2016年8月24日水曜日

上谷遺跡 主要墨書文字検討 その1

墨書土器データベース及びそれ以外の遺物データのGIS化が済み、いよいよ上谷遺跡の本格検討開始です。

墨書土器の検討から入ります。

この記事では上谷遺跡の主要墨書文字の検討を始めます。

1 上谷遺跡の主要墨書文字

上谷遺跡の主要墨書文字は次に示すように、得、西、竹、万の4文字です。

上谷遺跡墨書土器 文字別出土数

2 墨書文字得の出土域

墨書文字得のヒートマップと出土遺構を示します。

上谷遺跡 墨書文字 得ヒートマップと出土遺構

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)は次に示す得多数出土遺構が存在しているために生まれています。

上谷遺跡 墨書文字 得 遺構別出土土器数

得ヒートマップに掘立柱建物分布をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡 得ヒートマップと掘立柱建物

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)が塊状に分布する掘立柱建物群の1つに対応します。

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)はその近くで祭祀(酒宴)が行われ、得と墨書された土器が集団で打ち欠きされ、捨てられた(埋められた)場所であると考えることができます。

自分の当初予想と比べるとはるかに単純で明瞭な文字-遺構対応関係が読み取れます。

墨書文字得が集落内小集団に対応している可能性が生まれます。

3 墨書文字西の出土域

墨書文字西のヒートマップと出土遺構を示します。

上谷遺跡 墨書文字 西ヒートマップと出土遺構

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)は次に示す西多数出土遺構が存在しているために生まれています。

上谷遺跡 墨書文字 西 遺構別出土土器数

西ヒートマップに掘立柱建物分布をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡 西ヒートマップと掘立柱建物

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)が塊状に分布する掘立柱建物群の1つに対応します。

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)はその近くで祭祀(酒宴)が行われ、西と墨書された土器が集団で打ち欠きされ、捨てられた(埋められた)場所であると考えることができます。

得と同じように、自分の当初予想と比べるとはるかに単純で明瞭な文字-遺構対応関係が読み取れます。

墨書文字西が得とともに集落内小集団に対応している可能性が強まります。

4 墨書文字竹の出土域

墨書文字竹のヒートマップと出土遺構を示します。

上谷遺跡 墨書文字 竹ヒートマップと出土遺構

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)は次に示す竹多数出土遺構が存在しているために生まれています。

上谷遺跡 墨書文字 竹 遺構別出土土器数

竹ヒートマップに掘立柱建物分布をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡 竹ヒートマップと掘立柱建物

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)が塊状に分布する掘立柱建物群の1つに対応します。

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)はその近くで祭祀(酒宴)が行われ、竹と墨書された土器が集団で打ち欠きされ、捨てられた(埋められた)場所であると考えることができます。

得、西と同じように、自分の当初予想と比べるとはるかに単純で明瞭な文字-遺構対応関係が読み取れます。

得、西とともに墨書文字竹が集落内小集団に対応している可能性がさらに強まります。

5 墨書文字万の出土域

墨書文字万のヒートマップと出土遺構を示します。

上谷遺跡 墨書文字 万ヒートマップと出土遺構

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)は次に示す万多数出土遺構が存在しているために生まれています。

上谷遺跡 墨書文字 万 遺構別出土土器数

万ヒートマップに掘立柱建物分布をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡 万ヒートマップと掘立柱建物

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)が塊状に分布する掘立柱建物群の1つに対応します。

ヒートマップの赤色部分(集中出土域)はその近くで祭祀(酒宴)が行われ、万と墨書された土器が集団で打ち欠きされ、捨てられた(埋められた)場所であると考えることができます。

得、西、竹、万ともに自分の当初予想と比べるとはるかに単純で明瞭な文字-遺構対応関係が読み取れます。

墨書文字得、西、竹、万はが集落内小集団に対応していると考えて間違いないと思います。

6 主要墨書文字分布のまとめ

以上の検討結果をまとめると次のようになります。

上谷遺跡 掘立柱建物分布と墨書土器出土ヒートマップ及び主要文字

遺構や墨書土器ヒートマップから捉えていた上谷遺跡の構造、つまり南北に2分され、それぞれ2つの集団から構成されるという構造に、主要墨書文字が見事に対応していることが判明しました。

集落内小集団がその独自性を祈願語レベルで区別(識別)している様子の観察に成功したことになります。

2016年8月23日火曜日

花見川放水風景

今朝、大和田排水機場から印旛沼の洪水が花見川に放水されていました。

水の流れるざわざわした音は久しぶりです。

過去の観察体験からポンプ能力目いっぱいの120m3/sの放水が行われているようです。

音を立てて流れる花見川 2016.08.23 5:31頃

普段の同じ風景 2016.08.15

音を立てて流れる花見川 2016.08.23 5:36頃

普段の同じ風景 2016.08.15

音を立てて流れる花見川 2016.08.23 5:47頃

普段の同じ風景 2016.08.15

音を立てて流れる花見川 2016.08.23 5:49頃

普段の同じ風景 2016.08.15



2016年8月22日月曜日

参考 上谷遺跡 出土遺物GISデータのヒートマップ表現

2016.08.21記事「上谷遺跡 出土遺物GISデータ作成」で出土遺物GISデータを作成し、その概要を円グラフ分布図で表現しました。

円グラフ分布図は遺構から遺物がどのように出土しているか、その分布の様子を訴求力をもって表現することができます。

しかし、よくよく考えてみると、グラフ分布図で分布の様子を表現するということは、最終表現形式であると考えます。

話の最後に事柄の分布を訴求力をもって表現するためにグラフ分布図は有効です。

しかし、これから様々な検討を行う分析途上にあってはグラフ分布図は逆にそれを操作できない分だけ厄介になります。

グラフ分布図を操作して次のステップに進むことが困難です。

その点、ヒートマップは操作性に優れています。

そこで、2016.08.21記事「上谷遺跡 出土遺物GISデータ作成」と同じ情報をヒートマップで表現して、今後の検討に備えてみました。

なお、円グラフ対応データとヒートマップ対応データの変換方法はブログ花見川流域を歩く番外編2016.08.22記事「メモ 頻度データと全数データの変換操作」にメモしておきました。

1 上谷遺跡 墨書土器ヒートマップ

上谷遺跡 墨書土器ヒートマップと掘立柱建物分布オーバレイ

半径パラメータ25m

2 上谷遺跡 土器ヒートマップ

上谷遺跡 土器ヒートマップと掘立柱建物分布オーバレイ

半径パラメータ25m

3 上谷遺跡 金属遺物ヒートマップ

上谷遺跡 金属遺物ヒートマップと掘立柱建物分布オーバレイ

半径パラメータ25m

4 上谷遺跡 全遺物ヒートマップ

上谷遺跡 全遺物ヒートマップと掘立柱建物分布オーバレイ

半径パラメータ25m

5 検討

上に掲載した4枚のヒートマップが酷似していることが大変特徴的です。

特に墨書土器ヒートマップと金属遺物ヒートマップの分布状況が酷似していることから、集落における集団祈願行為と生産・防衛活動が密接に関係し、その場所が掘立柱建物群に囲まれた広場であることが判明しました。

墨書土器ヒートマップと土器ヒートマップの分布状況酷似は、土器というものが水や食品貯蔵、食器という実用機能をはるかに超えて、生産活動と密接な関係にある集団祈願行為の道具として重要な機能を有していたことを物語っていると考えます。

2016年8月21日日曜日

上谷遺跡 出土遺物GISデータ作成

墨書土器GISデータベースに続いて、墨書土器以外の出土遺物GISデータを作成しました。

1 上谷遺跡出土遺物GISデータの作成

GIS上の上谷遺跡遺構プロット図をcsvファイル出力するとその中に位置情報(緯度、経度)が含まれます。

この位置情報を含んだ遺構リストに発掘調査報告書に掲載されている遺物の数を項目毎に全て書き込みました。

位置情報を含んだ次のような遺物リストが完成しました。


上谷遺跡出土物GISデータ

このリストをcsv出力してGISに取り込めば遺物項目別分布図ができます。

この記事では上谷遺跡の概況を知ることとし、土器数、金属遺物数、全遺物数について検討します。

2016.08.20記事「上谷遺跡 墨書土器集中出土域と掘立柱建物群との関係」で墨書土器集中出土空間が掘立柱建物群と密接な関係にあることを明らかにしました。

最初に参考として墨書土器分布と掘立柱建物群との関係を再掲します。

2 参考 上谷遺跡 墨書土器

上谷遺跡の遺構別墨書土器出土数を円グラフで表現し、次いで、その図に掘立柱建物をオーバーレイ表示しました。

参考 上谷遺跡 墨書土器数円グラフ

参考 上谷遺跡 墨書土器数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

この情報から、墨書土器活動つまり集落生業集団が行う集団的祈願活動は掘立柱建物群近くの広場を中心に展開されていたことを想定できました。


3 上谷遺跡 土器

遺構別土器出土数を円グラフで表現すると次のようになります。

上谷遺跡出土土器数円グラフ

墨書土器は掘立柱建物群近くに集中して分布していました。

土器全体でみると、竪穴住居全体に分布しているとともに、集中出土域はやはり掘立柱建物群近くになっています。

土器は水の汲み置き、炊事や食事の食器として生活に必須ですから竪穴住居分布に密接にかかわるにも関わらず、密集出土域が掘立柱建物群近くであるということは、墨書土器活動の影響が強く表れているものと考えます。

つまり、実用機能を有する土器の分布は竪穴住居分布と似てくると考えますが、掘立柱建物群近くに土器集中域があるということは、掘立柱建物群近くの空間(広場)が集団が執り行う祭祀(酒宴)の場であり、人々が自分の竪穴住居から土器(墨書土器)をもちより、その場で打ち欠き捨てた(埋めた)のだと思います。

掘立柱建物群近くで祭祀(酒宴)が継続的に行われたため、その空間で土器出土が多くなっているのだと想定します。

上記分布図い掘立柱建物をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡出土土器数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

4 上谷遺跡 金属遺物

遺構別金属製品遺物出土数を円グラフで表現すると次のようになります。

上谷遺跡金属遺物数円グラフ

金属製品遺物とは紡錘車、穂積具、鎌、鍬、鉈、刀子、鉄鏃、鍵、釘、銙帯、馬具、不明品などを含みます。

これらの金属遺物は生産活動や集落防衛のために重要な道具ですから、その出土空間は集落機能上の重要ケ所を表現していると考えて間違いないと思います。

金属遺物全体の分布を見るとそのパターンが墨書土器分布のパターンと似ていることに着目せざるをえません。

上記分布図に掘立柱建物分布をオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡金属遺物数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

生産活動や防衛活動の重要ケ所が掘立柱建物群近くにあるということが判明しました。

5 上谷遺跡 全遺物

遺構別全遺物出土数を円グラフで表現すると次のようになります。

上谷遺跡出土遺物数円グラフ

墨書土器、土器、金属遺物というくくりで見た時、その分布の集中域が全て掘立柱建物群近くであるのですから、全遺物というくくりにしても、当然ながらその集中域は掘立柱建物群近くになります。

上谷遺跡出土遺物数円グラフと掘立柱建物分布オーバーレイ

上谷遺跡は掘立柱建物群が集落機能上の中心に位置づけられていたとイメージできると思います。

次の記事から遺物個別項目や墨書土器文字の出土状況を分析して、上谷遺跡の生業が何か、それと墨書文字集団との対応があるかなどについて検討します。





2016年8月20日土曜日

上谷遺跡 墨書土器集中出土域と掘立柱建物群との関係

上谷遺跡墨書土器出土ヒートマップを集落ゾーン推定図とオーバーレイ表示してみました。

上谷遺跡集落ゾーン推定図と墨書土器出土ヒートマップのオーバーレイ図

ヒートマップの赤色域(墨書土器集中出土域)が掘立柱建物集中域のa、b、c、dと1対1の関係で対応するように観察できます。

明瞭な特徴を発見することができました。

墨書土器集中出土域は竪穴住居や土坑と関係するのではなく、掘立柱建物と強く関係することが判りました。

この観察に基づいて、より具体的にデータをみてみます。

次の図は掘立柱建物分布と墨書土器出土ヒートマップをオーバーレイさせたものです。

上谷遺跡掘立柱建物分布と墨書土器出土ヒートマップのオーバーレイ図

4個所の墨書土器集中出土域は4個所の掘立柱建物群の縁辺に存在しますが、もっと精細に観察すると、縁辺というよりも掘立柱建物が墨書土器集中出土域を囲んでいるように観察できます。

墨書土器が多数出土する遺構は全て竪穴住居跡ですから、掘立柱建物群近くの廃絶して穴となった竪穴住居跡に多数の墨書土器が捨てられた(埋められた)という事象が想定できます。

この想定から掘立柱建物群で行われる活動と墨書土器活動(墨書土器を打ち欠き、穴に捨てる(埋める)活動)が密接に関係していることが判ります。

掘立柱建物は養蚕施設およびその関連施設(製糸、機織り、縫製、製品貯蔵)や漆器作成作業施設など付加価値の高い製品をつくる作業場、生産工場が主なものとして含まれると仮説しています。

この仮説が正しければ養蚕や乾漆などの生業集団による集団祈願行為(酒宴)が、労働の場である掘立柱建物近くの広場で行われたと考えます。

このような想定や仮説を検証すべく、墨書土器の文字や文字と遺物の共伴出土関係を引き続いて分析します。

なお、墨書土器10点以上出土遺構(全て竪穴住居跡)を円グラフにして掘立柱建物分布とオーバーレイすると次のようになります。

上谷遺跡掘立柱建物分布と墨書土器10点以上出土遺構円グラフのオーバーレイ図

この図から遺構ポイントレベルで掘立柱建物群と墨書土器集中出土域の関係をイメージすることができます。

なおこの図で西端(左端)2個所の墨書土器10点以上出土遺構だけが掘立柱建物の近くにはないことが判ります。

おそらく、この2個所は発掘区域の端であるため見かけ上このように観察できてしまうのだと思います。

発掘区域外西側にも掘立柱建物群があったのではないかと想像します。



2016年8月19日金曜日

上谷遺跡 墨書土器GISデータベース作成

上谷遺跡のGIS空間における遺構分布図が完成しましたので、そのデータに基づき墨書土器データベースのGIS化を行いました。

墨書土器データベースのGIS化プロセスとその結果についてメモしておきます。

1 上谷遺跡墨書土器データベースのGIS化

1-1 上谷遺跡墨書土器データベースの作成

最初に、千葉県墨書土器データベース(明治大学)から上谷遺跡分を抜き出したデータベースを作成しました。

上谷遺跡墨書土器データベース(位置情報なし、Excel画面)

1-2 上谷遺跡遺構位置情報ファイルの作成

上谷遺跡遺構分布図をGIS(地図太郎PLUS)に張り付けることによって遺構をGIS空間にプロットしました。

上谷遺跡遺構プロット図

遺構毎にプロット図をcsvファイル出力するとそれに位置情報が含まれます。

遺構(竪穴住居)のcsvファイル出力例(Excel画面)

1-3 墨書土器データベースと遺構位置情報ファイルのリレーション

墨書土器データベースと遺構位置情報ファイルをFile Makerに読み込み、その二つのファイルの遺構番号についてリレーションを繋ぐと、墨書土器データベースに位置情報を読み込むことができます。

2つのファイルを遺構番号でリレーションさせた様子(File Maker データベース管理画面)
(出土遺構、タイトルとも遺構管理番号を意味している)

上谷遺跡墨書土器GISデータベース(位置情報あり、File Maker画面)

このFile MakerファイルをExcel出力して、さらに必要情報だけを地図太郎PLUSに読み込めるようにcsv出力して地図太郎PLUSに読み込み活用します。

2 上谷遺跡墨書土器GISデータベースの空間プロット

位置情報を取得した墨書土器データベースを空間プロットすると次のようになります。

上谷遺跡墨書土器GISデータベースの単純プロット(みかけは墨書土器出土遺構プロット図と同じ)

画面上では墨書土器が出土した遺構のプロット図と同じですが、電子ファイルとしては遺構毎に多数のデータが重なって存在しています。

このデータからヒートマップを作成して墨書土器出土の密集域を表示しました。

上谷遺跡 墨書土器出土ヒートマップ
半径パラメータ25m

同じ情報を統計処理して遺構別出土数データを作成し、その遺構別出土数を円グラフで表示すると次のようになります。

上谷遺跡 墨書土器出土遺構別頻度円グラフ

墨書土器出土ヒートマップと墨書土器出土遺構別頻度円グラフと集落ゾーンの関係分析は次の記事で行います。


2016年8月18日木曜日

上谷遺跡 集落ゾーン区分推定

上谷遺跡の墨書土器や遺物の分布検討に入る前に、遺構分布から集落のゾーン区分推定を行います。

ゾーン区分推定を念頭に遺物検討を行えば、その解釈がより深まると考えます。

逆に遺物検討かゾーン区分推定をより合理的に修正することができます。

集落ゾーン区分とは集落を構成する小集団の生活領域をイメージします。

2016.08.17記事「上谷遺跡 遺構分布図作成」で竪穴住居、掘立柱建物、土坑の分布図ヒートマップを作成しました。

ヒートマップ作成に分布特性の操作性が高まりましたので、これを利用して集落ゾーン区分推定を行います。

1 遺構からみたゾーン区分

1-1 竪穴住居からみたゾーン区分

竪穴住居ヒートマップの赤い部分(竪穴住居が集中している部分)に○を書き、北から順番にA、B、C…をふりました。

上谷遺跡 竪穴住居からみたゾーン区分

竪穴住居の分布が6つの塊として把握できるのですから、この区分自体を集落ゾーンとして推定することも可能だと考えられます。

萱田遺跡群の発掘調査報告書では風景的に竪穴住居が密集している部分によりゾーン区分していますが、ヒートマップを使った区分はその風景的方法から主観性排除を進めたより合理的方法であると考えます。

1-2 掘立柱建物からみたゾーン区分

掘立柱建物ヒートマップの赤い部分(掘立柱建物が集中している部分)に○を書き、北から順番にa、b、c、dをふりました。

上谷遺跡 掘立柱建物からみたゾーン区分

aとbは隣接して、cとdも隣接して分布するという、対分布が集落内に2個所存在するという特異な分布になります。

同時にa・bよりc・dの方が高密集になっています。

このデータを利用して集落ゾーン推定を行う際に、掘立柱建物が集落内でどのような機能をもっていたかという事前想定が大切になります。

このブログでは近隣の船尾白幡遺跡で掘立柱建物が蚕小屋であったことを付きとめていますので、当座の検討ではそのようなイメージを参考として利用するとこととします。

掘立柱建物のメイン機能の一つが養蚕施設およびその関連施設(製糸、機織り、縫製、製品貯蔵)であったと仮説して検討を進め、その仮説真否の検証も行います。

同時に掘立柱建物が蚕小屋であったという例から発想を拡大させて、掘立柱建物が漆器作成施設であった可能性も想定します。

乾漆作業は繊細な作業であり、同時に付加価値の高い作業でもあるので家族が暮らす竪穴住居ではなく、専用作業場としての掘立柱建物で作業していたと考えるほうが合理的です。

掘立柱建物は作業場・生産工場・労働の場、竪穴住居は家族の生活の場、食事や就寝・休息の場と対比させてイメージしておきます。

1-3 土坑からみたゾーン区分

土坑ヒートマップの赤い部分(土坑が集中している部分)に○を書き、北から順番に1、2、3をふりました。

上谷遺跡 土坑からみたゾーン区分

1→2→3の順に土坑の密集性が高まります。

ただし、発掘調査報告書を読むと3付近では掘立柱建物の中穴である可能性の高いものも土坑として分類してあると書かれていますから、割り引いて考える必要があると思います。

土坑の機能にはいろいろあると思われ、今後具体的に検討したいと思います。

しかし、2が掘立柱建物密集域と離れていて竪穴住居密集域と隣接している事実に着目すると、土坑全体の機能は掘立柱建物より竪穴住居により強く関連しているように推察できます。

1-4 遺構ゾーン区分の重ね合わせ

以上の竪穴住居、掘立柱建物、土坑のそれぞれから見たゾーン区分を重ね合わせてみました。

上谷遺跡 遺構ゾーン区分重ね合わせ

この重ね合わせ図から次の対応を観察することができます。

……………………………………………………………………
竪穴住居-掘立柱建物

A-a
B-b

CD-c
EF-d

……………………………………………………………………
竪穴住居-土坑
A-1

CD-2
EF-3

……………………………………………………………………

竪穴住居(居住)と掘立柱建物(生産)の対が4つあり、さらにその4つの対が2つに集合しているという階層構造が観察できます。

1-5 集落内ゾーン推定

以上の検討(観察)から上谷遺跡集落内ゾーンを推定すると次のようになります。

上谷遺跡集落内ゾーン推定図

上谷遺跡は北ゾーンと南ゾーンに大きく2分して捉えることができます。その2分は掘立柱建物の2つの密集と対応しています。

北ゾーンと南ゾーンのそれぞれとも2つの竪穴住居群-掘立柱建物群ユニットから構成されます。

ただし、南ゾーンの竪穴住居群-掘立柱建物群ユニットの場合、竪穴住居群がさらにそれぞれ2つに分割して観察できます。

北ゾーンと比べて南ゾーンの勢力(竪穴住居や掘立柱建物の数量)が大きかったことが明白です。