縄文土器学習544
2021.02.12記事「中峠式土器と加曽利EⅠ式土器」で作成した2つの土器を同縮尺で並べた3Dモデルを使って土器形状や文様の比較をしてみました。
1 土器形状と文様
オルソ投影による「正面から」画像
左…中峠式土器、右…加曽利EⅠ式土器
オルソ投影による「上から」画像
左…中峠式土器、右…加曽利EⅠ式土器
ア 基本土器形状
中峠式土器…キャリパー形(不明瞭)
加曽利EⅠ式土器…キャリパー形(明瞭)
イ 細部形状
中峠式土器…口縁部直径の広がりが小さい(胴が太い)。口唇部が壁として直立している。
加曽利EⅠ式土器…口縁部直径の広がりが大きい(胴がスリムである)。口唇部に顕著な壁はない。
ウ 文様帯の位置
中峠式土器…口縁部
加曽利EⅠ式土器…口縁部
エ 文様帯の特徴
中峠式土器…刻み目が顕著で特段に肉厚な2条蛇行隆帯(S字状文)、渦巻文、交互刺突文、縦位沈線、小突起
加曽利EⅠ式土器…2条蛇行隆帯(S字状文)、縦位沈線
オ 胴部
中峠式土器…縄文で覆われる(地文のみ)
加曽利EⅠ式土器…縄文で覆われる(地文のみ)
2 大きさ
オルソ投影による「正面から」画像
オルソ投影による「上から」画像
土器の高さ及び口縁部直径は加曽利EⅠ式土器の方が値が大きいです。しかし、簡易計測では土器容量(外形による計測)はほとんど同じです。煮沸や調理に使うときには土器満杯に液体を入れないとすれば、有効容量はむしろ中峠式土器の方が大きいかもしれません。土器容量は改めて詳しく計測します。
3 考察メモ
・中峠式土器と加曽利EⅠ式土器は口縁部に同じテーマの文様を配してるキャリパー形土器ですから、土器の「趣旨」「本質」「背景」は大きくは同類としてくくることが可能であると考えます。しかし次の点で異なり、土器の「趣旨」「本質」「背景」の差異に着目します。
・中峠式土器の文様は肉厚であり、文様構成パーツも豊富であり、土器文様表現に迫力があります。迫力を持って表現する文様に対応して、特定の物語(神話)が存在し、それの物語(神話)が人々の心を捉えていたと想像します。
・それと比較して、加曽利EⅠ式土器では文様はおとなしくなり、文様パーツは最小限になります。土器文様表現が形骸化・形式化しています。文様に対応して先祖から伝わってきている特定の物語(神話)は人々の心に響いているとは言い難いと想像します。加曽利E式土器社会では前後社会と比べて、物語(神話)の役割が相対的に地盤沈下したと考えています。
・土器の形状が胴太で口縁部直径小から胴細で口縁部直径大に変化しています。この変化がどのような要因によるものか、興味が湧きます。炉の構造進化発展に伴い、それに対応した効率化(熱伝導改善)によるものではないかと空想的仮説が浮かび上がります。今後炉の構造変化がどのようにあったのか、学習を深めることにします。土器形状の変化が食材と調理方法の変化に対応しているかもしれないという空想も浮かびます。土器形状の変化は人々ののデザイン上の好みではない要因があり、その要因は突き止めることができると直感します。
・3Dモデルを使った土器容量計測方法の定式化を引き続き検討します。
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