2020年4月4日土曜日

異形台付土器が大小ペアで出土した意義

縄文土器学習 392

加曽利貝塚の(特殊遺構と呼ばれる)大型住居から異形台付土器が大小ペアで出土した意義について思考します。思考といっても根拠がほぼない想像です。想像をメモして記事にするということは、赤恥リスクを覚悟してでも、より確からしさに近づきたいという気持ちが強いからです。

1 大小ペアで出土した異形台付土器

大小ペアで出土した加曽利B3式異形台付土器(加曽利貝塚)
加曽利貝塚博物館展示の様子

「特殊遺構の床面附近における遺物の出土状況は、その南西部と東北部とではかなり異なっており、おもに南西部に集中している傾向があった。とくに、石棒と異形台付土器および玉類などの特殊遺物は、この南西部の外周の柱穴列と周壁との間からおもに発見されている。」加曽利貝塚博物館紀要8から引用

2 大小ペアで出土した土器の例
2-1 五領ヶ台式土器(八千代市上谷遺跡)

大小ペアで出土した五領ヶ台式土器(八千代市上谷遺跡)
八千代市郷土資料館展示の様子

出土の様子 八千代市郷土博物館展示から引用

説明 八千代市郷土博物館展示から引用
大小ペア土器は墓と推定される土坑から出土しています。
2019.05.12記事「五領ヶ台式土器 上谷遺跡

2-2  縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)

大小ペアで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)
尖石縄文考古館展示の様子

説明 尖石縄文考古館展示から引用
大小土器が隣り合って出土しています。
2019.12.20記事「2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル

3 異形台付土器が大小ペアで出土した意義
ア 夫婦(めおと)土器 夫婦茶碗からの連想
大小2つの茶碗で大は夫用、小は妻用のセットを夫婦(めおと)茶碗といいます。夫婦茶碗の起源や由来はまだ十分に調べていませんが、西欧にはないものだそうです。
根拠を提示できませんが、夫婦茶碗と同じように、大小ペアで出土した異形台付土器や各地の土器は夫婦(男女)がそれぞれ使うモノであると考えます。
大は夫(男)用、小は妻(女)用と考えます。
異形台付土器と上谷遺跡出土土器は大と比べて小が小太りに造形されていて、大人と子どものような意味での大小関係ではなく、おそらく縄文人夫婦の一般的体形に根拠を置く夫婦(めおと)土器であると直観します。
下ノ原遺跡出土土器の小土器にはビー玉のような球体が各所にみられ、それが出産風景(産道に表れた胎児の頭)を暗示する模様であると考えられることから、小土器を妻(女)に対応させることに抵抗はありません。このペア土器も夫婦(めおと)土器であると考えます。

イ 祭祀の道具としての夫婦(めおと)土器
異形台付土器は祭祀の場であったと考えられる特殊遺構の舞台横の機材ルームのような場所から出土しています。この出土状況から異形台付土器はその異様な形状もあいまって祭祀道具と考えることができます。
上谷遺跡土器は墓から副葬品として出土しています。大小土器が埋納されたときは弔い祭祀の道具として意義があったものと考えられます。
下ノ原遺跡土器は大小土器がきれいに並んで出土しています。竪穴住居内で行われた祭祀の道具であったという想像を頭から否定することはできません。
これらの様子から大小ペア土器は祭祀道具であると考えられます。

ウ 夫婦(男女)関係が特別意識されるが祭祀道具としての夫婦(めおと)土器
アとイから夫婦(めおと)土器とは夫婦(男女)関係が特別意識される祭祀の道具であると考えます。
例えば婚礼は夫が妻方集落の労働力になる、あるいは妻が夫方集落の労働力になるなどの異なる集落間の労働力移動を意味します。したがって婚礼とは集落間の重要な関係づくりになります。夫(男)の背後にはA集落が控えています。妻(女)の背後にはB集落が控えています。つまり婚礼とはA集落とB集落の新たな関係作りであり一種の契約が結ばれることになります。
その婚礼儀式では夫(男)あるいは夫側集落代表が大きな異形台付土器を使い契約を結ぶ言葉を述べたり、所作を行ったと想像します。妻(女)あるいは妻側集落代表が小さな異形台付土器を使い契約を結ぶ言葉を述べたり、所作を行ったと想像します。
婚礼の祝宴やそれに伴う踊りや歌は野外で行ったと思います。
婚礼儀式の最も重要な契約は住居内で夫婦(めおと)土器を使って関係者だけで荘厳に行われたと想像します。

婚礼だけでなく葬儀や先祖との交流も埋葬や再葬など野外で行われる踊りや歌などを伴う活動と、住居内で行われる死者と話し合う交流祭祀に分かれていたと想像します。
住居内で行われる死者との交流祭祀では死者の夫側関係者が大きな異形台付土器を使って死者と話しを行い、妻側関係者が小さな異形台付土器を使って話したと想像します。

ペア深鉢形土器も婚礼や葬祭で夫側が妻側親族に食べ物を、逆に妻側が夫側親族に食べ物を(おそらく象徴的に)提供する道具だったと想像します。

上谷遺跡では葬儀でそのように使われた祭祀道具が最後には墓に埋納されたものと想像します。

夫婦(めおと)土器は夫婦関係が特別に意識される祭祀、つまり夫婦の出身集落が特別意識される祭祀で、室内で行うことがふさわしい契約的祭祀や死者との交流祭祀で使われた汎用祭祀道具であると想像します。

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