2021年10月27日水曜日

縄文人の顔のイレズミ

 NHKBS「英雄たちの選択」で「追跡! 古代ミステリー ”顔”に隠された古代人のこころ」を2021年10月20日と再放送27日の2回じっくり見ました。設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」(2021、吉川弘文館)の内容を番組にしたものです。

設楽博己著「顔の考古学 異形の精神史」は学習した内容をブログ「芋づる式読書のメモ」で17回連載記事にしたものであり、興味と愛着があります。テレビはニュース以外見ない私ですが、思わず2回もテレビを見た次第です。番組は弥生から古墳時代の顔のイレズミのミステリーをメインにしていますが、自分は縄文イレズミについて関心があり、その部分について感想を持ちましたのでメモします。

1 参考 番組の概要

・NHKBS 3チャンネル

・英雄たちの選択 追跡! 古代ミステリー ”顔”に隠された古代人のこころ

・2021年10月20日放送、27日再放送

・司会 磯田道史 、杉浦友紀 出演 いとうせいこう 、設楽博己 、松木武彦

・内容 東京大学名誉教授・設楽博己さんは、顔にイレズミとみられる表現が、縄文から弥生、古墳時代にかけて、形を変えて現れることを発見した。縄文的なこころが、形を変えて、弥生時代や古墳時代に伝えられているのだろうか? 最新の考古学の知見をもとに、「顔」が語る古代人の「こころ」をひもとく。そこから、弥生時代後期から古墳時代にかけて、大和地方に顔をめぐる驚くべきミステリーが浮かび上がってきた。(NHKページから引用)

2 縄文時代の顔イレズミに関する司会・出演者・専門家の話の要点

・土偶にみられる顔の線はイレズミかフェイスペイントと考えられるが、イレズミ説が有力である。

・縄文時代は男女ともにイレズミをした。(弥生時代以降イレズミは男だけ)

・トチの実アク抜きのための水システムが出来ていた。ダイズは栽培化が進み現代と同じような大きさにまで長年月かけて変化させていた。このような組織的取組のためには共同体でルール作りが必要で、結束しなければならない。その結束を確認しあうために顔のイレズミがあったかもしれない。

・顔に痛みを伴うイレズミをすることによって、大人になる試練とした。

・厳しい生活のなかで不安を除去するためには集団の中に入ることが必要であり、その集団帰属のために顔にイレズミした。

・集団帰属のためにイレズミだけでなく抜歯も行われた。


イレズミのある人面


イレズミのある土偶

3 感想

・縄文時代イレズミは通過儀礼としての利用、集団帰属感強化、集団結束強化として行われた(そのために必要であった)ということで番組発言を要約できます。まさにその通りだと思います。

・同時に顔のイレズミは単独に顔だけにあったのではなく、体全体にあるイレズミの一部であると考えることが合理的です。

・体のイレズミといえば、最近スノーマンの研究でイレズミと体損傷との関係が指摘されていて、新しいイレズミの意義として注目されています。

「彼の体には61の入れ墨があったが、それは損傷がある骨と関節の位置を示していた(現在のはり治療のツボとも一致している)。」(national geographic 「凍結ミイラ「アイスマン」発見から30年、明らかになった10の事実」 から引用

・顔のイレズミもその発生意義としてアイスマン研究成果のように、健康・安全などの祈願がメインであったのではないかと想像します。あるいは獲物や木の実などの獲得増大祈願であったのかもしれません。一言でいえばイレズミ本来の意義は呪的意義であると考えます。

・イレズミの通過儀礼としての利用、集団帰属感強化、集団結束強化などの社会的意義は社会が複雑化してから付加された二次的意義であるように感じられます。

・イレズミを始めた頃の縄文人意識では、イレズミとは自分を事故から守る、病魔から守る、獲物や食べ物を容易に獲るための祈願であったに違いありません。

・顔のイレズミを考えるに当たって、その社会的意義だけでなく呪的意義も考えないと片手落ちになると感じました。


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