2015年7月7日火曜日

墨書土器にみえる丈部(ハセツカベ)一族

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.164 墨書土器にみえる丈部(ハセツカベ)一族

1 「丈部」文字の出土状況
白幡前遺跡・北海道遺跡・権現後遺跡から合計5つの「丈部」(ハセツカベ)及び「丈」の文字が出土しています。

萱田地区遺跡の墨書土器 「丈部」、「丈」文字出土状況

2 参考 「丈部」文字を含む多文字墨書土器の解釈
権現後遺跡Ⅱゾーン出土人面墨書土器文字、白幡前遺跡2Aゾーン出土人面墨書土器文字、北海道遺跡Ⅲゾーン出土文字について千葉県の歴史通史編古代2」(千葉県発行)では、次のように説明しています。

「村神郷丈部国依甘魚」
説明「「(下総国印旛郡)村神郷の丈部国依が疾病の本復を祈願」するために、供膳具(坏形土器)に疾病神と思われる人面と自分の本貫地の郷名(村神郷)と名前(丈部国依)を書いたのである。そして、器の中には疾病神への賄賂である御馳走(甘魚)を入れ、心願の成就を願った。」

「丈部人足召代」→人名「丈部人足」+身召代「召代」
復原案「丈部人足(身)召さるる代り<人面>(に奉る)」
(平川南「墨書土器の研究」を転載(一部改変)するかたち)

「丈部乙刀自女形代」→人名「丈部乙刀自女」+身召代「形代」
復原案「丈部乙刀自女形(召さるる)代り進上す」
(平川南「墨書土器の研究」を転載(一部改変)するかたち)

3 支配層としての「丈部」一族
さて、これらの「丈部」文字が含まれる墨書土器は一般の墨書土器と異なり、多文字であり、また人面を含んでいて、さらに白幡前遺跡出土人面墨書土器の器種はハイランクの甕です。

これらの状況から「丈部」文字が含まれる墨書土器は支配層が書いた墨書土器であり、「丈部」という姓が萱田地区の支配層一族の姓であると考えることができると思います。

「丈部」文字を含む墨書土器の出土分布を次に示します。

権現後遺跡「丈部」、「丈」出土状況
土器生産現場を統括していたと考えられる業務地区から「丈部」が出土しています。

北海道遺跡「丈部」、「丈」出土状況
官人の居住地区であったと考えたⅡゾーンから「丈部」が出土しています。

白幡前遺跡「丈部」、「丈」出土状況
寺院と接待施設があり、白幡前遺跡の政治支配中枢部と考えた2Aゾーンから「丈部」が出土しています。

「丈部」出土ポイントは何れも集落の支配層居住地です。

萱田地区の支配層が「丈部」一族であることがわかりました。

この「丈部」という氏族がどのような素性であるか、次の記事で検討します。

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