2013年10月9日水曜日

長沼池と古長沼

花見川流域の小崖地形 その36

1 歴史時代の長沼池の姿と古長沼の姿
1-1 古文書に表現された長沼池
次の資料は水田開発前の長沼池の形状を示す資料です。

六方野開墾絵図(宇那谷町内会所蔵、「絵にみる図でよむ千葉市図誌 下巻」より転載)

この絵図は16725月作成、1765年写で、宇那谷村と長沼新田との間で長沼池の争論があった時に作成されたと考えられています。

この絵図に細長い長沼池がその名称とともに記載され、東金街道が池を横切っている様子が描かれています。

「長沼」名称の由来が細長い平面形状にあることがこの資料からわかります。

水田開発前長沼池復元図

2012.03.02記事「水田開発前の長沼池復元」より引用

1-2 古長沼
下総上位面形成後、地殻変動によってこの地域に湖沼が生まれました。その湖沼を古長沼とよぶことにします。古長沼の最後の姿が長沼池です。

古長沼の復元を試みると次のような図になります。

古長沼の範囲
標高区分図投影

2012.03.31記事「古長沼の復元その1」より引用

この復元の根拠となる考え方は
2012.2.26記事「宇那谷川谷津の拡大プロセス仮説」で紹介しています。

2 古長沼の成因
この項の記述は2012.03.30記事「古長沼の成因」をそのまま再掲したものです。

この記事を書いた当時は小崖1(花島小崖、花島断層に伴う小崖)が横ずれ130m150mを伴うこと等は判っていませんでしたので、谷津の小崖間の対応など詳細は正確ではありませんが、古長沼成因仮説の基本的考え方は間違っていませんので再掲します。

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古長沼の成因について、これまで考えてきたことをまとめてみました。

1 古長沼、長沼池の定義
このブログでは長沼池と古長沼を次のように定義して使います。

長沼池…人は、存在していた湖沼を長沼と呼んだのですが、それがこの地域の地名になり、地名の長沼と湖沼の長沼の区別をつけるために長沼池という言葉が生まれたものと考えます。 このブログでは新田開発で人が関わった以降の湖沼を長沼池と呼びます。

古長沼…下総上位面形成後、地殻変動によってこの地域に湖沼が生まれました。その湖沼を古長沼とよぶことにします。古長沼の最後の姿が長沼池です。

参考記事
2012.3.3記事「古長沼の復元 その1

2 古長沼周辺の谷津分布
現在の地形から読み取れる谷津(一部想定を含む)の分布図を次に示しました。

古長沼付近の谷津分布

古長沼跡で谷津筋線がクロスしてしまい不思議です。この解釈をしたいという問題意識から出発して古長沼の成因について考えてみました。

3 古長沼の成因
STEP 1 必従谷津の形成
下総上位面形成後必従谷津が形成されたと考えます。

*必従谷津(地表の一般傾斜の方向に流下する河川が作った谷津。隆起海岸平野などに最初に形成される。)

STEP 1 模式図

STEP 2 小崖3発生による谷津分断と河川争奪発生
小崖3を伴う地殻変動が発生し、小崖の南側が沈下します。この地殻変動のために谷津は宇那谷川以外は分断され、宇那谷川に吸収されます。宇那谷川は地殻変動に抗した浸食力を持っていたため、先行谷津として残ったと考えます。

STEP 2 模式図

類似の現象が小崖2で沢山みられます。

参考記事

STEP 3 小崖1発生による谷津分断
小崖1を伴う地殻変動が発生し、小崖の南側の高度が沈下しかつ南側の土地の勾配が減じ、さらには逆勾配になるように傾動します。このため谷津は分断されるだけでなく、小崖の南側では谷津における水の流れは逆流するようになります。宇那谷川も小崖1を貫通できません。

STEP 3 模式図

STEP 4 小崖1発生による古長沼形成
小崖1より上流では、宇那谷川では谷津の流れ込む水が吐けないため溜まり、湖沼が生じます。一旦生じた湖沼は湖岸を浸食して大きくなります。湖沼の排水は宇那谷川に流れていたと考えます。
なお、現在は東京湾側水系の浸食により失われているので確認できませんが、古長沼は現在の犢橋川に沿って花見川合流点を越え西に広がっていた大きな湖沼であったと想像します。

STEP 4 模式図

古長沼の拡大プロセスは次の記事で検討しました。
関連

STEP 5 古長沼退縮
古長沼が東京湾側に大決壊してその範囲を縮小したかもれないと、ボーリングデータから想像しています。(2012.3.5記事「湖沼堆積物データの発見」)
古長沼は退縮して歴史時代に長沼(=長い沼)と呼ばれる姿になったと考えます。

STEP 5 模式図

以上のようなステップで地形の変化を考えると、最初疑問であった谷津筋線がクロスする不思議も、解明されたと考えることができました。


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この記事に記述したように、長沼池、古長沼は2つの並行する断層によって形成された「断層湖」です。

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なお、2012.02.232012.03.30の期間のブログ記事に、長沼池と古長沼に関する記事を集中的にアップしてありますので興味のある方は参考にして下さい。

この期間の地形ブログ記事はサイト「花見川流域資料1 下総台地の地形発達史」でもご覧いただけます。
(アクセスした後、表題を右クリックして「新しいタブで開く」とバグ(プルダウンメニューが表示されない)が無い画面になります。)

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この記事のシリーズ「花見川流域の小崖地形」は特設サイト「花見川流域の小崖地形」にまとめて転載してあります。


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