ラベル 剥ぎ取り断面 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 剥ぎ取り断面 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年1月18日日曜日

11断面と剥ぎ取り断面の貝層分層対比作業

 Comparing the shell strata of the 11th section and the stripped section


The shell strata of the 11th section, for which a proposed shell strata division was created, were compared to the shell strata of the stripped section (exhibited at the Chiba Prefectural Museum and Institute), located 1 meter away. This was done using a cut-and-paste drawing of the 11th section, longitudinal section, and stripped section.


貝層区分案を作成した11断面の貝層区分を、1m離れた剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示)の貝層分層に対比しました。切り貼りして作成した図面「11断面-縦断面-剥ぎ取り断面」で作業しました。

この記事は次の記事の続きです。

2026.01.10記事「11断面と剥ぎ取り断面の貝層分層対比作業(前段作業)

1 11断面と剥ぎ取り断面の貝層分層対比結果

11断面と剥ぎ取り断面の貝層分層対比結果


剥ぎ取り断面の貝層区分(拡大図)

2 メモ

2-1 見込み違い

切り貼りして作成した図面「11断面-縦断面-剥ぎ取り断面」を利用することによって11断面と剥ぎ取り断面の貝層分層対比作業が疑念を産むことなくできると見込んだのですが、その見込みは甘いことに直面しました。その様子は次の記事に書きました。

2026.01.11記事「貝層縦断面図の限界

作業する中で、次の特性に気が付きました。

●貝層横断図

・層が急勾配で層構造が明瞭である。

・従って、現場での分層区分は精度が高い。

●貝層縦断図

・層が水平に近く層構造が不明瞭である。

・従って、現場での分層区分は精度が低い。

結論として、貝層横断図の媒介として貝層縦断図を万能的期待感を持って使うことはできないということを知りました。

今回の作業では、縦断面は参考として使うこととし、対比作業の基本は11断面と剥ぎ取り断面の分層構造類似性(分布類似性と層相類似性)によりました。

2-2 対比結果

・R3とXが接触する付近でのS3、X、R3、S2、R2、Kの対比を基本として対比作業を行いました。

・剥ぎ取り断面ではS1、R2が斜面の一部にしか分布していないという結果になりました。斜面上部ではどの分層も同じような層相になり、分層自体が困難になっていたと想像します。

・剥ぎ取り断面のKは時期により2つに分層できます。

・11断面のHではローム層ブロックが多く、剥ぎ取り断面Hではそのような記載になっていない(展示でも大きなローム層ブロックがみられない)ので、二つの断面の距離は1mですが、崩落の様子がかなり異なっていたと考えます。

・11断面kの位置と剥ぎ取り断面Kの位置・規模が異なります。また、剥ぎ取り断面Qが11断面Kの位置に層相する位置にまで分布しています。これらの様子からKが分布した要因について、これまでの自分の想定(HでせきとめられてKが堆積した)の再考が必要となる結果となりました。

・R1、S2、R2、S2、R3という分層とS3の規模が平仄があっていない感じがします。S3の細分分層があってもよいかもしれません。

・同じく、Qの細分分層があってもよいかもしれません。

2-3 今後の作業

当面、10断面、12断面について11断面貝層区分との対比作業をおこない、貝層発達の様子を観察していくことにします。


2026年1月10日土曜日

11断面と剥ぎ取り断面の貝層分層対比作業(前段作業)

 Comparing the shell strata of the 11th section and the stripped section (preliminary work)


I am currently working on comparing the shell strata of the 11th section, for which I have created a proposed shell strata classification, with the shell strata of the stripped section (exhibited at the Chiba Prefectural Museum and Institute), which is only 1m away. It's been a difficult process. First, as a preliminary step, I cut and pasted the 11th section, longitudinal section, and stripped section.


貝層区分案を作成した11断面の貝層区分を、たった1mしか離れていない剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示)の貝層分層と対比する作業を行っています。難渋しています。まず前段作業として11断面-縦断面-剥ぎ取り断面の切り貼り作業をおこないました。

この記事は次の記事の続きです。

2026.01.07記事「貝層分層対比のための作業インフラ完成

1 作業目標


作業目標

11断面では既に検討を深め貝層区分してあります。その貝層区分を剥ぎ取り断面の貝層分層に対比して、剥ぎ取り断面でも11断面と同じ名称で貝層区分することを作業目標とします。

2 前段作業

2-1 11断面と30断面(剥ぎ取り断面)と交差する縦断面の確認


11断面と30断面(剥ぎ取り断面)と交差する縦断面

11断面と30断面(剥ぎ取り断面)と交差する縦断面は17断面、32断面、1断面、20断面、22断面の5つあります。

2-2 11断面-17断面-30断面(剥ぎ取り断面)の交差に伴う断面図切り貼り


11断面-17断面-30断面(剥ぎ取り断面)の交差

11断面-17断面-30断面(剥ぎ取り断面)の交差は6隅有りますので、各隅について断面図の切り貼りをおこないました。

2-2-1 1隅


1隅


1隅断面図切り貼り(17断面-11断面)

2-2-2 2隅


2隅


2隅断面図切り貼り(11断面-17断面-30断面)

2-2-3 3隅


3隅


3隅断面図切り貼り(30断面-17断面)

2-2-1 4隅


4隅


4隅断面図切り貼り(17断面-30断面)

2-2-1 5隅


5隅


5隅断面図切り貼り(30断面-17断面-11断面)

2-2-1 6隅


6隅


6隅断面図切り貼り(11断面-17断面)

2-3 他の作業

他の縦断図(32断面、1断面、20断面、22断面)と11断面、17断面の交差に伴う断面図切り貼りも、必要に応じておこないます。

2-4 11断面と17断面の対比

断面図間対比例として11断面と17断面の対比をおこないました。


11断面と17断面の対比

この場合、図像的に問題なくすんなりと対比できます。対比できた範囲には10断面、9断面、8断面がありますから、11断面とこれらの断面の貝層区分対比は比較的に容易にできそうです。

2-5 11断面-17断面-30断面の対比

11断面と30断面は1mしかはなれていないのですが、17断面を介して図像的に対比が困難な部分が多くなっています。この問題の検討を含め、11断面-縦断面(17断面など)-30断面の対比は次の記事でおこないます。

2025年12月30日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 二枚貝角度計測用3Dモデル作成

 Creation of a 3D model for measuring bivalve angles on the cross section of the shell layer stripped from the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound.


A 3D model for measuring bivalve angles was created on the cross section of the shell layer stripped from the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound, which is on display at the Chiba Prefectural Museum and Institute. To create a 3D model optimized for measurement, 1,053 photographs were taken of the lower half of the cross section.


千葉県立中央博物館に展示されている有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の二枚貝角度計測用3Dモデルを作成しました。計測に最適化した3Dモデルとするため、断面下半部を対象に1053枚の写真を撮影しました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 二枚貝角度計測用3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 二枚貝角度計測用3Dモデル

撮影場所:千葉県立中央博物館常設展

撮影月日:2025.12.20


剥ぎ取り断面展示物全景

3DF Zephyr v8.038で生成 processing 1053 images

注)この3DモデルはSketchfab投稿可能とするためにポリゴンを1/10に削減しています。


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


3Dモデルの画像


撮影位置


撮影位置

2 二枚貝角度計測ツール

自作二枚貝角度計測ツール(Pythonスクリプト)を既に作成、試用してその実用性を確認しています。


二枚貝角度計測の様子

2025.12.10記事「剥ぎ取り断面の貝殻方向記録ツールの試作

3 メモ

撮影ポイントが自分の背の高さに規制されるため、3Dモデルの実用利用範囲は剥ぎ取り断面下から60~70%くらいに限定される見込みです。

スケールを3Dモデルに埋め込んでありますので、貝殻大きさの正確な計測(写真測量的精度)も可能な3Dモデルとなっています。斜面の上下で貝殻大きさの変化が見られる場合はその計測も追加して行い、貝殻葡行の実体解明資料とします。

3DF Zephyr Liteによる3Dモデル作成時間は、低密度点群作成に約1時間、高密度点群及び3Dモデル作成に約4時間、テクスチャ貼り付けに約30分かかり、合計約5時間半かかりました。

Sketchfab投稿3Dモデルは投稿サイズ制限があるため、ポリゴンを1/10に削減しています。計測作業に利用する3Dモデルとは異なります。


2025年12月28日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 下部小部分3Dモデル

 3D Model of a Small Lower Section of the Shell Layer Stripped Section on the North Slope of the Ariyoshikita Shell Mound


I created a 3D observation record model of a small lower section of the shell layer stripped section on the north slope of the Ariyoshikita Shell Mound, which is on permanent display at the Chiba Prefectural Museum and Institute. This is not a "showy 3D model," but rather a 3D model for detailed observation and measurement.


千葉県立中央博物館に常設展示されている有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の下部小部分について観察記録3Dモデルを作成しました。「見せる3Dモデル」ではなく、自分が詳しく観察計測するための3Dモデルです。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 下部小部分3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 下部小部分3Dモデル

撮影場所:千葉県立中央博物館常設展

撮影月日:2025.12.20


3Dモデルの範囲

3DF Zephyr v8.038で生成 processing 151 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


3Dモデルの画像(撮影ポイント表示)

2 メモ

剥ぎ取り断面の詳細検討の参考とするために、小部分の精細3Dモデル作成を試みました。撮影部分が粗の部分は穴あきが生じるなど「見せるモノ」にはなりませんが、自分が詳しく観察する資料としては十分に使える見込みです。

現場で貝殻と土器片以外の石器・貝刃などの遺物がないか詳しく観察したのですが、骨片以外の遺物は確認できませんでした。小骨片がこの3Dモデルの中にも幾つも観察できます。

土器片が全て表面(文様のある面)を下にして存在していることは注目に値します。急斜面葡行に関連した事象だと直観します。

同様の小部分3Dモデルを剥ぎ取り断面最下部についても作成中です。

今回撮影のメインは剥ぎ取り断面下部全体の3Dモデル作成用です。下部全体3Dモデル作成用撮影枚数は1053枚になりました。追って3Dモデル作成予定です。

これらの3Dモデルをじっくり観察・計測して、「現場」でないと判らない斜面貝層特性の把握に迫る予定です。

3 撮影許可

事前に電話で撮影許可をいただきました。

当初、必要な手続きを問い合わせたのですが、対応していただいた方は「考古資料室は撮影禁止になっているが、それは撮影禁止対象物が幾つかあるため便宜的に室全部を撮影禁止にしている。剥ぎ取り断面は本来撮影禁止対象ではないので、フラッシュを使わなければ撮影して結構です。」とのことでした。

現場で撮影していました。ところが、撮影がかなり進んだ段階で、撮影枚数ががあまりに多いのでボランティアの方に「不審者」と間違われ「すぐに帰ってほしい」との現場状況となりました。駆けつけた職員の方に説明して撮影を継続することができました。念のためその場で撮影許可申請も行いました。

今回撮影枚数は全部で1293枚で、少しずつ足をずらすカニ歩きで移動しながらシャッターを切るのですが、ボランティアの方には見慣れない行動であり、不安感を与えてしまったのかもしれません。なお、撮影と観察は2時間半ほど行いましたが、この間この展示を観覧した方は1組だけで、その方の観覧の時は撮影を自粛しています。

以前、別の館で同じ状況がありました。撮影が許される場所で、撮影枚数が多すぎるので撮影は止めて欲しいとの要請が職員の方からありました。撮影枚数が多くなると。3Dモデル作成などの技術知識が無い方には、撮影目的が理解できなくなってしまい、展示物に対して何か良くないことが生まれるという不安感が管理責任感の強い方に生まれるようです。


2025年12月10日水曜日

剥ぎ取り断面の貝殻方向記録ツールの試作

 Prototype of a Tool for Recording Shell Orientation in Stripped Sections


We developed a prototype tool in Python to record the orientation of bivalves in stripped sections of shell layers on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound (exhibited at the Chiba Prefectural Museum and Institute). Using this tool, we realized its potential for obtaining information related to the possible downslope migration of bivalves.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示)の二枚貝方向を記録するツールをPythonで試作しました。このツールを試用したところ、二枚貝が斜面移動した可能性に関わる情報を得られる可能性を実感しました。

1 剥ぎ取り断面貝殻方向記録ツール

1-1 ツールの機能

断面写真から二枚貝について次の情報をcsvファイルに記録します。

・二枚貝の位置座標

・二枚貝と断面の交差切片が水平と成す角度(+90°~0°~-90°)

・二枚貝の貝殻の上下方向

1-2 ツールに使う写真

剥ぎ取り断面の3Dモデルを作成し、そのオルソ投影画面を使います。これにより貝殻角度測定の精度が増します。この記事では便宜的に通常撮影写真を使いました。通常写真をオルソ投影できれば、それでも十分実用的に使えそうです。

写真には座標を設定するための正方形を描き込みます。

このツールを正式活用する時には剥ぎ取り断面単位(2m×2m)を区画割りし、その一部の小区画写真をツールに適用することになります。


剥ぎ取り断面写真(オルソ投影していない)


ツール試用に使った剥ぎ取り断面写真(500pixel×500pixel)

1-3 ツール操作と情報記録

Pythonスクリプトを起動すると次の画面が出ます。


最初画面

この画面で座標空間を設定します。正方形枠の左下をクリックするとその場所が(0、0)、右上をクリックするとその場所が(1、1)となり、座標空間が設定されます。

この座標空間設定画面で二枚貝の左端、右端をクリックし、上下ボタンのどちらかをチェックし、「この線分を記録」をクリックすると、線分が青線で、線分の中点が赤丸で表示されます。内部的に中点座標、線分角度、上下(1か2)が記録されます。


二枚貝角度記録画面(最初の1つの二枚貝の記入が済んだ状態)


二枚貝角度記録が進んだ画面

全ての角度記録が終わったら、「csv保存して終了」をクリックします。記録がcsvファイル保存されます。


csvファイル(一部)

2 ツールの試用実感

ツールの使用感は快適であり、このツールを本格活用できる感覚を得ることができました。

二枚貝角度記録画面とcsvファイルから、プラスの角度(右上がり)が少なく、マイナスの角度(右下がり)が多いことが判ります。また、上向き(上に凸)より下向き(下に凸)が多いことが判ります。これらの情報は二枚貝が斜面(右下がり)を葡行移動したことと関連する情報である可能性があり、有用情報を獲得できる可能性を実感しました。また二枚貝角度記録画面から、葡行移動の結果としての「構造」にアプローチできる可能性も感じました。

このツールを本格活用することにします。

3 関連ツールの作成

記録csvファイル(座標、角度、上下)を分析するツールを引き続き作成します。平面上で構造を浮彫にするツールや角度頻度グラフなどを予定します。

4 ChatGPT感想

このツール(Pythonスクリプト)はChatGPT支援で作成しました。基本部分は30分で、スクリーンショット書き出し部分は細部不都合の直しで2時間かかり、合計2時間半で完成しました。

ChatGPTの支援が無ければこのような機能実現は自分の実力ではほぼ不可能です。

自分の活動に果たすChatGPTの役割がとても大きなものであることを実感します。


2023年4月1日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定

 Assumed developmental history of stripped cross-sections of shell layers on the northern slope of Ariyoshi Kita Shell Mound


I observed the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, and hypothesized the development history of the shell layer. By imagining it in 3D space, I was able to make a more convincing assumption.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥ぎ取り断面を観察して、貝層発達史を想定しました。3D空間の中でイメージすることにより、より納得的に想定できました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定 模式3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定 模式3Dモデル

・ガリー侵食による堆積物の堆積面(1)に凹みがあり、斜面貝層(2、3)はその凹みを埋めるように発達します。

・初期斜面貝層(2)の層相は斜面では貝投棄の状況を反映して純貝層や混土貝層であり、凹みやガリー谷底では水流の影響を反映して混貝土層になります。

・途中期斜面貝層(3)では凹みを埋めつくしたため水流の影響が減じ、層相は谷底以外では純貝層や混土貝層になります。

・終期最初の斜面貝層では谷底も埋めつくされたため、層相は全て純貝層や混土貝層になります。

ガリー堆積物の地形面3D形状は説明のための誇張模式表現です。


3Dモデルの動画


発達史想定画像

2 参考 発掘調査報告書における発達史記述

剥ぎ取り断面から0.8m上流に位置する第11断面の発達史を発掘調査報告書では次のように記述しています。


第11断面の段階区分 発掘調査報告書から引用加筆

「第1段階 崩落した土砂が隅の方に堆積する。この堆積と同時か少し遅れて貝が投棄されており、本位置では土砂とともに上方(南側)から押し流されて堆積したと思われる混貝土層などが堆積する(K・L3・H3・G5・G6・G7・G9層など)。

第2段階 皿状となった窪地に、斜面上(西側)から投棄した貝が堆積する(F5・B2・F3・F2層など)。

第3段階 再び上方(南側)から土砂が、第2段階で投棄された貝とともに押し流されて堆積する(G4・G3・G2・S3・S2・S1層など)。

第4段階 ほぼ埋まった窪地にさらに貝が投棄され、窪地はほぼ完全に埋まり、テラスを持つ斜面となる(E1・C(1)・F1・F・A2・A1・B層など)。」(発掘調査報告書記述)

発掘調査報告書における発達史では斜面貝層形成の前半(第2段階)と後半(第4段階)の間に斜面貝層形成の中断時期があり、その中断時期(第3段階)にガリー谷底に土砂が押し流された時期があることになり、不自然です。第3段階にはこの断面では無いけれども上流で規模の大きな侵食が存在したから、この断面に土砂が流れてきたことになります。従って発掘調査報告書の発達史の説明を深めるためには、その侵食の存在を上流の断面図を使って指摘する必要があります。

なお、自分の見立てでは、斜面貝層が形成され始めてから以降、北斜面貝層では顕著な侵食作用は見られません。

顕著な侵食作用が存在しない証拠の一つは、断面右寄りで、左岸斜面貝層に起因する貝層と右岸に起因する土層がほぼ垂直に接していることです。左岸に起因する物質と右岸に起因する物質が混ざらないで下流方向のベクトルで移動しています。下流方向への移動(流れ)は虚弱であったと考えられます。顕著な侵食があるということは、勢いがあり運搬力の強い流れが生まれたことを示しますから、このような貝層と土層が垂直方向に接触することはあり得ません。北斜面貝層では貝や土器破片の水流による移動はきわめて限定的であったと考えることができます。

3 剥ぎ取り断面の発達史想定の検証方法

1で想定した発達史を前提にすると、貝層から出土する土器分布の観念は次のようになるはずです。


発達史想定に基づく土器分布の観念

今後北斜面貝層の土器3D分布と貝層3Dモデルとの対応分析を深め、その結果がこの土器分布観念にあてはまることになれば発達史想定の正さを検証したことになると考えます。


2023年3月27日月曜日

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の観察 ガリー堆積物

 Observation of stripped cross section of Ariyoshi Kita shell mound Gully sediments


I am observing the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, which is displayed at the Chiba Prefectural Central Museum. Since shells and pottery fragments can be observed in the gully deposits at the bottom, it can be inferred that the old slope shell layers have been eroded and lost.


千葉県立中央博物館に展示されている有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の観察をしています。最下部のガリー堆積物に貝殻と土器破片を観察できることから、古い斜面貝層が侵食され失われたことが推察できます。

1 ブロック状堆積物の分布

剥ぎ取り断面下部ではブロック状地層断片が乱雑に堆積しています。この堆積はこの場所でガリー侵食があり、それによる堆積物であると考えれらます。


ブロック状堆積物の分布

2 貝殻破片の分布

剥ぎ取り断面下部の堆積物には貝殻破片が混入しています。また一部には貝層そのものがブロック状になって堆積しています。


貝殻破片の分布


ガリー堆積物に貝層ブロックが含まれている様子

注 このブログでは「ガリー堆積物」とはガリー侵食により地層から剥がされた断片が重力と流水の営力で堆積したものを指すことにします。

3 土器破片の分布

剥ぎ取り断面下部の堆積物には土器破片が混入しています。


土器破片の分布


ガリー堆積物に土器破片が含まれている様子

4 ガリー堆積物の堆積面

1~3の情報を踏まえ、ガリー堆積物の堆積面を想定しました。


ガリー堆積物の堆積面

5 ガリー堆積物の検討図

1~4の情報を集成すると次図のようになります。


ガリー堆積物の検討図

6 メモ

発掘調査報告書では「第1段階 崩落した土砂が隅の方に堆積する。この堆積と同時か少し遅れて貝が投棄されており、本位置では土砂とともに上方(南側)から押し流されて堆積したと思われる混貝土層などが堆積する(K・L3・H3・G5・G6・G7・G9層など)。」と記述されています。

しかし、ガリー堆積物(発掘調査報告書でいうところの崩落土砂)に貝層ブロックと土器破片がふくまれているのですから、貝の投棄は崩落の前(ガリー侵食の前)であると考えられます。

つまり、古い斜面貝層の形成があり、土器投棄も行われていたある時期に、ガリー侵食が発生し、古い斜面貝層が失われたことが推察できます。

北斜面貝層から中峠式土器がまとまって出土するので、ガリー侵食で失われた斜面貝層には中峠式期頃の貝層が含まれていたのかもしれません。今後詳しく検討します。



2023年3月23日木曜日

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の全体画像

Overall image of the stripped cross-section of Ariyoshi Kita Shell Mound


I obtained the whole image and the facies classification diagram of the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, transformed the whole image using the Photoshop function, and projected it onto the facies classification diagram. I have prepared materials for deepening the study of the developmental history of shell layers.


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の全体画像と層相区分図を入手し、全体画像をPhotoshopパペットワープ機能により変形して層相区分図に投影当てはめました。貝層発達史学習を深めるための材料が揃ってきました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体画像


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体画像(上守秀明氏撮影)

剥ぎ取り断面作成担当者であった上守秀明さん撮影の有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体画像を入手しました。壁に立てかけてある剥ぎ取り断面を撮影した通常の中心投影画像です。剥ぎ取り断面の大きさをイメージできるように人物が写っています。

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面全体の写真はこの1枚の写真以外にはほとんど存在しないようです。

この写真の利用について許可していただいた上守秀明さんに感謝します。またこの写真存在を教えていだだき入手及び上守さんお取次の便をいただいた西野雅人さんに感謝します。

2 有吉北貝塚剥ぎ取り断面に関する資料

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の作成に関する次の資料の存在を千葉県立中央博物館から教えていただき、早速入手しました。

上守秀明・宮城孝之「報告 千葉市有吉北貝塚斜面貝層の接状剥離作業」、『(財)千葉県文化財センター研究連絡誌』20-1 1987年

この資料には剥ぎ取り断面作成方法の詳しい説明と断面位置図(北斜面貝層位置及び周辺地形図)、層相区分線図(接状剥離面土層断面図)が掲載されています。


断面位置図(北斜面貝層位置及び周辺地形図)

この位置図から剥ぎ取り断面は発掘調査報告書掲載断面11番と12番の間で、11番より0.8m下流側であることがわかります。


剥ぎ取り断面位置と発掘調査報告書断面位置の関係図


層相区分線図(接状剥離面土層断面図)


参考 発掘調査報告書11番断面


参考 発掘調査報告書12番断面

3 剥ぎ取り断面全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影

剥ぎ取り断面全体画像をPhotoshopパペットワープ機能を利用して変形し、層相区分線図(接状剥離面土層断面図)へ投影当てはめました。


剥ぎ取り断面全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

4 展示はぎとり断面3Dモデル画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

展示剥ぎ取り断面3Dモデルのオルソ画像を層相区分線図(接状剥離面土層断面図)へ投影しました。


展示はぎとり断面3Dモデル画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

5 展示剥ぎ取り断面画像及び全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

3及び4の画像を合成して展示剥ぎ取り断面画像及び全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像を作成しました。


展示剥ぎ取り断面画像及び全体画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像

6 剥ぎ取り断面写真

剥ぎ取り断面作成直前の清掃作業終了写真が発掘調査報告書に掲載されています。


剥ぎ取り断面写真

7 メモ

5の画像および発掘調査報告書における11番断面、12番断面とその説明、さらに6の現場写真から剥ぎ取り断面付近における検討材料が整いました。これらの材料を参考にしながら、千葉県立中央博物館展示剥ぎ取り断面の現場観察により貝層発達史学習を深め、その結果を仮説的にまとめることにします。