花見川流域の小崖地形 その41
花島小崖の検討を一応終えて、全体を総括的に検討しておきたいと思います。
最初に、花島小崖と地形面との関係を確認しておきます。
次の図は「千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地」(千葉県発行)に掲載されている下総台地西部の地形面分布図です。(原図は杉原(1970))
下総台地西部の地形面分布図
出典:「千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地」(千葉県発行)
花見川付近の主な地形面は下総上位面と下総下位面の2つです。
花島小崖は下総上位面に分布しているのですが、大久保付近には下総下位面もあらわれるので、それと小崖の関係を把握しておきます。
というのは、東京湾沿いにおける下総上位面と下総下位面の間には海蝕崖(※)が存在していることから、花島小崖(断層崖)と考えている地形が実は海蝕崖であったという誤認識を避けるために、小崖と地形面の関係把握は必要なことです。
※海蝕崖といっても厚いローム層に覆われていますから、現場では断層崖と同じく普通の人が見ると単なる気がつきにくい緩斜面です。
次の図は地形段彩図の上に、これまで検討してきた花島小崖をプロットしたものです。
花島小崖の分布
基図は地形段彩図
参考として、花島小崖の位置が判る様に、標準地図に花島小崖をプロットした地図を掲載します。
参考 花島小崖の分布
基図は標準地図(電子国土ポータルによる)
次の図は上記「下総台地西部の地形面区分図」の一部をGIS上にプロットして、花島小崖との関係をわかる様にしたものです。
「下総台地西部の地形面区分図」と花島小崖の関係
「下総台地西部の地形面区分図」は「千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地」(千葉県発行)による
「下総台地西部の地形面区分図」は広い範囲を示している小縮尺地図であり、正確にGISにプロットすることには限界があります。
しかし、そうしたことを考慮しても、花島小崖は下総上位面に位置していて、下総上位面と下総下位面の境には対応していないことを確認できます。
参考として、20万分の1地質図の一部をGIS上にプロットして、地質と花島小崖との関係を見てみました。
20万分の1地質図幅「千葉」(部分)と花島小崖の関係
20万分の1地質図幅「千葉」は地質Naviによる
凡例の市川砂層は次の資料に示すように、下総下位面を構成する海岸段丘礫層です。
下総台地の模式的な地形地質断面図
出典:「千葉県の自然誌 本編2 千葉県の大地」(千葉県発行)、誤記訂正
20万分の1地質図幅「千葉」は広い範囲を示している小縮尺地図であり、正確にGISにプロットすることには限界があります。
しかし、そうしたことを考慮しても、詳細に位置関係を検討すると、花島小崖は成田層の凡例の場所に位置し、市川砂層分布域境界付近の場所から測って、近いところでも100m~300m以上離れていることを確認できます。
以上の地形及び地質の既存資料との関係から、花島小崖が位置している場所はすべて下総上位面であることが確認できました。
花島小崖の位置が、下総上位面と下総下位面との地形境界に対応することはなく、この確認から、花島小崖の成因として海蝕崖の可能性を全ての区間で排除できます。
以上の検討は既存資料に基づいたものであります。
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