2024年6月18日火曜日

欧米考古学の新概念「物質性」の学習

 谷口康浩著「土偶と石棒 儀礼と社会ドメスティケーション」学習 6


Learning about the new concept of “Materiality” in Western archaeology


Study 6 “DOGU & SEKIBOU: Rituals and the Domestication of Society in Prehistoric Jomon” by Yasuhiro Taniguchi


In “DOGU & SEKIBOU” by Yasuhiro Taniguchi, I learned about the new concept of “Materiality” in Western archaeology for the first time. It was confusing, difficult, and I had a strong feeling that I would become interested and passionate about it. “Materiality” is not the physical properties of an object, but the force that an object exerts on people. As a side trip, I learned about the outline of “The Materiality of Stone” by C. Tilley on ChatGPT.


谷口康浩著「土偶と石棒」の中で、欧米考古学の新概念「物質性」をはじめて学習しました。戸惑い、難解、そして強い興味と熱中しそうな予感。「物質性」とはモノの物質的特性ではなく、モノが人に働きかける作用力です。寄道学習として、ChatGPTでC.Tilley著「The Materiality of Stone」の概要を知りました。

序章 儀礼考古学の現代的意義

2 儀礼考古学の研究法一モノ・行為・コンテクストー

(2)モノと物質性

・この小節では「物質性」への研究視覚の大切さを述べています。「物質性」といっても「モノ自体に備わる物質的特性ではなく、モノが人・社会・文化に働きかける作用力に目を向ける考え方である。」という点で、私には、難解です。

・石棒と土偶について次のように「物質性」について説明しています。

「たとえば、「石棒」は縄文中期に盛行した大形の棒状石製品であるが、なぜそれが木や土ではなく石で作られなければならなかつたのか、なぜそこまで大きく作る必要があったのか、なぜ特定の色調の石にこだわつたのかは正面から問われたことがない。これまでの石棒研究では主に頭部の形態による分類と型式編年が進められてきたが、その性格については、男根からの連想のような飛躍的解釈が起こりがちであつた。こうした限界を克服するための一つの方法が物質性の分析である。同時代の人々の石に対する意識や態度を問題に組み入れることで、形態からではわからない意識を読み取れる可能性がある。縄文人が石に特別な意識・感情を抱ぃてぃたことは、中期以降に顕著となる環状列石や配石遺構の発達ぶりからも窺い知ることができる。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

「物質性の点で石棒と対照的な性格をもつのが土偶である。土偶は縄文土器と同じく土で造形されるのが普通である。第5章で詳しく取り上げるが、土偶と土器はしばしば造形上で融合する関係にある。これは土器と土偶の製作者が同一であった可能性を示すだけでなく、土偶の象徴性が「土」という物質性に合致していたことによるものと考えられる。土偶の造形を軟質の石に写した岩偶も一部にあるが、土偶に比べれば数はきわめて少ない。縄文人たちの土に対する意識や観念形態を考察しなければならない。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・つぎの記述が著者の「物質性」に関する概念を端的に述べているものと推察します。

「どのような素材を選び、それにどのような姿態を与えるのか。そこに人々の意識や観念が凝縮される。だからこそ、そのモノが人の心を動かす作用力をもつことになるのである。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

・この小節の最後では、物質性の問題は欧米の現代考古学で主題化され研究対象になっている様子が記述されています。

「遺跡景観の現象学的な解釈を目指すC.テイリーは、巨石モニュメントなどの遺跡景観を単なる物理的空間としてではなく、それに関わった人々が身体を通して感じ取った経験や感情を物質化したものと捉え、巨石やある種の石材、あるいは特別な石斧などの「石」が人々の心にある知覚を喚起する力を内在させていたという見方を提示している(Tilly 2004)。」(谷口康浩著「土偶と石棒」から抜粋引用)

(図書のTillyは誤で正はTilleyです。)

【Christopher Tilley著「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」(2004)の寄り道学習】

参考文献に出ているChristopher Tilley著「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」(2004)の寄道学習(というか基礎情報収集)をしてみました。

1 webにおける図書の確認


web画面

出版社の説明文(翻訳)

ウェイン・ベネットとの共著 石英メンヒルの表面の絹のようなワックスのような質感から、他のメンヒルの木目調の質感、マルタ島の金色の蜂の巣状の石灰岩、スウェーデン南東部のカンブリア紀砂岩の凍った波のように冷たい質感まで、この本は石の感覚的な材質特性を調査します。触覚、音響特性、色、視覚的印象はすべて、先史時代の記念碑が持つ風景との関係における力と重要性を理解する上で重要な役割を果たしていることが示されています。『The Materiality of Stone』で、クリストファー・ティリーは、先史時代のヨーロッパの風景における「文化的」石と「自然」石の両方の重要性を分析する根本的に新しい方法を提示しています。ティリーの画期的なアプローチは、人間の経験を抽象的な分析的視線ではなく、多次元的で感覚的な人間の方法で解釈することです。研究対象は、先史時代のブルターニュのメンヒルからマルタの新石器時代の寺院、そして南スウェーデンの青銅器時代の岩の彫刻やケルンまで多岐にわたります。ティリーは、内部空間や景観設定が、そこに住んでいた人々にとって深い意味を持ち、今日でも同様に刺激的な遺物、物質、および関連する場所との関係でどのように解釈されるかについても検討し、徹底的な調査を行っています。私たちの過去の具体的な岩や石を通して人間の経験を理解するという革新的なアプローチにおいて、『石の物質性』は、物質文化研究の分野とヨーロッパ先史研究への理論的かつ実質的な大きな貢献です。

2 ChatGPT-4oからの情報

[質問]

図書

The Materiality of Stone

Explorations in Landscape Phenomenology

By Christopher Tilley

の概要や論旨の特徴について教えてください。

[回答]

Christopher Tilleyによる『The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology』は、ランドスケープ・フェノメノロジー(景観現象学)の視点から石の物質性を探求する学術書です。この本は、石がどのようにして人間の経験や文化に深い影響を与えてきたかを考察しています。以下に、本書の概要や主要な論旨の特徴を紹介します。

●概要

『The Materiality of Stone』は、物質性と景観が人間の感覚や意識にどのように影響を与えるかを分析することを目的としています。Tilleyは、石が持つ物理的特性とその文化的・社会的意味を探ることで、人々がどのようにして景観を経験し、解釈したかを明らかにしようとしています。本書は、フィールドワークや理論的考察を交えて書かれており、石が単なる物理的な存在以上のものであることを示しています。

●論旨の特徴

・フェノメノロジーのアプローチ

Tilleyは、現象学的手法を用いて、石と人間の関係を探求しています。彼は、人間がどのようにして石を知覚し、その物質性をどのように経験するかに焦点を当てています。これにより、石が持つ象徴的・文化的な意味が浮き彫りになります。

・景観の物質性

本書は、景観を単なる背景としてではなく、能動的な要素として捉えています。Tilleyは、景観の中の石がどのようにして人間の行動や思考に影響を与えるかを考察し、景観が社会的・文化的実践において重要な役割を果たすことを示しています。

・石の象徴性と社会的役割

石は、様々な文化において象徴的な意味を持ちます。Tilleyは、メガリスや墓石、道標などの事例を通じて、石がどのようにして記憶、アイデンティティ、儀式などに関与しているかを分析しています。石の物質性は、個人や集団のアイデンティティ形成や社会的関係の構築において重要な役割を果たします。

・フィールドワークと事例研究

本書は、具体的なフィールドワークに基づいています。Tilleyは、ヨーロッパの先史時代遺跡や現代の景観における石の使われ方を詳しく調査し、それらの事例をもとに理論的な考察を展開しています。これにより、理論と実践が結びつけられています。

・物質性の再評価

Tilleyは、物質文化研究における物質性の再評価を提唱しています。彼は、物質が人間の経験に与える影響を軽視せず、むしろその中心に置くことで、新たな理解を促進しています。

●結論

『The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology』は、石の物質性と人間の経験の関係を深く掘り下げた重要な学術書です。Tilleyの現象学的アプローチは、石がどのようにして文化的・社会的意味を持つかを明らかにし、景観の物質性に対する理解を深化させています。考古学や人類学、文化地理学など、さまざまな分野で参考にされる重要な研究です。

【感想】

「物質性」という概念はここで文字通りはじめての学習となり、戸惑いを禁じ得ません。しかし、とても面白そうな、そして重要であり、さらに自分が熱中しそうな概念です。このような欧米考古学を紹介した著者に感謝します。

欧米の情報はChatGPTが得意とする分野であり、実際に『The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology』の概要を詳しく知ることができました。ChatGPT恐るべしです。

ChatGPTの回答で「物質性」概念が少し身近になり、咀嚼できそうな予感が産まれました。

この図書電子版を即座に購入する衝動にかられましたが、自分の英語力をかんがみてやめました。パソコン機能による翻訳でも十分学習できる可能性があるので、将来状況が変化してどうしても読みたくなれば、購入することにします。

【参考】

ChatGPT-3.5による同質問に対する回答は次の通りです。内容基本は似ていますが、ChatGPT-4oの方がより詳細でわかりやすく、差別化されているようです。

[回答]

Christopher Tilleyによる「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」は、風景の現象学における石の物質性を探る重要な著作です。Tilleyは、考古学や人類学の視点から、石がどのように先史時代の人々の生活や文化に影響を与えたかを考察しています。この本の概要や論旨の特徴について詳しく説明します。

●概要

この本は、石の物質性とその文化的および社会的な意味を探るものであり、特に風景の中での石の役割に焦点を当てています。Tilleyは、物質文化に関する現象学的アプローチを用いて、石がどのように人間の経験や認識に影響を与えたかを分析しています。

●主な論旨の特徴

・現象学的アプローチ

Tilleyは、現象学の哲学的枠組みを用いて、石の物質性がどのように人間の意識や経験に影響を与えるかを探求しています。彼は、石を単なる物質としてではなく、人間と自然の関係を理解するための媒体として考えます。

・風景と物質性の関係

風景の中での石の存在が、どのように人々の認識や行動に影響を与えたかを詳細に分析します。石の配置や形状、質感が、儀式や社会的行動にどのように影響を与えたかを考察しています。

・文化的および象徴的な意味

石の物質性が持つ象徴的な意味や文化的な役割についても深く掘り下げています。Tilleyは、石が単なるツールや建築材料としてだけでなく、信仰やアイデンティティの象徴として機能していたことを強調しています。

・具体的な事例研究

Tilleyは、ヨーロッパ各地の具体的な遺跡や風景を取り上げ、それぞれの場所における石の役割や意味を詳細に分析しています。これにより、一般的な理論を具体的な実例で裏付けています。

・時間の流れと石の役割

石が時間を超えてどのように機能し続けるか、つまり長い歴史の中でどのようにその重要性が変わってきたかを考察しています。古代から現代に至るまでの石の持つ意味の変遷を追跡しています。

・重要な結論

物質と人間の相互作用:

石は単なる受動的な存在ではなく、人間の行動や文化を形成する能動的な要素であるという結論に至ります。

風景の動的な性質:

風景は静的な背景ではなく、常に変化し、人間の活動と相互作用する動的な存在であると述べています。

象徴的な力:

石の物質性は、その物理的特性だけでなく、象徴的な力によっても人々の生活に影響を与えることを示しています。

●結論

Christopher Tilleyの「The Materiality of Stone: Explorations in Landscape Phenomenology」は、石の物質性が先史時代の人々の文化や社会に与えた影響を現象学的視点から深く探求したものであり、風景考古学や物質文化研究における重要な文献です。石が物質としてだけでなく、象徴的な存在としても重要な役割を果たしていることを明らかにし、現代の私たちが過去の文化を理解する上での新たな視点を提供しています。


石棒の展示 尖石縄文考古館

この写真は本文記事と関係ありません。


0 件のコメント:

コメントを投稿