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2025年7月15日火曜日

土坑SK773A/B(千葉市有吉北貝塚)3Dモデル

 Pit SK773A/B (Ariyoshikita Shell Mound, Chiba City) 3D Model


I created a 3D model of two pits that are cut one after the other. As a beginner in Blender 3D modeling, this was a slightly more difficult task for me. When I observed the completed 3D model, I was reminded of the possibility of using A/B simultaneously, which was not possible from the planar and cross-sectional data.


切った切られたの関係にある2つの土坑の3Dモデルを作成しました。Blender3Dモデリング初心者の自分にとって少し難易度が上がった作業となりました。完成3Dモデルを観察すると、平面・断面資料からは生まれなかった、A/B同時利用の可能性を想起しました。

1 土坑SK773A/B(千葉市有吉北貝塚)3Dモデル

土坑SK773A/B(千葉市有吉北貝塚)3Dモデル


発掘調査報告書資料

3DF Zephyr v8.013でアップロード


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


3Dモデルの画像

2 モデリング技術メモ

2-1 モデリングの順番

土坑周辺の地面(a)、切った土坑概形(b)、切られた土坑概形(c)、土坑に掘られた穴5箇所(d)のパーツに分け次の順序でモデリング作業を行いました。

b→c→bとcの統合→d(5つ)→bとcの統合モデルとdの合成(5回)→a→bcd合成モデルとaの統合

2-2 ブーリアン合成(ユニオン)

段階的に下に凸形状で構成される土坑、陥穴、竪穴住居、炉穴などの縄文遺構ではブーリアン合成(ユニオン)が有用性あるツールになります。


ブーリアン合成イメージ


参考 資料の分析

3 メモ

「土器1~3はAに、土器4~6はBに帰属する。土器は両土坑ともに磨消文成立前後の加曽利EⅡ式がまとまっている。両土坑とも9群~10群土器の範囲でとらえる。ただし、遺物の出土状況はAよりBの方が新しい様相を呈している。」(発掘調査報告書から引用)

「遺物の出土状況はA(切った土坑)よりB(切られた土坑)の方が新しい様相を呈している。」との記述が具体的に何を指しているのか、断面図を見ても判りません。もしかしたら、覆土層の中に上下関係が観察され、B覆土層がA覆土層の上に乗っているように観察されたのかもしれません。

発掘調査報告書のこの記述を信じると、自分が抱いていた次のイメージが崩れます。

●資料から自分が抱くイメージ。

・土坑Bが掘られ、使われ、廃用となり、覆土で覆われた。

・覆土で覆われた土坑Bの近くで土坑Aが掘られ、土坑Aが利用された。土坑Aの壁の一部は土坑Bの覆土層である。

・土坑Aが廃用となり、覆土で覆われた。

発掘調査報告書記述から、次のような状況も検討する必要があると考えます。

●土坑A/Bの利用イメージ例

・土坑Bが掘られ、使われた。

・ある時期に土坑Aが掘られ、空間的に土坑Bと連結して、土坑A・B空間が同時に使われた。

・土坑A/Bが廃用になり、深い土坑A部分が先に覆土で覆われ、その後、浅い土坑Bが覆土で覆われた。この様子が覆土層に表現され、発掘調査者は、A覆土層の上にB覆土層が乗っているように観察した。


2025年7月11日金曜日

土坑SK082(千葉市有吉北貝塚)3Dモデル

 Pit SK082 (Ariyoshikita Shell Mound, Chiba City) 3D Model


I created a 3D model of a pit with two holes dug at the bottom that overhang the wall. It seems worthwhile to investigate why the holes overhang the wall.


底面に、壁面に対してオーバーハングしている穴が2つ掘られた土坑の3Dモデルを作成しました。穴が壁面に対してオーバーハングしている理由の検討は価値があるように感じます。

1 土坑SK082(千葉市有吉北貝塚)3Dモデル

土坑SK082(千葉市有吉北貝塚)3Dモデル


発掘調査報告書資料

3DF Zephyr v8.013でアップロード


3Dモデルの動画


3Dモデルの画像


3Dモデルの画像

2 メモ

自作Blenderアドオン「Bezier Z Interpolator」を使うことにより、精度の高い3Dモデリングが可能となり、3Dモデリング作業に対する納得感が少しずつ出てきました。

3Dモデルは底面の2つの穴のうち1つを除いたモデルを作成し、除いた穴のモデルを別につくり、ブーリアン(アドオンbool tool利用)で合成しました。


参考 資料の分析

土坑底面に、壁面に対してオーバーハングしている穴が2つ掘られています。2つの穴が底面に対してオーバーハングしている理由の検討は価値があるように直観します。方位に関連して風除けとか日射量などに関連するのでしょうか?そもそもこの土坑の利用の仕方自体が自分には全くわかっていません。当面は、考古学的考察ではなく、3Dモデリング技術習得に焦点を当てた活動を展開することにします。

2021年5月6日木曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅡ式土器の学習 土坑編

 縄文土器学習 592

有吉北貝塚出土加曽利EⅡ式土器の学習をしています。竪穴住居出土土器につづき、この記事では土坑出土土器を紙上観察します。

1 キャリパー形土器

1-1 第9群土器の例


sk446-468


sk534-577


sk811-1

いずれも口縁部と胴部の2段構成でsk446-468とsk534-577の胴部垂下文には磨消がありません。sk811-1の胴部垂下文には狭い胴部磨消が付いていて、発掘調査報告書ではこれを「磨消文の萌芽期」として捉え、10群に近い9群土器としています。

1-2 第10群土器の例


sk340-1


sk340-2


sk483-3


sk512-5

sk340-1、sk340-2、sk483-3は口縁部がよく巻いた渦巻文と区画文から構成され、胴部垂下文に磨消が付いている例です。sk512-5は口縁部が三角区画文で構成され、胴部垂下文に磨消が付いている例です。

1-3 第11群土器の例


sk77-1


sk238b-3


sk239a-189


sk239a-191


sk270-1


sk270-2

sk238b-3、sk239a-189、sk270-1、sk270-2は口縁部文様帯が退化した渦巻文と区画文から構成され、胴部に磨消懸垂文が付いています。

sk77-1、sk239a-191は口縁部文様帯が渦巻文から変化した円文と楕円区画文から構成され、胴部に磨消懸垂文が付いています。

2 口縁部文様帯のない土器

2-1 第10群土器の例


sk327-7


sk548-1

2-2 第11群土器の例


sk421-460


sk450-2

sk327-7とsk548-1が第10群土器であり、sk421-460とsk450-2が第11群土器とした決め手が何であるか、判るようでありながら判然としません。

3 連弧文土器


sk185-8

第11群土器とされる連弧文土器で連弧文が水平になっています。脚部が3足になっています。

4 感想

過去の加曽利貝塚博物館企画展「あれもE…」で展示された土器もいくつかあり、自分にとって土器分類が比較的わかりやすくなっています。

竪穴住居出土加曽利EⅡ式土器は典型例を揃えるのが困難でしたが、土坑出土加曽利EⅡ式土器は典型事例を揃えるのが容易です。その理由として、土坑では完形やそれに近い大型土器片が意図的に埋納された事例があるからだと想像します。特に第10群と第11群でその傾向が顕著ですから、集落最終段階で土坑がより積極的に祭祀を伴う用途で使われ、その時に完形やそれに近い大型土器片が埋納あるい残存したのかもしれません。今後で行う土坑学習の項で学習を深めることにします。


2021年4月22日木曜日

有吉北貝塚土坑分布図作成作業

 縄文社会消長分析学習 87

有吉北貝塚学習の基礎データ作成作業の一環として土坑一覧表のデータベース化(電子化)とその分布図作成(QGISプロット)を目指した作業を進めています。ようやく土坑データベースの祖型みたいなExcelファイルができましたのでその概要を集計しました。

1 有吉北貝塚土坑一覧表


有吉北貝塚土坑一覧表(部分)

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

2 有吉北貝塚土坑データの概要

有吉北貝塚土坑データは770あり、そのうち時期データがあるものは644(83.6%)あります。


有吉北貝塚土坑 出土土器による区分

時期データのあるもの、つまり土器群判定ができる土器が出土した土坑を土器群別に集計すると次のようになります。


有吉北貝塚土坑の土器群別集計

この集計は一つの土坑が複数土器群に対応する場合、各土器群に1を按分比例した値を与えて集計しています。

例えば、ある土坑の土器群欄に7~9群と記載されている場合、7群、8群、9群にそれぞれ0.33333の土坑が存在していると仮想します。

7群(加曽利EⅠ式頸部無文帯成立以前)と9群(加曽利EⅡ式胴部磨消懸垂文成立以前)にピークが見られます。

このグラフをより要約して土器型式別に整理すると次のようになります。


有吉北貝塚 土器型式別にみた土坑数

有吉北貝塚の土坑は加曽利EⅠ式で急増し、加曽利EⅡ式でピークを迎え、その後壊滅的に急減したと表現することができます。

3 土坑データベースの作成とQGISプロット

今後、土坑一覧表の他のデータを電子化してデータベースとして利用できるようにします。

同時に770土坑をQGISにプロットして土坑データベースの空間分析ができるようにします。


有吉北貝塚 縄文時代遺構配置図

まず縄文時代遺構配置図をQGISにプロットし、それを手がかりに各土坑の位置をQGISにプロットする予定です。

4 感想

・竪穴住居については既にデータベースの祖型とQGISプロットが出来ています。今後土坑について同じことができると、竪穴住居と土坑を合わせて有吉北貝塚集落の空間分析が可能になります。

・土坑の土器群別集計では7群と9群でピークとなり、8群が谷になります。このグラフ形状が社会趨勢(例えば人口増→減→増)を表現しているものであるとはいえないと考えています。極端な思考として、土坑数が変化しない状況を仮想し、7群と9群の期間が長く、8群の期間が短ければ上記のようなグラフになります。

・8群の指標が総合的に組み合わされたものではなく、「頸部無文帯のあるもの」という文字通り単独のものであることから、7群と8群の区分に円満性が少ないかもしれないという疑問を持っています。

・有吉北貝塚が準拠している埼玉編年(1982)では「頸部無文帯のあるもの」という指標を確率的指標として扱っていて、絶対的な有無指標としては扱っていません。


2020年12月25日金曜日

有吉北貝塚 前期の遺構

縄文社会消長分析学習 63

1 有吉北貝塚の前期遺構

前期遺構として土坑1基、土器埋設遺構1基が出土しています。


有吉北貝塚 前期 土器埋設遺構 土坑 土器分布(2D QGIS画面)


有吉北貝塚 前期 土器埋設遺構 土坑 土器分布(3D Qgis2threejs画面)

2 土器埋設遺構の様子


土器埋設遺構実測図

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


土器埋設遺構写真画像

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

土器は長軸90㎝、短軸48㎝の楕円形の堀込みの中に横にした状態で埋設されていました。土器の器高44.0㎝、口径27.5㎝で前期後半に属します。別に波状貝殻文を施文する前期後半浮島式土器片が出土しています。(発掘調査報告書による)

3 土坑の様子


土坑実測図

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用


土坑画像

有吉北貝塚発掘調査報告書から引用

平面形はゆがんだ楕円形を呈し、長軸約1.6m、短軸約1.2mを測る。南側に火床部があり前期後半に属する土器1個体分検出、外面下半部が赤化し、内面表面の荒れが激しく、煤の付着も見られます。(発掘調査報告書による)

4 土器片出土の様子

早期土器片出土総数は543点であったのに対し、前期土器片出土総数は7601点で14倍に増加しています。その分布は早期と同様に調査区域北半に集中しています。

5 メモ

・土器の出土量に比して遺構出土状況が貧弱であり、発掘調査報告書では「中期以後の遺跡形成で消滅した遺構が多数あったと考えられる。」と記述しています。住居を含むであろう前期遺構のほとんどが中期遺構によって上書きされ、消滅したと理解します。

・前期土器を残した人々が調査区域北半で生活することを好んだ理由を想像してみました。

ア 谷津に降りてそのまま海に出られる。(有吉北貝塚前期に貝層が形成されたかどうか発掘調査報告書には明確な記述はないようです。近隣遺跡(例 大膳野南貝塚)の例から、前期には漁労が行われ、貝層が形成されていたと想像します。そのほとんどが中期遺跡で上書きされ消滅したと想像します。)

イ 台地面を伝わって近隣集落や狩猟場に直行できる地の利。(前期の狩猟場は人の定住地増大に従って早期の狩猟場より縮小し、特定域に絞られたにちがいないと空想します。)

ウ 遺跡立地台地周辺の台地と谷津斜面に分布する豊富な植物資源を利用できる。

エ 飲料水を台地斜面下部の湧水で得られる。

オ 南向き斜面を利用できる快適環境。(日照良好、眺望良好) 

2018年7月7日土曜日

縄文時代野外調理場

縄文時代野外調理場の可能性のある場所について大膳野南貝塚後期集落を対象に思考した結果をメモしておきます。
2018.07.05記事「縄文時代の煮炊き調理場所はどこか」で竪穴住居の炉で調理が行われていたことを確認しました。しかし、調理といっても簡易な調理しかイメージできないこともわかりました。少なくとも大型土器を使った調理は炉の構造からして不可能です。強い火力も屋内では制限されていたと考えざるをえません。小林達雄の言うように天候が許せば縄文人は野外でのびのびと料理をして食事をとっていたと考えることもできそうです。
このような検討から、縄文人が野外で調理をするとすればそれはどこであるか予察してみました。
野外調理場であるならば、そこから焼土がでているにちがいないという考えから、焼土を指標に遺構を検索して検討してみました。

1 屋外漆喰炉
大膳野南貝塚後期集落では、覆土に多量の白色~灰褐色粘質土を含有する土坑状の掘り込みが、住居外から8基検出され、いずれも焼土堆積を伴っていて屋外漆喰炉として報告されています。屋外漆喰炉は野外における共同調理の場であり、それは共同の食事場であることを意味していると考えられます。
屋外漆喰炉の最大の特徴は埋甕を伴うことです。埋甕は炉内の大型土器固定具であると想定できます。この固定具を設置することにより屋内炉では不可能である大型土器を使った調理が可能となります。また屋外ですから強い火力を実現することもできます。
なお、炉の面積が広く同時に複数の小型土器を使った調理も可能であったと考えられますが、炉の中央に埋甕があることから屋外漆喰炉の主要機能は大型土器による多量食材の同時調理であると推察できます。この推察から日常の食事はその屋外漆喰炉に集まる複数家族が一つの土器で調理してそれを分け合って食べていたとする共同調理・共同食事のイメージも検討俎上に上げてよいと思います。竪穴住居毎(家族毎)の食事ではなく、集団の食事が行われていた可能性が濃くなります。このイメージが正しければ、食事はいつも野外(屋外漆喰炉)になり、屋内炉の調理機能は虚弱なものでよいことになり、実際に出土する屋内炉と一致します。小林達雄の説「屋内炉の意義は象徴性・聖性」「食事は野外」とも整合します。

埋甕(=大型土器固定具)を利用した調理イメージ 大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用・編集・加筆

屋外漆喰炉の分布
漆喰貝層有竪穴住居住人の野外調理場を見つけることができました。
漆喰貝層無竪穴住居住人の野外調理場は別に見つかると予想します。

2 竪穴住居
覆土層から焼土が検出される竪穴住居は93軒中21軒です。

覆土層から焼土が出土する竪穴住居
しかし、後世の削平で住居壁が無くなっていて覆土層が存在しない竪穴住居が沢山あります。その後世削平の影響を除くため住居壁が一部でも残存する竪穴住居について焼土の有無を集計しました。

住居壁がある竪穴住居の焼土の有無
ほぼ半数の竪穴住居に焼土が認められます。この情報から竪穴住居が廃絶すると少なくても半数の竪穴住居では焼土がつくられて可能性を推察できます。
竪穴住居の焼土では4軒については環状焼土とよばれる祭祀に関わる焼土が出土しています。それ以外の竪穴住居焼土例を次に示します。

J47竪穴住居焼土粒出土の様子
焼土粒が出土する土層が竪穴住居全体に広がり、その上を貝層がまるで蓋をするように堆積しています。この竪穴住居から獣骨(イノシシ等)が出土しています。
焼土が出土する多くの竪穴住居では焼土が下層あるいは中層層、貝層が上層というパターンがみられます。
焼土の存在とそれを蓋する貝層の存在は全体として竪穴住居廃絶祭祀として捉えることができると考えます。ここで焼土の存在を調理の跡であると捉えると次のような想定が可能になります。「竪穴住居廃絶後のある期間調理を伴う祭祀が行われた。その調理を伴う祭祀は長期間に及ぶので竪穴住居敷地全部に焼土粒が堆積するほどであった。」つまり廃絶祭祀における調理を伴う祭祀とは、事実上日常の食事行為に他ならなかったと考えます。
そしてある期間の後、その場を貝層で埋めて(蓋して)廃絶祭祀を区切ったのだと考えます。
焼土を伴う竪穴住居の数は多いので、竪穴住居祉が縄文人の野外調理場、野外食事場の一つであったと考えることが出来そうです。

3 土坑
後期集落土坑264のうち14から焼土粒が出土します。ほとんどが焼土粒が微量の出土であり、調理の場として使ったとしてもその意義は大きくないように感じられますが、416号土坑だけその様相が異なります。土坑内にピットがあり表面に焼土粒を含む黒褐色土が観察できますが、そのピットを大型土坑を固定するための受け口(装置)と考えると、大型土坑を調理具とした炉である可能性が生れます。隣接するより古い土坑からも焼土粒が出土しています。
現在の知識ではこの土坑が野外調理の場であると断定できませんが、漆喰貝層無竪穴住居住民の大型土器調理用の野外炉である可能性があるので記録しておきます。

416号土坑 焼土粒出土の様子

416号土坑の想像

参考 416号土坑

焼土記載のないピット付土坑はかなりの数があるので、焼土が見つからなくても漆喰貝層無竪穴住居住人の野外調理場であるという特別の理屈が生れれば、野外調理場(野外炉)が多数発見できる可能性もあります。
地面に土器を埋めて、その周りで火を焚いて調理した場合、調理が終われば燃えた土を掘り返して(つまり焼土を回りにどけて)土器を取り出します。つまり調理終了後の焼土は土坑脇すぐですが土坑外に移動します。このような事情から焼土を指標にすると漆喰貝層無竪穴住居住民の大型土器用野外調理場を見つけることが困難なのかもしれません。


2018年5月30日水曜日

土坑学習をふりかえる

「大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討」と題してその1を2018.03.02記事「土坑の再検討 予察」として書き、最終その50を2018.05.29記事「植物・灰の送り場土坑、トイレ、柱穴」として書きました。思いがけない長期連載となりましたが、その背景に学習技術の飛躍があります。その技術飛躍により手ごたえのあるデータ分析ができるようになり、その結果学習を大幅に深めることができました。いくら検討しても興味が深まり限界がありません。
このような状況の中で縄文集落の現場状況が自分なりに詳しく感得できるようになりました。しかし、縄文時代の現場状況のイメージが湧きつつあるにも関わらず、自分に生じた根本的な疑問(集落消長の理由、漆喰貝層有無の意義など)が根本的に晴れることが無かったことも現実です。逆に疑問は深まったといっても過言ではありません。
この記事ではこのような状況をふりかえってみます。

1 学習技術の飛躍
1-1 2月までの土坑学習のデータ

2月までの土坑学習のデータ 発掘調査報告書掲載表の一部
2月までの土坑学習は発掘調査報告書に掲載されている土坑一覧表を電子化してExcelで統計分析したり、QGISにプロットして分布図を作成したりしました。
しかし、以下の理由から土坑平面図・断面図や覆土の状況、出土物がわからないため、上記データの分析は強い不全完を伴うものとなりました。

発掘調査報告書における土坑記載は全土坑の記述(テキスト)のページ、全土坑の層位記述のページ、全土坑の平面・断面図のページ、全土坑の出土物(土器)のページ、全土坑の出土物(石器)のページ、全土坑の出土物(骨角器)のページ、全土坑の出土物(貝製品)のページに分かれています。つまり1つの土坑の全記述を知るためには7つのセクションを読まなければならないのです。7つのページを探して読みそこからその土坑のイメージを知ることは苦痛を伴います。複数の土坑の比較をすることは事実上できません。
このようにデータは掲載されているけれど、そのままでは解読を事実上拒否するような編集であったため、2月までの土坑学習は統計分析やQGIS分析をしたにも関わらず充実感の少ない学習となりました。

1-2 3月から始めたデータ整備
発掘調査報告書には未整理ですが貴重なデータはあるので、それを土坑別に切り取り、データベースを作成しました。

電子的に土坑別に切り取った記述

電子的に土坑別に切り取った層位記述

電子的に土坑別に切り取った平面・断面図

電子的に土坑別に切り取った出土物

電子的に切り取った土坑別情報から作成した電子データベース(File Maker)
この土坑データベース作成により土坑学習が抜本的に改善できました。どのような視点からでも瞬時に検索でき、その結果を必要な部分だけExcelに出力できます。2月までの不全完は解消されました。なおデータベースには検索に必要な項目(例 人骨出土の有無等)、自分が検討した結果(各種分類、推定結果、メモ)や位置情報などの項目も随時追加しています。

1-3 土坑平面図・断面図を素材としたkj法分析
土坑平面図・断面図を素材にして土坑分類のためのkj法分析を行いました。(利用ソフトIllustrator)

kj法分析の様子
kj法分析を行うことにより全土坑の平面図・断面図を詳しく何回も眺め、相互に比較し、必要に応じて位置や出土物などの情報も知り、おのずとあるべき分類が可能となりました。土坑の機能(土坑が作られた目的)についてある程度の想定ができたので、それが学習を進める上での推進力の一つになりました。

kj法分析が可能になった背景には、物理的に平面図・断面図が出来たことと、知識背景的にデータベースが存在していて土坑の記述や出土物などが即わかる体制があったことによるものです。

1-4 QGIS分析技術の飛躍
3月になりQGIS分析技術を自分レベルでは飛躍させました。具体的にはデータベースで検索した結果をそのまま分布図にできるようになりました。レイヤのフィルターに演算の式を書き込む方法を活用できるようになったのです。

検索した結果を表示して他の情報と一緒に出力したQGIS画面例

2 感想
2-1 土坑学習の意義は大きい
大膳野南貝塚後期集落の土坑情報は発掘調査報告書を単純に利用する人は事実上立ち入って利用できません。しかし自分の場合はデータベースを作成して情報を利用したので、私の学習は数少ない(あるいは他に例がない)土坑情報利用例となります。我田引水になりますが、発掘調査報告書から土坑情報をはじめて汲みだしたという点での意義は大きいと思います。

2-2 専門的知識不足を実感
データ分析技術を飛躍させたため、発掘調査報告書から縄文社会具体状況を抽出できるようになりました。しかし抽出した縄文社会具体状況を解釈していく上で、専門的知識不足を実感します。いままで具体的縄文データを知りもしないのに高度な専門知識を知ってもあまり意味がないと考えていましたが、そろそろ高度な専門知識が必要になる状況が生まれているのかもしれません。

2-3 竪穴住居のデータベース化が必要
土坑学習は発掘調査報告書では事実上できなのでしかたなくデータベース化し、その結果予期せぬ形で学習を深めることができました。
一方竪穴住居は遺構別に情報が整理されているのでFile Makerを使ったデータベースは作っていません。しかし土坑データベースから生れる新たな情報やアイディア・ヒントの多さを考慮すると、竪穴住居データベースも作成することが大切であると考えます。
今後の学習活動において竪穴住居データベース作成の労力と得られる利点を天秤で図りながらデータベース作成について決めたいと思います。