2021年8月25日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の土器片分布 素分析

 縄文社会消長分析学習 125

「北斜面貝層土器出土状況」図には膨大な貴重情報が含まれていますが、この記事では平面分布図ができましたので、最初の土器片分布に関する素分析を行います。

1 北斜面貝層土器出土状況 全土器


北斜面貝層土器出土状況 全土器
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

6凡例別にその分布をプロットしたものです。貝層の分布に対して土器片は全く異なる原理で分布していることがわかります。

貝層は箱形地形を満たすような分布を呈しています。貝層はなぜこのような分布をしているのか基本的な検討課題です。

一方土器密集域は大局的にはガリー流路に沿って分布してるように感じられます。同時に貝層分布域にまばらに分布している土器片もあります。さらに箱形地形下流域(図の右側)では貝層分布域や箱形地形域から飛び出して土器片が分布します。これらの土器片分布原理を明らかにすることが重要な学習課題となります。

2 北斜面貝層土器片 土器群別出土数


北斜面貝層土器片 土器群別出土数


有吉北貝塚北斜面貝層出土土器片 土器群別集計

第10・11群土器(加曽利EⅡ式磨消以後)が488点で全体の61.62%を占めます。次いで第12群土器(加曽利EⅢ~EⅣ式)が155点で19.57%ですから第10・11群土器と第12群土器を合わせると647点、81.19%となります。北斜面貝層における土器投棄のメイン時期がこの情報からわかります。しかし、第1~6群土器は95点、11.99%の割合を占めます。この時期にも北斜面貝層における縄文人の活動存在が見えてきます。

3 第1~6群土器


北斜面貝層土器出土状況 第1~6群土器
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

全体の分布はツリーのように分岐する列状分布のように観察できます。つまり流路沿いに分布しているような直観を持つことができます。この時期のガリー流路に対応しているものかどうか確かめることが学習課題となります。

全土器分布図でみると、メイン土器群(第10・11群、第12群)の分布と第1~6群の分布は異なるように観察できそうです。つまり、第1~6群土器はメイン土器群と一緒に持ち込まれたのではなく、第1~6群の時期に持ち込まれたと言えそうです。本当にそれがいえるのか学習課題とします。

第1~6群土器のメイン分布は箱形地形下流部の貝層範囲外に存在します。その土器片と貝層形成がどのように関係するのか、関係しないのか、その関係性をあぶりだすことが重要な学習課題となります。貝層内出土第1~6群土器の層準を詳しく調べる必要があります。

4 第7・8群土器


北斜面貝層土器出土状況 第7・8群土器
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

たった8点の出土ですが、その分布はメイン土器群(第10・11群、第12群)の分布とは関係が無いようですから、第7・8群土器はその時期(加曽利EⅠ式期)に持ち込まれた可能性が生まれます。出土層準を検討することにします。

5 第9群土器


北斜面貝層土器出土状況 第9群土器
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

第9群土器の分布域は貝層の中上流部であり、メイン土器群(第10・11群、第12群)の集中分布域に近づいています。第9群土器の出土層準がメイン土器群と同じなのか、異なるのか詳しく検討することにします。

6 第10群・11群土器


北斜面貝層土器出土状況 第10・11群土器
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

原図の記号を拡大して描画しているため、記号が何重にも重なってしまうという作図上の理由から、実際の密集状況の激しさはこの図では十分に表現されていません。今後ヒートマップ作成などで実際の密集状況をよりリアルに表現して検討することにします。

ガリー流路沿いに土器片が分布しています。その粗密の理由について考察を深めることにします。

なぜ第10・11群土器の時期に北斜面貝層に土器投棄が集中して開始されたのか、詳しく検討することにします。

なお第10・11群土器密集域に第12群土器が伴わない区間があり、第12群土器が伴う区間より古い活動を示しているように観察できます。

第10・11群土器投棄の時期に貝層がどのような状況であったのか、詳しく検討します。土器投棄メイン時期と貝層形成メイン時期が対応すると考える根拠が本当にあるのか、再考します。

今後の作業にかかりますが、石器や歯牙骨角など土器以外出土物と一緒に考察することが大切ですから、それらに出土情報(分布情報)の整理も急ぐことにします。

7 第12群土器


北斜面貝層土器出土状況 第12群土器
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

第10・11群土器のメイン集中区間とくらべて第12群土器メイン集中区間は下流に移動するようです。その理由解明に興味がつのります。土器以外出土物との対応も興味がわきます。

8 浅鉢


北斜面貝層土器出土状況 浅鉢
【図の間違いは訂正しました。2021.09.13】

浅鉢の分布からどのような情報を引き出せるのか、今後検討を深めることにします。

9 感想

個別土器片について平面位置と投影断面位置の情報と貝層断面図を組み合わせると、出土層準が推定できます。その操作解読により、土器投棄と貝層形成の関係がデータとして判明できそうです。さらに、土器接合情報から、離れた場所の層準の対応関係も判るかもしれません。最大限の興味を持ちながら検討作業を進めます


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