2025年3月19日水曜日

白色貝層に挟まれた褐色貝層の意義

 The significance of the brown shell layer sandwiched between the white shell layers


When observing the cross-section of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound, which is examined using on-site photographs, a brown shell layer (a layer with coarse shells) is sandwiched between white shell layers (a layer with dense shells). It is interesting to note that the brown shell layer is synchronized with the rapid development of secondary sedimentation in the gully channel.


有吉北貝塚北斜面貝層の検討空間で、現場撮影写真を断面に投影した写真を観察すると、白色貝層(貝殻が密な貝層)の間に褐色貝層(貝殻が粗な貝層)が挟まっています。その褐色貝層とガリー流路二次堆積の急激な発達が同期していて興味が深まります。

1 発掘調査報告書における北斜面貝層11断面の発達史


発掘調査報告書における北斜面貝層11断面の発達史

発掘調査報告書では上図のように11断面発達史を説明しています。第2段階の貝層発達と第4段階の貝層発達の間に第3段階としてガリー流路二次堆積が挟まっています。

このような視点から、次の断面投影写真を観察してみました。

2 11断面投影写真の観察


11断面 白色貝層S2とS3の間の観察

白色貝層S2とS3(※)の間に褐色の細い貝層(A)が観察できます。このAが生成している期間にガリー流路の厚い二次堆積(B)が生成したと考えることができます。

Aに対応する発掘資料における分層を貝層断面図(セクション図集成図)から確認すると「C(2)層=E1層」で、その記述は「混土貝層、混貝率60%、黒褐色、小形ハマグリ主体、キサゴ多、キサゴの破砕率高い」となっています。

※ 白色貝層S1、S2、S3はこのブログ独自の仮称です。

3 隣接断面の観察

3-1 10断面投影写真の観察


10断面(左右反転) 白色貝層S2とS3の間の観察

11断面とほぼ同じ状況を観察することができます。

Aに対応する発掘資料における分層を貝層断面図(セクション図集成図)から確認すると「C2層」で、その記述は「破砕貝混黒色土、イボキサゴ破砕貝混入比較的多、小型ハマグリ、シオフキ若干、しまりなし。」となっています。

3-2 剥取断面(11断面と12断面の中間)白色貝層S2とS3の間の観察


剥取断面の観察

剥取断面(千葉県立中央博物館展示)においても、白色貝層S2とS3の間に褐色の細い貝層(A)が、明瞭さは欠きますが確実に観察できます。11断面、10断面と同じようにAが生成している期間にBが生成したと捉えることができます。

4 考察 1

AとBが同期している状況を、その前後期と比較して、次のように解釈し、当面の作業仮説とします。

4-1 S2の発達

白色貝層S2が発達した。この時期は通常の貝漁獲があった。(豊漁であった。)

4-2 AとBの同時発達

A(貧弱な褐色貝層=貝殻投棄の少ない貝層)の発達は通常の貝漁獲が損なわれたためであると想定。(不漁であった。)

B(ガリー流路二次堆積)の急激な発達は、雨量急増によるガリー流路谷頭部における浸食作用・運搬作用の急激な増大によるものと想定。

AとBから、雨量急増による東京湾汽水域の塩分濃度変化により貝生息環境が悪化し、貝漁獲量が損なわれたと想定。

4-3 S3の発達

白色貝層S3が発達した。この時期は通常の貝漁獲があった。(豊漁であった。)

5 考察 2

考察1における作業仮説が正しいとすると、S1とS2の間の細い褐色貝層も、この時期に貝が不漁であったことを物語る可能性があります。貝層における貝殻粗密が(貝層が白か褐色かの違いが)貝漁の豊漁-不漁指標となる可能性があります。


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