A new interpretation of earthenware like sandal
I saw a picture of a ship-shaped clay product posted by Moyoro-kun (unofficial) on Twitter. As a result, a new interpretation (dugout canoe) emerged of sandal-like earthenware whose meaning had been unclear for a long time. I'll make a note of it for reference. I would like to thank Moyoro-kun (unofficial) for allowing me to publish the photos of the ship-shaped clay product.
Twitterでモヨロくん(非公式)さんが掲載した船形土製品の写真をみて、長い間その意味が釈然としなかったサンダル状土製品の新解釈(丸木舟)が浮かび上がりました。参考までにメモします。船形土製品写真掲載を承諾していただいたモヨロくん(非公式)さんに感謝します。
1 サンダル状土製品の3Dモデル
サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)正置 観察記録3Dモデル縄文時代後期~晩期前半、長口径5.8㎝、短口径3.8㎝、端部に円孔1ヶ所
撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター
撮影月日:2020.09.11
許可:千葉市教育委員会の許可による撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.007 processing 93 images
サンダル状土製品撮影風景
サンダル状土製品実測図
千葉市内野第1遺跡発掘調査報告書から引用
3Dモデルの動画
2 サンダル状土製品の私の解釈経緯
2-1 皮革製品としてのサンダルのミニチュア
縄文時代の皮なめしについて考えていた頃、サンダル状土製品は皮革製品(サンダル)のミニチュアだと考えました。
2020.08.14記事「サンダル状土製品の巨大意義に突然気がつく」など多数
土製品先端に開いている小孔は鼻緒を通す孔であると考えました。縄文時代の皮革製品は残っていませんが、その製品イメージが土製品として残っているならば、とても興味深いことです。
2-2 容器のミニチュア
その後、サンダル状土製品3Dモデルを許可を得て作成して、じっくり観察しました。その結果、この土製品はサンダルではなく、容器を表現していると考えを変更しました。注口付き片口であると考えました。
2020.09.26記事「サンダル状土製品を容器として見立てる」など多数
3 モヨロくん(非公式)さんがTwitterに公開した船形土製品
最近Twitterでモヨロくん(非公式)さんが船形土製品画像を公開しました。
網走市立郷土博物館分館「モヨロ貝塚館」に展示されている船形土製品
Twitterモヨロくん(非公式)さん提供
この画像を見て、2年前に熱中したサンダル状土製品がサンダルや容器のミニチュアではなく、丸木舟のミニチュアであると直観しました。この直観はいつもの毎日生まれる無数の妄想・空想・想像とは明らかに違うレベルの確信的雰囲気を伴うものでした。この直観が結果として正か非かは別として、自分として確かめる学習価値があることは動かしがたいものでした。
なお、Twitterモヨロくん(非公式)さんから次の実測図画像も提供していただきました。
船形土製品の実測図
Twitterモヨロくん(非公式)さん提供
モヨロ貝塚の人々と千葉縄文後晩期の人々は生活した空間、文化、時期が異なり、直接比較することは困難です。しかし、そうした直接比較ではなく、舟を土製品として残したという一致点があるかもしれないという直観を大事にして、この直観をキッカケにしてサンダル状土製品が丸木舟のミニチュアであるという新解釈を検討してみました。
4 サンダル状土製品の新解釈
4-1 縄文丸木舟に一般的に見られる刳り残し横梁
縄文丸木舟には一般的に刳り残し横張が存在しているようです。これまで観察して記録を探せたもののうち次の2点に刳り残し横張が存在します。
4-1-1 八千代市保品出土丸木舟
八千代市保品出土丸木舟には船首と船尾双方付近に刳り残し横張が各2つあります。
八千代市保品出土丸木舟
早稲田大学考古学研究室提供
八千代市保品出土丸木舟
早稲田大学考古学研究室提供
八千代市保品出土丸木舟
早稲田大学考古学研究室提供
復元物では次のように表現されています。
八千代市立郷土博物館 縄文丸木舟展示の様子
八千代市立郷土博物館縄文丸木舟展示の様子
4-1-3 匝瑳市米倉大境出土丸木舟
縄文晩期丸木舟(複製)展示状況3Dモデル匝瑳市米倉大境出土、長さ347㎝、幅42㎝
落合遺跡説明パネルとその補助物としての縄文晩期丸木舟(複製)展示
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2020.06.02
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 144 images
3Dモデルの動画
匝瑳市米倉大境出土丸木舟にも刳り残し横梁が船首(展示右側?)と船尾(展示左側?)2個所にあります。
そしてそれだけでなく、船首の横梁の上にモノを差し込めるような方形の孔を観察できます。船尾横梁の上(内側)にも同様の方形の孔を3Dモデルで見ることができます。これらの孔は横梁の上に棒を設置して船頭が座って視線を一段高くして操船をしやすくしたのだと推察できます。
横梁上のモノを差し込めるような孔
4-2 サンダル状土製品の新解釈
縄文丸木舟には船首と船尾に刳り残し横梁が見られるものが多くあります。そして匝瑳市米倉大境出土丸木舟では刳り残し横梁の上に棒を設置して船頭が座った可能性が濃厚です。このような情報から、サンダル状土製品を縄文丸木舟のミニチュアであると想像的に新解釈します。
新解釈 サンダル状土製品を丸木舟ミニチュアと考える。
5 感想
もしこの土製品が丸木舟のミニチュアであるとしたら、この遺跡とどのように関わるのか、大いなる興味が湧きます。この遺跡は勝田川の沖積地から台地斜面にかけて分布し、丸木舟が使われていた可能性は濃厚です。そうした生活環境との関係だけではなく、この遺跡が土偶出土数395点で、全国的にみても有数なマジカル遺跡であるという、大きな視点からこの丸木舟ミニチュアを考えることも意義があるように考えます。この土製品が丸木舟ミニチュアであるとの感触がもっと強まれば、当時の広域交通手段としての丸木舟と広域祭祀・祈願圏との関係などの中でこの土製品についての思考を深めたいと思います。
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