2016年4月12日火曜日

参考 横芝光町神山谷遺跡から出土した漆関連墨書文字について

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.329 参考 横芝光町神山谷遺跡から出土した漆関連墨書文字について

2016.04.10記事「参考 千葉県における漆関連墨書文字分布 その2」で漆関連墨書文字が下総国領域を中心に多数出土している様子を観察しましたが、とりわけ神山谷遺跡から全4種類の漆関連墨書文字が出土していて、注目しました。

参考までに、図書館にでかけ、神山谷遺跡の発掘調査報告書を閲覧して、漆についての記述があるか念のために確認してみました。

図書館で閲覧した神山谷遺跡の発掘調査報告書

神山谷遺跡は工業団地建設に際して調査されたもので、周辺にも遺跡が分布しています。

神山谷遺跡と周辺遺跡

発掘調査報告書2冊についてざっとになりますが目を通して、漆関連の出土物や記述は見つかりませんでした。

墨書文字「七」「知」「益」「息」についての検討はありませんでした。

西根遺跡は沖積地であり、その堆積条件から漆液そのものと漆器(木胎)が出土しましたから、それが近隣遺跡出土墨書文字解読の根拠の一つになりました。

しかし、漆液そのものや漆器など漆を示す出土物がない状況で、墨書文字「七」「知」「益」「息」から漆業務をイメージすることはほとんど不可能ですから、神山谷遺跡発掘調査報告書に漆に関する記述がゼロであることはいわば当然だと考えます。

神山谷遺跡出土漆関連墨書文字の出土数は次の通りです。

「七」…3点
「知」…1点
「益」…2点
「息」…1点

鳴神山遺跡、船尾白幡遺跡、西根遺跡の検討からこれらの文字を次のように解読しています。

「七」(シチ)は漆(シチ)、つまりウルシ(漆)。
「知」(シル)は汁(シル)、つまり漆汁。
「益」(エキ)は液(エキ)、つまり漆液。
「息」(ソク)は乾漆を表す古代技術用語「ソク」(〓(土偏に塞)・塞・即・則などと書かれる)を表す。

なお、神山谷遺跡では「知」が石製紡錘車に刻書されて出土しています。

神山谷遺跡出土 漆関連墨書文字

神山谷遺跡から「息」が出土し、乾漆が行われていたのですから麻が使われていたと考えます。
その乾漆に使う麻を紡いでいた紡錘車だから、そこに「知」(シル…漆汁)という文字を刻んだのだと思います。

紡いだ麻を使って漆器を作りたいのだけれども、そのための漆汁の入手が困難であることから、漆汁の豊かな入手を祈願したのだと思います。

神山谷遺跡の近隣には多くの小字「ウルシ」が分布していて、約3㎞離れた場所には3カ所の小字「ウルシ」が存在しています。

神山谷遺跡付近の小字「ウルシ」

神山谷遺跡付近の一帯は古来から漆業務が盛んであったことが推察されます。










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