2020年4月9日木曜日

加曽利貝塚における女性シャーマン存在仮説

縄文土器学習 395

加曽利貝塚特殊遺構(112号住居跡)から出土した大小ペア異形台付土器(夫婦土器)の学習を続けています。
この記事では女性が土器を作ったという世界民族例の資料にもとづいて大小ペア異形台付土器(夫婦土器)が意味する事柄に関する思考を深めます。
これまでの検討
ブログ「芋づる式読書のメモ」2020.03.27記事「土器は女性がつくったのか?
2020.04.06記事「大小ペア異形台付土器(夫婦土器)を女性が作った意義
2020.04.08記事「大小ペア異形台付土器出土遺構のゾーニング

1 資料 労働の男女別分業

労働の男女別分業
水沢教子著「土器をつくる女-土器を運ぶ男-胎土からみた土器のふるさと-」(2006、縄文の「ムラ」の考古学(雄山閣)収録)から引用・加筆
素データはアメリカの人類学者が作成したもので、その引用の引用の引用になります。
世界224民族について、主に男女どちらかが行ったかという調査結果です。
文明化していない民族例でみると労働の種類によって男女の分業がかなりはっきり行われている様子がわかります。
土器の製作は男性優位指数(※)18.4%でほぼ女性の仕事です。土器利用に関係する調理は8.6%、水運びは8.2%で女性の仕事です。
酒や麻薬づくりは29.5%でこれもほぼ女性の仕事になります。
原始人類では一般論として、土器の製作と土器の利用はセットで女性の仕事であると考えて間違いありません。
一方、石・木材・骨等の入手と加工はセットで男性の仕事であると考えて間違いありません。
このグラフから、土器(泥)及び石・木材・骨等という素材単位でその製作・加工・利用が男女にきれいに分業されている様子を知ることができました。
なお、祭祀用具の製作は85.1%で男性の仕事ですが、これはおそらく土器(泥)で祭祀用具をつくる例が少ないためであると考えます。
※男性優位指数(男性率+男性・女性共同率×係数の指数のようです。)

2 参考 女性が土器をつくるイメージ

土器をつくる女性たち
水沢教子著「土器をつくる女-土器を運ぶ男-胎土からみた土器のふるさと-」(2006、縄文の「ムラ」の考古学(雄山閣)収録)から引用
水沢教子著「土器をつくる女-土器を運ぶ男-胎土からみた土器のふるさと-」(2006、縄文の「ムラ」の考古学(雄山閣)収録)では親族関係にある女性達がグループをつくって土器をつくる民族例を紹介するとともに、縄文時代では近隣のムラの女性が集まり時期的に専業的に土器をつくったであろうと述べています。参考になる仮説です。

3 大小ペア異形台付土器(夫婦土器)を女性が作ったことから推論される女性シャーマン存在仮説
世界の民族例から縄文時代の土器は女性が作ったという仮説の蓋然性はかなり高いものということができます。
土器は女性がつくったのならば、大小ペア異形台付土器(夫婦土器)も女性がつくったと仮説することができます。
大小ペア異形台付土器(夫婦土器)が祭祀道具ならば、その祭祀道具を使った祭祀主催者(シャーマン)は女性であるという推論の蓋然性は、容器としての土器を使って調理したり、水を貯めたりしたのが女性であるという推論の蓋然性とほぼ同じです。
要約すれば、大小ペア異形台付土器(夫婦土器)を使って祭祀を執行したのは女性シャーマンであると仮説をまとめることができます。
同じ論法で石から石棒を作ったのは男性であり、石棒を道具として祭祀を執行したのは男性シャーマンであると仮説をまとめることができます。
つまり加曽利貝塚には女性シャーマンと男性シャーマンが存在していたと仮説することができます。

根拠はありませんが、土器づくり技術に秀でた女性が即ちシャーマンであり、石器づくりや木製品づくりや骨製品づくりの技術に秀でた男性が即ちシャーマンであると空想します。

土器づくりに秀でた女性は調理や酒造りや覚醒作用のあるけむりのくゆらせ方に秀でていたに違いありません。
石器・木製品・骨製品づくりに秀でた男性は狩りに秀で、住居や各種木製生活道具作成に秀でていたに違いありません。

シャーマンとは言ってみましたが、集落のリーダーそのものであり、政治と宗教が分離しているようなイメージは皆無であると考えます。

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