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2026年4月14日火曜日

第4断面分層記載の検討

 Examination of the Description of the Fourth Section of the Shell Bed


I have examined the fourth section of the shell bed on the north slope of the Ariyoshi North Shell Mound, based on the detailed description in the section diagram, to determine the major shell species, shell fracture rate, etc. The data is consistent with the preliminary interpretation of shell bed development.


有吉北貝塚北斜面貝層第4断面について、セクション図の詳細記載に基づき主要貝種、貝殻破砕率などについて把握しました。データは貝層発達予備解釈と整合します。

1 崩落層と斜面貝層の境


崩落層と斜面貝層の境

貝層か土層・砂層であるか、分布形状が不規則か斜面に沿った成層かなどを指標に崩落層と斜面貝層の区分を行いました。資料で砂層か混土貝層であるかの確認が十分にとれないところがあるので、崩落層と斜面貝層の境は斜面下部でA案とB案の二つになりました。

なお、右岸側は分層分布と記載から崩落層はないと判断しました。斜面貝層とそれぞれ対応する「斜面土層」が存在すると考えます。斜面貝層・「斜面土層」のそれぞれの分層は個別の高濃度流(貝殻泥流)の跡であると予備解釈します。

2 崩落層における貝殻分布


崩落層における貝殻分布

崩落層の各所から貝殻が検出されていて、崩落層形成前に貝層があったこと、あるいは崩落層形成中に貝殻投棄があったことがわかります。

3 主要貝種


主要貝種

斜面では全てイボキサゴウあるいはハマグリ・イボキサゴとなります。ガリー流路谷底付近ではハマグリあるいはイボキサゴとなります。ハマグリ(純貝層)がガリー流路谷底付近にのみ出現し、斜面に出現しません。この様子は、斜面の上(この断面には図示されていない、台地縁)から投棄されたハマグリ・イボキサゴ・(大量の)イボキサゴ破砕貝片などが高濃度流で斜面を流下し、貝殻の大きさでソートされて、相対的に大形のハマグリ貝殻が斜面下部に集中堆積したと考える予備解釈と整合します。

4 破砕率


破砕率

破砕率の数値は分層によってバラバラの値を示しますが、図示したように斜面と谷底では平均値が53%、22%と倍半分の関係になります。この様子も、ハマグリ・イボキサゴ・(大量の)イボキサゴ破砕貝片などが高濃度流で斜面を流下し、貝殻の大きさでソートされて、相対的に大形のハマグリ貝殻が斜面下部に集中堆積したと考える予備解釈と整合します。

5 メモ

第4断面に関連して、引き続き次の検討を行います。

・密集土器平面図・写真と断面との関係

・第4断面にかかる全土器、骨、他遺物の分布

・地山地形3Dモデルと第4断面との3D空間における関係

・高濃度流の推定

2024年12月14日土曜日

千葉市人形塚古墳地割線の検討 前方部

 Examination of the Chiba City Ningyozuka Tomb Land Division Lines - Front Part


Of the six Chiba City Ningyozuka Tomb Land Division Lines, four of the front part land division lines were examined, and their significance as planned design lines was clarified. Two of them are shoulder lines of the half-built tomb.


千葉市人形塚古墳地割線6本のうち、前方部地割線4本について検討し、計画設計線としての意味が判明しました。うち2本は半築古墳の肩線です。

1 地割線の呼称


地割線の呼称

2 前方部地割線の観察

古墳築造前の整地面に描かれた地割線を発掘時古墳3Dモデルに投影して観察しました。


発掘時古墳3Dモデルに投影した地割線 左側


発掘時古墳3Dモデルに投影した地割線 右側

この観察により、A~D線の計画設計線としての意味が次の通り判明しました。

2-1 A線とC線

地割線の内、A線とC線は発掘時古墳3Dモデルで上段斜面途中の標高38.2m付近に位置します。

この標高38.2mは後円部と前方部の境のくびれ部の高さに該当します。

そして、このくびれ部の高さで盛土が一度整地的平面を形成したことが土層断面の考察(発掘調査報告書の考察)から判明しています。

盛土施工では盛土の圧密沈下による変形や災害を防止するため、一般に段階施工が行われます。つまりある程度盛土した時点で、盛土を休止し、盛土の圧密沈下を待ち、ある程度圧密沈下が促進したところで次の盛土を行うことが一般的です。こうした盛土施工技術から、人形塚古墳でも一気呵成に古墳築造がおこなわれたのではなく、段階施工され、それは2段階であり、その高度が38.2mであったことが考えられます。つまり、A線とC線は半築古墳の肩線を表示していると考えることができます。


半築古墳の肩線にA線、C線が対応する様子


A線、C線の高さ

2-2 B線

B線は前方部頂部(天端)の左肩線と考えることができます。


B線が前方部頂部(天端)左肩線である様子を示す立体図 垂直比率:×3.0

2-3 D線

D線は古墳右にだけ存在する上部テラス(37.5m)の肩線です。


D線が上部テラス肩線を示す様子

3 メモ

前方部4本の地割線の計画設計線としての意味が全て判明しました。

A線とC線は左右対応する線で、古墳に投影すると墳丘上段斜面途中に位置するためその意味がこれまで不明でした。しかし、半築古墳(盛土段階施工における盛土休止状態の古墳)という概念導入によりその意味が解明できました。

B線が前方部頂部(天端)の左肩線である可能性はすでに論文「沼澤豊「千葉市人形塚古墳のいわゆる地割線について」(研究連絡誌、2008)」で触れられています。(しかし、結論としてA~C線は何らかの計画設計線であるという表現でまとめられています。)

D線がテラス肩線である可能性もすでに沼澤論文で触れられています。今回の3Dモデルによる検討で、D線は古墳右にだけしか存在しない上部テラスの肩線であることが判明しました。右側にだけ上部テラスが設けられたのは埴輪展示のスペクタクル観を醸し出すための特別の工夫であると考えることができます。形象埴輪は古墳右側のテラス、上部テラス、前方部頂部に展示されています。

なお、前方部の地割線も盛土が始まると全て埋もれてしまいます。従って施工実用性はありません。地割線の意味は後円部、前方部含めて、全て計画設計線ですが、全ての線に施工実用性がないことがわかりました。


2024年12月8日日曜日

千葉市人形塚古墳地割線の検討 後円部外円

 Examination of the land division lines of Ningyozuka Kofun in Chiba City - Outer circle of the rear mound


Of the six land division lines of Ningyozuka Kofun in Chiba City, I have examined the outer circle of the rear mound. The land division lines are unrelated to the shape of the mound at that point and have no practical use for construction. The assumed outer circle is the boundary line of the mound, but it was found that it was not drawn as a land division line.


千葉市人形塚古墳地割線6本のうち、後円部外円について検討しました。出土地割線はその箇所の墳丘形状とは無関係で、施工実用性はありません。想定される外円は墳丘境界線ですが、それは地割線として描かれなかったことが判明しました。

1 地割線の呼称


地割線の呼称

2 整地面範囲の詳細検討

次の3資料を対照させながら詳細に検討し、整地面の分布について検討しました。


地割線出土空中写真

左は生の地割線出土状況、右は地割線を現場で塗色した状況

千葉県教育委員会所蔵


墳丘出土空中写真(表土流土を除去した古墳写真)

地割線を投影描画している 千葉県教育委員会所蔵


土層断面図 発掘調査報告書掲載

その結果、次の整地面分布を作成することができました。


整地面分布図

3 メモ

整地面(地割線が描かれた、古墳築造直前の人工造成面)は旧地表面の上に約10cmの黒土を盛土して造成されています。この整地面は墳丘形状でつくられたことが整地面分布図から判明しました。

広い整地面がつくられ、その場所に地割線外円(F線)が全部描かれ、その地割線を手がかりにして掘削し、墳丘形状に仕上げたのではないのです。

設計図にある外円情報を基に整地面を造成し、地割線は墳丘形状に無関係な部分だけ描いたのです。

この事実から、発掘調査報告書、沼澤論文で指摘する地割線外円(F線)の施工実用性の論拠は完全に崩れます。

逆に墳丘形状に無関係な地割線外円(F線…下図の実線部分)をわざわざ描いた理由を見つける必要があり、重要な検討になります。その場の墳丘造成に無関係な設計線(外円の一部)を描いた特段の理由を説明しなければなりません。


地割線の立体分布

2024年12月6日金曜日

千葉市人形塚古墳地割線の検討 後円部内円

 Examination of the land division lines of Ningyozuka Kofun in Chiba City - Inner circle of the rear mound


Of the six land division lines of Ningyozuka Kofun in Chiba City, I have examined the inner circle of the rear mound. As described in the excavation report, it is a line at the foot of the upper part of the mound (a line at the end of the mound), but it has been found that it is not practical for construction.


千葉市人形塚古墳地割線6本のうち、後円部内円について検討しました。墳丘上段裾線(法尻線)であることは発掘調査報告書に記述されている通りですが、施工実用性がないことが判明しました。

1 地割線の分布


地割線の分布(整地面から出土した地割線を発掘時空中写真に投影表示した分布図)
(地割線は墳丘を全て除去した後に出現した古墳時代整地面から出土しています)
空中写真は千葉県教育委員会所蔵

地割線にA~Eの呼称を付けました。E線が後円部内円地割線です。

2 地割線の立体表示

これまでの検討で、後円部地割線が指示する高さは次の通り基準単位(24等分値)毎に理解できます。(人形塚古墳の基準単位(24等分値)は約1.03m)


後円部高さの模式的理解

この理解に基づいて地割線を3D空間のなかで表示すると次のようになります。


地割線の立体表示 空中写真は千葉県教育委員会所蔵

3 内円地割線(E線)の意味

内円地割線が墳丘上段裾線(法尻線)を示す設計線であることは既に発掘調査報告書、沼澤論文で指摘されています。

墳丘上段裾線(法尻線)は次の図の通り破壊されにくい特性があり、実際にその特性の通り築造時の姿形状で出土したことはとても重要な情報です。その高さ(37.2m)が地割線が指示する高さ検討の出発つ点となる最重要情報です。


墳丘上段裾線(法尻線)の特性

4 内円地割線(E線)の施工実用性

E線が描かれている整地面の高さは36.5mです。そしてE線が指示している高さは37.2mです。次の図に説明する通り、整地面に描かれたE線を使って上段墳丘盛土工事を開始することはできません。墳丘盛土斜面勾配は2割5分であり、盛土工事を開始するためには1.75m離れた場所に別の盛土開始線を描かなければなりません。


E線に施工実用性がない説明図

整地面に描かれてE線は設計線ですが、施工実用性の無い線であることが判明しました。

発掘調査報告書、沼澤論文ではともにE線を施工実用線としています。立体空間での検討が不足していたようです。

2024年1月28日日曜日

遺物台帳電子化データの標高別頻度分布検討

 Examination of frequency distribution of digitized relic register data by altitude


I created an altitude frequency distribution graph using the digitized data from the relic register (Ariyoshi Kita Shell Mound North Slope Shell Layer) and roughly observed its correspondence with the cross-sectional map of the shell layer. In the example examined, the appearance of the mixed-soil shell layer, where many excavated objects are found, appears to be expressed in the frequency distribution graph.


遺物台帳(有吉北貝塚北斜面貝層)電子化データの標高頻度分布グラフをつくって、貝層断面図との対応関係を大雑把に観察しました。検討例では出土物が多い混土貝層の様子が頻度分布グラフに表現されているように見えます。

1 Ⅱ-24メッシュ 10㎝刻み標高別 遺物出土頻度分布グラフ

これまで電子化作業した中で出土遺物総数が最大のⅡ-24メッシュを事例に、遺物全部、土器、石器、骨、貝製品について標高別頻度分布グラフを作成しました。


Ⅱ-24メッシュ 10㎝刻み標高別 遺物出土頻度分布グラフ

遺物全部頻度分布は大局的には28m付近をピークとする一つの山型として観察できます。遺物全部に占める骨の割合が多いので、骨の分布も遺物全部とほとんどおなじです。土器と貝製品は分布ピークが遺物全部より50㎝高い28.5mになります。土器と貝製品の分布が似ていて、土器と石器が一緒になって3D空間の中で偏在的分布している様子を想像できます。石器は分布ピークが遺物全部とおなじ28mです。土器・貝製品と石器の分布パターンが異なる理由は不明です。

2 Ⅱ-24メッシュ 標高10㎝刻み遺物出土頻度と貝層断面との対応


Ⅱ-24メッシュ 標高10㎝刻み遺物出土頻度と貝層断面との対応

Ⅱ-24メッシュは断面3と断面4に挟まれた場所に位置しています。断面3・断面4と標高10㎝刻み遺物出土頻度グラフの対応関係をみると、つぎの感想を持つことができます。

ア 混貝土層(黄色)より混土貝層(緑色)の方が遺物出土量が圧倒的に多く、その様子が標高別遺物出土頻度グラフに表現されている可能性があります。

イ アの結果から次の作業イメージをより確実にもつことができました。

●将来遺物分布図から遺物平面座標(X、Y)を取得して遺物台帳から取得した標高(Z)と組み合わせて遺物3D座標を入手できます。この遺物3D座標と遺物台帳から取得した層位情報(及び精細な貝層分布図)を組合わせることによって、より精細な遺物-貝層層位対応関係を知ることができることがみえてきました。

●Ⅱ-24メッシュの例でいえば、緑色の混土貝層が層状に斜めに空間分布しているのですが、この空間分布に対応して遺物密集域の分布を観察できることになります。そして、混土貝層では土器・貝製品あるいは石器などが偏在的に分布している様子が観察できることになります。


2023年7月6日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 土器破片3D空間密集度検討

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

Pottery Fragment 3D Spatial Density Study


Based on the 3D coordinates of the fragments obtained from the excavation report, I conducted a basic study of the 3D spatial density of the fragments.

In 3D space, I made a prototype index that shows how the pottery fragments are densely packed, and first examined it. This index deepens the image of the 3D distribution of pottery fragments.


発掘調査報告書から取得した土器破片3D座標から土器破片の3D空間密集度の基礎的検討を行いました。

3D空間において、土器破片が密集している様子が判る指標を試作し、まずは検討してみました。この指標により土器破片3D分布のイメージが深まります。

1 「土器破片の3D空間密集度」に関する試作指標

一つの土器破片について、北斜面貝層に存在する全土器破片との距離を計測し、その距離の逆数をもとめ、その距離逆数の総和を当該土器に関する密集値(r値)としました。

密集値が大きい土器ほどより近隣により多数の土器が存在していることになります。

次に密集値(r値)を類型区分して扱いやすく(直観的に理解しやすく)しました。

全土器について密集値(r値)をもとめ、その平均値(m値)と標準偏差値(s値)をもとめ、次の基準で全土器に密集度区分値(u値)を与えました。

r>(m+s)あるいはr=(m+s)の時 u=0

(m+s)>r>mあるいはr=mのときu=1

m>r>(m-s)あるいはr=(m-s)のときu=2

(m-s)>rのときu=3

密集度区分値(u値)0を与えられた土器破片は密集値が特に大きな土器破片です。

密集度区分値(u値)1を与えられた土器破片は密集値が大きな土器破片です。

密集度区分値(u値)2を与えられた土器破片は密集値が中程度の土器破片です。

密集度区分値(u値)3を与えられた土器破片は密集値が小さな土器破片です。

2 「土器破片の3D空間密集度」の3D分布図

「土器破片の3D空間密集度」の3D分布図

赤:密集値区分 特大

薄赤:密集値区分 大

薄青:密集値区分 中

青:密集値区分 小

土器破片の密集値は他の全土器破片との距離逆数の総和。

密集値区分は全土器について密集値(r値)をもとめ、その平均値(m値)と標準偏差値(s値)をもとめ、次の基準による。

r>(m+s)あるいはr=(m+s)のとき 密集値区分 特大

(m+s)>r>mあるいはr=mのとき密集値区分 大

m>r>(m-s)あるいはr=(m-s)のとき密集値区分 中

(m-s)>rのとき密集値区分 小


「土器破片の3D空間密集度」の3D分布図画像


「土器破片の3D空間密集度」の3D分布図画像


「土器破片の3D空間密集度」の3D分布図動画

3 メモ

土器の密集度という観点からみると北斜面貝層空間は密集中心空間と密集低減空間、さらに辺境空間というように明瞭にゾーニングされるように観察できます。

この様子が土器型式とどのように関連するのか、次の記事で検討することにします。


2023年7月1日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 縄文土器分布平面図・立面図の精度の検討

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

Examination of accuracy of Jomon pottery distribution plan and elevation


I examined the accuracy of when the pottery distribution plan and elevation were created, using two pieces of actual pottery information as a reference. It seems that about 80% of the 3D coordinates obtained from the excavation are expressed in the graph published in the excavation report.

土器3D座標を土器分布平面図・立面図から読み取りましたが、土器分布平面図・立面図がつくられたときの精度を2土器現物情報から参考として検討しました。発掘で得た3D座標の8割程度が発掘調査報告書掲載グラフに表現されているようです。

1 土器分布平面図・立面図の精度の検討

これまでの作業で、発掘調査報告書に掲載されている土器分布平面図・立面図(「北斜面貝層土器出土状況(1)~(4)」)から3D座標を読み取り、土器の3D分布を把握し、3D分析に着手できる基礎ができました。これから3D分析を進める上で、そもそもこの土器分布平面図・立面図がどの程度精度であるのか理解しておくことは必須であると考えます。そこで、2つの土器の現物情報から参考として精度を検討しました。


土器分布平面図・立面図(「北斜面貝層土器出土状況(1)~(4)」)の一部

1-1 精度検討方法

精度検討は、2つの土器現物(サンプル)について破片注記を全部観察記録して、どのメッシュから、幾つの数の遺物番号として出土しているのか調べました。

一方、発掘調査報告書掲載グラフから作成した土器破片3Dモデルについて、どのメッシュから、幾つの数の遺物番号していて出土しているのか調べた。

その双方の値は原理として一致するはずですが、実際に比較することによって、出土現物データがグラフにどの程度正確に反映されているのか、その精度を評価しました。

1-2 294番土器

1-2-1 294番土器の様子


294番土器

加曽利EⅡ式中~新段階深鉢

参考 3Dモデル

https://skfb.ly/oFZPH

1-2-2 土器現物破片注記読み取り結果


土器現物破片注記読み取り結果 画像


土器現物破片注記読み取り結果 Excel一覧表


土器現物情報による294番土器のメッシュ別平面分布図

12メッシュの広がりの中で23遺物番号(土器破片群)を確認できました。

1-2-3 縄文土器分布平面図・立面図から作成した3Dモデル


294番土器破片分布3Dモデル(Blender画面)


3Dモデルと土器現物情報によるメッシュ別平面分布図との対応

10メッシュの広がりの中で19遺構番号(土器破片群)を確認できました。

1-2-4 294番土器に関する精度評価

出土現物の情報がどの程度土器分布平面図・立面図に表現されているかという観点からその精度を見ると、約8割の情報(19/23)が土器分布平面図・立面図に掲載されてることが判りました。

約2割の情報はグラフ作成作業の中で欠落したのですが、その理由は手作業でグラフを作成するときの「単純な記載漏れ」であるように感得できます。具体的例として、土器現物からの情報では遺物番号が存在している2つのメッシュで、グラフからの情報では遺物番号がありません。この部分の遺物番号は立面図には出ているのですが、平面図にはでていないため3D座標を得ることができませんでした。

1-3 392番土器

1-3-1 392番土器の様子


392番土器

加曽利EⅡ式新段階鉢形土器

参考 3Dモデル

https://skfb.ly/oGBoM

1-3-2 土器現物破片注記読み取り結果


土器現物破片注記読み取り結果 画像


土器現物破片注記読み取り結果 Excel一覧表


土器現物情報による294番土器のメッシュ別平面分布図

5メッシュの拡がりの中で6遺構番号(土器破片群)を確認できました。

1-3-3 縄文土器分布平面図・立面図から作成した3Dモデル


392番土器破片分布3Dモデル(Blender画面)


3Dモデルと土器現物情報によるメッシュ別平面分布図との対応

4メッシュの広がりの中で5遺構番号(土器破片群)を確認できました。

1-3-4 392番土器に関する精度評価

出土現物の情報がどの程度土器分布平面図・立面図に表現されているかという観点からその精度を見ると、約8割の情報(5/6)が土器分布平面図・立面図に掲載されてることが判りました。6点あるべき情報の1点が欠落したのですが、その欠落実態は294土器と同じく、立面図には情報があるのですが、平面図に対応する情報がないため3D座標としては1点欠落となりました。図面が込み入っているため、表現出来ない場合は省略しているため、情報欠落が生じています。

1-4 土器分布平面図・立面図精度に関する感想

1-4-1 精度感想

2つの土器現物情報からみると、土器分布平面図・立面図精度は、本来収集された3D座標情報のうち約2割程度が欠落していると言えます。平面図には表現されているけれども立面図には表現されていない、あるいはその反対という事例がかなりありますので、本来情報の2割程度が欠落したという感覚はその通りだと思います。

40年前から25年前まで実施された発掘調査報告書作成作業では、紙媒体に手作業で濃密な情報を土器番号を判るように埋め込む作業です。その作業の困難さを考えると、情報が8割残ったということを素晴らしいこととして評価すべきかもしれません。

なお、情報の8割程度が残ったというのは、土器分布平面図・立面図に掲載された土器についての話しです。土器分布平面図・立面図に掲載されていない土器は発掘調査報告書掲載土器のうち約55%あります。

1-4-2 土器量の表現は抑制されている

土器分布平面図・立面図では同一土器破片が大量に出土した場合それを1つの遺物番号として、1つの記号で表示しています。しかし小さなかけらが独立して出土た場合でも1つの遺物番号が与えられ、1つの記号で表示されます。従って記号が密集する場所は確かに土器出土が多いのですが、その場所では同一土器多量土器片出土や大型土器片出土が多く、記号の密集状況イメージよりはるかに大量の土器破片が出土しています。発掘時に同一同時出土土器は多量でも1つの遺物番号とするという基準を踏まえると、土器分布平面図・立面図における土器密集域の土器量イメージはかなり抑制されて表現されていると言えます。

1-4-3 土器現物の注記観察に基づく土器3D座標取得

発掘調査報告書に掲載されている中期全土器(398)は保管されていて閲覧が可能です。この土器を全部閲覧して土器破片の注記(メッシュ番号、遺物番号)を読み取り、その情報をもとに遺物分布図と遺物台帳から遺物番号のついた土器破片(群)の3D座標を取得することが可能です。学習分析活動でその必要性が生まれたときにはこの活動に取り組むことにします。

【参考】

ほとんどの土器(復元土器)の注記読み取り(撮影→後日判読)は問題が少ないと想定します。しかし294土器のような大型土器では注記読み取りが困難です。294土器での実際の読み取りはカメラ解像度不足と自分の老齢による視力不足で不可能であり、千葉県教育委員会管理者のT担当官が見るに見かねてサポートしていただきました。T様がライトと拡大鏡を使って土器内部に身を乗り出して衰えていない眼力で注記を読み取り、私がそれを記録するという、ほとんど作業を代替していただくという特別なサポートをいただきました。T様に感謝申し上げます。

また、294土器3DのGigaMesh Software Framework展開で内面展開図ができていたので上記のT様サポート作業はスムーズに進みました。内面展開図がなければ、作業難渋は目に見えています。



2023年4月2日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層のガリー侵食堆積物の検討

 Examination of gully erosion deposits on the shell bed on the northern slope of Ariyoshi Kita Shell Mound


I examined the origin of the gully erosion deposits (collapsed soil in the excavation report) on the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. I thought it was the remnants of shell mound deposits from the Atamadai-style to Nakabyo-style periods.


有吉北貝塚北斜面貝層のガリー侵食堆積物(発掘調査報告書では崩落土砂)の素性について検討しました。それは阿玉台式期~中峠式期の貝塚堆積物の残骸であると考えました。

1 ガリー侵食堆積物の様子


有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面の発達史想定

参考 有吉北貝塚北斜面貝層剥ぎ取り断面 観察記録3Dモデル

剥ぎ取り断面を詳しく観察すると、最下層にはガリー侵食堆積物(発掘調査報告書では崩落土砂)が存在し、それを構成するものには黒土やロームのブロックとともに貝層のブロックも含まれています。また堆積物には貝殻片が少量ですが満遍なくといっていいほど含まれています。さらに土器片も含まれています。この様子から地表に貝殻や土器が投棄された斜面貝塚がかつて存在し、その貝塚がガリー侵食を受け、貝殻や土器を含んだ土砂が侵食崖付近に一部残り堆積したものと推察できます。

2 ガリー侵食堆積物に含まれる土器

北斜面貝層から出土する阿玉台式土器は一瞥しただけでガリー侵食堆積物から出土すると立体的にみて確認できるものがかなりあります。


ガリー侵食堆積物から出土したことが確認できる阿玉台式土器 第5断面


ガリー侵食堆積物から出土したことが確認できる阿玉台式土器 第9断面


参考 阿玉台式土器の分布

同様に、一瞥しただけでガリー侵食堆積物から出土すると立体的にみて確認できる中峠式土器がかなりあります。


ガリー侵食堆積物から出土したことが確認できる中峠式土器 第10断面


ガリー侵食堆積物から出土したことが確認できる中峠式土器 第11断面


参考 中峠式土器の分布

3 ガリー侵食堆積物の素性

今後土器出土場所と貝層層位の関係を精細立体的に分析します。しかし、ガリー侵食堆積物から阿玉台式土器と中峠式土器がかなり出土していることは確実ですから、ガリー侵食堆積物は阿玉台式土器や中峠式土器が投棄された場所(つまりその時期の斜面貝塚)が侵食されその残骸であることがほぼ間違いないと推測します。今後の3Dモデル分析精査活動が楽しみです。

4 北斜面貝層の発達史想定

精査活動前の現時点では次のような想定を心の中に持っています。この想定が正しいかどうか検証するスタイルで学習を深めることにします。

・縄文早期・前期に北斜面貝層の場所に土器投棄があった。

・阿玉台式期及び中峠式期に北斜面貝層の場所で斜面貝層が形成され貝殻と土器の投棄があった。

・中峠式期と加曽利EⅠ式期の間頃、北斜面貝層の場所で激烈なガリー侵食現象があり、阿玉台式期及び中峠式期に形成された斜面貝層は全て失われた。その残骸がガリー急崖付近に堆積した。

・加曽利EⅠ式期になるとガリー堆積物の上に斜面貝層が形成され出した。

・加曽利EⅡ式期になると斜面貝層形成が盛んとなり、加曽利EⅡ式中~新段階で貝層形成がピークとなり、ガリー地形は完全に埋め立てられた。

・加曽利EⅡ式新段階で斜面貝層形成が突然終わった。

5 感想

過去の学習では発掘調査報告書の記述に従い、(発掘調査報告書でいう)崩落土砂は貝層形成以前の地学現象で生じた堆積物であると考えていました。しかし、剥ぎ取り断面を観察して、つまり露頭現物を観察して、崩落土砂とは古い貝塚の残骸であることを確認できました。巨大な剥ぎ取り断面を後世に残された発掘関係者の方々に社会の隅っこから1市民として秘かに感謝する次第です。