし、儀礼のそうした機能は決して永続的なものではないと青木はいう。ある必要と目的から生まれた儀礼は、独自の文化的形式を発達させ、さらなる装飾が付加されていくのだが、変化を続ける社会の実態と儀礼の本義が乖離してしまうと意味を失う。そうすると旧い儀礼は、活力を失いルーティン化して「死ぬ」のである。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・社会にある儀礼が発生発展し、参加者に社会の根本秩序を再確認させ、社会に刺激と活性を与えることが述べられています。それは、儀礼が社会維持の仕組みとして貢献しているということです。そして、変化を続ける社会の中で、実態と儀礼が乖離すると、その儀礼は「死ぬ」(消滅する)ことが述べられています。

「「儀礼の再生」についても重要な見方が提起されている。

新しい意味の象徴を示すために、旧い儀礼要素を取り入れる形で新たな儀礼が創出されることもある。つまり、社会と文化のアイデンティティーが動揺あるいは危機に瀕した時に、儀礼の再活性化によつて新しい世界秩序の創造と再生が図られるというのである。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・廃れた儀礼に旧い儀礼要素を取り入れることで「儀礼の再生」が図られることもあると述べられています。

・これらの儀礼の発生から消滅までのプロセスや廃れた儀礼の再生というプロセスを踏まえて、著者は次のようにこの小節を結んでいます。

「儀礼の死と再生に関するこうした議論は、儀礼祭祀に関わる文化事象の生起から消滅までの変遷過程を具体的に捉えている考古学からみても、たいへん参考になる。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・以上の記述から、著者は考古学という学問は、儀礼祭祀に関わる文化事象をその生起から消滅までの変遷過程を具体的に捉えている(捉えるべきだ)と考えていることと、その考古学(儀礼考古学)にとって、文化人類学者の「儀礼の死と再生」という議論が大変参考になると考えていることがわかります。

・「儀礼祭祀に関わる文化事象をその生起から消滅までの変遷過程を具体的に捉える」という記述は時間軸で儀礼祭祀変遷を延べていますが、この記述を空間軸に変換すると、「儀礼祭祀に関わる文化事象の空間分布の特徴や変遷過程を具体的に捉える」ということになります。

・青木保(1984)「儀礼の象徴性」(岩波書店)は入手して内容を確かめることにします。

関連メモ

・縄文中期(加曽利E式期ごろ)には中部高地では土偶が大量に出土します。一方東京湾岸の大規模貝塚や房総では土偶がほとんど出土しません。なぜこのような特徴的分布がみられるのか、儀礼祭祀の生起・伝播とか、儀礼祭祀の競争・棲み分けなどの視点で学習したいと思います。


土偶(国宝縄文のビーナス)観察記録3Dモデル画像

土偶(国宝縄文のビーナス)(茅野市棚畑遺跡) 観察記録3Dモデル

この画像は記事内容とは関係ありません。

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