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2026年5月10日日曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析5)加曽利貝塚南貝塚

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross-Sections (Test Analysis 5): South Shell Mound of Kasori Shell Mound


I am currently testing fabric analysis on a 3D model of a stripped cross-section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi North Shell Mound. To compare the data from the north slope shell layer with shell layers that are not slope shell layers, I have also started fabric analysis testing on a 3D model of a stripped cross-section of the South Shell Mound of the Kasori Shell Mound.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面3Dモデルを対象にファブリック分析のテストをしています。北斜面貝層データと斜面貝層ではない貝層との比較をするために、加曽利貝塚南貝塚剥取断面3Dモデルを対象としたファブリック分析テストも始めました。

この記事は2026.05.07記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析4)」の続きです。

1 加曽利貝塚南貝層観察記録3Dモデルにおけるテスト空間


加曽利貝塚南貝塚観察記録3Dモデルの場所

加曽利貝塚南貝塚には貝層断面観覧施設が設置されています。この施設には通路両側に剥取断面が設置されています。このうち、通路東側に設置されている剥取断面の一部(4m弱)の観察記録3Dモデルを作成しました。この剥取断面は通路西側断面から剥ぎ取られたものです。

上図で引用した「加曽利南貝塚(貝層断面観覧施設)における貝層断面(西断面)の全体図」は剥取断面製作前に観察されたものです。


テスト空間の位置

赤枠が今回テスト空間(24㎝×24㎝)です。(有吉北貝塚北斜面貝層のテスト空間と同じ大きさにしてあります。)


テスト空間画像

有吉北貝塚北斜面貝層の画像と比べると次の点が異なり、今後詳しく検討する予定です。

・イボキサゴ密集域が観察できる。

・二枚貝殻が大きい

・上下二枚の貝殻が閉じたように見えるものがある。(上下二枚で貝殻が閉じたように見えるのは単純に偶然に見られる現象であるが、有吉北貝塚北斜面貝層ではなぜか見られなかった。)

・場所によって貝殻の汚れの程度が異なる。

2 加曽利貝塚南貝塚テスト空間のファブリック分析

2-1 二枚貝の分布


二枚貝の分布

イボキサゴ密集域、二枚貝密集域、二枚貝非密集域に分解して捉えることが出来るかもしれません。


ヒートマップ

2-2 二枚貝の配向

2-2-1 二枚貝偏位角


二枚貝偏位角の空間分布

イボキサゴ密集域より上では右上の角度が多く、その部分の貝殻の汚れが共通しているので、人為的影響(貝層に穴を掘って、そこに食料残滓などと一緒に廃棄された)があるのかもしれません。


二枚貝偏位角の頻度分布

水平に近い角度が多く、斜面貝層(有吉北貝塚北斜面貝層)とは明らかに異なります。

2-2-2 二枚貝殻位(上凸・下凸)


二枚貝殻位(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸

上凸殻位は45%、下凸殻位は55%です。

殻位の空間分布には特徴があり、ランダムとはなっていません。

2-2-3 二枚貝の配向(偏位角・殻位)


二枚貝の配向(偏位角・殻位)


二枚貝の配向(偏位角・殻位・ヒートマップ)

テスト空間左上の二枚貝密集域の殻位に下凸が多くなっています。また、右下の密集域でも下凸が優勢のように見えます。

3 メモ

殻位について、次のような思考をしました。

貝層形成時代に貝殻を棄てる時の棄て方が殻位情報に隠されているかもしれないと想像します。

例 籠に入れた二枚貝を平面にジャラジャラと単純に棄てる場合(A)と穴を掘ってその穴に上から連続的に二枚貝を棄てて穴を埋めようと意識した場合(B)を設定します。

Bの方が下凸殻位が増えると考えます。

理由 二枚貝殻は下凸殻位の方が安定するので、穴に棄てられるなど二枚貝殻が混ぜられる要素が生まれると下凸殻位が増えると考えます。

これは実験で実証可能と考えます。

この考えによれば、貝層断面で下凸殻位集中場所が見つかると、その場所は何らかの理由で二枚貝が流動して堆積した場所であることが推察できることになります。


2026年5月7日木曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析4)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross-Sections (Test Analysis 4)


In two test spaces of shell layer cross-sections, the relationship between shell attitude and deviation angle of bivalve shells was represented using a semicircular rose diagram. In the test space on the middle slope of the shell layer, there are many shells with deviation angles close to the shell layer slope angle, but the difference in shell attitude is small. On the other hand, in the test space at the bottom of the shell layer, the deviation angles are more varied, and there are many shells with a convex-down attitude.


貝層断面の2つのテスト空間で、二枚貝殻の殻位と偏位角の関係を半円形ローズダイヤグラムで表現しました。斜面貝層中腹テスト空間では貝層斜面角度に近い偏位角の貝殻が多いですが、殻位の差は少ないです。一方斜面貝層最下部テスト空間では偏位角がばらけるとともに下凸殻位の貝殻が多くなります。

この記事は2026.05.06記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析3)」の続きです。

1 二枚貝殻 殻位と偏位角の関係


二枚貝殻 殻位と偏位角の関係

test2空間とtest1空間及びtest2+test1について、二枚貝殻の殻位と偏位角の関係を半円形ローズダイヤグラムで表現しました。グラフには参考として貝層傾斜線を点線で記入してあります。

test2空間(斜面中腹)では斜面方向偏位角の貝殻が多くなっています。偏位角のばらつきがありません。また、殻位の差(上凸殻位の数と下凸殻位の数の差)は少ないです。下凸殻位率は53%です。

一方test1空間(斜面貝層最下部で貝層が地面と衝突している)では偏位角がばらけるとともに下凸殻位の貝殻が多くなります。下凸殻位率は64%になります。

test1空間とtest2空間の殻位と偏位角関係の差は斜面を高濃度流(貝殻泥流)が流下し、地面と衝突し、堆積する様子に対応している可能性があります。つまり、斜面貝層の構造を把握するための情報である可能性があります。

2 参考情報


test2空間とtest1空間


前記事で作成した二枚貝方向(殻位)と傾斜(偏位角)の関係(test2+test1)

3 メモ

偏位角の分布状況表現手段として半円形ローズダイヤグラムが有効であることを確認しました。

test1空間で下凸殻位が63%と優勢になることは意味があることだと想定します。今後、下凸殻位率という指標をつかって貝層断面を見ていくことにします。また、偏位角が集中するかばらけるかという指標の開発も意味がありそうです。


貝層断面ファブリック分析の用語変更

 Terminology Changes in Shell Layer Cross-Section Fabric Analysis


I am conducting a fabric analysis on a 3D model of a stripped cross-section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound. I have reviewed the terminology used in this analysis and have decided to use the term "shell attitude" for the convex/convex distinction of bivalve shells, and the term "deviation angle" for shell inclination.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面3Dモデルを対象としたファブリック分析を進めています。この分析で使う用語について検討し、二枚貝殻の上凸・下凸区分について殻位(shell attitude)という用語を、貝殻傾斜について偏位角(deviation angle)という用語を使うことにしました。

1 二枚貝殻の殻位(shell attitude)

二枚貝殻の出土姿勢について、上凸か下凸かという区分をこれまで方向という言葉を使ってきましたが、これからは殻位(shell attitude)という用語を使うことにします。


二枚貝殻の殻位の区分

2 二枚貝殻の偏位角(deviation angle)

二枚貝殻の出土姿勢の傾斜について、これまで傾斜という言葉を使ってきましたが、これからは偏位角という用語を使うことにします。


二枚貝殻の偏位角計測法

偏位角:殻と断面の成す直線(殻が断面によって仮想的に切断された際にできる接線の両端を結んだ直線)について鉛直線を基準として時計回りに測定した角度

2026.04.27記事「技術メモ 貝層剥取断面と二枚貝(ハマグリ)の交線描画原理

3 メモ

方向という言葉を使うと、方位を連想してしまう可能性があるので、「殻凸面の上下向き」の表現にふさわしいものとして、殻位という用語を使うことにしました。

傾斜という言葉を使うと、水平面に対する角度を連想してしまう可能性があるので、「鉛直線を基準として時計回りに測定した角度」の表現にふさわしいものとして、偏位角という用語を使うことにしました。


2026年5月6日水曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析3)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross Sections (Test Analysis 3)


I am conducting a fabric analysis test using a stripped cross section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound as a case study. This time, I examined the inclination and direction (upward convex/downward convex) of bivalves by representing them with frequency graphs. Characteristics of slope shell layers can be observed in the inclination and direction of bivalves.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面を事例としてファブリック分析のテストを行っています。今回は二枚貝の傾斜や方向(上凸・下凸)を頻度グラフなどで表現して検討しました。二枚貝の傾斜や方向に斜面貝層の特徴が見られます。

この記事は2026.05.02記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析2)」の続きです。

1 テスト対象空間


テスト対象空間

test1とtest2が今回のテスト対象空間です。ともに、24㎝×24㎝の範囲です。

2 二枚貝数


二枚貝数

test2が90、test1が103となります。密度は15.6個/100㎠、17.9個/100㎠となります。


分層別二枚貝数

C(2)層のデータが多くなっています。

3 二枚貝傾斜

3-1 C(2)層の略傾斜

傾斜は鉛直線から右回りで角度を計測しています。

C(2)層の略傾斜は次図のとおり、114.6°となります。


C(2)層の略傾斜

3-2 二枚貝傾斜頻度分布


test2とtest1の二枚貝傾斜頻度分布

test2は貝層分層が斜面途中に位置する観察範囲であり、傾斜頻度分布は100°~120°が最も多くなっています。一方、test1は貝層分層が下の層に衝突する斜面最下部に位置する観察範囲であり、傾斜頻度分布は突出した傾斜区分がありません。test2とtest1の違いは高濃度流の挙動に対応した二枚貝の反応が表現されている可能性があります。(test2は斜面を流れる挙動の状況、test1は流れが地面に衝突して堆積する挙動の様子。)


C(2)層の二枚貝傾斜頻度分布

test2とtest1のC(2)層だけの情報を抽出して作成した二枚貝傾斜頻度分布です。斜面に存在する貝層分層の二枚貝傾斜頻度分布はこのような形状になるのではないかと考えます。

4 二枚貝方向

4-1 二枚貝方向区分

二枚貝方向は次のような区分をしています。


二枚貝方向区分

4-2 二枚貝方向分布


二枚貝方向

斜面途中のtest2では上凸・下凸の差はほとんどありませんが、斜面下部のtest1では下凸が多くなります。

これまでに検討した予備解釈では高濃度流が停止する際に土器や貝殻が安定形状に回転して流体の中を沈下すると考えていますので、この予備解釈とtest1で下凸が多くなることは整合します。

4-3 二枚貝方向と傾斜との関係


二枚貝方向と傾斜との関係

傾斜が80-100、100-120、120-140で下凸の割合が大きくなっています。高濃度流の斜面流下に伴う事象と考えて矛盾はありません。

5 メモ

test1とtest2だけの分析ですが、二枚貝傾斜と方向の2指標から高濃度流の特徴を整理できる可能性を感得することができました。これにより、剥取断面が詳しく検討する価値のある対象であることと、現在の分析方法から有用情報を汲み取ることができることを実感できました。

今後、分析対象面積を拡大します。同時に斜面貝層でない剥取断面(加曽利貝塚南貝塚)の分析も比較のために行うこととします。



2026年5月2日土曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析2)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross Section (Test Analysis 2)


Test analysis 2 of fabric analysis was conducted using a stripped cross section of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound as a case study. Fabric analysis is a method for analyzing the arrangement patterns and structures of unit components in a geological cross section. I hope to obtain clues about the high-concentration flow that formed the slope shell layer through fabric analysis.


有吉北貝塚北斜面貝層の剥取断面を事例としてファブリック分析のテスト分析2を行いました。ファブリック分析とは地層断面における単位構成要素の配列パターンや構造の分析手法です。ファブリック分析により斜面貝層を形成した高濃度流の手がかりを得ようと期待しています。

この記事は2026.04.26記事「貝層断面のファブリック分析(テスト分析)」の続きです。

1 テスト対象空間


テスト対象空間


テスト対象空間

左赤枠が今回テスト空間、右赤枠が2026.04.26記事テスト空間。

赤枠は約24㎝×24㎝の大きさです。

記号は貝層分層記号です。(分層記号の解説は発掘調査資料には掲載されていません。)


テスト対象空間


テスト対象空間(テスト分析2)

2 二枚貝の分布

2-1 二枚貝の分布

・分布


二枚貝の分布


二枚貝の分布

C(2)層はハマグリをメインとする貝層、CD層はイボキサゴをメインとする貝層です。

・ヒートマップ


二枚貝分布ヒートマップ

二枚貝分布が密なところ(赤いところ)は主にC(2)層に存在しますが、このテスト空間ではCD層にも分布します。

2-2 二枚貝の配向

2-2-1 二枚貝の傾斜


二枚貝の傾斜


C(2)層で分層線傾斜と異なる傾斜(+成分の傾斜)

詳細な分析は追っておこないますが、C(2)層では分層線傾斜と明らかに異なる傾斜(+成分の傾斜)の貝殻のまとまった分布を観察することができます。この分布はでたらめではなく、何か意味があると考えます。

2-2-2 二枚貝の方向(上凸・下凸)


二枚貝の方向(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸


二枚貝の方向(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸

このテスト空間では二枚貝の方向(青・赤区分)について直観的にその特徴を説明できません。追って定量的な分析を行います。

2-2-3 二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向・ヒートマップ)

2026.04.26記事テスト空間の分析では「二枚貝方向が下凸(赤色)のものとヒートマップ密集域(赤色)が対応するところが多いことが観察できます。二枚貝下凸は安定している形状であり、高濃度流で多数の二枚貝が運ばれ停止する時に一斉に回転して沈下堆積したと予察します。」とメモしました。

ところが、このテスト空間ではこのような対応(下凸(赤色)と密集域(赤色)の対応)がありません。これはテスト空間の斜面における位置(斜面の中間か、それとも最下部か)という違いに対応している可能性があり、とても興味が湧きます。

3 メモ

まだ極狭い範囲のデータですが、ファブリック分析データの価値が大きい予感がしてきました。さらに分析を続けることにします。

次の記事ではデータを定量的に扱ってみることにします。


2026年4月26日日曜日

貝層断面のファブリック分析(テスト分析)

 Fabric Analysis of Shell Layer Cross-Sections (Test Analysis)


I conducted a test fabric analysis of shell layer cross-sections and identified areas for improvement. Repeated fabric analysis may reveal the shell layer cross-sectional structure, potentially providing clues for high-concentration flow analysis.


貝層断面のファブリック分析のテストを行い、今後の課題を洗い出しました。ファブリック分析を重ねれば、貝層断面構造が浮かび上がり、高濃度流解析の手がかりを得られる可能性があります。

1 テスト対象

有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面3Dモデルの12㎝×12㎝小画面(メイン検討画面)とその関連域をファブリック分析(テスト分析)の対象とします。


有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面3Dモデル


24㎝×24㎝の小画面(メイン検討画面)

2 分析ツール

二枚貝座標・角度・方向取得ツール(自作Pythonツール)と地物視認性向上画像処理(Photoshopフィルター「輪郭検出」)を分析に使います。

・二枚貝座標・角度・方向取得ツール(自作Pythonツール)

2026.04.23記事「貝層断面の貝殻ファブリック分析の基礎技術メモ

・地物視認性向上画像処理(Photoshopフィルター「輪郭検出」)

2026.04.23記事「技術メモ 貝層剥取断面画像に見える地物大きさの視認性を向上させる画像処理

3 ファブリック分析

3-1 貝殻・土器等の分布

3-1-1 貝殻・土器等種別分布


ハマグリ等二枚貝、イボキサゴ以外で確認できる地物

貝層を構成するハマグリ等二枚貝とイボキサゴが今回メインの分析対象ですが、最初にハマグリ等二枚貝とイボキサゴ以外の主な地物を確認しておく必要があります。

3-1-2 貝殻・土器等大きさ分布

出土地物(貝殻・土器等)の大きさを視認しやすい画像をPhotoshop輪郭検出で作成しました。


地物の大きさを視認しやすい画像(Photoshop輪郭検出)


A,BよりCの地物大きさが小さい

C(2)層を対象とすると、斜面上方のCの方が斜面下方のA、Bより地物が小さいことを視認できます。この特徴は斜面を高濃度流が流下した時の特徴であると予察します。

3-1-3 特異な分布パターン


遺物密集パターンA,Bが観察できる

C(2)層で遺物密集パターンA,Bが観察できます。このパターンはこの剥取断面の他の場所、別断面写真でも確認できるので、高濃度流が斜面を下る際に残したパターンであると予察します。Aは既にある地面で高濃度流先端が止まった時の跡であると予察します。

3-2 二枚貝の分布

3-2-1 二枚貝の分布

・分布


二枚貝の分布

CU層とC(2)層はハマグリをメインとする貝層であり、CD層はイボキサゴをメインとする貝層ですが、当然ながらその差は分布図に反映します。

・ヒートマップ


二枚貝分布ヒートマップ

遺物密集パータンAは大形の二枚貝・巻貝・土器から構成されていますが、それに隣接して二枚貝密集域(ヒートマップの赤域)があります。これらは高濃度流の先端部の構成物として、一連の遺物密集として捉えられると考えます。規模は全く異なりますが、同じ高濃度流である土石流の先端部堆積物と類似の地学事象であると予察します。

3-3 二枚貝の配向

3-3-1 二枚貝の傾斜


二枚貝の傾斜

CU層とCD層の境界、CD層とC(2)層の境界付近の二枚貝は境界線傾斜に類似したものが多いように観察できます。高濃度流流下と関係すると予察します。各層の内部では高濃度流の流下傾斜と異なる傾斜のものが多く、特徴的です。

3-3-2 二枚貝の方向(上凸・下凸)


二枚貝の方向(上凸・下凸) 青…上凸、赤…下凸

二枚貝方向(上凸・下凸)はランダムではなく、上凸と下凸がそれぞれ凝集して分布しているように観察できます。何かの構造を表現している可能性があります。しかし、この範囲でその説明をすることは困難です。

3-3-3 二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向)


二枚貝の配向(傾斜・方向・ヒートマップ)

二枚貝方向が下凸(赤色)のものとヒートマップ密集域(赤色)が対応するところが多いことが観察できます。二枚貝下凸は安定している形状であり、高濃度流で多数の二枚貝が運ばれ停止する時に一斉に回転して沈下堆積したと予察します。

4 メモ

4-1 ファブリック分析の順番

最初に「地物視認性向上画像処理」により全体状況を観察して「構造」の見たてを行い、次いで二枚貝座標・角度・方向取得ツールで二枚貝の分布(密度、パターン)、配向(傾斜・方向)を検討することが適切であると考えます。

4-2 有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面作業

有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面について今回利用した2つのツールで作業を進め、貝層構造理解を深めることとします。

4-3 作業の自動化

地物視認性向上画像から遺物大きさに関連する指標デジタルデータを自動取得する方法について検討することとします。

二枚貝座標・角度・方向取得ツールは現在は手作業です。全二枚貝を1つ1つデータ化しています。この作業を最初から自動化することは現代技術なら可能であると考えます。自動化にチャレンジします。


2026年4月23日木曜日

貝層断面の貝殻ファブリック分析の基礎技術メモ

 Basic Techniques for Shell Fabric Analysis of Shell Layer Cross Sections


The first version of the basic digital techniques for performing spatial arrangement and orientation analysis of shells constituting shell layers (shell fabric analysis) has been completed for shell layer cross-sections such as the northern slope shell layer cross-section of the Ariyoshi North Shell Mound and the southern shell layer cross-section of the Kasori Shell Mound. This technique is expected to provide data for understanding shell layer formation processes (sedimentary forces, redeposition, slope formation, etc.).


有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面や加曽利貝塚南貝層剥取断面などにおいて、貝層構成貝殻の空間配列・配向分析(貝殻ファブリック分析)を実行するためのデジタル基礎技術の最初バージョンができました。この技術により貝層形成プロセス(堆積営力、再堆積、斜面形成など)を読み解くためのデータが得られることが期待できます。

1 貝層断面写真の用意


貝層断面写真(有吉北貝塚北斜面貝層剥取断面の例、画像寸法500pixel×500pixel)

以下の作業はスナップ写真でも可能ですが、詳細判断を正確に行うために、ここでは貝層断面3Dモデルの投影画像を使い、3Dモデルを補助資料として使っています。

2 貝殻座標、角度、方向データ取得方法

二枚貝の画像平面における座標(X、Y)、断面と貝殻が交わる線分の角度、方向(上凸か、下凸か)を求めるPythonスクリプトを作成しました。


Pythonスクリプトで作業した結果画像


Pythonスクリプトで得た結果(csvファイル)の一部

作業方法は、最初に画像の2隅をクリックして座標を設定し、次に二枚貝全てについて断面と貝殻が交わる線分の左端点と右端点のクリック、上凸か(1)、下凸か(2)の入力を行い、「この線分を記録」をクリックします。最後に「csv保存して終了」をクリックします。

画像では二枚貝であるかどうか、上凸か下凸かの判断に迷う場合があり、その時は3Dモデルを参照します。

3 貝殻ファブリック分析方法

仮想断面写真と貝殻座標、角度、方向データをQGISにプロットして貝殻ファブリック分析を行います。

3-1 画像と縮尺をあわせるためのcsvファイル変換

2で得た座標は正規化されたものであるので、座標値に500(画像寸法縦横500pixelに対応)を乗じて変換します。

3-2 QGIS起動し、csvファイル読込

QGISを起動し、「csvテキストレイヤを追加」でcsvファイルを読込ます。

今回作業はQGISの機能を利用するだけで、座標は仮座標として使うため、EPSGコードは何でもよいことになります。ここではデフォルトの4326を使いました。

3-3 貝層断面写真読込

貝層断面写真をジオリファレンサで読込、画像とcsv点を一致させました。


画像と二枚貝座標点

3-4 上凸・下凸色分け

csv点レイヤを複製して、シンボロジ機能により1=青(上凸)、2=赤(下凸)で表示しました。


上凸・下凸色分け

3-5 角度線分表示

csv点レイヤを複製して、ジオメトリジェネレータ機能により30pixel長さの棒で貝殻角度を表示しました。


角度線分表示

3-6 密集域ヒートマップ表示

csv点レイヤを対象にプロセッシング→ツールボックス→補間→ヒートマップで、半径や色などの設定をおこない、点の密集性をヒートマップで表示します。


ヒートマップ表示

4 メモ

貝層断面画像から、二枚貝貝殻の分布・密集性、角度、方向という空間配列・配向を分析するデジタル基礎技術の最初バージョンを作成することができました。これから有吉北貝塚北斜面貝層や加曽利貝塚南貝層などの断面に適用して貝層断面の貝殻分析を深めるとともに、この技術の改良も進めることにします。