2014年8月9日土曜日

「花見川地峡成立の自然史-仮説的検討」をふりかえる

シリーズ 花見川地峡成立の自然史 -仮説的検討- 
第4部 下総台地形成に遡る その33

1 連載経緯のふりかえり
2014.04.06記事「花見川地峡成立の自然史を遡ってみる」からスタートして、2014.08.08記事「千葉市若葉区の小地溝」まで77記事にわたって「花見川地峡成立の自然史-仮説的検討」というシリーズを連載してきました。

その内訳は次の通りです。

●シリーズ「花見川地峡成立の自然史-仮説的検討」の内訳
第1部 現代から縄文海進まで遡る 8記事
第2部 花見川河川争奪に遡る  19記事
第3部 印旛沼筋河川争奪に遡る 18記事
第4部 下総台地形成に遡る 32記事

このシリーズを始めた当初のもくろみは、それまでこのブログで検討してきた地形関連記事を整理してまとめることでした。

ところが「第2部花見川河川争奪に遡る」では過去記事を整理するだけでなく、論点を深めたくなり、過去記事を基礎として検討を深めることになりました。

また、「第3部印旛沼筋河川争奪に遡る」では思いつき程度のレベルの印旛沼筋河川争奪仮説をそのまま紹介することには自分自身納得できないため、その場で急遽検討を深め、ある程度しっかりした、裏付けデータのある仮説まで持って行き、そのプロセスを記事にしました。

さらに「第4部下総台地形成に遡る」では、それまでの蓄積はほとんど無かったので検討課題を述べる程度の少数記事でまとめる予定でした。

しかし、地形検討に対する興味が深まっていたので急遽予定を変更しました。

最初に下末吉海進期バリアー島の学習を行い、次にその学習を踏まえて、下総台地の地形について自分が興味を持つ事柄を網羅的に抽出して、薄く広くですが、一応全部検討してみました

自分でも予期しなかった発見が相次ぎました。

あまりに興味対象が拡がったので、連載の最後の方は検討を深めることは後日の課題として、事実(発見)の報告に終始させて、何とかこの連載を区切るように意識しました。

このような連載経緯であったために、過去記事をこぎれいにまとめるという「小」目標は未達成(廃棄)となりましたが、途中から抱いた「縄文海進、花見川河川争奪、印旛沼筋河川争奪について検討を深めてまとめる、さらに各種褶曲変動地形について興味を持つ」という「大」目標を達成することができました。

2 地形検討のふりかえり
連載記事を日々書く中で、次のような感想や問題意識等を持ちましたので記録しておきます。

2-1 花見川河川争奪と印旛沼筋河川争奪という事象存在の確証を得た
このブログの検討レベルは、できるだけ詳しい検討を行っていますが、基本はエッセーレベルです。
しかし、花見川河川争奪および印旛沼筋河川争奪仮説は、学術レベルでも意義の大きいことであると考えています。
特に印旛沼筋河川争奪はこれまで考えた人がいません。印旛沼筋河川争奪という考えは、既存知識に依拠している専門家の見解と異なります。
将来、何かの機会に印旛沼筋地形について専門的知識を有する方から印旛沼筋争奪仮説を支持肯定していただく、あるいは説得性のある理由を付して否定していただければ、自分の地形認識が一層深まるので、大変うれしいことです。
現在のところ、印旛沼筋河川争奪を説得性のある理由をもって否定していただける機会やそのような情報に接することは決して訪れないと、高を括っています。

2-2 花見川流域とその周辺は各種褶曲変動地形のきらびやかなショーウィンドウだった
褶曲変動地形というキーワードで花見川流域やその周辺の下総台地を見ると、そこは各種多数の変動地形のきらびやかなショーウィンドウであることに気がつきました。
次に主な褶曲変動地形とその関連地形を列挙してみます。

●花見川流域とその周辺の褶曲変動地形・関連地形
・規模の大きい隆起帯、沈降帯(向斜軸)
・多数の小崖地形・断層地形
・化石谷津、谷中分水界
・台地上湖沼(長沼池)
・オタマジャクシ状凹地(湖沼跡)
・小帯状隆起帯
・原始平行河川
・レーキ状水系網
・小地溝、谷中谷
・幾何学的谷津形状(鹿島川)
・河川争奪地形(花見川河川争奪、印旛沼筋河川争奪)
・円弧状水系網(地層に封入されていた地殻変動模様の洗い出し) など

花見川流域とその周辺の下総台地に存在するこれだけ多様な褶曲変動地形群が、日本の中でどれだけ珍しいものであるか、つまり日本の中での稀少性についての情報は持ち合わせていません。
しかし、これだけ多数の各種褶曲変動地形があること自体は地域にとっての一つの財産であるという考え方を持つことができると思います。
褶曲変動地形というキーワードで地域を見てみると、花見川とその周辺地域には豊かな地形資源があり、それを文化財、研究学習対象、地域おこし資産等として捉えるという発想が浮かび上がります。

2-3 地形検討ツールとしてのGIS-5mメッシュ活用システムの有効性
根拠はありませんが、花見川流域やその周辺の下総台地を5mメッシュデータを活用して、その地形を検討して、その情報を何らかの形で世の中に公表した人はいないと思います。
もしいらっしゃれば、このブログで検討しているような話題は全て既出であるはずですからです。

5mメッシュをつかって地形を検討すれば、それ以前の紙の2万5千分の1地形図を基本資料として行った検討と比べて比べものにならない詳細情報を得ることが出来ます。
5mメッシュを使うことにより、地形に対する認識を飛躍的に深めることが可能であることを、このブログ活動の中で実感しました。

地形検討ツールとしてのGIS-5mメッシュ活用システムを絶えず高度化して行くことが大切であると実感しています。

●地形検討ツールとしてのGIS-5mメッシュ活用システムの概要
[情報]
・レーザー測量による5mメッシュ 約2.6億
・手持ち地図 旧版1万分の1地形図、旧版2万5千分の1地形図、米軍空中写真等
・WEB 標準地図、空中写真、ボーリングデータ等
[ソフト]
・地図太郎PLUS(GISソフト) 地形段彩図、地形断面図、各種地図オーバーレイ
・カシミール3D(立体表示ソフト) 地形立体図
・Photoshop、Illustrator(デザインソフト) 図版デザイン

2-4 Google earthの活用有効性
・Google earthに作成した地図を投影して表示すると、広域の事象と当該地図を位置付けるような発想をすることが可能となります。このような活用をさらに進めたいと思っています 。

・Google earthをつかって地球上のあらゆる場所の地形を空中から見ることができます。最近ではアメリカ大西洋岸の潮汐三角州やサウジアラビアのドーム状砂丘のGoogle earth画像をブログに引用しています。

デスクに坐りながら世界中の地形をタダで一瞬にして観察できることの意義に改めて驚きます。今後大いに活用したいと思います。有用な活用策(地形検索方法)についても検討したいと思っています。

2-5 地形認識に関する心理上の問題が大切であると気がつく
このブログでの地形検討の意義は、私にとっては、自然科学的な意味での地形成因に関する興味満足と社会科学的な意味での歴史事象と地形との関係把握に関する興味満足の2点ということになります。

歴史事象と地形との関係ということになると、古代人やその後の歴史時代の人々の地形認識がどのようなものであったのかということが問題になります。

その点でどうも現代人と過去に生きた人々では地形認識に関しておおきなズレがあるのではないかと、最近強く感じるようになっています。

土地の改変を人力で行った人々と、機械力でいとも簡単に行う社会の人々では、台地地形の起伏認識に関して大きな差異があると予想します。
日常生活における移動を徒歩で行った人々と、自動車でいとも簡単に行う社会の人々では、台地地形の起伏認識に関して大きな差異があると思います。
また、同じ台地地形といっても過去の姿と現代の姿では道路部分での改変に著しいものがあると思います。

このような地形に対する心理的差異、実際地形の差異を十分に理解していないと、歴史事象と地形との関係を正しく捉えることが出来ないと考えるようになりました。

そこで、地形に対する過去現在の心理的差異、実際地形の差異を十分に検討理解しながら、次のシリーズ「花見川地峡の利用・開発史」に取り組みたいと思うようになりました。
次のシリーズ「花見川地峡の利用・開発史」では、ここまで行ってきた自然科学的な意味での地形検討を基礎にして、その情報を過去人の地形心理に投影するような形で変換して、分析のための有力情報として使って行きたいとおもいます。

「シリーズ 花見川地峡成立の自然史 -仮説的検討-、 第4部 下総台地形成に遡る」を終わります。

花見川早朝風景
弁天橋から

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つづいて「シリーズ 花見川地峡の利用・開発史 第1部 縄文弥生時代の交通」を始めます。

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