2019年1月22日火曜日

一鍬田甚兵衛山南遺跡 隆起線文土器出土遺跡

縄文土器学習 8

千葉県出土縄文土器の形式学習を始めています。現在、隆起線文土器と加曽利E式土器について併行的に取り組んでいます。隆起線文土器はその出土遺跡を「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)掲載事例により学習を進めています。この記事では多古町の一鍬田甚兵衛山南遺跡(新東京国際空港№12)を学習します。

1 一鍬田甚兵衛山南遺跡の位置

一鍬田甚兵衛山南遺跡の位置 QGIS画面 現在地形

一鍬田甚兵衛山南遺跡の位置 赤色で表示 成田国際空港埋蔵文化財調査報告書21(千葉県文化財センター調査報告第517集)から引用・加筆
「栗山川の支谷最奥部に面する台地北端部に立地し、標高は約41mである。根木名川・栗山川・木戸川などの水系の分水嶺となる地域である。」

2 発掘調査
「草創期の遺物は、径約20mの範囲に集中して出土し、 一括遺物としてとらえることができる。」

→ 隆起線文土器と有舌尖頭器が一括して出土しているが確実であり、この遺跡は土器・石器セットの学習に最適です。
3 隆起線文土器
「隆起線文土器は約100点出土している。口縁部の破片から、最低でも11個体以上あったものと推定される。器厚は6~8mmで、色調は明るい褐色を呈する。胎土には長石などの混入物が多い。
文様構成から以下のAからDの4類に分類することができる。A類(図2-1)は、幅5~7mmの隆起線を口縁に平行して多条に貼り付けたものである。B類(2・10~12)は、 2条の平行する沈線の間を、垂下(2・11・12)あるいは斜行(10)する隆起線が区画し、幾何学
的な文様を構成するものである。C類(4・5・8・14)は、口縁に平行する1ないし2条の隆起線で構成されるものである。D類(13)は、波状を星する隆起線に「ハ」の字状の爪形文を付加するものである。」

図2 隆起線文土器
「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)から引用

参考 隆起線文土器(保存の良いもの)
一鍬田甚兵衛山南遺跡の位置 赤色で表示 成田国際空港埋蔵文化財調査報告書21(千葉県文化財センター調査報告第517集)から引用

→拓本では不鮮明ですが、写真では隆起線文土器の姿が鮮明にイメージできます。

4 石器
「有舌尖頒器(図3)は、44点出土している。凸基式群が22点、尖基式群が9点、平基式群が11点である。石材は、安山岩と砂岩が最も多く、チャートもあるが黒曜石はない。凸基式群(1~22)は、突出する基部に舌部がつくもので、身部の側緑が緩かに外湾するもの(1・4・15)・直線的なもの(16~18)・基部よりの身部の両側縁が平行的で先端近くで急にすぼまり、五角形に近い形状となるもの(19~22)の3種類に分けることができる。尖基式群(34~43)は、基部からやや内湾ぎみの舌部が直接続くもので、凸基式群の基部と舌部が不明瞭なものと捉えられる。平基式群(23~33)は、基部が長軸とほぼ平行するものである。凸基式群と同様に、外湾側縁(23~28)のもの・直線側縁(29)のもの・平行側縁(30~32)のものがある。
尖頭器(図4)は、未成品も含め約30点出土した。石材は安山岩・砂岩・チャート・珪質粘板岩であるが、大半は安山岩である。形態は、両端がほぼ対称的に尖る柳葉形のものと、最大幅が基部近くにあり基部がやや丸味を帯びる2種類がある。このほかに、打製石斧(図5-1)・ドリル(2)・掻器(3)・石鏃・有溝砥石が出土している。」

石器
「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)から引用

5 まとめ
「本遺跡は,縄文時代初頭の本県を代表する追跡である。遺構は検出されなかったものの、隆起線文土器の古い段階の一括資料として重要である。とくに有舌尖頭器の出土点数は全国的にみても屈指のものであり、当該地域の石器組成を良く示している質料であるといえる。」

6 感想
・この遺跡の縄文草創期土器・石器現物資料を2月頃閲覧・撮影できる手筈が進んでいます。私家版縄文土器形式図鑑の隆起線文土器写真はこの遺跡の閲覧時撮影写真を使うことになりそうです。
・この遺跡の発掘調査報告書「成田国際空港埋蔵文化財調査報告書21(千葉県文化財センター調査報告第517集)」を図書館から借りることができました。この報告書により一鍬田甚兵衛山南遺跡縄文草創期遺物の出土状況学習を次の記事で行うことにします。

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