2024年8月16日金曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の骨角歯牙製装飾品分布と装飾品分布比較

 Distribution of bone, horn, and tooth ornaments in the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound and comparison of ornament distribution


A distribution map of bone, horn, and tooth ornaments excavated from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound was created. The distribution pattern is similar to that of shell ornaments, and two large and small dense areas can be observed. It is assumed that the two large and small dense areas were the sites of burial ceremonies.


有吉北貝塚北斜面貝層から出土した骨角歯牙製装飾品の分布図を作成しました。分布大勢は貝製装飾品と似ていて、大小2つの密集域が観察できます。大小2つの密集域はそれぞれ埋葬儀礼の場所であったと想定しました。

1 骨角歯牙製品の分類

有吉北貝塚の骨角歯牙製品リストでは骨角歯牙製品を次のように分類しています。

1 装飾品

2 釣針

3 鏃

4 刺突具、刺突具(骨針)

5 ヘラ状製品

6 刃器状加工品

7 加工品

8 その他

装飾品と他の種別(実用的種別)とは意義が異なり、骨角歯牙製品として一括して分布を考察するのは不適当と考えます。そこで、この記事では骨角歯牙製品のうち装飾品だけをピックアップして、その分布を考察します。

2 有吉北貝塚北斜面貝層 骨角歯牙製装飾品分布

有吉北貝塚北斜面貝層 骨角歯牙製装飾品分布

データ出典:発掘調査報告書

3DF Zephyr v7.531でアップロード


3Dモデル画像


3Dモデル動画


骨角歯牙製装飾品(発掘調査報告書から引用、印のあるものが北斜面貝層出土物)

3 メモ

メインに分布する域はガリー谷頭部付近の狭窄部と下流域の2箇所に観察できます。

4 土製・貝製・骨角歯牙製装飾品分布の比較

身体に着装できる装飾品を対象に、土製・貝製・骨角歯牙製出土物分布図を並べてみました。


有吉北貝塚北斜面貝層土製・貝製・骨角歯牙製装飾品分布の比較

[分布特性]

・散乱人骨集中域と土製耳飾集中域が一致します。土製耳飾を着装した遺骸がこの場所に埋葬されたという作業仮説を持つことができます。

・骨角歯牙製装飾品と貝製装飾品の分布集中域はそれぞれ大小の密集域が2つあり、その大小密集域の場所がほぼ一致します。

・骨角歯牙製装飾品と貝製装飾品の密集域(小)は土製耳飾密集域の近くに位置します。

[分布特性の解釈]

・土製耳飾は耳朶に開けられた孔にはめ込まれて使用するモノであり、肉体の一部として取り扱われ、遺骸と一緒に埋葬されたため、その分布と散乱人骨分布は一致したものと考えます。

・骨角歯牙製装飾品および貝製装飾品は衣類と同様に状況に応じて着脱を変化させるものであり、故人の肉体の一部という扱いではなく、所持品として扱われたと想像します。従って、埋葬時に遺骸に着装するものもあれば、着装しないものもあったと想像します。

・故人の使用装飾品で、遺骸に着装しなかった装飾品は、埋葬場所近くの埋葬儀礼の場で埋納されたと想像します。

・骨角歯牙製装飾品と貝製装飾品の密集域(小)は散乱人骨密集域に埋葬された故人の使用装飾品が、埋葬儀礼の場に埋納されたと考えます。

・骨角歯牙製装飾品と貝製装飾品の密集域(大)は、台地上の環状集落内墓に埋葬された故人の埋葬儀礼がこの場所で行われ、故人使用装飾品がこの場所に埋納されたと考えます。

[分布特性に関する学習課題]

・骨角歯牙製装飾品と貝製装飾品の密集域(小)から出土したモノは北斜面貝層に埋葬された縄文人が使用していたもの、密集域(大)から出土したモノは環状集落内墓に埋葬された縄文人が使用していたものと考えます(作業仮説します)。

・その双方の装飾品を詳しく比較することにより、埋葬場所の違いが集落内縄文人属性の何に対応するのかわかる可能性があります。


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