2019年1月30日水曜日

林跡№1遺跡 隆起線文土器出土遺跡

縄文土器学習 12

隆起線文土器出土遺跡の学習を「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)掲載事例により進めています。この記事では鎌ヶ谷市林跡№1遺跡を学習します。

1 林跡№1遺跡の位置

林跡№1遺跡の位置 QGIS画面 現在地形と現在地図のオーバーレイ

2 林跡№1遺跡付近の地形

旧版25000分の1地形図(大正年間測量図)
空色は谷津筋線を、青色は凹地を表現しています。

3 出土土器と石器
「採集された遺物は土器片33天、石器類186点である。土器はいずれもこまかく割れているために、器形や文様構成をうかがうことができないが、いくつかに分類することができる。①貼り付け粘土紐による細隆起線文土器(図2-1~7)。細隆起線文には押し潰しのあるものとないものがある。また、並行に貼付されるものや斜行するもの、縦位置に短隆線状に並行貼付されるものなどいろいろな変化がある。②押引手法による微隆線文に近いもので、緩く外反する口頸部に4条以上の隆線が観察される(8)。③無文のもの(9・10)。ただし、 9は小破片であり、細隆起線文土器の口縁部である可能性がある。また、
これら以外に,爪形文の観察される小破片や縄の圧痕のつくものなどがあるが,詳細は不明である。
石器の内訳は、有舌尖頭器2点・小型木葉形石器1点・削器3点・楔形石器2点・ナイフ形石器1点・彫器1点・剥片158点・礫片18点である。旧石器時代の遺物が混入しており、縄文
時代の遺物との識別が困難であるが、剥片の多くはいわゆるポイント・フレイクであり、縄文時代の所産と判断した。12は硬質の砂岩製の有舌尖頭器である。基部と先頭部を欠損する。13は黒色緻密質安山岩の具殻状剥片を素材とする粗製の有舌尖頭器。11は黒色頁岩製の木葉形の石器である。下端が欠損する。削器は固示しなかったが、不整形剥片の一部に剥離痕の認められるものである。剥片類には黒色緻密質安山岩・黒色頁岩・ 砂岩製のものが多い。なお,本遺跡の土器群は県内では市原市南原遺跡に後続するものと考えられる。」

図2 採集された遺物
「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)から引用

4 メモ
林跡№1遺跡は手賀沼に流入する大津川上流の左岸に位置していますが、この付近は東京湾水系との分水嶺地帯であり、台地面が形成する尾根筋線が狭窄・湾曲していて、動物移動の要衝になっていると考えることができます。同時に台地面に等高線凹地表示でしめされる湿地・池が分布し動物の水飲み場等として機能していたことが考えられます。
つまり林跡№1遺跡は格好の狩場近くに位置していたと考えることができます。狩りにとって特別に好都合の立地場所であるということと、そこから縄文草創期の隆起線文土器が出土しているという関係は一鍬田甚兵衛山南遺跡でも見られました。
一過性の狩場ではなく、その場所で継続的に狩が可能である(定住的な生活が可能である)という条件があってはじめて土器の利用が生れたと考えます。
隆起線文土器出土から、その場で土器を使った生活が営まれていて、その生活が持ち運びに不便な土器を使わない(使えない)程の移動性の高い生活ではなかったことがしのばれます。

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