2025年12月17日水曜日

技術メモ 断面幅20㎝スリットから出土した遺物の分層別集計方法

 Technical Note: A method for counting artifacts by layer excavated from a 20cm-wide slit.


I developed a method for counting artifacts by layer excavated from a 20cm-wide slit. I used layer lines from Illustrator and Blender Python to count the artifacts.


断面幅20㎝スリットから出土した遺物の分層別集計方法を具現しました。Illustrator由来の分層線を利用してBlenderPythonで集計します。

1 断面幅20㎝スリットから出土した遺物


断面幅20㎝スリットから出土した遺物(11断面)

2025.12.06記事「11断面幅20㎝スリットから出土した遺物抽出」参照

2 断面幅20㎝スリットから出土した遺物の分層別集計方法

2-1 分層別集計用メッシュオブジェクト作成


分層と遺物分布

分層線はIllustrator由来のカーブ

遺物は点群で2つの属性(id,bunruicode)を具備しています。


S3混土貝層の集計用メッシュオブジェクト

分層線(カーブ)から押し出しと面貼りを利用して、遺物を完全に内包するメッシュオブジェクトを作成します。

2-2 BlenderPythonによる分層内遺物集計

集計用BlenderPythonをChatGPT支援で作成しました。集計は分層毎に行い、遺物リストと分類コード別集計(統計)の2つのcsvファイルを生成します。


集計と統計のcsvファイル

3 メモ

少し前まで、手にカウンターを持って、画面を見ながら数えるようなこともあったのですが、そうした活動はようやく過去のものとなりました。


2025年12月16日火曜日

技術メモ Illustratorで描いたパスをBlenderにプロットする方法

 Technical Note: How to Plot Paths Drawn in Illustrator to Blender


I plotted the shell boundary lines of a section drawing drawn in Illustrator to Blender as an SVG file. This eliminated the need to draw the same boundary lines twice in Blender.


Illustratorで描いたセクション図の貝層界線をSVGファイルでBlenderにプロットしました。これにより、Blenderで同じ界線を描く二度手間が解消されました。

1 Illustratorで描いたパスのBlenderプロット


Illustratorで描いたパスのBlenderプロット

Illustratorで描いた貝層界線(パス)をSVGファイル出力し、Blenderにインポートするとカーブになります。カーブの位置、大きさを正確に調整してからメッシュオブジェクトにすることにより、遺物点群集計などに使うことができます。


Illustratorで貝層界線(パス)を描いている様子


Illustratorで描いたパス

2 メモ

界線カーブをメッシュオブジェクトに変換し、押し出しにより厚みを持たせ、両側に面を貼ることで、貝層分層の姿に対応した3次元メッシュオブジェクトをつくることができます。このメッシュオブジェクトを利用して、スリットに分布する遺物を貝層分層毎に把握、集計できるようになります。


スリット分布遺物の貝層分層別集計用のメッシュオブジェクト

技術メモ セクション図を正確にBlenderにプロットする方法

 Technical Note: How to Accurately Plot Sectional Drawings in Blender


I've written a note on how to accurately plot sectional drawings in Blender. You can accurately plot them by calculating the image's center of gravity and size in the same units as the Blender3D viewport.


セクション図を正確にBlenderにプロットする方法をメモしました。Blender3Dビューポートと同じ単位で画像の重心位置と画像大きさを求めれば、正確にプロットできます。

1 セクション図を正確にBlenderにプロットする方法


セクション図を正確にBlenderにプロットする方法

1-1 画像重心位置、画像寸法を求める

画像ソフト(Illustratorなど)で画像の重心位置と寸法をBlender3Dビューポートと同じ単位で求めます。

画像ソフトによる計測値(例 pixel)を画像内スケール(例 Blender3Dビューポートで1mに該当する距離のpixel値)で換算してBlender3Dビューポート単位とします。

1-2 Blenderプロット

1-2-1 画像追加

Blenderに画像をメッシュオブジェクトで追加します(追加→画像→平面メッシュ)。次に画像の向きを回転で正しく調整します。

1-2-2 位置と寸法の記入

画像重心位置の数値をBlender→アイテム→トランスフォーム→位置の欄に記入します。

画像寸法の数値をBlender→アイテム→トランスフォーム→寸法の欄に記入します。

これで画像は正確にプロットされます。

2 メモ

発掘調査報告書掲載断面図は縮図略記トレースの過程で誤差が入り込んでいますが、セクション図原本から作成した図面はそれより誤差が少ないので、今後作成したセクション図のプロットを進めることにします。

3 参考

Blenderに画像をメッシュオブジェクトで追加する手順は追加→画像→平面メッシュです。この平面メッシュの説明が「画像ファイルからメッシュ平面を適切なアスペクト比で作成します」となっています。

この説明を読んで、「適切なアスペクト比に直されてしまう(縦横比を変更されてしまう)」可能性を心配したのですが、調べると、「画像ファイルからメッシュ平面を画像ファイル通りの正確なアスペクト比で作成します」という意味であることが判りました。


2025年12月15日月曜日

崩落層形成モデル

 Collapse Layer Formation Model


A model (schematic diagram) of the formation of the H Collapse Layer and I Collapse Sand Layer, deposited below the cliff at cross section 11 of Shell Layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound, was created. It is believed to be caused by a collapse of the upper part of the steep slope.


有吉北貝塚北斜面貝層11断面の急崖下に堆積しているH崩落層、I崩落砂層の形成モデル(模式図)を作成しました。急斜面上部の崩落に因るものと考えます。

1 H崩落層、I崩落砂層の形成モデル(模式図)


H崩落層、I崩落砂層の形成モデル(模式図)

H崩落層、I崩落砂層の形成は急斜面上部の崩落に因るものと考えます。

11断面以外の断面における崩落層の形成も全てこのモデルを基本に考えることができそうです。

2 メモ

崩落層にHという符号を、崩落砂層にIという符号を付与しただけで、これまで思考のピントが合わなかった崩落層形成モデルが浮かび上がってきたのですから、不思議です。思考対象物に名前を与えることはその対象物理解促進に直結します。


全貝層区分に名称(符号)を付与

 All shell layer sections have been given names (codes).


All shell layer sections in the representative cross sections (11 cross sections) of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound have been given names (codes). This will allow for a deeper understanding of the individual shell layers.


有吉北貝塚北斜面貝層の代表断面(11断面)の全貝層区分に名称(符号)を付与しました。これで貝層の個別認識が深まります。

1 有吉北貝塚北斜面貝層11断面の貝層区分名称


有吉北貝塚北斜面貝層11断面の貝層区分名称

G:基底砂層(貝を含む→11断面ガリー侵食地形形成時に貝殻投棄があった証拠)

V:混砂貝層(G当時のガリー流路堆積物)

D2:土層(Vに対応する土層)

D1:崩落砂層(D2の下位にある崩落砂層)

H:崩落層(大きなロームブロックを含む。この場に投棄され形成した貝層がある)

I:崩落砂層

K:黒褐色土(静水堆積物の層相)

W:混砂貝層(kと漸移するガリー流路堆積物)

D3:土層(Wに対応する土層)

Q:混砂貝層(上部は斜面性貝層)

R1:黒褐色混土貝層

S1:混土貝層

R2:黒褐色混土貝層

S2:混土貝層

R3:黒褐色混土貝層

X:混土貝層(R3に対応)

D4:土層(Xに対応)

S3:混土貝層

D5:土層(S3に対応)

2 貝層区分と営力との関係


貝層区分と営力との関係


貝層区分と営力との関係

G:基底砂層(11断面ガリー侵食地形形成時の水流)

V:混砂貝層(ガリー流路水流)

D2:土層(ガリー流路水流)

D1:崩落砂層(重力)

H:崩落層(重力)

I:崩落砂層(重力)

K:黒褐色土(ガリー流路水流)

W:混砂貝層(ガリー流路水流)

D3:土層(ガリー流路水流)

Q:混砂貝層(重力・葡行)

R1:黒褐色混土貝層(重力・葡行)

S1:混土貝層(重力・葡行)

R2:黒褐色混土貝層(重力・葡行)

S2:混土貝層(重力・葡行)

R3:黒褐色混土貝層(重力・葡行)

X:混土貝層(ガリー流路水流)

D4:土層(ガリー流路水流)

S3:混土貝層(重力・葡行)

D5:土層(ガリー流路水流)

3 メモ

全貝層区分に名称(符号)を付与することにより、それだけで貝層個別認識が深まりました。早速、H(崩落層)の由来(崩落システムの合理的イメージ)が脳裏に浮かんできました。


有吉北貝塚北斜面貝層 堆積順番による貝層区分

 Shell Layers on the North Slope of the Ariyoshikita Shell Mound: Shell Layer Classification by Depositional Sequence


The shell layer classification of the north slope of the Ariyoshikita Shell Mound (pure shell layer → shell-rich layer → shell-poor layer) is based on the volume ratio of shell content. This classification is only valid at a specific cross-section. Expanding the cross-section or crossing cross-sections makes it impossible to trace the continuity of the shell layers. Therefore, I decided to change the shell layer classification to one based on depositional sequence. This opens up the possibility of tracing the shell layer classification across the entire surface.


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層区分(純貝層→混土貝層→混貝土層)は貝殻分量の体積比に基づいています。この区分は特定断面ポイントだけで通用します。断面を拡げたり、断面をまたぐと貝層連続性を追跡できなくなります。そこで、貝層区分を堆積順番に基づく区分に変更することにしました。これにより貝層区分を面的に追跡できる可能性が生まれます。

1 発掘調査報告書における貝層区分


発掘調査報告書における貝層区分

発掘調査報告書における有吉北貝塚北斜面貝層の貝層区分(純貝層→混土貝層→混貝土層)は貝殻分量の体積比に基づいています。この区分は観察した特定断面ポイントだけで通用します。断面を拡げたり、断面をまたぐと貝層連続性を追跡できなくなります。これは斜面に投棄された全ての貝層が重力と葡行により貝殻分量の体積比が上から下に向けて大きく変化するためです。

セクション図には次のような記載がみられ、貝層が上部では貝混入率が低く(混土率が高く)、下部で高い(純貝層になる)という現実の姿が表現されています。

「高い方の部分には混土率が高く、下方にしたがい純貝層に近い」(S1について)

2 堆積順番に基づく貝層区分


堆積順番に基づく貝層区分

発掘調査セクション図では、貝層堆積順番が分層されています。この分層を現場写真の様子と対応させることができます。現場写真から貝層層相の様子(白い貝層か、黒い貝層かなど)を読み取ることができます。これらの情報、つまりセクション図分層区分と現場写真の対応から、堆積順番を示す貝層区分が可能であると考え、11断面でその試案を作成しました。

なお、貝殻が土と混ざりあっているのか(混土貝層、混貝土層)、砂と混ざりあっているのか(混砂貝層、混貝砂層)という区分が結果として、貝層形成の時期と関係していることを指摘できます。つまり、11断面で言えば、混砂貝層、混貝砂層は11断面附近ガリー侵食中から後の一定期間に、混土貝層、混貝土層はその後のガリー侵食の影響が収まった時期に対応しています。

3 貝層発達段階


貝層発達段階

3-1 第1段階

・11断面附近におけるガリー侵食の進行→基底砂層形成、崩落層形成、崩落砂層形成(貝混入、貝投棄あり)、混貝砂層形成(斜面性貝層)、混砂貝層形成(ガリー流路最下部)

・ガリー流路(断面垂直方向)のダムアップ→崩落層前面にK層(黒褐色土)形成

・ガリー流路ダムアップの解消→K層(黒褐色土)の上部侵食、混砂貝層形成(ガリー流路)

3-2 第2段階

・R1層(黒褐色混土貝層)、S1層(混土貝層)、R2層(黒褐色混土貝層)、S2層(混土貝層)形成

(R1層、S1層、R2層、S3層に対応するガリー流路堆積層がない。上流でのガリー侵食が虚弱で、堆積物材料の供給が無かったことを示唆する。)

3-3 第3段階

・R3層(黒褐色混土貝層)、混土貝層(ガリー流路堆積層)形成

(ガリー流路堆積が急速に進み、その時期がR3層に対応する。急激なガリー流路堆積は上流でのガリー侵食活発化による堆積物材料の多量供給を示唆する。)

3-4 第4段階

・S3層(混土貝層)形成

(混土貝層の量が多く、S3層形成期間が長かったか、貝採取量が多かったかなどの検討が課題となる。)

(ガリー流路堆積がほとんどない。上流におけるガリー侵食が虚弱で堆積物材料の供給がほとんどなかったと想定される。)

4 貝層形成に関わる主な営力


貝層形成に関わる主な営力

5 メモ

・R1層、S1層、R2層、S2層、R3層、S3層、K層の命名だけでは説明が困難なので、他の貝層も今後全て命名することにします。

・第1段階前半の事象つまり11断面附近でのガリー侵食進行にともない崩落層が生じた機構について検討を深めることにします。崩落層には貝や土器が含まれています。崩落層中に「ブロックではない貝層」も報告されていますから、崩落層形成中にも貝層投棄が行われた可能性があります。

・第1段階後半の地象つまりK層の形成やその上部侵食などの地学事象はとてもダイナミックであるので、検討を深めることとします。

・11断面貝層の検討からガリー流路上部の侵食の様子を推定することができそうです。

・貝層検討の次のステップは、11断面の検討を前後の断面(10断面、剥ぎ取り断面、12断面)に敷衍していくことです。


2025年12月10日水曜日

剥ぎ取り断面の貝殻方向記録ツールの試作

 Prototype of a Tool for Recording Shell Orientation in Stripped Sections


We developed a prototype tool in Python to record the orientation of bivalves in stripped sections of shell layers on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound (exhibited at the Chiba Prefectural Museum and Institute). Using this tool, we realized its potential for obtaining information related to the possible downslope migration of bivalves.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示)の二枚貝方向を記録するツールをPythonで試作しました。このツールを試用したところ、二枚貝が斜面移動した可能性に関わる情報を得られる可能性を実感しました。

1 剥ぎ取り断面貝殻方向記録ツール

1-1 ツールの機能

断面写真から二枚貝について次の情報をcsvファイルに記録します。

・二枚貝の位置座標

・二枚貝と断面の交差切片が水平と成す角度(+90°~0°~-90°)

・二枚貝の貝殻の上下方向

1-2 ツールに使う写真

剥ぎ取り断面の3Dモデルを作成し、そのオルソ投影画面を使います。これにより貝殻角度測定の精度が増します。この記事では便宜的に通常撮影写真を使いました。通常写真をオルソ投影できれば、それでも十分実用的に使えそうです。

写真には座標を設定するための正方形を描き込みます。

このツールを正式活用する時には剥ぎ取り断面単位(2m×2m)を区画割りし、その一部の小区画写真をツールに適用することになります。


剥ぎ取り断面写真(オルソ投影していない)


ツール試用に使った剥ぎ取り断面写真(500pixel×500pixel)

1-3 ツール操作と情報記録

Pythonスクリプトを起動すると次の画面が出ます。


最初画面

この画面で座標空間を設定します。正方形枠の左下をクリックするとその場所が(0、0)、右上をクリックするとその場所が(1、1)となり、座標空間が設定されます。

この座標空間設定画面で二枚貝の左端、右端をクリックし、上下ボタンのどちらかをチェックし、「この線分を記録」をクリックすると、線分が青線で、線分の中点が赤丸で表示されます。内部的に中点座標、線分角度、上下(1か2)が記録されます。


二枚貝角度記録画面(最初の1つの二枚貝の記入が済んだ状態)


二枚貝角度記録が進んだ画面

全ての角度記録が終わったら、「csv保存して終了」をクリックします。記録がcsvファイル保存されます。


csvファイル(一部)

2 ツールの試用実感

ツールの使用感は快適であり、このツールを本格活用できる感覚を得ることができました。

二枚貝角度記録画面とcsvファイルから、プラスの角度(右上がり)が少なく、マイナスの角度(右下がり)が多いことが判ります。また、上向き(上に凸)より下向き(下に凸)が多いことが判ります。これらの情報は二枚貝が斜面(右下がり)を葡行移動したことと関連する情報である可能性があり、有用情報を獲得できる可能性を実感しました。また二枚貝角度記録画面から、葡行移動の結果としての「構造」にアプローチできる可能性も感じました。

このツールを本格活用することにします。

3 関連ツールの作成

記録csvファイル(座標、角度、上下)を分析するツールを引き続き作成します。平面上で構造を浮彫にするツールや角度頻度グラフなどを予定します。

4 ChatGPT感想

このツール(Pythonスクリプト)はChatGPT支援で作成しました。基本部分は30分で、スクリーンショット書き出し部分は細部不都合の直しで2時間かかり、合計2時間半で完成しました。

ChatGPTの支援が無ければこのような機能実現は自分の実力ではほぼ不可能です。

自分の活動に果たすChatGPTの役割がとても大きなものであることを実感します。


2025年12月8日月曜日

分層線と地面との斜交問題

 Problem of oblique intersection of the bedding line with the ground surface


In many cross sections of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound, the bedding line intersects the ground surface obliquely. This problem has been resolved. The top of the shell layer was removed obliquely relative to the bedding line during pre-excavation topsoil removal.


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面の多くで、分層線が地面と斜交しています。この問題を解決しました。発掘前表土除去により貝層最上部が分層線に対して斜めに除去されたためです。

1 貝層分層線が発掘時地面と斜交している様子


貝層分層線が発掘時地面と斜交している様子

この斜交は5断面~12断面で観察できます。

2 発掘調査開始時点の地面の様子


発掘調査開始時点の地面の様子


発掘調査開始時点の地面の様子


発掘調査進行中の様子

発掘調査開始時点ではすでに表土とともに貝層の一部が除去され、既に貝層が全面的に露出しています。

また、調査用通路を確保するために貝層上部がL字状に掘削されています。

3 斜交発生の解釈

発掘調査開始前の表土除去において、貝層の深さが判らないために、貝層が出るまで、つまり貝層の最上部を除去して貝層が完全に露出するまでの表土を重機で除去したと考えられます。この時、形成した地面勾配が貝層分層線の勾配より浅い角度であったため、5断面~12断面全てで斜交問題が発生したと考えます。11断面を例に斜交問題発生を理解するための模式図を次に作成しました。


11断面 発掘前後の模式的理解

4 参考 表土除去前の北斜面貝層の様子

発掘調査における表土除去まえの北斜面貝層の様子がどうだったか、発掘調査開始(1984年)以前の空中写真から3Dモデル作成を試みました。

1975年撮影空中写真の2枚が利用できるので、3DF Zephyr Liteで3Dモデル化を試みたのですが、どんなに贔屓目にみても、参考になる3Dモデルにはなりませんでした。

しかし、肉眼立体視をすると、北斜面貝層の部分だけ斜面勾配が緩くなっている(感覚的には平坦になっている)が感得できます。


1975年撮影 有吉北貝塚北斜面貝層附近 肉眼立体視資料


2025年12月7日日曜日

geometry nodesによるスリットからの遺物抽出

 Extracting artifacts from slit using geometry nodes


I used geometry nodes to extract artifacts from 11 cross-section 20cm-wide slit in the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. Since I wasn't familiar with the logic behind geometry nodes, I struggled a bit with assembling them. Using geometry nodes is much easier than extracting artifacts from the original CSV file.


有吉北貝塚北斜面貝層の11断面幅20㎝スリットからの遺物抽出をgeometry nodesで行いました。geometry nodesの論理に慣れていないのでgeometry nodes組み立てに少し苦労しました。geometry nodesを使えば、元csvファイルから抽出するよりはるかに簡易です。

1 11断面幅20㎝スリットからの出土遺物抽出結果


遺物分布状況


11断面幅20㎝スリットからの出土遺物抽出結果

2 geometry nodes


11断面幅20㎝スリットから出土遺物抽出したgeometry nodes

3 メモ

geometry nodesの論理に慣れていないのでgeometry nodes組み立てに少し苦労しました。

「位置」、「XYZ分離」、「比較(小さい)」、「値」、「or(ブール演算)」の結び方が、出来てしまえば自明のこととなります。しかし、「位置」が最も左にくることに納得できなかったので、そもそも入力端子のない「位置」が必要なことが判らなかったので、長考となりました。

4 点群から特定範囲を抜き出す方法

点群から特定範囲を抜き出す方法について、次の4つの方法に気が付いています。

・元csvファイルからPythonやExcel機能で抜き出し、Blenderにプロットする。

・(今回例でいえば)上からオルソ投影画面にして、ボックス選択して抜き出す。(Shift+D、P)

ただし、この方法では範囲を正確に設定できません。ボックス位置をグリッドにスナップできません(Blender仕様)。ボックス位置を数値指定できません(Blender仕様)。

・geometry nodesで抜き出す。

・BlenderPythonで抜き出す。アドオンにすることも可能だと思います。

geometry nodesを使えば、元csvファイルから抽出するよりはるかに簡易で、今のところ自分にとって最も使い勝手のよい方法です。

BlenderPythonで抜き出す方法も簡易で使いまわしができますが、そのスクリプトの管理の手間が発生するので、長期的観点からみれば、geometry nodesの方が便利だと考えます。アドオンにすることも可能だと思いますが、現状では増えすぎたアドオンの管理の手間に手こずっています。


2025年12月6日土曜日

11断面幅20㎝スリットから出土した遺物抽出

 Extraction of artifacts excavated from 11 cross-section, 20cm-wide slit


Artifacts excavated from 11 cross-section, 20cm-wide slit on the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound were extracted. Next, a document was created that correlated the artifacts excavated from the slits with the cross-section of the shell layer in 3D space. This document will be useful for examining the formation of the shell layer from the perspective of artifact distribution.


有吉北貝塚北斜面貝層の11断面幅20㎝スリットから出土した遺物を抽出しました。次に3D空間の中で、スリット出土遺物と貝層断面図を対応させた資料をつくりました。この資料は貝層形成の様子を遺物分布の側面から検討できる有力材料となります。

1 11断面


11断面貝層断面図


11断面貝層断面写真

2 11断面幅20㎝スリットの遺物抽出


11断面幅20㎝スリットの遺物抽出


11断面幅20㎝スリット

11断面の幅20㎝(前後各10㎝)からなるスリットを設定し、そのスリット内の遺物を抽出しました。

●スリット内遺物

遺物件数:400

内訳

1 土器・土製品      90

2 石器・石        11

3 骨角歯牙製品       1

4 貝製品         13

5 骨・歯(魚類を除く) 274

6 貝            1

7 魚骨・鱗        10

3 11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応

11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応資料を作成しました。遺物は種別に色分しました。


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別


11断面幅20㎝スリットから出土した遺物の種別

4 「11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応」資料の画期的意義

「11断面幅20㎝スリットにおける遺物と断面図の対応」資料は、当該貝層断面図分層とほぼ直接的に対応する発掘資料が判明したという点で画期的です。3D空間の中で貝層は激しく変化します。従って記録された貝層断面図と出土遺物を直接的に関連付けることは一般に困難です。しかし、遺物3D分布資料を断面スリットで抽出することにより、この関連付けが可能となりました。この資料は恐らく本邦初出であると考えられます。

5 メモ

ここではスリット内遺物分布データを貝層分布検討の資料として扱います。

・遺物分布のパターンが貝層分層線の傾きと同じ部分が多く見受けられます。この対応関係は遺物と貝層が斜面に沿って移動しているという仮説を支持します。

・分層毎にみると斜面最上部より斜面中下部の方が遺物分布密度が高くなっているものが多くなっています。これも遺物と貝層が斜面に沿って移動しているという仮説を支持します。

・崩落層にも基底部を含めて遺物が散見されます。これは崩落層形成中にも貝殻投棄が行われたという貝層分析結果と整合します。

・K層からの遺物出土が極めて少なく、K層の由来(規模の小さな湖成層)想定と整合します。

6 技術メモ

11断面幅20㎝スリットの遺物抽出と種別表現は次の手順で行いました。

●北斜面貝層全部の遺物3Dデータ(csvファイル)からスリット分をPythonスクリプトで抽出する。

●抽出データ(csvファイル)をBlenderにBlenderPythonスクリプトで、属性情報付き点群としてプロットする。

●Blenderで、geometry nodesで属性情報の種別データを色分けしたICO球て表示する。


2025年12月4日木曜日

北斜面貝層断面図の基礎検討

 Basic Study of the Shell Layer Profile on the Northern Slope


I will be conducting intensive, in-depth basic research on the shell layer profile on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound for some time. Based on preliminary survey work, I have compiled a work plan. Ultimately, I aim to accurately compare the stratigraphical sections of all 15 profiles and compile a database.


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面図について突っ込んだ基礎検討をしばらくの間集中的に行います。予察作業にもとづき、作業企画をまとめました。最終的には全15断面の正確な分層対比を行い、データベース化を目指します。

1 検討イメージ

・5月にまとめたペーパー「有吉北貝塚北斜面貝層における3D空間分析用データベースの構築と活用」における検討をより精細な作業で見直すことからスタートし、その結果を全断面に波及させることを基本に検討します。

・詳しい情報が存在する11断面と、11断面から1m離れた剥ぎ取り断面(いつでも展示現物観察可能)をセットで「北斜面貝層の模式断面」として位置付け、詳しい検討を行います。

・剥ぎ取り断面では3Dモデルを活用して、貝殻の配向分析をおこないます。

2 検討ステップ

2-1 11断面検討分析

・セクション図詳細検討

・セクション図と写真の対応分析


11断面予察作業の様子

セクション図と写真との対応がつくなど、5月段階と比べて認識がかなり深まっています。

2-2 11断面と剥ぎ取り断面の対応分析

・剥ぎ取り断面分層検討

・11断面と剥ぎ取り断面の対応分析


11断面と剥ぎ取り断面

予察観察では11断面と剥ぎ取り断面の分層単位の正確な対比の思考が進みました。1mしか離れていませんが、11断面より剥ぎ取り断面の方が最上貝層の層厚が増します。

2-3 11断面と10断面・12断面との対応

・11断面と10断面の対応分析

・11断面と12断面の対応分析


10・11・剥ぎ取り・12断面の対応(5月作業)

予察として詳しく検討すると5月作業を修正すべき点が見つかりました。分層対比をより正確に進めることができそうです。

2-4 剥ぎ取り断面の3Dモデルによる精細分析

・貝殻種別サイズ分析

・貝殻配向分析

・層境界分析

・貝殻破損分析


3D方向傾斜計測のためのハマグリ計測面定義


剥ぎ取り断面3Dモデルにおける3D方向傾斜計測画面(Blender)

予察作業として、剥ぎ取り断面3Dモデルにおける3D方向傾斜計測をBlenderで実際に行いました。貝殻が密集しているので、作業が困難であり、3D方向傾斜計測は諦めることにしました。剥ぎ取り断面に投影される貝殻切片からX軸(ロール)角度の計測に限定して作業することになりそうです。

海外事例にはとても参考になるものがありますので、追って記事としてメモします。

2-5 全断面の対応分析

・10~12断面と13~15断面の対応分析

・10~12断面と2~9断面の対応分析

・10~12断面と1断面の対応分析

2-6 北斜面貝層の3Dモデル化

・分層単位の3Dモデル化作業


2025年12月1日月曜日

遺物3D分布データの断面連続撮影と動画作成

 Continuous Cross-Sectional Photography and Video Creation for 3D Artifact Distribution Data


When artifacts are densely distributed in 3D space, it becomes difficult to observe their interiors. To address this issue, I developed a continuous cross-sectional photography technique. Videos can also be created from the continuous cross-sections. This technology is an important tool for observing 3D artifact distribution data.


3D空間で遺物分布密度が高まると内部観察がしにくくなります。この不都合解決のために、断面連続撮影技術を開発しました。連続断面から動画もできます。この技術は遺物3D分布データ観察の重要ツールとなります。

1 遺物3D分布データの断面連続撮影


遺物3D分布データの断面連続撮影

Blender3Dビューポートに分布する遺物3D分布データの断面連続撮影をBlenderPythonで行いました。

事例は有吉北貝塚北斜面貝層の全遺物3D分布データ(点群データ)の一部です。

BlenderPythonで点群バウンディングボックスのXZ断面スリット(この例では幅0.1m)内遺物を断面に投影しました。

Y軸方向距離が18.5mあるので、断面画像は185枚生成しました。


生成断面画像例

2 断面連続撮影動画


断面連続撮影動画

遺物連続断面185枚を順に並べて、Premiere proで約1分の動画にしました。

3 メモ

3D空間において、遺物分布密度が高まると内部の様子が見にくくなるのですが、断面連続撮影画像、動画を使えば観察が容易になります。断面連続撮影技術は遺物3D分布データ観察の重要なツールとなります。


斜面貝層形成仮説とその検証方法

 The slope shell formation hypothesis and its verification method.


This image summarizes the slope shell formation hypothesis and its verification method. The hypothesis will be verified through cross-sectional observation and analysis of excavated samples.


斜面貝層形成仮説とその検証方法の概要を画像にまとめました。仮説検証は剥ぎ取り断面観察分析により行います。

1 斜面貝層形成仮説の検証方法


斜面貝層形成仮説の検証方法

斜面貝層形成仮説とその検証方法の概要を画像にまとめました。

仮説

・斜面上部からハマグリ、イボキサゴ、イボキサゴ破砕貝片などが投棄された

・重力と葡行現象により貝殻が移動し、斜面下部ほど選択的にハマグリが堆積した

仮説検証方法

剥ぎ取り断面の観察・写真による仮説検証

・種別サイズ分析(下部ハマグリ純層確認)

・貝殻配向分析(葡行現象の配向確認)

・層境界分析(連続的境界分布の確認)

・貝殻破損分析(下部ほど貝殻破損確認)

2 参考 剥ぎ取り断面画像


剥ぎ取り断面画像


剥ぎ取り断面画像(貝殻外縁線強調)

3 メモ

剥ぎ取り断面画像を細かく観察すると、上記検証ができそうな感覚を持つことができました。しかし、実際に詳細作業をして見なければ、本当に検証できるかどうかわかりません。現状で予定調和的に検証がうまくゆく保証はありません。リスキーな一抹の不安をともなう活動です。それだけに、この状況をなんとしてでも突破したいという強い学習意欲が湧いてきます。