2015.04.24記事「八千代市白幡前遺跡 出土銙帯分布からわかること」を追補します。
銙帯出土地点がすべて掘立柱建物群の間近であることは既に述べましたが、あらためて銙帯出土と掘立柱建物との関係を考察します。
次の図は銙帯出土分布図と建物統計グラフ図を並べたものです。
白幡前遺跡出土銙帯と竪穴住居跡と掘立柱建物跡の比
竪穴住居跡/掘立柱建物跡の比が大きい2Bゾーンと2Cゾーンからは銙帯が出土していません。このゾーンは掘立柱建物が少なく、一般農業集落的性格が強いと考えました。
官人は居住していなかったのだと思います。
2Aゾーンは寺院施設がありますから御堂や収納施設や人が居住する掘立柱建物があったものと想定します。銙帯が出土しないことは、寺院施設であることから官人が常駐していなかったこととして説明できます。
他のゾーンは竪穴住居跡/掘立柱建物跡の比が小さく(竪穴住居に対して掘立柱建物が多く)、2Dゾーンを除き全て銙帯が出土します。官人が居住していたと考えられます。
さて、「八千代市白幡前遺跡-萱田地区埋蔵文化財調査報告書Ⅴ-本文編」(1991、住宅都市整備公団首都圏都市開発本部・財団法人千葉県文化財センター)では1Bゾーンについてのみ、竪穴住居跡の覆土層からの出土遺物の量が多すぎるので、近くの掘立柱建物に人が居住していたことを推定しています。
しかし、銙帯が出土したゾーンは出土しないゾーン(2B、2C)と比べて掘立柱建物が多いのですから、銙帯出土ゾーンの掘立柱建物は官人の居住に利用されていたと考えて不都合はないとかんがえます。
不都合はないと消極的に考えるよりも、積極的に銙帯出土ゾーンの掘立柱建物の一部は官人の居住用であったと考えるべきものだと思います。銙帯は全て、掘立柱建物跡の直近ゴミ捨て場(竪穴住居跡覆土層)から出土しているのですから。
2Dゾーンからはたまたま銙帯は出土していませんが、近隣の2E、2F、3ゾーンと同じように官人居住ゾーンと考えてよいと思います。
次の表は、2Bゾーン、2Cゾーンの掘立柱建物がゾーン維持のためのベーシックな倉庫であり、同様の倉庫は各ゾーンとも同じような数量で必要としたと仮に考えた時、それ以上の掘立柱建物を有する場合、それは居住や業務用として用いられたと考えた場合の試算表です。
2B、2Cゾーンの掘立柱建物数がゾーン維持ベース倉庫棟数であると考えた時の想定
このように想定してみると、白幡前遺跡ではゾーン維持ベース倉庫棟数より、居住用及び業務用建物のほうが多いことがわかります。
また、銙帯出土ゾーンは1Bゾーンと3ゾーンが特段の業務中枢機能を担う官人の居住が想定され、1Aゾーン、2Eゾーン、2Fゾーンは部隊を引き連れた官人の居住が想定されます。
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