2011年6月14日火曜日

下志津射場図 1

宇那谷川流域紀行11 下志津射場図 1

            「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」(千葉市発行)550、551ページ
このページには下志津射場図と演習場境界プロット図が掲載されています

1 下志津射場図の解読を目指す
 以前の記事「トーチカ五差路(遠近五差路)」で紹介したように「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」(千葉市発行)に下志津射場図が掲載されています。それに記載されている情報から、射弾下掩蔽部が遠近五差路の名称由来であることが判明しました。

 この下志津射場図を良く見ると演習場境界、使用区域区分、特殊演習場、危険予防上の注意区域の区域などの情報とともに、射撃陣地と射方向、射弾下掩蔽部、爆撃基本目標の情報が赤と青の色刷りで出ています。

 さらに基図の「注意」欄には「警戒旗掲揚ニ関スル規約」が掲載されており、実弾射撃をする使用区域毎に警戒旗掲揚場所の記述があります。その警戒旗掲揚場所の記号は「記号」欄に出ています。また「記号」欄には展望観測所、ペトン観測所、測点、警戒標などの記号も出ています。

 これらの「注意」や「記号」を手がかりにしてこの下志津射場図を解読すれば、下志津演習場の運用実態の一部を垣間見ることができそうです。

 また、「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」(千葉市発行)の424ページには「近衛師団管轄演習場規程」付図第六其二の一部が掲載されています。この図には射撃の目標を置いてはいけない区域や電気発火用疑砲火埋設線、畑貸与地などの情報が掲載されています。

            「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」(千葉市発行)424ページ
このページには「近衛師団管轄演習場規程」付図第六其二の一部が掲載されています

 下志津演習場の運用実態が少しでもわかれば宇那谷川流域(勝田川流域)ひいては花見川流域の成り立ちの理解が進みます。そうすれば私の興味である「花見川流域の魅力、アイデンティティを徹底的に探る」ことの歩みを進めることに役立つことがいろいろあるのではないだろうかと思うようになりました。軍事的な事柄を忌避するのではなく、正面から歴史的事実を知りたいと思います。

2 関連資料の入手
 下志津射場図を解読する手始めに、現物を一度手に取って確かめたくなりました。印刷の擦れもひどく読めないところもあります。また「近衛師団管轄演習場規程(別冊第一)」が出典であり、その「演習場規程」自体にも興味があります。

 「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」には付録として図版一覧があり、収録されている全ての情報について所蔵者を含む詳細情報が掲載されています。そこでこの図版一覧を調べたところ、下志津射場図(「近衛師団管轄演習場規程」付図)の所蔵者欄が空白です。そこで千葉市郷土博物館に問い合わせたところ、調べていただきましたが、判らないとの回答をいただきました。特殊史料であるため、情報提供者名を公表しない約束で情報提供を受けたなどの事情があったのかもしれません。

 現物にはたどりつけていないのですが、次の資料コピーを国会図書館で入手できました。
下志津射場図(昭和15年3月 野戦砲兵学校)
下志津射場図(大正15年3月 野戦砲兵学校)
 いずれも「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」収録カラー版の下志津射場図のカラー印刷部分を除いた基図部分の地図です。特に大正15年版は印刷が鮮明であり、文字や細かい図柄が完全に判るので、有用な資料です。

            下志津射場図(昭和15年3月 野戦砲兵学校)

            下志津射場図(大正15年3月 野戦砲兵学校)

 また、「近衛師団管轄演習場規程」原本が防衛省防衛研究所に所蔵されていることがわかり、近々閲覧できる状況になりました。しかし、残念ながら別冊付図は欠落しているとのことでした。

3 下志津射場図の解読に着手する
 「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」に収録されたカラー版下志津射場図の画像2点とモノクロ版基図のコピー2点をそのままGISに取り込み、情報を取り出し、他の資料(1万分の1旧版地形図〔大正6年測量〕)の情報と重ね合わせて、演習場の実態解明の作業に着手しました。
(つづく)

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