2019年1月13日日曜日

隆起線文土器

縄文土器学習 3

「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)の「2-1-2縄文時代(1)土器の変遷一縄文時代一」を軸に千葉県出土土器形式の学習を草創期から順を追って学習します。この記事では隆起線文土器について学習します。

1 隆起線文土器以前
県内では今のところ発見されていない。

2 隆起線文土器群
県内では鎌ヶ谷市林跡遺跡・市原市南原遺跡・富津市前三舟台遺跡・東金市大谷台遺跡多古町一鍬田甚兵衛山南遺跡下総町成井遺跡・印旛村瀬戸遠蓮遺跡・印西市地国穴台遺跡などから出土する。

隆起線文土器は,文様購成や隆起線文の種類よって大きく3つ(I・Ⅱ・Ⅲ式)に分けることができる。
I式は幅広の隆帯を口縁部に数条巡らすものであり,長崎県佐世保市泉福寺洞穴から出土した豆粒文土器もこの時期であろう。南原遺跡・前三舟台遺跡がこの時期に属する。

Ⅱ式は細隆起線文を直線・波状に巡らし,なかには文様帯を有するものもある。県内では林跡遺跡・一鍬田甚兵衛山南遺跡など, この時期のものが多い(写真3)。

写真3 隆起線文土器(多古町一鍬田甚兵衛山南遺跡)
「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)から引用

Ⅲ式は微隆起線文の一群で,前二者が口縁部近くに施文するのに対し,底部近くまで全面施文するものが多い。大谷台遺跡もこの時期に属する。

隆起線文土器
「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)から引用

3 千葉県隆起線文土器出土遺跡
千葉県の隆起線文土器出土遺跡リストとその分布を手元の資料から整理すると次のようになります。

千葉県隆起線文土器出土遺跡

千葉県隆起線文土器出土遺跡

4 参考 東日本・南関東地方の隆線文土器の変遷

参考 東日本・南関東地方の隆線文土器の変遷
「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)から引用
「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)では隆線文土器の変遷について次のように記述しています。この記述から千葉県の隆起線文土器の分類変遷と東日本・南関東の分類変遷は大筋で対応していると捉えられます。
「口縁部の加飾から隆線文土器がはじまり、最初はやや太い隆線が単条のみめぐるが、時期が下がると数条になり、横走だけでなく波状などモチーフを持つタイプもあらわれ(Ⅱ期)、Ⅲ期には多条に細い隆線文がめぐらされる。」

5 参考 隆起線文土器のC14年代測定と較正年代
れきはくデータベース「遺跡発掘調査報告書放射性炭素年代測定データベース」を検索したところ千葉県出土隆起線文土器のC14年代測定資料は無いようです。
全国の隆起線文土器付着物測定結果を検索すると次のようになります。

隆起線文土器付着物のC14年代測定データ
この表で早見較正年代は上記れきはくデータベースの付録「較正年代早見表(IntCal13)」から得た値です。
C14年代測定値平均値をIntCal13原本資料でみると確かに早見較正年代と対応します。

IntCal13原本資料でみるC14年代測定平均値と対応する較正年代
隆起線文土器C14年代測定値の平均値からみると、その較正年代は13300年前頃ということになります。

6 参考 隆起線文土器の時代イメージ

縄文のはじまりをめぐる時代区分の比較
「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)から引用
小林謙一の説に従えば隆起線文土器の時代が縄文時代のはじまりになります。

縄文時代のはじまりころの狩猟具の変遷
「縄文はいつから!?」(小林謙一/工藤雄一郎/国立歴史民俗博物館編、新泉社)から引用
隆起線文土器の時代は氷期の温暖期にあたります。







 

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