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2024年3月3日日曜日

加曽利EⅠ式土器(006)(銚子市粟島台遺跡)観察記録3Dモデル

 Kasori EI style pottery (006)(Choshi City,Awashimadai Site) Observation record 3D model


I created a Observation record 3D model of Kasori EI style pottery (006), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition". 

In the exhibition explanation, the three-unit handle (with the upper part missing) is called a "bridge-like handle" because of its three-dimensional structure. The "bridge-like handle" is the main element of the Daigi 8a style.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器(006)の観察記録3Dモデルを作成しました。

展示説明では、3単位の把手(上部欠損)について、その立体構造から「橋状把手」と呼んでいます。「橋状把手」は大木8a式の主な要素です。

1 加曽利EⅠ式土器(006)(銚子市粟島台遺跡)観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(006)(銚子市粟島台遺跡)観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2024.01.20


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.517 processing 146 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

「大木式の影響

加曽利EⅠ式は、大木8a式の器形や文様構成の影響を強く受けて成立しますが、それ以外の要素も時折、付帯的に現れます。

006の土器は、口縁部に3単位の把手が付き、単位の間を繋ぐ2本の隆線が立体的な構造を作り出しています。この構造が橋のようにみえることから「橋状構造」と呼ばれるこの把手は、大木8a式の主な要素です。」

4 メモ

006土器を上からオルソ投影画像でみると、口唇部の形状がおむすび型をしています。土器をつくるときに、3単位把手作成に意識のほとんどを集中したために、本来円形になるところがおむすび型になったのだと想像します。


オルソ投影画像 上から

3単位把手の上部が同じようにきれいに除去されていて、土器は底部以外は割れ目の少ない完形で出土しているようです。土器の生命ともいえる把手上部の除去は特段の意味のある行為だったに違いありません。

3単位把手の上部は欠損部状況から中空の丸穴があった構造のようです。

2本隆線で表現されるクランク文は、変形S字状文の連続で生まれた文様と理解します。S字状文を臍帯に起源を持つ紐帯文様と空想していますので、クランク文は人の命の連続性、継続性の抽象表現だと想像します。

2024年2月27日火曜日

加曽利EⅠ式土器(091)(東金市・大網白里市養安寺遺跡)観察記録3Dモデル

 Kasori EI style pottery (091)(Togane City/Oami Shirasato City,Yoanji Site) Observation record 3D model


I created a Observation record 3D model of Kasori EI style pottery (091), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition". 

I was fascinated by the cross-shaped spines on the edge of the pottery mouth.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器(091)の観察記録3Dモデルを作成しました。口縁部の十字に発達した棘に見とれてしまいました。

1 加曽利EⅠ式土器(091)(東金市・大網白里市養安寺遺跡)観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(091)(東金市・大網白里市養安寺遺跡)観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2024.01.20


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.517 processing 116 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

「斉一性のなかの揺らぎ

加曽利EⅠ式土器には、明確に区画される口縁部に集約する文様というルールの中で、時期的な変化とバリエーションがみられます。

091は、EⅠ式古段階に属する土器で、口縁をめぐる交互刺突文や十字の剣先文に揺籃期の土器群の要素がみられます。」


2024年2月19日月曜日

加曽利EⅠ式土器(058)(横芝光町東長山野遺跡)観察記録3Dモデル

 Kasori EI style pottery (058) (Yokoshibahikari Town,Higashinagayamano Site) Observation record 3D model


I created an Observation record 3D model of Kasori EI style pottery (058), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition".

The upper part of the handle of this pottery is typical of the Atamadai style, while the lower part is typical of the Katsusaka style and Nakabyo type, and is a mixture of elements from the pottery group.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器(058)の観察記録3Dモデルを作成しました。

この土器の把手は上部が阿玉台式特有で、下部が勝坂式と中峠類型に多いもので、土器群要素が交錯しています。

1 加曽利EⅠ式土器(058)(横芝光町東長山野遺跡)観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(058)(横芝光町東長山野遺跡)観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2024.01.20


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.517 processing 142 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

展示説明

058土器は「交錯する土器群の要素」材料として、次のように説明されています。

「058は、胴部懸垂文をもつ加曽利EⅠ式土器で把手の上部は阿玉台式に特有の山形把手、下部は勝坂式と中峠類型に多い眼鏡状把手で構成されています。」


2024年2月16日金曜日

加曽利EⅠ式土器(017)(東庄町神代夏方遺跡)観察記録3Dモデル

 Kasori EI style pottery (017) (Tonosho Town,Jindainatukata Site) Observation record 3D model


I created an Observation record 3D model of Kasori EI style pottery (017), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition".

The barbed S-shaped spiral pattern placed three-dimensionally on the rim of the mouth has a strong visual impact. This is the influence of Dagi 8b style.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器(017)の観察記録3Dモデルを作成しました。

口縁部に立体的に配置された有棘S字渦巻文の視覚的インパクトが強いです。大木8b式の影響です。

1 加曽利EⅠ式土器(017)(東庄町神代夏方遺跡)観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(017)(東庄町神代夏方遺跡)観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2024.01.20


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.511 processing 143 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 メモ

口縁部に立体的に配置された有棘S字渦巻文の視覚的インパクトが強いです。大木8b式の影響です。

3つの有棘S字渦巻文のうち、2つの「有棘」先端を観察できますが、一つは「棘」先端が欠けたような表現になっています。縄文人は全く同じ文様を配置するのではなく、文様を少しだけ変化させて配置したのだと想像します。「韻を踏む」ような感覚で口縁部文様を配置していたように想像します。


「韻を踏む」ように感じた文様変化


2024年1月27日土曜日

加曽利EⅠ式土器(009)(銚子市粟島台遺跡) 観察記録3Dモデル

 Kasori EI style pottery (009) (Choshi City,Awasimadai Site) Observation record 3D model


I created a Observation record 3D model of Kasori EI style pottery (009), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition". 

The S-shaped spirals and barbed spirals are arranged side by side on the rim of the mouth, creating a crank between them, which deepens my interest.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器(009)の観察記録3Dモデルを作成しました。口縁部にS字渦巻文と有棘渦巻文が並んで配置され、その間がクランクになっている様子に興味が深まります。

1 加曽利EⅠ式土器(009)(銚子市粟島台遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(009)(銚子市粟島台遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2023.12.19


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.511 processing 148 images


3Dモデル画像


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 口縁部文様

口縁部にS字渦巻文と有棘渦巻文が並んで配置されています。この様子から、S字渦巻文と有棘渦巻文はその意義(意味)が兄弟的関係にある文様だと感じます。

双方の文様ともに口縁部には小渦中心が、頸部近くには大渦中心が描かれています。

S字渦巻文と有棘渦巻文の間の空間はクランク状になっていて、クランク文の萌芽のように感じます。


S字渦巻文と有棘渦巻文の様子

土器を立体的に観察すると、S字渦巻文と有棘渦巻文双方の小渦中心が実は土器開口部を仮想渦と見立てた場合の中心のように妄想することもできます。


S字渦巻文(有棘渦巻文)の小渦中心部が実は土器開口部(仮想渦巻)の中心であるとする妄想



2024年1月25日木曜日

加曽利EⅠ式土器3点 展示状況素3Dモデル

 3 pieces of Kasori EⅠ style pottery,  exhibition status 3D model


I created 3D models of 3 pieces of Kasori EⅠ style pottery that is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition".

In the exhibition, these potteries are explained as Daigi style spiral patterns transforming into Kasori EI style crank patterns and horizontal S-shaped patterns.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器のうち3点の展示状況素3Dモデルを作成しました。展示では、これらの土器が大木式渦巻文が加曽利EⅠ式でクランク文や横S字文に変容する様子として説明されています。

1 加曽利EⅠ式土器3点 展示状況素3Dモデル

加曽利EⅠ式土器3点 展示状況素3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2023.12.19


展示の様子

展示土器のキャプション

097 加曽利EⅠ式土器(東金市・大網白里市養安寺遺跡)

009 加曽利EⅠ式土器(銚子市粟島台遺跡)

060 加曽利EⅠ式土器(横芝光町東長山野遺跡)

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.511 processing 148 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 展示説明

「文様:渦巻文

写真の009の土器は、クランク文のような形で区画上端から流れるモチーフが下端で渦巻になる文様が描かれます。

渦巻文は、大木8a/8b式の横方向に展開する胴部文様の主要な要素ですが、加曽利EⅠ式の口縁部文様帯に配置される渦巻文は、097の土器のように、クランク文や横S字文が変容あるいは曲線化した形で描かれます。」


2024年1月19日金曜日

加曽利EⅠ式土器(094)(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

 Kasori EI style pottery (094) (Togane City/Oamishirasato City,Yoanji Site) Observation record 3D model


I created a Observation record 3D model of Kasori EI style pottery (094), which is on display at the Kasori Shell Mound Museum special exhibition "That's also E... Sotobo Area Edition". 

The sharp spines and spirals (barbed scroll pattern) derived from the Daogi style on the rim of the pottery leave a lasting impression.


加曽利貝塚博物館企画展「あれもE... 外房地域編」で展示されている加曽利EⅠ式土器(094)の観察記録3Dモデルを作成しました。口縁部の大木式由来の尖った棘と渦巻(有棘渦巻文)が印象に残ります。

1 加曽利EⅠ式土器(094)(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利EⅠ式土器(094)(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館令和5年度企画展「あれもEこれもE加曽利E式土器 -外房地域編-」

撮影月日:2023.12.19


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v7.511 processing 138 images


3Dモデルの画像


3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 感想

口縁部の大木式由来の尖った文様と渦巻(有棘渦巻文)が印象に残ります。


尖った棘


2023年6月22日木曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅠ式土器13点(17破片)3D分布モデル

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

Kasori EI type 13 pieces (17 pieces) 3D distribution model


3D coordinates of 13 pieces (17 fragments) of Kasori EI type pottery on the northern slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound were obtained from the map published in the excavation survey report, and a 3D distribution model was created. A negligible amount. However, since the distribution is similar to ornaments (shellfish products), I am looking forward to a comprehensive analysis at a later date.


発掘調査報告書掲載図から有吉北貝塚北斜面貝層の加曽利EⅠ式土器13点(17破片)の3D座標をもとめ、3D分布モデルを作成しました。無視できるような量です。しかしその分布が装飾品(貝製品)と類似するので後日総合分析が楽しみです。

1 加曽利EⅠ式土器3D座標


加曽利EⅠ式土器3D座標

2 有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅠ式土器13点(17破片)3D分布モデル

有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅠ式土器13点(17破片)3D分布モデル

加曽利EⅠ式土器13点(17破片) 赤CUBE

(CUBEの大きさは30㎝×30㎝×30㎝で表示)

加曽利EⅠ式土器の3D座標は発掘調査報告書グラフから計測

ガリー侵食地形面及び一般地形面は貝層断面図、貝層平面図から作成

等高縞模様は等高線に見立てるとおおよそ60㎝間隔

剥ぎ取り断面図は展示物3Dモデル及び上守秀明氏提供画像から構成


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅠ式土器13点(17破片)3D分布モデル画像 1


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅠ式土器13点(17破片)3D分布モデル 2


有吉北貝塚北斜面貝層 加曽利EⅠ式土器13点(17破片)3D分布モデル動画

3 メモ

有吉北貝塚の集落最盛期は加曽利EⅠ式期です。


有吉北貝塚の時期別竪穴住居数

加曽利EⅡ式土器集中投棄をかんがみると、集落最盛期(加曽利EⅠ式期)には北斜面貝層に土器投棄は一言でいうと「皆無に近い」と言っていい状況です。

しかし、そのわずかに残された加曽利EⅠ式土器破片分布をみると、それが加曽利EⅠ式期集落リーダーが装着した腰飾りを含む貝製装飾品分布と類似します。

「取るに足らない」と最初考えた加曽利EⅠ式土器分布は、貝製装飾品などを埋納した活動に関連していわば非意識的、非意図的に持ち込まれたと考えると、重要な指標になるかもしれません。

後日の総合検討が楽しみです。

加曽利EⅠ式土器までの3D座標取得が終わりました。作業の10%が終わり、ウォーミングアップはここまでです。いよいよ本丸の加曽利EⅡ式土器3D座標取得に取り組みます。


2021年5月10日月曜日

加曽利EⅠ式土器渦巻文から強い刺激を受ける

 縄文土器学習 596

加曽利貝塚博物館常設展展示の加曽利EⅠ式土器を観覧中、その渦巻文が丁寧に作られてることに気が付きました。また形状が凹んでいます。加曽利EⅠ式土器、EⅡ式土器のトレードマークである渦巻文の原型を見つけたような感覚を覚え、強い刺激を受けました。土器のパーツに特別の興味を持ったのは初めてです。そこで土器全体の3Dモデル作成だけでなく、この渦巻文だけを対象とした3Dモデルも作成し、考察(想像)を深めてみました。

1 加曽利EⅠ初土器の渦巻文(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル

勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初土器の渦巻文(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル

撮影場所:加曽利貝塚博物館常設展

撮影月日:2021.05.07

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing28 images


展示の様子 1


展示の様子 2


展示の様子 3


名札


3Dモデルの動画

2 考察(想像)

2-1 渦の意味

ア 渦が水流の渦に見える

自分の感覚では渦が全体として凹んでいて、また渦を示す深くて鋭い沈線の様子から、水が渦を成して吸い込まれる様子が表現されているように想像します。

イ 糸巻状把手の下に渦が配置されている

糸巻状把手が噴水であるとこれまで想像してきていますが、その下に水流の渦があるのは理解しやすい構図です。天に向かって大きく自噴する水がその下で溜まり流れ出す構図です。

ウ 水は渦を成して土器内部に流れ込む

渦巻が、水流が吸い込まれていく様子であるとすれば、それは土器内部に吸い込まれるしかありません。つまり、渦巻は豊かな水が土器内部に流れ込む様子を表現しています。言い換えれば、干天で飲み水が無くなるという危機、ひでり災害が無い理想郷の姿をこの土器は表現していると想像します。

2-1 渦巻文と把手の関係

ア 渦巻文重厚性と把手大小の対応

把手は対向する2つが1組になった2組4つが付いています。1組は大、もう1組は小となっています。今回3Dモデルを作成したのは小把手下の渦巻文です。大把手下の渦巻文をみるとデザインが少し違っています。


大把手下の渦巻文

大把手下の渦巻文も全体が凹んでいて、深く鋭い沈線が彫られていますが、渦巻の周りに刻みが巡らされています。デザインとしてより重厚です。

このデザインはこの土器内部に通じる泉がより強(こわ)い(=つよい、より厳しい干天でも枯れない)ものであることを表現していると想像します。自噴の規模がより大きい(大把手)ということと、泉の強(こわ)さ(渦巻の重厚表現)が対応しています。

イ 参考 後代地名 コワシミズ

後代の地名で「コワシミズ」(干天でも枯れない泉)という場所に縄文遺跡が多いのも、飲料水確保が縄文人の重要関心事であったことに起因するからだと思います。


コワ清水(旧版1万分の1地形図「三角原」)

子和清水遺跡の例 千葉市花見川区三角町、旧石器・縄文・弥生・古墳



2021年4月14日水曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 5

 縄文土器学習 579

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器について、便宜上、竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層別にその代表サンプルを観察しています。この記事は土坑出土加曽利EⅠ式土器4点を発掘調査報告書実測図・写真により観察します。

1 SK332 1番土器


SK332 1番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「1は口縁部に隆帯と沈線で渦巻文等を構成し、胴部には垂下する3本一組の沈線が渦巻文や剣先状モチーフを描くものである。」

キャリパー形の土器で主文様帯が口縁部にあり、胴部に垂下沈線があることなどから「正統」な加曽利EⅠ式土器であると理解します。沈線に渦巻文と剣先状モチーフが隣接して存在していますが、これはセットであり、次のSK164 72番土器説明の「有棘渦巻文」であると理解します。「有棘渦巻文」は大木式の影響を受けた文様であると理解します。

2 SK164 72番土器


SK164 72番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「72は細い粘土紐による有棘渦巻文等を口縁部文様帯にもつものである。」

次図のようにクランク文が基本的文様であり、それに有棘渦巻文が付いた文様であると理解します。


クランク文が基本で、それに有棘渦巻文が付属し、さらにクランク文の一部が細区画されたという理解

3 SK321 333番土器


SK321 333番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「333は上部に渦巻文を描いた4単位の把手を持つ波状口縁の深鉢である。図の正面と左側の把手上の渦巻文は、口唇部上を巡る沈線で連携し、それと対になるように裏側と右側のものが連携している。肥厚する口縁部無文帯部には指頭状工具による押圧が加えられ、胴部には地文縄文が施文される。」

器形がキャリパー形ではなく、埼玉編年(1982)でいう第2群土器(折衷土器)の一種であると考えます。SB190 2番土器に似ています。(2021.04.11記事「有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 2」参照


参考 SB190 2番土器

4 SK223a 3番土器


SK223a 3番土器 8群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「3は波頂部に渦巻文の付く波状口縁の深鉢で、口縁部には沈線で2本に分けられた隆帯によるクランク文が巡る。クランク文の先端は渦巻文になっている。明確な頸部無文帯は2本の沈線で胴部文様帯と画され、胴部には蛇行沈線と3本一組の直沈線とを交互に垂下する。」

波状口縁の波頂部渦巻文のあり方はSK321 333番土器と似ています。

[文様の意味に関する思考メモ]

・口縁部…天空界

・頸部無文帯…地上界と天空界の間の空(そら)

・胴部…地上界

・波頂部の渦巻文…吹き上がる理想の湧水

・口縁部渦巻文…湧水

・口縁部クランク文…理想の生活領域(理想の縄張り、海と陸の双方の空間を含む縄張り)

・クランク文隆帯を2つに分ける沈線…複数の独立したクランク文が隣接して描画されていることを強調している。

・胴部垂下蛇行沈線…河川

・胴部垂下直沈線(3本一組)…生活領域の区画(隣接集団(集落)との間で取り決められた活動権利区域)(3本の真ん中線…真の区画線、両側の線…隣接集団(集落)が相手領域を犯さないように定めた自主的区画線)

・口縁部と胴部の縄文…区画(生活領域)に存在する自然(植生)をパノラマ遠望的に表象する。

5 感想

・土坑出土土器片は南北斜面貝層出土土器片より大型のものが多いようです。土坑では完形土器や大型土器片を意図的に埋置する行為が多いことと、後年の撹乱が少ないことによると考えます。

・有棘渦巻文というテクニカルタームを知ることが出来ました。魔除け的な効果のある文様だと思いますが、大木式土器学習の中でその起源や意味について学びたいと思います。

・SK223a 3番土器を例に文様の意味に関する思考をまとめました。文様の意味に関する思考(検討、想像)は考古学分野の活動ではなく、神話学(古代心理学)分野の活動であると区別した上で楽しむことにします。


2021年4月13日火曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 4

縄文土器学習 578

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器について、便宜上、竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層別にその代表サンプルを観察しています。この記事は北斜面貝層出土加曽利EⅠ式土器4点を発掘調査報告書実測図・写真により観察します。

1 北斜面貝層 155番土器


北斜面貝層 155番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「155は南東北の大木様式の資料と思われる。やや括れた頸部に横長の楕円形区画文が廻り、胴部文様帯にはL撚糸文を地文に並行沈線による渦巻状や波状、クランク状の文様が整然と配されている。大木8aであろう。」

クランク文のふるさとが大木式にあるようですから、勝坂式、阿玉台式だけでなく大木式の学習を予定したいと思います。

2 北斜面貝層 166番土器


北斜面貝層 166番土器 7群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「166はキャリパー形土器の破片資料。地文は撚糸文。波状文が文様帯の上下の隆線に接して三角形区画文になっているもの。」

南斜面貝層260番土器(2021.04.12記事)と類似土器と思いますが、撚糸文であることが気になります。有吉北貝塚では撚糸文と縄文の割合がどの程度であるのか、今後注目して学習することにします。

3 北斜面貝層 171番土器


北斜面貝層 171番土器 8群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「171はキャリパー形土器の破片資料。隆線によって画された口縁部文様帯の下方には頸部無文帯が明瞭に看取されるが、区画が粗雑に扱われている。」

2条の垂下沈線も観察できます。

4 北斜面貝層 176番土器


北斜面貝層 176番土器 8群土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「176はキャリパー形土器の破片資料。隆線によって画された口縁部文様帯の下方には頸部無文帯が明瞭に看取される。口縁は平縁を基本とするが、176のように第7群の161や162からの系譜と見られるものも残存する。」

口縁部が波状を呈し、波頂部の口唇に渦巻文を配する加曽利E式土器はS字状文が付されていることが多いと感じています。関東西部に起源を有する文様かもしれません。今後注目して学習することにします。


参考 第7群161、162

5 感想

・北斜面貝層は加曽利EⅡ式期から使われたようなので加曽利EⅠ式土器とそれ以前の土器は加曽利EⅡ式期以降に流れ込んだもののようです。従って破片が多くなっています。

・破片資料からも多くの情報を汲み取ることができることを知りました。

・加曽利EⅠ式土器学習を起点にして、過去に土器様式を遡る学習(勝坂式、阿玉台式、中峠式)、同時代別様式の学習(大木式学習、曽利式学習)、次期様式に進む学習(加曽利EⅡ式、EⅢ式、EⅣ式、称名寺式、連弧文土器)が必須であるという総合的イメージが出来ました。加曽利EⅠ式土器の混沌とした状況のなかで、個別土器理解(類型の直観的感得)が出来ないで苦しんでいますが、加曽利EⅠ式土器だけをいくら観察しても、それだけでは理解がすすまないということが判りつつあることはうれしいことです。 

2021年4月12日月曜日

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器観察 3

 縄文土器学習 576

有吉北貝塚出土加曽利EⅠ式土器について、便宜上、竪穴住居、土坑、南斜面貝層、北斜面貝層別にその代表サンプルを観察しています。この記事は南斜面貝層出土加曽利EⅠ式土器4点を発掘調査報告書実測図・写真により観察します。

1 南斜面貝層 269番土器


南斜面貝層 269番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「269は隆線によって口縁部ヨコ1次区画され、口縁部文様帯内には両脇に沈線を伴う1条の隆線が波状に横走している。地文は縦回転施文のRL単節縄文で、主文様の抽出以前に施されている。」

キャリパー形土器で、埼玉編年(1982)のⅨb期1群土器F類に該当すると考えます。


参考 埼玉編年(1982)Ⅸb期1群土器F類

2 南斜面貝層 273番土器


南斜面貝層 273番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「273は出土量が少ないが、本段階に特有の一類型で、ラッパ状に開く器形を呈し、口縁部外側を極端に肥厚させ、その上面を幅狭の口縁部文様帯とするものである。口縁部は3ないし4単位の波状を呈し、胴部が数段に区画されるものが一般的である。本例は口縁部文様帯が1条の横走沈線のみで、胴部は横走隆線と横走沈線(3条)によって区画され、最上段は無文、中断と下段にはRL単節縄文が縦回転施文されて中段には沈線が廻っている。」

曽利式土器の影響を受けた折衷土器というものでしょうか?

埼玉編年(1982)のⅨa期2群土器F類の類例として理解しておきます。


参考 埼玉編年(1982)のⅨa期2群土器F類

3 南斜面貝層 274番土器


南斜面貝層 274番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「274はキャリパー形土器の破片資料である。把手を有している。口縁部ヨコ1次区画の特徴から7群に含めたが、並行隆線の施文方法や口縁部文様帯内に縦位集合沈線が充填されていること等からみると中峠式に属する可能性がある。」

加曽利貝塚博物館企画展に展示された中峠式土器キャリパー形類似例ではヨコ1次区画隆帯に刻みが入っていて、この土器片は刻みがないので7群土器(加曽利EⅠ式土器)に入れたと理解しておきます。


中峠式土器例


中峠式土器例

4 南斜面貝層 325番土器


南斜面貝層 325番土器

発掘調査報告書では次のように記載されています。

「325は器形的にはキャリパー形を呈し内折するように内側が肥厚する口縁部には円筒形で中空の把手が付されている。口縁部文様帯は集合沈線のみで構成されており、その一部が加曽利E様式的な渦巻文状を呈している。頸部には無文帯が存在し、下端に巡る隆線によって胴部縄文施文帯との境界が画されている。口縁部Ⅰ+頸部Ⅱ+胴部Ⅲという文様構成から本群(8群)に含めたもので、口縁部文様帯の特徴から曽利様式系の資料と思われる。」

加曽利EⅠ式が曽利様式の影響を受けてつくられた折衷土器と理解しておきます。

5 感想

・「純粋」の加曽利EⅠ式土器以外の折衷土器が多いことに改めて気が付きました。折衷土器の意義について十分に考える必要性を痛感します。

・過去からの影響(例 中峠式土器の影響)と他の場所で発生し伝播してきた様式の影響(例 曽利式土器の影響)と、そもそもその場所で本流になりつつある生まれ出た加曽利EⅠ式の3つがカオスの状況にあったのが加曽利EⅠ式期であったと理解しておきます。

・中峠式の影響が濃い土器(A)、曽利式の影響が濃い土器(B)、純粋加曽利EⅠ式の土器(C)などの土器群分類と対応する事象があるかどうか興味が湧きます。例えば、A、B、Cの比率は竪穴住居、土坑、南北斜面貝層でほぼ同じなのか、違うのか。竪穴住居毎にみるとどうなのか。共伴出土石器種類構成と関連があるか、ないか。遺構内貝層の存否と関係があるか、ないか。・・・