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2026年9月30日水曜日

横置展示深鉢を3Dモデルで正置して観察

 Observing a Deep-Bodied Vessel by Reorienting Its 3D Model to the Upright Position


I examined a deep-bodied vessel—which was displayed lying on its side—by creating a 3D model and reorienting it to an upright position on my computer. This revealed that the vessel had a slightly flared shape at its base. I also confirmed the existence of a similarly shaped deep-bodied vessel excavated from the same site (Dwelling Site No. 112).


横置して展示された深鉢を、観察記録3Dモデルを作成することによってパソコン内部で正置して観察しました。土器下部がわずかにラッパ状形状となっている深鉢であることが判りました。同じ112号住居跡から出土した深鉢に同じような形状のものがあることを確認しました。

1 横置展示された深鉢


横置展示された深鉢

2026年9月28日月曜日 深鉢(千葉市加曽利貝塚)観察記録3Dモデル

2 観察記録3Dモデルの正置と復元イメージ


観察記録3Dモデルの正置(Blender画面)


観察記録3Dモデルと土器形状復元イメージ(Blender画面)


観察記録3Dモデルの正置(Blender画面)


観察記録3Dモデルと土器形状復元イメージ(Blender画面)


観察記録3Dモデルの正置(Blender画面)


観察記録3Dモデルと土器形状復元イメージ(Blender画面)


観察記録3Dモデルの正置 下から(Blender画面)


観察記録3Dモデルと土器形状復元イメージ(Blender画面)


観察記録3Dモデルの正置 下から(Blender画面)


観察記録3Dモデルと土器形状復元イメージ(Blender画面)

3 復元イメージについて

観察記録3Dモデルから作成した復元イメージではこの深鉢の下部はわずかにラッパ形形状となっています。

この時期の加曽利B3式土器深鉢の下部がラッパ形になっている例を見かけないので、探してみました。

なんと同じ112号住居跡から出土した加曽利B3式土器の下部がかすかにラッパ形になっていました。


112号住居跡から出土した加曽利B3式土器

2019年6月8日土曜日 加曽利B3式土器 浅鉢及び深鉢 加曽利貝塚出土

断面形状がラッパ形になった理由は、この土器は大きく土器底部を厚みを持ってしっかりつくることが必要であったためであると考えます。つまり、ラッパ形を特段意図することなく、底とそれより上部を滑らかにすりつける結果としてラッパ形になったのだと考えます。


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【グッド&ニュー】(ブログ活動や生活・散歩中に思い浮かべた良い感情や考え、素晴らしいアイディアや注目すべき事柄)

堤防の淡いピンク色のコスモスの花に見とれました。子供のころからコスモスの花が好きです。子供のころコスモスの花と何か良い事柄が結びついた体験があったのかもしれませんが、思い出すことはできません。


2025年11月4日火曜日

石器の最近隣距離分布観察

 Observing the Distribution of Nearest Neighbor Distances for Stone Tools


I observed the 3D distribution of nearest neighbor distances for 2,045 stone tools excavated from the shell layer on the northern slope of the Ariyoshikita Shell Mound. The significant concentration seen with pottery is not observed with stone tools. Dividing the nearest neighbor distance into four levels from short to long reveals a gradual, three-dimensional zone with the sparsely distributed stone tools at the core and the space between them gradually filling in.


有吉北貝塚北斜面貝層の出土石器2045件の最近隣距離3D分布を観察しました。土器に見られるような顕著な集積は石器では観察できません。最近隣距離を短→長に4段階に分けると、まばらに展開する最短の最近隣距離石器を核に、その間の空間を次々に埋めるように展開する緩やかな立体ゾーンが観察できます。

1 石器 最近隣距離3D分布

1-1 石器 最近隣距離0.036~0.133m


石器 最近隣距離0.036~0.133m


斜め表示

1-2 石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m


石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m


斜め表示

1-3 石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m


石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m


斜め表示

1-4 石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m、0.579~2.743m


石器 最近隣距離0.036~0.133m、0.133~0.356m、0.356~0.579m、0.579~2.743m


斜め表示

2 メモ

・有吉北貝塚北斜面貝層の出土石器2045件の最近隣距離3D分布を観察しました。

・土器や人骨に見られるような顕著な石器集積は観察できません。

・最近隣距離を短→長に4段階に分けると、最短(最近隣距離0.036~0.133m)がまばらに分布していて、まるで石器分布全体の核のような存在のように感じられます。

・最短の分布図を拡大すると2つとか3つの石器が連なっている場合が多くなっています。試しに幾つかの最短で連なる石器種類をみてみると次のようになりました。


石器種類をみた最短(最近隣距離0.036~0.133m)石器の場所


石器種類

・同一石器が割れて2になり、それが最短の距離で分布している事例があるかもしれないという考えからこの作業を始めたのですが、そのような事例は無いようです。発掘調査報告書の石器実測図を調べると、2つの石器(別遺物番号)が接合するものが北斜面貝層で10程度あるのですが、いずれも距離が離れているようです。(土器や骨角歯牙製品では接合する複数の遺物が直ぐ近くから出土する事例があります。)

・まばらに展開する最短最近隣距離の石器の間の空間を埋めるように、それより長い最近隣距離の石器が次々に展開する緩やかな立体ゾーンが観察できます。


2025年5月25日日曜日

北斜面貝層断面露頭現物を観察できる重大意義

 The great significance of being able to observe the actual cross-sectional outcrop of the shell layer on the north slope


Even now, 27 years after the publication of the excavation report, the actual cross-sectional outcrop of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound can be observed. Therefore, the results of the 3D spatial analysis of the shell layer remains can be verified with the actual object. No matter how wonderful the information is, it is not always possible to fully accept it. However, if it can be verified with the actual object, the certainty increases dramatically.

The existence of the stripped cross-section is of great significance as an academic resource.


発掘調査報告書刊行後27年経った現在でも、有吉北貝塚北斜面貝層の断面露頭現物を観察できます。従って、貝層遺物3D空間分析結果を現物で検証できます。どんなに素晴らしい情報もそれだけでは完全に首肯できるとは限りません。しかし、現物で検証できれば確実性が飛躍的に高まります。

剥ぎ取り断面の存在は学術資料としての重大意義があります。

1 データベース活用事例 -データベースの貝層・遺物分布分析への試行的適用-

1-1 目的、方法、資料

目的:3D空間分析用データベースを検討空間(3D空間)に適用して貝層発達と遺物分布の関係を分析し、遺物種毎の分布特性を明らかにします。この分析活動を通じて、データベースの有用性を確かめます。

方法:Blender3D空間で貝層(分層)3Dモデルを作成し、それと遺物分布3Dモデルの空間対応関係を把握し、その結果を分析します。

資料:3D空間分析用データベース、発掘調査報告書(掲載写真を含む)、北斜面貝層剥ぎ取り断面(千葉県立中央博物館展示、現物観察できる貴重な資料、11断面と12断面の中間に位置する断面)。

1-2 検討空間の設定


検討空間位置

10断面と11断面に挟まれた3D空間を検討空間として設定しました。

2 北斜面貝層剥ぎ取り断面の重大意義

発掘調査報告書刊行後27年経った現在でも、有吉北貝塚北斜面貝層の断面露頭現物を観察できます。従って、貝層遺物3D空間分析結果を現物で検証できます。どんなに素晴らしい情報もそれだけでは完全に首肯できるとは限りません。しかし、現物で検証できれば確実性が飛躍的に高まります。

剥ぎ取り断面の存在は学術資料としての重大意義があります。

3 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

高さ4.3m、幅4.0m

撮影場所:千葉県立中央博物館常設展

撮影月日:2023.03.07


展示の様子

3DF Zephyr v7.003で生成 processing 396 images


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


製作された剥ぎ取り断面の全景(上守秀明氏撮影)


展示はぎとり断面3Dモデル画像の層相区分線図(接状剥離面土層断面図)への投影画像


2023年3月27日月曜日

有吉北貝塚剥ぎ取り断面の観察 ガリー堆積物

 Observation of stripped cross section of Ariyoshi Kita shell mound Gully sediments


I am observing the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, which is displayed at the Chiba Prefectural Central Museum. Since shells and pottery fragments can be observed in the gully deposits at the bottom, it can be inferred that the old slope shell layers have been eroded and lost.


千葉県立中央博物館に展示されている有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の観察をしています。最下部のガリー堆積物に貝殻と土器破片を観察できることから、古い斜面貝層が侵食され失われたことが推察できます。

1 ブロック状堆積物の分布

剥ぎ取り断面下部ではブロック状地層断片が乱雑に堆積しています。この堆積はこの場所でガリー侵食があり、それによる堆積物であると考えれらます。


ブロック状堆積物の分布

2 貝殻破片の分布

剥ぎ取り断面下部の堆積物には貝殻破片が混入しています。また一部には貝層そのものがブロック状になって堆積しています。


貝殻破片の分布


ガリー堆積物に貝層ブロックが含まれている様子

注 このブログでは「ガリー堆積物」とはガリー侵食により地層から剥がされた断片が重力と流水の営力で堆積したものを指すことにします。

3 土器破片の分布

剥ぎ取り断面下部の堆積物には土器破片が混入しています。


土器破片の分布


ガリー堆積物に土器破片が含まれている様子

4 ガリー堆積物の堆積面

1~3の情報を踏まえ、ガリー堆積物の堆積面を想定しました。


ガリー堆積物の堆積面

5 ガリー堆積物の検討図

1~4の情報を集成すると次図のようになります。


ガリー堆積物の検討図

6 メモ

発掘調査報告書では「第1段階 崩落した土砂が隅の方に堆積する。この堆積と同時か少し遅れて貝が投棄されており、本位置では土砂とともに上方(南側)から押し流されて堆積したと思われる混貝土層などが堆積する(K・L3・H3・G5・G6・G7・G9層など)。」と記述されています。

しかし、ガリー堆積物(発掘調査報告書でいうところの崩落土砂)に貝層ブロックと土器破片がふくまれているのですから、貝の投棄は崩落の前(ガリー侵食の前)であると考えられます。

つまり、古い斜面貝層の形成があり、土器投棄も行われていたある時期に、ガリー侵食が発生し、古い斜面貝層が失われたことが推察できます。

北斜面貝層から中峠式土器がまとまって出土するので、ガリー侵食で失われた斜面貝層には中峠式期頃の貝層が含まれていたのかもしれません。今後詳しく検討します。



2021年4月14日水曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 5

 縄文土器学習 579

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器について、便宜上、竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層別にその代表サンプルを観察しています。この記事は土坑出土加曽利EⅠ式土器4点を発掘調査報告書実測図・写真により観察します。

1 SK332 1番土器


SK332 1番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「1は口縁部に隆帯と沈線で渦巻文等を構成し、胴部には垂下する3本一組の沈線が渦巻文や剣先状モチーフを描くものである。」

キャリパー形の土器で主文様帯が口縁部にあり、胴部に垂下沈線があることなどから「正統」な加曽利EⅠ式土器であると理解します。沈線に渦巻文と剣先状モチーフが隣接して存在していますが、これはセットであり、次のSK164 72番土器説明の「有棘渦巻文」であると理解します。「有棘渦巻文」は大木式の影響を受けた文様であると理解します。

2 SK164 72番土器


SK164 72番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「72は細い粘土紐による有棘渦巻文等を口縁部文様帯にもつものである。」

次図のようにクランク文が基本的文様であり、それに有棘渦巻文が付いた文様であると理解します。


クランク文が基本で、それに有棘渦巻文が付属し、さらにクランク文の一部が細区画されたという理解

3 SK321 333番土器


SK321 333番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「333は上部に渦巻文を描いた4単位の把手を持つ波状口縁の深鉢である。図の正面と左側の把手上の渦巻文は、口唇部上を巡る沈線で連携し、それと対になるように裏側と右側のものが連携している。肥厚する口縁部無文帯部には指頭状工具による押圧が加えられ、胴部には地文縄文が施文される。」

器形がキャリパー形ではなく、埼玉編年(1982)でいう第2群土器(折衷土器)の一種であると考えます。SB190 2番土器に似ています。(2021.04.11記事「有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 2」参照


参考 SB190 2番土器

4 SK223a 3番土器


SK223a 3番土器 8群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「3は波頂部に渦巻文の付く波状口縁の深鉢で、口縁部には沈線で2本に分けられた隆帯によるクランク文が巡る。クランク文の先端は渦巻文になっている。明確な頸部無文帯は2本の沈線で胴部文様帯と画され、胴部には蛇行沈線と3本一組の直沈線とを交互に垂下する。」

波状口縁の波頂部渦巻文のあり方はSK321 333番土器と似ています。

[文様の意味に関する思考メモ]

・口縁部…天空界

・頸部無文帯…地上界と天空界の間の空(そら)

・胴部…地上界

・波頂部の渦巻文…吹き上がる理想の湧水

・口縁部渦巻文…湧水

・口縁部クランク文…理想の生活領域(理想の縄張り、海と陸の双方の空間を含む縄張り)

・クランク文隆帯を2つに分ける沈線…複数の独立したクランク文が隣接して描画されていることを強調している。

・胴部垂下蛇行沈線…河川

・胴部垂下直沈線(3本一組)…生活領域の区画(隣接集団(集落)との間で取り決められた活動権利区域)(3本の真ん中線…真の区画線、両側の線…隣接集団(集落)が相手領域を犯さないように定めた自主的区画線)

・口縁部と胴部の縄文…区画(生活領域)に存在する自然(植生)をパノラマ遠望的に表象する。

5 感想

・土坑出土土器片は南北斜面貝層出土土器片より大型のものが多いようです。土坑では完形土器や大型土器片を意図的に埋置する行為が多いことと、後年の撹乱が少ないことによると考えます。

・有棘渦巻文というテクニカルタームを知ることが出来ました。魔除け的な効果のある文様だと思いますが、大木式土器学習の中でその起源や意味について学びたいと思います。

・SK223a 3番土器を例に文様の意味に関する思考をまとめました。文様の意味に関する思考(検討、想像)は考古学分野の活動ではなく、神話学(古代心理学)分野の活動であると区別した上で楽しむことにします。


2021年4月12日月曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 3

 縄文土器学習 576

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器について、便宜上、竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層別にその代表サンプルを観察しています。この記事は南斜面貝層出土加曽利EⅠ式土器4点を発掘調査報告書実測図・写真により観察します。

1 南斜面貝層 269番土器


南斜面貝層 269番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「269は隆線によって口縁部ヨコ1次区画され、口縁部文様帯内には両脇に沈線を伴う1条の隆線が波状に横走している。地文は縦回転施文のRL単節縄文で、主文様の抽出以前に施されている。」

キャリパー形土器で、埼玉編年(1982)のⅨb期1群土器F類に該当すると考えます。


参考 埼玉編年(1982)Ⅸb期1群土器F類

2 南斜面貝層 273番土器


南斜面貝層 273番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「273は出土量が少ないが、本段階に特有の一類型で、ラッパ状に開く器形を呈し、口縁部外側を極端に肥厚させ、その上面を幅狭の口縁部文様帯とするものである。口縁部は3ないし4単位の波状を呈し、胴部が数段に区画されるものが一般的である。本例は口縁部文様帯が1条の横走沈線のみで、胴部は横走隆線と横走沈線(3条)によって区画され、最上段は無文、中断と下段にはRL単節縄文が縦回転施文されて中段には沈線が廻っている。」

曽利式土器の影響を受けた折衷土器というものでしょうか?

埼玉編年(1982)のⅨa期2群土器F類の類例として理解しておきます。


参考 埼玉編年(1982)のⅨa期2群土器F類

3 南斜面貝層 274番土器


南斜面貝層 274番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「274はキャリパー形土器の破片資料である。把手を有している。口縁部ヨコ1次区画の特徴から7群に含めたが、並行隆線の施文方法や口縁部文様帯内に縦位集合沈線が充填されていること等からみると中峠式に属する可能性がある。」

加曽利貝塚博物館企画展に展示された中峠式土器キャリパー形類似例ではヨコ1次区画隆帯に刻みが入っていて、この土器片は刻みがないので7群土器(加曽利EⅠ式土器)に入れたと理解しておきます。


中峠式土器例


中峠式土器例

4 南斜面貝層 325番土器


南斜面貝層 325番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「325は器形的にはキャリパー形を呈し内折するように内側が肥厚する口縁部には円筒形で中空の把手が付されている。口縁部文様帯は集合沈線のみで構成されており、その一部が加曽利E様式的な渦巻文状を呈している。頸部には無文帯が存在し、下端に巡る隆線によって胴部縄文施文帯との境界が画されている。口縁部Ⅰ+頸部Ⅱ+胴部Ⅲという文様構成から本群(8群)に含めたもので、口縁部文様帯の特徴から曽利様式系の資料と思われる。」

加曽利EⅠ式が曽利様式の影響を受けてつくられた折衷土器と理解しておきます。

5 感想

・「純粋」の加曽利EⅠ式土器以外の折衷土器が多いことに改めて気が付きました。折衷土器の意義について十分に考える必要性を痛感します。

・過去からの影響(例 中峠式土器の影響)と他の場所で発生し伝播してきた様式の影響(例 曽利式土器の影響)と、そもそもその場所で本流になりつつある生まれ出た加曽利EⅠ式の3つがカオスの状況にあったのが加曽利EⅠ式期であったと理解しておきます。

・中峠式の影響が濃い土器(A)、曽利式の影響が濃い土器(B)、純粋加曽利EⅠ式の土器(C)などの土器群分類と対応する事象があるかどうか興味が湧きます。例えば、A、B、Cの比率は竪穴住居、土坑、南北斜面貝層でほぼ同じなのか、違うのか。竪穴住居毎にみるとどうなのか。共伴出土石器種類構成と関連があるか、ないか。遺構内貝層の存否と関係があるか、ないか。・・・


2021年4月9日金曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察

 縄文土器学習 573

埼玉編年(1982)の加曽利EⅠ式に関する学習が曲がりなりにも完了しましたので、有吉北貝塚学習に戻り、有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器の観察を改めて行うことにします。

有吉北貝塚の竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層毎に代表的な加曽利EⅠ式土器を観察することにします。この記事では竪穴住居出土加曽利EⅠ式土器4点を観察します。

1 加曽利EⅠ式土器観察方法

発掘調査報告書から竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層ごと大型破片や復元個体の実測図・写真をデータベース化(カード化)して、そのカードを使って観察します。

2 SB096 4番土器


SB096 4番土器

中峠式から加曽利EⅠ式にかけての土器です。

埋葬人骨頭部を上下に挟むようにして出土した土器です。


SB096 4番土器出土の様子

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

埋葬人骨は埋葬後一度掘り返され、骨の切断等が行われ、再度埋葬されたことが判っていて、興味深い埋葬事例です。

2021.03.20記事「加曽利博研究講座「縄文を知る」を聴講する」参照

この埋葬に関する検討・学習は後日行うことにします。

発掘調査報告書では次のように記述されています。

「口縁部に渦巻文の退化した円環文を横位の隆帯で連携し、胴部は地文縄文上にくずれた波状文および3本一組の沈線を巡らした深鉢である。」

●感想

中峠式土器に見られる連携S字文の連携部分が円環になった(くずれた)ように見えます。口縁部に縄文がないこと、波状文が隆帯ではなく沈線であることから中峠式土器本来の姿が忘れられた時期(外面的様子だけ真似ればよいと考えられるようになった型式衰退期)の作であると考えます。逆に考えれば、加曽利EⅠ式最初期に該当する蓋然性が高まります。

3 SB100 2番土器


SB100 2番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「2は4単位の波状の把手を持つ深鉢である。肥厚した口縁部下端には、竹管による刻みを1か所につき2度ずつ施す。胴部には緩いくびれ部よりやや下に2本の沈線を巡らし、肥厚した口縁部直下の1本の沈線との間に沈線で幾何学文を描いたものである。底部の残っている部分には、底部の稜線を切るような刻みが90度振れた位置に1か所ずつみられる。」

加曽利貝塚博物館平成30年度企画展「あれもE・・・」ではこの土器を加曽利EⅠ式併行期土器として紹介しています。


加曽利EⅠ式併行期土器

加曽利貝塚博物館平成30年度企画展「あれもE・・・」展示の様子

●感想

この土器は埼玉編年でいう2群土器の一種であると捉えます。

4 SB090 5番土器


SB090 5番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「5は交互刺突文と刻みのある口縁部に大きな把手と小さな突起を対向させた深鉢で、頸部に巡らした沈線から直・蛇行沈線が垂下する。」

加曽利貝塚博物館平成30年度企画展「あれもE・・・」で展示されました。


展示された様子

●感想

器形は埼玉編年でいう2群土器に該当すると考えます。

垂下する直・蛇行沈線が加曽利EⅠ式土器であることを物語るのだと思います。

5 SB185  1番土器


SB185  1番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「1は無文の口縁部下に隆帯と沈線による渦巻文及び区画文の文様帯を持つ鉢である。渦巻文には大木8b式影響を受けた剣先状おモチーフが見える。」

●感想

加曽利EⅠ式土器らしい文様です。

口縁部付近の器形が「く」の字状に近いので、加曽利EⅠ式期の後半に近い時期のモノである可能性があります。