2021年8月10日火曜日

貝層中の貝殻体積の測定

 縄文社会消長分析学習 123

2021.08.09記事「貝層体積の測定」で貝層区分別体積を求めました。そして以前の検討で貝層区分別の混土率(平均値)を求めています。そこで、この記事ではそれら2つの情報から貝層中の貝殻の体積と土の体積を測定しました。

1 貝層中の貝殻体積の測定

貝層区分別に体積×貝殻率で貝殻体積が求められると考えます。

ここで、貝殻率=1-混土率とします。

貝層区分別混土率(平均値)はこれまでの検討で次のように設定しています。


貝層分類別の混土率・破砕率の平均値

2021.07.28記事「混土貝層・混貝土層の成因 その2」参照

2 貝層中の貝殻体積測定結果


貝層区分別貝殻体積(㎥)


貝層中の貝殻と土の体積

貝層中の貝殻体積と土体積は全体でほとんど等量であるという結果になりました。貝殻1単位を投棄するとき、土1単位を近くで掘削・運搬してきてその場所に被せていると捉えることができます。


貝層中の貝殻と土の体積


参考 体積測定に使った断面図測線

断面図毎に(空間分布的に)見ると貝殻体積は谷頭部で高まりを見せますが、第3断面で最も少なくなり、その後下流に向けて順次値が大きくなり、第12断面で最大の値になります。また、貝層中の土体積は谷頭部で最も大きな値を示します。第3断面から第12断面までは土体積は増えますがその程度は漸進的です。

3 メモ

貝殻体積は下流部で大きな値をしめし、貝殻投棄量のメインは下流であったといえます。貝塚の本義(第1の意義)が貝殻の投棄場所(処分場所…文学的に表現すれば貝殻の送り場)であるという観点から見るならば、下流部が貝塚本来の意義を最もよく体現していると考えることができます。

谷頭部(第1断面谷頭、第2断面)で貝層中の土体積が大きな値となります。この場所は貝殻投棄場所(処分場所)という意義ではない、第2の意義が優った場所です。この場所では混貝土層の形成が継続的に行われ、その第2の意義の本質はガリー侵食防止工事であったと推定できます。


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