2021年11月28日日曜日

深鉢(七郎内Ⅱ群)(酒々井町墨古沢遺跡)の観察

 Observation of the deep bowl (Group II in Shichirouti) (Shisui Town Sumihurusawa Site)


Observe the deep bowl (Group II in Shichirouti) (Shisui Town Sumihurusawa Site) exhibited at the Yachiyo Municipal Folk Museum Special Exhibition "Rakugaku Jomonkan" with a 3D model. This is an example of earthenware type area contact, but I am more interested in animal design protrusions. I think it's a bird.

八千代市立郷土博物館特別展「らくがく縄文館-縄文土器のマナビを楽しむ-」で展示されている深鉢(七郎内Ⅱ群)(酒々井町墨古沢遺跡)の3Dモデルを作成して観察しました。私の興味は動物意匠突起にあります。

1 深鉢(七郎内Ⅱ群)(酒々井町墨古沢遺跡) 観察記録3Dモデル Deep bowl

深鉢(七郎内Ⅱ群)(酒々井町墨古沢遺跡) 観察記録3Dモデル Deep bowl

縄文時代中期

撮影場所:八千代市立郷土博物館特別展「らくがく縄文館-縄文土器のマナビを楽しむ-」

撮影月日:2021.11.18


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 172 images

Deep bowl (Group II in Shichirouti) (Shisui Town Sumihurusawa Site) Observation record 3D model

Mid-Jomon period

Location: Yachiyo Municipal Folk Museum Special Exhibition "Rakugaku Jomonkan-Enjoying Jomon Pottery Manabi-"

Shooting date: 2021.11.18

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 172 images


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開 土器外面


GigaMesh Software Frameworkによる展開 土器内面

3 メモ

3-1 らくがく縄文館の展示説明

酒々井町墨古沢遺跡では、158号住居跡から器形や文様構成のわかる深鉢が出土しています。この土器は4単位の緩やかな波状口縁で、うち1か所は内面に動物意匠が付く突起となっています。

口縁部には幅の狭い有節沈線による区画文が形成され、頸部以下には縄文が地文として施されています。口縁部と頸部、頸部と胴部の区画には、それぞれ沈線文と波状沈線文を数条巡らせます。

胴部には縄文が施される隆起線文が4単位垂下し、その懸垂文間にはX字状や弧状の文様が沈線で描かれます。

以上の特徴から墨古沢遺跡例は、七郎内Ⅱ群土器と宮後タイプの特徴を併せ持った土器ということになります。

この深鉢は常陸大宮市諏訪台遺跡第8号土坑例と、器形や文様構成、突起内面に動物意匠が付く点で似ています。


158号住居跡出土土器(墨古沢遺跡) 展示パネルから引用

3-2 動物意匠について


動物意匠

高橋龍三郎先生によれば縄文時代の動物形象は次の8つに限られているそうです。(2021年度山梨県考古学協会研究集会「曽利式土器とその周辺」における講演)

イノシシ(前期、中期、後期、晩期)

トリ(前期、中期、後期、晩期)

ヘビ(中期)

カエル(中期)

サル(中期、後期、晩期)

イヌ(後期、晩期)

クマ(後期、晩期)

巻貝(後期、晩期)

本深鉢は七郎内Ⅱ群土器(大木7b式期)で、縄文時代中期前葉~中葉頃ですから、この動物の種はイノシシ、トリ、ヘビ、カエルのどれかである可能性が高くなります。

本深鉢の動物意匠はらくがく縄文館に展示されている鳥頭形突起と似ているところがあるのでトリであると想像します。


鳥頭形突起 鳥頭形突起付土器[加曽利EⅣ式](印西市馬込遺跡)

2021.10.25記事「鳥頭形突起付土器を3Dモデルで観察する

トリ以外の動物と考えると、イノシシは鼻孔の表現がともなうのが普通でが、この意匠は目であると考えられるのでイノシシではないと思います。ヘビは口を表現してはじめてヘビらしくなると考えますので、ヘビ説も有力ではないと思います。この目がカエルの目とは到底考えられません。

この動物意匠は不十分であるとはいえ嘴表現がある(ないとは言えない)と考えることができるので、消去法によりトリ以外には考えられないと思いました。

高橋龍三郎先生によれば縄文後期に本格化するトーテミズムの前段階として縄文中期に「プロト・トーテミズム」という先駆形態があるとのお話がありました。本深鉢のトリ意匠は「プロト・トーテミズム」事象の一環として捉えることができると考えます。酒々井町墨古沢遺跡ではトリを旗印に掲げる集団が生活を送っていたと考えます。


0 件のコメント:

コメントを投稿