2023年4月1日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定

 Assumed developmental history of stripped cross-sections of shell layers on the northern slope of Ariyoshi Kita Shell Mound


I observed the stripped cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, and hypothesized the development history of the shell layer. By imagining it in 3D space, I was able to make a more convincing assumption.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥ぎ取り断面を観察して、貝層発達史を想定しました。3D空間の中でイメージすることにより、より納得的に想定できました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定 模式3Dモデル

有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定 模式3Dモデル

・ガリー侵食による堆積物の堆積面(1)に凹みがあり、斜面貝層(2、3)はその凹みを埋めるように発達します。

・初期斜面貝層(2)の層相は斜面では貝投棄の状況を反映して純貝層や混土貝層であり、凹みやガリー谷底では水流の影響を反映して混貝土層になります。

・途中期斜面貝層(3)では凹みを埋めつくしたため水流の影響が減じ、層相は谷底以外では純貝層や混土貝層になります。

・終期最初の斜面貝層では谷底も埋めつくされたため、層相は全て純貝層や混土貝層になります。

ガリー堆積物の地形面3D形状は説明のための誇張模式表現です。


3Dモデルの動画


発達史想定画像

2 参考 発掘調査報告書における発達史記述

剥ぎ取り断面から0.8m上流に位置する第11断面の発達史を発掘調査報告書では次のように記述しています。


第11断面の段階区分 発掘調査報告書から引用加筆

「第1段階 崩落した土砂が隅の方に堆積する。この堆積と同時か少し遅れて貝が投棄されており、本位置では土砂とともに上方(南側)から押し流されて堆積したと思われる混貝土層などが堆積する(K・L3・H3・G5・G6・G7・G9層など)。

第2段階 皿状となった窪地に、斜面上(西側)から投棄した貝が堆積する(F5・B2・F3・F2層など)。

第3段階 再び上方(南側)から土砂が、第2段階で投棄された貝とともに押し流されて堆積する(G4・G3・G2・S3・S2・S1層など)。

第4段階 ほぼ埋まった窪地にさらに貝が投棄され、窪地はほぼ完全に埋まり、テラスを持つ斜面となる(E1・C(1)・F1・F・A2・A1・B層など)。」(発掘調査報告書記述)

発掘調査報告書における発達史では斜面貝層形成の前半(第2段階)と後半(第4段階)の間に斜面貝層形成の中断時期があり、その中断時期(第3段階)にガリー谷底に土砂が押し流された時期があることになり、不自然です。第3段階にはこの断面では無いけれども上流で規模の大きな侵食が存在したから、この断面に土砂が流れてきたことになります。従って発掘調査報告書の発達史の説明を深めるためには、その侵食の存在を上流の断面図を使って指摘する必要があります。

なお、自分の見立てでは、斜面貝層が形成され始めてから以降、北斜面貝層では顕著な侵食作用は見られません。

顕著な侵食作用が存在しない証拠の一つは、断面右寄りで、左岸斜面貝層に起因する貝層と右岸に起因する土層がほぼ垂直に接していることです。左岸に起因する物質と右岸に起因する物質が混ざらないで下流方向のベクトルで移動しています。下流方向への移動(流れ)は虚弱であったと考えられます。顕著な侵食があるということは、勢いがあり運搬力の強い流れが生まれたことを示しますから、このような貝層と土層が垂直方向に接触することはあり得ません。北斜面貝層では貝や土器破片の水流による移動はきわめて限定的であったと考えることができます。

3 剥ぎ取り断面の発達史想定の検証方法

1で想定した発達史を前提にすると、貝層から出土する土器分布の観念は次のようになるはずです。


発達史想定に基づく土器分布の観念

今後北斜面貝層の土器3D分布と貝層3Dモデルとの対応分析を深め、その結果がこの土器分布観念にあてはまることになれば発達史想定の正さを検証したことになると考えます。


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