2019年9月27日金曜日

武居幸重著「縄文人の心」に興味津々

縄文土器学習 263

尖石縄文考古館を訪問した際、多数の図書やパンフレットを入手し今後の学習のために備えました。この付近の縄文遺跡に興味が生れましたので絶版となっている「茅野市史上巻原始考古」もWEB古書店から入手したほどです。
そのようにして入手した図書の中に武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」があり、きわめて興味深い内容でありますので記録しておきます。

武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」
この図書は2013年に尖石縄文考古館での筆者の講演をまとめたものです。尖石縄文考古館でしか入手できないのかもしれません。

この図書の精読はまだですが、水野説(土偶祭祀は女性側、石棒祭祀は男性側)に対し、武居説(土偶祭祀と石棒祭祀が双分したのち、融合祭祀を行うことが最終目的であり、その証拠に男女の性に関わる土器交合文様、交合土偶、交合石棒の存在をあげる)を開陳している点に最初の特色があります。

また「重想」という新概念を提起して説明を進めています。
「重想」…一つのデザインで二つ以上のモデルと二つ以上の意味を持たせる表現方法を示す。

棚畑の土偶(国宝縄文のビーナス)の重想関係を次のように説明しています。

棚畑の土偶重想関係説明図
武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」から引用
「上に示した国宝「棚畑の土偶」はみぞおちを境にして上が女性の若年期で下が女性の熟年期を表わし、かつ下半身に男根が組み込まれているから男女の合体造形である。よって交合土偶である。上段の側面図で点で埋めた部分が男根との重想文である」武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」から引用

参考 尖石縄文考古館展示縄文のビーナスの写真

重想という概念が大変興味深く感じます。一つの造形に異なる複数の意味を持たせるという造形技法が存在することは良く理解できます。しかしだれにでも明解な第一の意味は別にして、暗喩として表現されている意味の抽出は「名人芸」になり、万人が「そうだ」と納得する説明は困難になるに違いありません。

「顔はフクロウと嬰児の重想造形」という説明で、嬰児はわかりますが、フクロウは?と感じてしまいます。
下半身に男根が組み込まれているから男女の合体造形であり交合土偶であるという説明も飛躍しすぎているように感じてしまいます。

とてつもなく深い検討を感じる側面と、素朴な疑問を感じる側面のある、とてつもなく魅力的な図書です。

大山山椒魚文様の説明は大変論理的です。
一方、「畑の鳥瞰図の模式表現」は縄文時代畑区画が出土した遺跡を知りませんから、素朴な疑問となります。「畑の鳥瞰図の模式表現」が本当ならば、土器文様に地図が描かれていたのと同じになり、興味津々です。

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