1 出現数別に見た小字名(コアザナ)の数及び小字数
千葉県小字データベースから出現数別に見た小字名(コアザナ)の数及び小字数をカウントしてみました。
小字名の集計は文字表記を基準にして実施しました。(*注)
千葉県 出現数別に見た小字名の数及び小字数 (表)
千葉県 出現数別に見た小字名の数及び小字数 (グラフ)
出現数が100以上の小字名は全部で35あり、それは全小字名数43004の0.08%を占めます。
その出現数100以上小字名の小字数は全部で4726あります。それは全小字数94004の5.03%を占めます。
出現数1の小字名は全部で32958あり、それは全小字名数43004の76.64%を占めます。
それが占める全小字数94004に対する割合は35.06%になります。
上記データから出現数別にみた小字名の数と小字数の関係を知ることができました。
2 出現数上位の小字名
出現数が100以上の小字名グラフを作成してみました。
千葉県 出現数100以上の小字名
1位大谷、2位新田、3位谷、4位前田、5位原・・・と続きます。
なお、以前作成した千葉市周辺6市域の出現数の多い小字名とくらべると、順位がかなり異なります。
その様子から、出現数上位の小字名といっても、その分布をみるとおそらく地域的偏りが存在し、それは地域毎に生活と土地の関わりが異なるためであると考えます。
地域によって生活と土地の関わりが異なり、それに起因して出現数の多い小字名も変化するのですから、逆に小字名出現数データから、地域別に異なる、過去の生活と土地の関わりについて情報を得ることができると考えます。
参考 6市域の出現数上位20までの小字名称
3 興味ある小字名
次に、千葉県出現数100以上小字名について、その興味をまとめてみました。
12位 清水
12位清水は極普通の小字名のように感じてしまいます。その通りだと思います。
しかし、小字名「清水」は一般に実際の地下水湧出場所(泉)と対応している場合が多いと考えられます。
一方、地下水湧出場所は旧石器時代、縄文時代から戦後の高度経済成長期以前までは継続したものが多かったと考えられます。
このような考え方から、小字名「清水」及び関連小字名(例 子和清水)の中には旧石器時代や縄文時代から利用されてきた湧泉場所の存在を伝えているものが数多く含まれていると考えます。
小字名「清水」が旧石器時代や縄文時代の環境を考える上での重要なヒント情報となる可能性があります。
17位 馬場
17位馬場は古代牧及び中世以降近代までの馬揃場所等にその由来を持っていると考えます。
千葉の歴史を考える上で重要なキーワードとなる小字名です。
その分布図を作り、考察することが楽しみです。
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参考
ばば 馬場
乗馬,馬術の練習および馬術競技や競馬を行う場所。
古代には端午の節会に天皇が騎射を観覧した馬場が朝廷の武徳殿の前にあり,近衛府,兵衛府にも調練のための馬場があった。
古代には国家の軍馬供給を目的とする▶牧が各地にあったが,これを基盤に古代末から中世にかけて東国を中心に勢力を伸ばした武士は,その軍事力の基礎を騎馬と弓射においた。
各地に残る馬場という名には,この牧に由来するものもあると考えられる。
また中世武士団の拠点となる広大な豪族の館の中にも必ず馬場があり,戦闘の際の馬揃〘うまぞろえ〙(▶勢汰〘せいぞろえ〙)もここで行われた。
『平凡社 改訂新版 世界大百科事典』 日立ソリューションズから引用
太字は引用者
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22位 台畑
22位台畑は大秦(ダイハタ)つまり裕福な秦氏(渡来系古代氏族、製鉄等に関わる技能集団)の存在を伝えているものが含まれている可能性があります。
2015.02.12記事「ハタ地名検討の重大な意義に気がつく」参照
27位 長谷
ナガサクと読む小字(長谷のほか長作、永作など)のなかには旧石器時代、縄文時代由来の地形(台地縁辺の長い崖)を利用した狩場が含まれている可能性を考えています。
2015.11.16記事「縄文時代起源と想定する小字 ナガサクとハナワ」参照
28位 前畑
渡来系秦氏集団(製鉄などの技能を伝えた集団)は幾度かにわたって千葉に進出して分布したと考えられます。
そして、新たな集団がやってきた時に、より以前に千葉にやってきて居住している秦氏集団を前秦と呼び、地名となった場合があると考えます。
2015.02.12記事「ハタ地名検討の重大な意義に気がつく」参照
29位 堀込
堀を掘って土地を囲い込み、その中に牛馬を込めるという意味であり、つまり牧を意味していると考えます。
この地名の場所には古代牧も含まれている可能性があります。
馬場と並んで、千葉の歴史を考える上で重要なキーワードとなる小字名です。
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注*
原始、古代の地名は、まだ文字が存在していなかった、あるいは庶民が漢字を知らなかった時代から口承で伝えられてきています。
そして、漢字が普及する時代に当て字として文字表記されたという経緯があります。
ですから原始、古代の地名表記は全て当て字であり、異なる場所では別の当て字が使われた場合も多かったと考えられます。
従って、文字表記で地名をとらえるのではなく、音(よみ)として捉えることが本筋です。
しかし、音(よみ)は同音意義の地名が紛れ込みますし、時代とともに変化してしまい(なまってしまい)別の大きな検討不都合がうまれます。
このような状況を理解した上で、この記事では小字名の集計を扱いやすい文字表記で行いました。
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