2021年8月9日月曜日

貝層体積の測定

 縄文社会消長分析学習 122

これまでに有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面図について貝層区分別に面積測定しました。この結果を利用して、この記事では貝層区分別体積を測定しました。

1 貝層区分別体積の測定方法

第3断面図から第15断面図までは2m間隔で断面が設定されています。この特性を利用して、各断面の貝層断面積に延長距離2mを乗じることによって体積を測定することにします。ただ谷頭部(貝層南側)の断面は少ないので最上流部付近は第1断面(縦断面)を利用して適切な延長距離を設定しました。第2断面・第3断面及び第12断面も適切な延長距離を設定しました。


貝層体積計測のための延長距離設定

2 貝層区分別体積測定結果


有吉北貝塚北斜面貝層 貝層区分別体積(㎥)


貝層区分別体積(㎥)

北斜面貝層全体で純貝層31.21㎥、混土貝層93.45㎥、混貝土層188.43㎥で合計313.09㎥となります。純貝層:混土貝層:混貝土層はおよそ10:30:60になります。混貝土層の割合が高いことが特徴であると考えますが、他貝塚の同様データは、自分は学習したことがありません。


貝層体積(㎥)

純貝層体積、混土貝層体積、混貝土層体積の合計値を断面別に(空間別に)示したグラフです。第6断面を底にして谷頭方向(南方向)と下流方法(北方向)に数値が大きくなるカーブを描いています。貝層形成(貝の投棄)活動が谷頭部付近と下流部付近で盛んであったことを示しています。


貝層区分別体積(㎥)

谷頭部付近では混貝土層の体積が大きく、第6断面に向かってそれが小さくなるのが特徴です。純貝層・混土貝層はあまりみられません。貝を投棄するとともにその上に土を被せる活動が盛んであったと推定できます。

一方、第12断面など下流部では純貝層・混土貝層・混貝土層が発達し、特定の区分に偏ることが少なくなっています。従って、単純に貝を投棄する活動もあれば、貝を投棄してその上に土を被せる活動も行われたと推定できます。

3 メモ

貝層区分別体積の空間分布から、谷頭付近では混貝土層だけが偏って発達し、かつその体積が大きいことが判りました。貝殻を撒いてその上に土を被せる活動が継続して行われたことを示しています。その場所は植物がとてもよく繁茂したと推定できます。谷頭付近は、縄文人がガリー侵食を食い止めるための土木工事をした跡であると表現することが可能であると考えます。


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